認定薬剤師とは?資格の種類や取得メリット、流れについて解説

認定薬剤師とは?資格の種類や取得メリット、流れについて解説
日々、薬剤師として業務をこなしているうちに、もっとレベルアップしたい、さらに専門的な分野に踏み込んで知識と技術を高めたいという考えを持つ方もいるかと思います。2016年2月の診療報酬改定により新設された“かかりつけ薬剤師制度”。「かかりつけ薬剤師」になるために認定薬剤師の資格を取得することが条件に盛り込まれたことで認定薬剤師の資格が急速に注目されました。

2024年6月の調剤報酬改定では、地域支援体制加算の算定にかかりつけ薬剤師としての服薬指導実績が必要となるため、認定薬剤師の資格を取得することは薬剤師として働く上で重要性が増しています。

この記事では認定薬剤師についての基本的な情報をはじめ、資格の取得方法の流れや、資格の種類、メリットなどをご紹介します。また、漢方薬・生薬認定薬剤師、小児薬物療法認定薬剤師など専門領域に特化した認定薬剤師制度についても解説しますので、薬剤師としてスキルアップしたい方はぜひ参考にしてください。

1.認定薬剤師とは

高度化し細分化していく医療の進歩に伴って、医療の最先端で活躍するためにはある専門分野に特化した知識と技術を持つ必要があります。

一定期間の講習を受講し、決められた単位を取得することで能力を評価された薬剤師に与えられる資格が、認定薬剤師です。常に最新の知識と技術と知識が求められることから日々自己研鑽が必須であり、認定薬剤師の資格を得ることは薬剤師としての資質と実力があると認定されているという証明にもなります。
以下でその概要についてふれていきます。

1-1.実力を証明するものになる

認定薬剤師の資格を取得するには専門分野に特化した講習を受け、常に自己研鑽し知識と技術をアップデートしていく必要があります。

「認定薬剤師」は専門分野において最新の医療や薬学の知識と技術を有し、実力が認められた薬剤師として客観的に証明する資格として機能します。

1-2.認定薬剤師は三つの制度に分けられる

薬剤師認定制度認定機構が認定している「認定薬剤師制度」は以下の三つに分かれます。

1-2-1.生涯研修認定制度

薬剤師が最新の情報、知識、技術を習得できるように良質な研修を継続的に企画、実施し、その結果を評価し単位を給付する制度です。

1-2-2.特定領域認定制度

特定の分野・領域において薬剤師の職能向上を目的にした適正な研修を受講し、知識・技術を取得した成果を認定する制度です。

1-2-3.専門薬剤師認定制度

特定の分野において最適な薬物療法の提供を目的に、最先端の知識や技術を取得するだけでなく、専門分野における活動や研究活動を行っている薬剤師として能力を保証するための認定制度です。

1-3.専門薬剤師との違い

似たような認定資格として専門薬剤師が挙げられます。特定の分野で専門的な知識と技術を有する薬剤師であると認定される点では変わりありません。しかし、専門薬剤師の資格を取得するには試験を受け、合格する必要があります。
また、ある領域では認定薬剤師の上位資格として専門薬剤師が存在する場合もありますが、特定の分野において認定薬剤師にしか存在しない資格、逆に専門薬剤師にしかない資格もあります。資格取得のハードルの高さは認定薬剤師、専門薬剤師それぞれの資格で異なるので一概に比較はできません。

専門薬剤師の例として、がん専門薬剤師や栄養サポートチーム(NST)専門療法士があります。
がん専門薬剤師は資格取得要件の一つに、認定薬剤師などの資格を取得する必要があり、認定薬剤師の上位資格です。
それに対して、栄養サポートチーム(NST)専門療法士の資格取得要件に認定薬剤師の資格取得はありません。

がん専門薬剤師や栄養サポートチーム(NST)専門療法士についての詳しい情報はこちらをご覧ください。

2.認定薬剤師にはどういうものがある?

