薬剤師のボーナスはどのくらい?平均額や仕組みを解説

薬剤師のボーナスはどのくらい?平均額や仕組みを解説

現在正社員として働いている薬剤師、もしくはこれから正社員として入社や転職を考えている薬剤師にとって気になるのが薬剤師の「ボーナス」です。

派遣やパート、アルバイトなど、さまざまな働き方が広がっていますが、通常このボーナスがもらえるのは社員だけの特権です。ある程度まとまった額が支給されることも多く、ボーナスがたくさんもらえれば大幅な収入アップも見込めます。

今回は薬剤師のボーナス事情や、平均額、ボーナスのしくみなどについて解説します。

1.ボーナスの仕組み

ボーナスとは、毎月の固定給が支払われている労働者に対して、その固定給とは別に、労働の成果として支給される特別な給与のことで、「賞与」や「特別手当」などの用語で呼ばれることもあります。

固定給は毎月1回以上、あらかじめ定めた給料日に支給することが労働基準法によって定められているのに対し、ボーナスについては特に法律上の決まりはないため、支給の有無や時期、回数についてはそれぞれの会社が独自のルールで決めることができます。

ボーナスの額の算定ルールも会社によってさまざまです。最も一般的なものは、”基本給×〇ヵ月分”といった計算方法をとる「基本給連動型賞与」です。

その他、個人の業績や成果に応じて算出する「業績連動型賞与」や、会社の決算月前後の業績に応じて支給額が決定される「決算賞与」などの算定ルールでボーナスを支給している企業もあります。いずれの算定ルールでも、基本的には勤続年数が長いほど、ボーナスは増える傾向にあります。

2.薬剤師のボーナスについて

基本的に、ボーナスというものは、過去の1年または会社が定める特定の期間における会社への貢献度や業績に応じて支給されるもので、たとえば入社1年目などのケースでは、まだ業績や貢献度の査定期間のため、ボーナスはもらえないのが普通です。稀に入社一年目でボーナスが支給されることもありますが、その額は数万円程度でしょう。

薬剤師のボーナスは、就業条件や就職先によって大きな違いがあります。さっそく薬剤師のボーナス事情について詳しくみていきましょう。

2-1.ボーナスの平均額

企業に勤める薬剤師は、どのぐらいのボーナスを貰っているのでしょうか。厚生労働省の「令和元年賃金構造基本統計調査」の結果から、薬剤師のボーナスの平均額をみてきましょう。

それによると、従業員数10人以上の会社に勤めている薬剤師のボーナスの平均額(年間賞与その他の給与額)は、83万3,300円、従業員数1,000人以上の大企業では、平均88万2,300円になっています。

ボーナスは、夏と冬の2回支給されるケースが多いため、ボーナス1回あたりの支給額は、従業員数10人以上の会社では平均41万6,650円、従業員数1,000人以上の大企業では、平均44万1,150円が目安といえます。

2-2.就職先によって変化はある?

ボーナスの支給額は就職先によっても大きな違いがあります。

まず、先ほどご紹介した薬剤師のボーナス支給額の全国平均のデータの中でも、従業員数1,000人以上の大企業の方が、年間で平均5万円程度ボーナス支給額が多いことがわかります。

また、業種によってもボーナス支給額に違いがあります。薬剤師の主な就職先別の初任給は、調剤薬局で月22万円~30万円程度、病院で月20万円~25万円程度、ドラッグストアで月30万円前後というように業種ごとに異なっており、ボーナス支給額を”基本給の◯月分”と算出する場合は、月給を反映することでボーナス支給額も変わってきます。

ただし、ドラッグストアや調剤薬局などでは、年間の営業成績を反映してボーナスを上乗せにしたり、グループ全体の業績をボーナスに反映したりする会社もあります。また、公的な病院であれば勤続年数に応じて、ボーナスの支給額も増えていくというところもあります。

このように、ボーナスの支給額には月給水準以外にも、さらなるプラスアルファが期待できる場合があります。

2-3.地域によって変化はある?

地域によってもボーナス支給額に違いがあるようです。

「令和元年賃金構造基本統計調査」のデータベースを元にした、47都道府県別の薬剤師の平均年収ランキングでは、1位は「静岡県」の698.6万円、次いで2位は「長野県」689.5万円となっており、一方、46位の「徳島県」は440.0万円、47位の「長崎県」は428.2万円で、大きな開きがあります。

一方、ボーナスはどうかというと、各都道府県のボーナス平均額も「静岡県」は83万2000円、「長野県」は97万6700円と高い傾向があり、「徳島県」は35万7800円、「長崎県」は61万2500円と、やはり地域による差があることがわかります。

このような地域差は、人口に対する薬剤師の充足率や求人数をはじめとする需要と供給のバランスが影響しているようです。

その他、薬剤師の初任給や全国の年収ランキングについても詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

3.支給時期や金額は労働条件を確認することが大事

ボーナスの有無や支給時期、金額の算定基準などについては、会社の「就業規則」に記載されている場合があります。

就業規則とは、労働者が企業で働くにあたってのルールや労働条件、給与支給に関する諸規定などの詳細が書かれたものです。

自分の勤めている会社もしくはこれから入社しようとする会社の就業規則を確認し、ボーナスの支給に関する項目にも目を通しておきましょう。

また、自分の労働条件と受け取るボーナスやおおよその年収がわかったら、一般的な薬剤師の平均年収や、薬剤師以外の平均年収などの状況と比較してみて、自身の実力や労働に対する対価としてふさわしいかどうか、一度チェックしてみるのも良いでしょう。

薬剤師の年収や薬剤師以外の平均年収について詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてみてください。

4.派遣社員や契約社員にボーナスはでる?

