栄養サポートチーム(NST)専門療法士

■栄養サポートチーム(NST)専門療法士とは

栄養サポートチーム(NST)専門療法士は、一般社団法人日本臨床栄養代謝学会(JSPEN)が認定する栄養管理の専門家です。
NSTに関わる医療スタッフの専門性を高めるための資格で、特に薬剤師、看護師、管理栄養士の認定者が大多数を占めています。
最近は多くの病院でNSTが設置されており、NST専門療法士には、チームの中心的な存在として活躍することが期待されています。平成31年度には、NST専門療法士として新たに872人が認定 されました。


栄養サポートチーム(NST)専門療法士の仕事内容

栄養サポートチーム(NST)とは、栄養状態のよくない入院患者さんを対象として、多職種の医療スタッフが協力して栄養管理を行う医療チームのことです。
医師、看護師、薬剤師、管理栄養士はもちろん、歯科医師や歯科衛生士、理学療法士や言語聴覚士などのさまざまな職種が参加するチーム医療の一種です。

NST専門療法士は、NSTの要となるスタッフであるため、患者さんの性別や年齢、病態や栄養状況に応じて栄養管理計画を作成し、最良の方法で栄養を摂れるようにサポートします。たとえば、経口摂食は可能なのか、難しい場合は経腸投与や静脈投与はどうなのかなど、栄養投与ルートについて考え、経腸栄養剤の選定や調理法の選択なども行います。そうした計画をNST全体で共有し、より最適な方法にブラッシュアップを行うことも重要な業務です。

NSTではもともと 、薬剤師の参加が欠かせません。薬剤と栄養投与ルートの相互作用について検討したり、静脈栄養の無菌調製をしたりと、薬剤師はNSTに重要な役割を果たしています。
そして、診療報酬の栄養サポートチーム加算(NST加算)では、栄養管理に詳しい薬剤師の参加が必須 要件とされています。必ずしも薬剤師にNST専門療法士の資格が必須というわけではありませんが、取得をしておけばさらに活躍の場が広がるといえるでしょう。


栄養サポートチーム(NST)専門療法士のやりがい

患者さんにとって、栄養を摂ることは全身状態や治療効果を左右する重大な要素です。同時に、食事をすることは大切な生活の彩りでもあります。栄養サポートチーム(NST)の一員として栄養管理を行い、患者さんの回復や笑顔を見ることができれば、大きなやりがいを感じることができるでしょう。

また、NST専門療法士になることで、病院内で多職種と連携しながら、患者さんの栄養管理を行う高度な専門知識と技術を発揮することができます。NSTに関わっている方、チーム医療に携わりたい方にとっては、ぜひ取得したい資格といえるのではないでしょうか。

栄養サポートチーム(NST)専門療法士になるには?

栄養サポートチーム(NST)専門療法士には、特定の国家資格を持っている人だけがなることができます。さらに、学会やセミナーに参加し、研修を受ける必要があるなど、取得までに時間も手間もかかる資格です。
ここではその前提条件と、取得までの流れや費用を説明します。

認定条件

栄養サポートチーム(NST)専門療法士になるには、下記の条件を満たす必要があります。

条件1 対象となる国家資格のどれかを日本で取得する
対象資格:管理栄養士、看護師、薬剤師、臨床検査技師、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、歯科衛生士、診療放射線技師
条件2 5年以上、医療・福祉施設に勤務し、そのなかで栄養サポートに関する業務を経験する
条件3 日本臨床栄養代謝学会の指定する学会やセミナーに参加する(合計30単位以上)
必須単位:同学会の学術集会1回以上、同学会主催のNST専門療法士受験必須セミナー1回以上(1回につき各10単位)。
選択単位:同学会が認める栄養に関する学会、研究会など(1回につき各2~5単位)「バーチャル臨床栄養カレッジ」(修了で10単位)
条件4 認定された教育施設(全国300施設) で合計40時間の実地修練を受け、栄養管理に当たった症例の報告書を作成する
条件5 年1回行われている認定試験を受験し、合格する

認定までの流れと費用

栄養サポートチーム(NST)専門療法士になるまでの手順と、そのときかかる費用は下記の通りです。

(1)薬剤師などの国家資格取得者として、5年以上、医療・福祉施設に勤務し、栄養サポートに関する業務を経験する
(2)日本臨床栄養代謝学会の開催する「NST専門療法士受験必須セミナー」を受講する
(3)(2)に加えて、同学会の指定する学会や他のセミナーにも参加して所定の単位を修める
(4)同学会の認定教育施設で、40時間の実地修練を行う
(5)セミナーの参加証、実地修練で書いた症例報告書などの必要書類をまとめて、同学会に認定試験の受験を申し込む
(6)認定試験を受ける
(7)試験に合格したら、同学会に認定申請書を提出し、認定料を納入。NST専門療法士と認定される