認定薬剤師の資格は多種多様です。取得に時間とお金がかかるため、手当たり次第に取れるものでもありません。就業先の業務内容に合わせた分野や目指す方向が合った分野を考えて選定するようにしましょう。

特にキャリアアップしたい人向けに取得しておきたい資格を9つご紹介します。

2-1.研修認定薬剤師

最初に認定薬剤師の資格を目指す人にとっては人気の資格となります。取得するにあたって、学会に属する必要性など、細かい制限がなく幅広い職域の薬剤師が取得しやすいことが人気の理由といえるでしょう。

また「かかりつけ薬剤師」になるための算定要件に入っているため、職場から最初に取得をすすめられる可能性があるのが、この資格の特徴です。

研修認定薬剤師についての詳しい情報はこちらをご覧ください。

2-2.日病薬病院薬学認定薬剤師

日病薬病院薬学認定薬剤師は、病院内の薬剤師業務のエキスパートです。
多様化する医療に対応し、臨床現場において主体的にチーム医療に参加できる薬剤師を養成する目的で設立しました。

医療知識のみではなく、多職種連携によるチーム医療や患者さんとのコミュニケーション能力などを含めた、臨床現場で総合的な能力を求められます。

日病薬病院薬学認定薬剤師についての詳しい情報はこちらをご覧ください。

2-3.小児薬物療法認定薬剤師

小児薬物療法に関する薬の専門家として、一定レベル以上の能力と適性があると認められる薬剤師です。

小児の薬物療法は、医薬品の体重・年齢換算、散剤・水剤等の服用方法、過量投与による副作用など、成人とは異なる点が多く注意が必要です。

そのため小児科医や小児病棟看護師など多職種と連携して小児科領域の治療に薬学領域で参画し、小児患者と保護者に対して、指導や教育を行うことが期待されています。

小児薬物療法認定薬剤師についての詳しい情報はこちらをご覧ください。

2-4.緩和薬物療法認定薬剤師

緩和薬物療法に精通した薬剤師であり、緩和ケアチームまたは緩和ケア病棟のチーム医療に薬物療法の専門家として加わります。

がん治療において、がん性疼痛を和らげる緩和医療は、患者さんのQOLを上げるうえで非常に重要です。

緩和医療において薬物療法は欠かせないものであり、個々の症状や状態に合った薬物療法を提案・実践することなどが主な業務となります。

緩和薬物療法認定薬剤師についての詳しい情報はこちらをご覧ください。

2-5.漢方薬・生薬認定薬剤師

漢方薬・生薬について優れた専門知識を持ち、症状に対する的確な調剤および服薬指導を行うことのできる薬剤師です。

漢方薬学には症状だけでなく証(その人の状態(体質・体力・抵抗力・症状の現れ方などの個人差)を表す)を見るという独特な考え方があります。

そのため、適切な漢方薬を選択するためには、漢方薬・生薬について深い知見が必要となるのです。

漢方薬・生薬認定薬剤師についての詳しい情報はこちらをご覧ください。

2-6.在宅療養支援認定薬剤師

在宅患者および療養・保養施設患者の服薬管理および服薬指導について、高度な専門知識や技術を兼ね備えた薬剤師です。

医師や看護師だけでなく、ケアマネージャーなど介護従事者との多職種連携を通して、円滑な在宅療養の提供を実施します。

高齢社会となった日本において在宅医療のニーズは高まっており、今後の活躍が期待できる資格といえるでしょう。

在宅療養支援認定薬剤師についての詳しい情報はこちらをご覧ください。

2-7.感染制御認定薬剤師

感染制御に関して高度な知識と技術を持った薬剤師です。
院内で患者さんが安心・安全に治療を受けられるよう感染症予防に努めます。また感染症の適切な治療が行われるよう薬物療法の提案や情報提供なども行い、多職種とチームを組み感染制御のエキスパートとして貢献します。新型コロナウイルス(COVID-19)の感染流行で、感染制御認定薬剤師が注目されるようになりました。

感染制御認定薬剤師の情報はこちらをご覧ください。

2-8.がん薬物療法認定薬剤師

がん薬物療法において必要な知識と技能と臨床経験を習得している薬物のスペシャリスト。

最善の薬物治療ができるように医師や看護師など他の医療従事者に提案、情報を提供します。日本における死亡率の第一位は“がん”であることから、医療現場における活躍の場は多いでしょう。