薬剤師の中には派遣社員や契約社員という働き方も広がっています。

しかし、基本的には派遣社員や契約社員の場合は、ボーナスはでないことがほとんどです。

派遣社員の場合は、そもそも雇用契約自体を派遣会社と結んでおり、派遣先の職場とは結んでいません。そのため、給与も派遣会社から発生しており、職場からはボーナスがでないのです。

また、契約社員の場合は、あらかじめ定められた期間に限定して、職場と雇用契約を結ぶ雇用形態です。

しかしながら、契約社員の場合であっても、ボーナスがでるとい企業は非常に少ないのが現状です。ただし、契約時に交わした契約書や就業規則に、賞与を支給する旨の記載があれば、ボーナス支給が期待できます。

どの現場でも薬学の知識は当然必要ですが、求められる細かなスキルは現場によって異なることを理解しておきましょう。

5.ボーナス以外に正社員や派遣社員で働くメリットはある?

ボーナスは、正社員と派遣社員とを分かつ重要な要素の一つであることがわかりました。

しかし、正社員として働くメリットはボーナスだけではありません。まず正社員は、派遣社員やパート、アルバイトなどの他の雇用形態よりも安定した働き方と収入が得られ、将来的な見通しを立てやすいといえます。

また、昇給もあるため、社内で着実にキャリアを積むことができます。

さらには、就業規定にある福利厚生や各種手当などもすべて受ける権利があり、社会的な地位と信用も手にすることができるのも正社員ならではのメリットです。

その一方で、派遣社員やパートなどの働き方にもメリットがあります。派遣社員やパートとして働く場合は、一つの会社に縛られることがないため、自分らしい働き方ができたり、プライベートやライフワークバランスを重視して働いたりすることができます。

例えば、正社員の場合は残業や休日出勤を求められたり、急に転勤や異動を求められたりすることもありますが、派遣社員やパートであれば、もっと自分に合った職場に変わることもできるのです。

逆にバリバリと稼ぎたい場合でも、派遣社員やパートの時給の方が高いケースも少なくなく、早朝や深夜帯のシフトを選べば、さらなる収入アップを目指すこともできるのです。

ボーナスだけに着目すると、一見正社員の方が高収入で、メリットが大きいように感じてしまいますが、そうとも言い切れないのが現状です。

以下の記事を参考に、パート薬剤師として働いた場合、あるいは派遣薬剤師として働いた場合のメリット・デメリット、そして収入面の違いについてもシミュレーションしてみましょう。

6.ボーナスの支給額をアップしてもらうには

ボーナスの算定基準は会社によってさまざまですが、”基本給×〇ヵ月分”を基本にボーナス支給額を算定することがほとんどです。

したがって、ボーナスの支給額アップを狙う方法としては、「基本給そのものを増やす」あるいは、「〇ヵ月分のところを増やす」の主に2つの方法があります。

「基本給そのものを増やす」ための方法として確実なのは、一つの会社にできるだけ長く在籍することです。一般的に勤続年数が増えれば増えるほど基本給が上がっていくからです。

「令和元年賃金構造基本統計調査」の薬剤師(1,000人以上の企業に勤める男性薬剤師)の年齢別ボーナス支給額(平均)のデータから、25~29歳では平均76万2,900円であったのが、30~34歳では98万3,000円、35~39歳では125万3,800円、40~44歳では117万100円、45~49歳では132万6,500円というように、年齢と共に上がっていく傾向が見て取れます。


しかし、今すぐにボーナス支給額のアップを望むなら、基本給が高い職場に転職する、あるいは、「〇ヵ月分」のところが多い職場へ転職するのも一つの方法です。

薬剤師としての働き盛りともいえる時期に、より条件の良い職場に転職し、その後できるだけ長く働き続けることでより多くのボーナスが受け取れるチャンスが生まれます。

7.新型コロナウイルス感染症の影響は?

ボーナスの支給額は、会社やグループ全体の業績によっても変化することがあります。会社の決算月前後の業績に応じて支給額が決定される「決算賞与」を採用している会社ならなおさらです。

近年は新型コロナウイルス感染症の影響により、人流が減って業績が悪化した産業が増えています。

しかし、薬剤師業界では、調剤薬局を中心に受診控えによって売り上げが減少したというところもあれば、逆に衛生用品や市販薬を求めるお客さんが増えて忙しくなったというところもあり、新型コロナウイルス感染症による影響の出方はさまざまです。

全国チェーンの大手ドラッグストアの中には、特別な賞与を支給するなど、コロナ禍で業務が増えた従業員をねぎらうための工夫をしているところもあります。

もちろん、今後の動向については注視する必要はあるものの、人手不足が懸念される薬剤師にとっては、新型コロナウイルス感染症による経済的な影響はマイナスばかりではないようです。

8.まとめ

薬剤師が正社員として働くなら、ボーナスは年間収入を大きく左右する重要な要素になります。

より多くのボーナスをもらうためには、ボーナス支給額算定の基準になる基本給や昇給のルール、”基本給×〇ヵ月分”といった算定ルールが自分の希望に合った職場を選ぶことが大切です。とはいえ、これらのルールは就業規則にこそ記載されていても、求人情報には詳しく載っていないものです。

転職してから「こんなはずじゃなかった」という失敗をしないためにも、転職先を探すときには専門の転職エージェントを活用することをおすすめします。

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もちろん、ボーナスに関する事前調査や交渉も可能です。転職に役立つセミナーや相談会などにも参加することができますので、ぜひマイナビ薬剤師に登録しておきましょう。



この記事の著者

医学博士、医学研究者

榎本 蒼子

最終学歴は京都府立医科大学大学院医学研究科博士課程卒業。2011~2015年 京都府立医科大学にて助教を勤め、医学研究および医学教育に従事。

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