認定時、更新時にかかる費用は下記の通りです。


なお、NST専門療法士の認定・維持には同学会の会員資格も必要なため、その会費も必要になります。

出題範囲と難易度、合格率

NST専門療法士の認定試験は、例年11月頃実施されます。制限時間2時間で、80問のマークシート方式です。試験範囲は、日本臨床栄養代謝学会の『静脈経腸栄養テキストブック』に準拠 しており、栄養学や代謝学の基礎知識、静脈栄養と経腸栄養について、さらには多様な病気の患者さんに対する栄養管理の考え方 など、極めて広範囲にわたります。
試験対策としては、まずは受験前に必ず受講することになる「受験必須セミナー」でしっかりと勉強することが大切です。
さらに、日本臨床栄養代謝学会から、認定試験の『基本問題集』『過去問題集』が出ているので、事前に対策しておくといいでしょう。『静脈経腸栄養テキストブック』もあわせて読み込むとさらに安心です。

試験の合格率は、一般的に60%~70%といわれています。合格者数では2019年度が872人、2018年度では820人となっています。
試験の難易度は高めだという受験者の声も多いですが、職種にかかわらず試験問題は同一であるため、生化学などの基礎知識をもつ薬剤師にとっては相対的にやさしく感じられる分野もありそうです。

資格の更新について

NST専門療法士の資格の認定期間は5年間です。
更新するためには、5年間の認定期間中に下記が必要になります。

(1)医療・福祉施設で2年以上にわたり臨床栄養管理を経験していること
(2)受験時と同様に指定された30単位分の学会やセミナーに再び参加しておくこと

栄養サポートチーム(NST)専門療法士を仕事で活かす

栄養サポートチーム(NST)専門療法士は、取得までが大変な資格ですが、NSTの専門家としての知識を客観的に証明することができます。そのため、薬剤師がこの資格を取得できれば、チーム医療や患者さん・家族への説明などの場面において、これまで以上に力を発揮できるようになるでしょう。

栄養サポートチーム(NST)専門療法士が役立つ職場や業界は?

栄養サポートチーム(NST)専門療法士はその性質上、NSTが設置されている施設での活躍がもっとも期待されます。入院施設がある病院ではNSTを設置していることが多いため、大学病院や公立病院など、大規模病院での活躍が期待されているケースが多いといえるでしょう。
また、要介護やフレイルの高齢者には栄養状態のよくない患者さんも多いため、介護施設や訪問介護などの福祉分野でもNSTは注目されています。

栄養サポートチーム(NST)専門療法士を取得するメリット

栄養サポートチーム(NST)専門療法士は、近年発展の目覚ましい「チーム医療」「栄養管理分野」の専門家です。日本臨床栄養代謝学会の認めるNST稼働登録施設数 は1,300件以上に上っています。2006年に新設された「栄養管理実施加算」、2010年に新設された「栄養サポートチーム(NST)加算」などの流れを見ても、NSTに取り組む病院は増えているといえるでしょう。そのため、学んだ専門知識や技術をしっかりと活かすことができます。

また、NST専門療法士を習得・更新するためには、学会やセミナーなどに参加する機会を定期的に持つことになりますから、最新の医療知識や技術を学び続けられることもメリットといえるのではないでしょうか。

栄養サポートチーム(NST)専門療法士の転職事情

上記で述べた通り、栄養サポートチーム(NST)専門療法士は主に大規模病院での需要が高いといえます。さらに福祉関係では、介護施設や療養施設、在宅医療に取り組む調剤薬局などから求められることもあります。
「NST専門療法士であることが絶対条件」という求人は、決して多くありません。

しかし、たとえNST活動に専任するのではないとしても、栄養療法の知識が役立つ職場は多いため、応募時には大きなアピールポイントとなるでしょう。また、学会やセミナーなどに通って勉強し続けていることを客観的に証明してくれるNST専門療法士の資格は、転職活動でも大きな強みになります。

なお、薬剤師はもともと求人倍率も給与水準も高い職種ですが、NST専門療法士の資格も持っている場合、さらに月数万円程度の資格手当が支給される場合もあるようです。

認定期間 受験料
5年 10,000円
認定料 更新手数料
20,000円 10,000円