がん薬物療法認定薬剤師の情報はこちらをご覧ください。

2-9.プライマリ・ケア認定薬剤師

プライマリ・ケアは国民の健康福祉に関わる問題を総合的に解決していく地域での実践活動のことです。

医師、歯科医師など多職種と連携しながら、患者さんを総合的に見て必要な対策を判断する能力が求められます。地域で医療の担い手として活動することに大きなやりがいと魅力を感じる薬剤師は少なくないでしょう。

プライマリ・ケア認定薬剤師の情報はこちらをご覧ください。

3.認定薬剤師の種類を一覧で紹介

他にもさまざまな認定薬剤師資格があります。
以下に認定薬剤師の一覧を表にしていますので、ぜひ参考にしてください。

種類 資格名称
全般、基本 研修認定薬剤師
医療薬学専門薬剤師
日病薬病院薬学認定薬剤師
実務実習 認定実務実習指導薬剤師
日病薬認定指導薬剤師
救急、災害 救急認定薬剤師
災害医療認定薬剤師
小児医療 小児薬物療法認定薬剤師
高齢者、認知症治療 老年薬学認定薬剤師
認知症研修認定薬剤師
妊婦、授乳者治療 妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師
プライマリ・ケア、在宅医療 プライマリ・ケア認定薬剤師
在宅療養支援認定薬剤師
がん がん薬物療法認定薬剤師
外来がん治療認定薬剤師
緩和薬物療法認定薬剤師
感染症 感染制御認定薬剤師
抗菌化学療法認定薬剤師
HIV感染症薬物療法認定薬剤師
腎臓病 腎臓病薬物療法認定薬剤師
糖尿病 糖尿病薬物療法認定薬剤師
精神疾患 精神科薬物療法認定薬剤師
漢方薬・生薬 漢方薬・生薬認定薬剤師
ドーピング防止 公認スポーツファーマシスト

4.認定薬剤師になるメリットとは

認定薬剤師になるためには一定期間中に必要な単位を取得し、常日頃から勉強することが必要です。認定されるためには時間がかかるため、努力と継続力が必要となります。では、認定薬剤師になるメリットにはどのようなものがあるでしょうか?

4-1.差別化につながる

最新の専門的な知識と技術を有することで適切な助言やサポートが可能になるため、医師などの医療従事者や患者からの信頼が厚くなります。薬剤師としての価値が上がり、個人として認識されることが増えることで、他の薬剤師との差別化につながるでしょう。

4-2.収入が上がる可能性がある

転職先や就業先によっては認定薬剤師の資格を持っていることが評価され、資格手当や昇給手当に反映され、年収がアップする可能性があります。

そのため、資格を持っていない一般薬剤師と比べると年収の面で有利に働く場合があります。

4-3.キャリアの幅が広がる

認定薬剤師の資格は、かかりつけ薬剤師の認定要件の一つです。かかりつけ薬剤師になることができると、地域支援体制加算を算定できるような薬局を任されることにもつながるでしょう。

また、例えば認定実務実習指導薬剤師の資格を取ることで、薬学部生や現場スタッフなどへの指導が可能となります。

このように、認定薬剤師の資格を取ることで自身のキャリアの幅を広げることができるのです。

4-4.転職する際に役立つ

資格を評価してくれる転職先を探すのもよいでしょう。資格取得を推奨している職場もあり、転職活動の際に大きなアピールポイントになり得ます。

どのような資格が評価されるのかは、就業先によって異なるためリサーチが必要です。

5.資格を取得する際の流れ

認定薬剤師の資格はどのようにして取得するのでしょうか?
取得のプロセスはそれぞれの資格や認定機関によって異なりますので、ここではおおまかな資格取得の流れをご紹介します。

2022年4月1日以降の研修認定薬剤師制度に基づく利用者の情報、研修単位等は、個人毎にPECS(薬剤師研修・認定電子システム)で管理し、認定申請等も本システムを利用して行っていますので、PECSへの登録が済んでない方は、最初に新規登録を行ってください。

5-1.研修に参加する

認定薬剤師認証研修機関(プロバイダー)が主催する研修に参加します。各資格により決められた期間内に必要な単位を取得したら、受講証明として単位が発行され、履修した単位は後日個人のPECSに紐づけられます。

プロバイダーは一つに絞る必要はありません。薬剤師認定制度認証機構(CPC)に認証されたものであれば単位は有効ですが、内容に重複がある場合、有効とみなされない可能性がありますので、それぞれの詳細確認が必要となります。

5-2.資格を取得する

各資格に必要な単位を取得したら、PECS上から申請を行います。認定審査料を支払い必要事項を入力したら申請は完了です。

2022年3月31日以前の履修単位はPECSには反映されず単位シールが発行されているため、単位シールを貼った薬剤師研修手帳と共に各プロバイダーに提出します。

その後、認定薬剤師として登録されると認定薬剤師証が発行されて資格を取得できます。

5-3.更新のための単位をとる

認定薬剤師の資格は一度取ったら終わりではありません。資格を継続するために、更新が必要となります。更新は3年ごとに30単位以上、毎年5単位以上の単位取得が必須です。

なお毎年5単位が取得できなかった場合は、更新ができません。改めて新規として申請が必要なのでご注意ください。

6.認定薬剤師の資格を取得する際の注意点

資格取得の条件や費用、認定期間などは各資格によって異なります。
特に複数の認定薬剤師の取得を目指している方は注意するようにしましょう。

6-1.資格取得の条件

認定薬剤師の取得を目指す際に、まず資格取得の条件をしっかりと確認するようにしましょう。

例えば、研修認定薬剤師の場合は新規に認定を受ける場合は、申請日からさかのぼって4年間以内で40単位の取得が必要です。

研修認定薬剤師は取得してからの有効期間は3年間です。更新する場合は、3年間で30単位かつ毎年5単位以上という条件があります。

30単位とっても、年間5単位以下の年があれば更新は認められませんので注意してください。

6-2.受講費用や更新費用

認定薬剤師の資格を取得するために、費用がかかることも忘れてはいけません。
単位を取得するための受講費用や、新規申請時や更新申請時に費用がかかります。
特に複数の認定薬剤師を取得しようとすれば、それだけ費用がかさむので、自分にとって必要な資格なのかどうかをしっかりと考えた上で取得するのがおすすめです。

また所属する薬局や病院によっては、費用の補助などを行うところもあるので、確認しておきましょう。

6-3.認定期間

それぞれの認定薬剤師の資格には、認定期間が設けられています。

例えば、研修認定薬剤師は3年間ですが、救急認定薬剤師は5年間、認定実務実習指導薬剤師は6年間です。

この認定期間を過ぎるまでに更新申請を完了できなかった場合、再度新規申請をしなければならなくなるため注意しましょう。

7.まとめ

認定薬剤師であるということは、薬剤師としての日々の努力の結果、高度な知識と技術を取得した薬剤師として証明されているため、採用側からすると即戦力であることが期待され、転職に有利に働く可能性があります。ただし、自分にあった企業を一人で探すのは容易ではありません。

転職活動をするなら、まずはマイナビ薬剤師で無料会員登録をしてみてはいかがでしょうか?マイナビ薬剤師では、薬剤師の転職に精通した担当のキャリアアドバイザーがあなたに合った企業の提案やアドバイスを行います。

どの認定薬剤師の資格を取るべきか?もしくはあなたの取得している認定薬剤師の資格を生かした転職先はどこかなど、認定薬剤師の資格を生かした転職もバックアップできますのでお気軽にご相談ください。

この記事の著者

メディカルライター・薬剤師

下田 篤男

京都大学薬学部卒業。 卒業後は薬剤師として調剤薬局グループで勤務。現在も薬剤師として現場で働く傍ら、その知識や経験を活かして、医療記事や美容記事の執筆、編集や薬局経営コンサルタントなど幅広い業務に携わる。

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