薬剤師が派遣薬剤師への転職を考える際のポイントは?メリット・デメリットを詳しく解説!

薬剤師 転職

薬剤師の勤務形態として、正社員や契約社員、パート、アルバイトなどのほか、派遣というスタイルもあります。派遣での勤務がはじめての人にとっては、どんな働き方になるのか、どんな待遇なのかなどが気になるところでしょう。

今回は、派遣という勤務形態について詳しく説明するとともに、そのメリットや注意点をお伝えします。

1.派遣薬剤師とは

派遣薬剤師の雇用形態は、あくまでも「派遣」です。派遣会社に登録し、事業所を通して派遣先の企業で働くことになります。

正社員や契約社員などの雇用形態とはさまざまな点で異なります。派遣という働き方について、詳しく掘り下げてみましょう。

1-1.雇用主は派遣会社

正社員であってもパート社員であっても、一般的に雇用主は勤務先の企業となります。しかし、派遣薬剤師の場合、雇用主は登録している派遣会社であり、実際の勤務先に属することはありません。

一方で、業務に関する直接的な指示や管理は派遣先の企業が行うため、命令系統に戸惑うことがあります。

まれに、派遣と出向が同じような意味合いで使われていることがありますが、出向は派遣と違い出向先(派遣先)との雇用契約が結ばれるため、条件は大きく異なります。

1-2.同じ派遣先での最長雇用期間は3年

派遣の場合、労働者派遣法によって派遣先の同一の事業所に対しての派遣可能期間は、最長で原則3年までと定められています(2020年5月現在)。3年経過したあとは、派遣先から正社員として雇用されるか、そのまま契約終了となるかのどちらかです。

1-3.基本的に、派遣先は薬局やドラッグストアが中心

労働者派遣法の規定により、病院や診療所など、医療関係業務に対する薬剤師の派遣は禁止されています。そのため、派遣先の多くは調剤薬局やドラッグストアが中心です。また、管理薬剤師の派遣も業務の性質上、適当でないという理由で認められていません。

しかし、一部例外もあり、紹介予定派遣(派遣先への直接雇用を前提に6か月以内の期間で行われる派遣)、産前産後休業・育児休業・介護休業中の労働者の代替業務においては勤務が可能です。

なお、調剤薬局やドラッグストアでは働き方に大きく違いがあります。

例えば、調剤薬局は患者さんとのコミュニケーションが欠かせないことから、やりがいを感じやすい職場であると言えるでしょう。

しかしながら、処方箋が特定の医療機関に集中してしまうとスキルアップがしにくいというデメリットもあります。

同様に、ドラッグストアにもメリット・デメリットがあります。

給料が比較的高いことや、広い業務を行うことによるマーケティングの知識開発ができることはメリットです。しかし、店舗によっては遅い時間の勤務が求められたり、調剤以外の販売業務を行わなければならないこともあります。

このように、一口に調剤薬局やドラッグストアと言っても、その働き方は多種多様です。

以下の記事では、そんな調剤薬局やドラッグストアの働き方メリット・デメリットについてより詳しくご紹介しています。

病院や企業など、他の就職先の働き方についても記載しているので、転職を検討されている方はぜひご一読下さい!

2.派遣薬剤師のメリット

では、派遣薬剤師として働くメリットにはどのようなものが挙げられるでしょうか。

2-1.働き方が自由で残業も少ない

自身のライフスタイルに合わせた勤務時間や曜日に加え、働く期間に至るまで、自らが選択した条件下で働けるのが大きな特徴です。「こどものお迎えがあるので残業せずに帰宅したい」、「プライベートを充実したいから週4日だけ働きたい」など自由かつ柔軟な働き方が可能です。

基本的に決められた時間の契約範囲内で働くのが前提になっているため、残業を命じられることはほとんどありません。

派遣薬剤師は時給が高いので、雇用側が残業をさせたくないという理由もあるようですが、雇用条件に残業をしないという内容が含まれる場合も多くあります。

また、仮に残業があってもタイムカード管理であり、働いた時間は派遣会社への報告があるためサービス残業となる心配はありません。

2-2.時給が高い

派遣薬剤師は、一般的なパートやアルバイトと比べ、高い時給が設定されているケースがほとんどです。期間が限定されていることや、即戦力となる人材として派遣されるため、スキルや勤務条件に応じた時給が設定されています。

2-3.さまざまな職場で働くことができる

同一勤務地では最長3年までしか働けないという条件がある派遣薬剤師は、周期的に職場が変わることになり、さまざまな職場を経験できるというメリットがあります。

調剤やドラッグストアが中心とはいえ、主に応需する診療科や患者層の違い、企業ごとのルールや設備の違いなど、環境に応じた経験やスキルの幅が広がります。

2-4.サポートしてくれるスタッフがいるので、仕事の悩みを相談しやすい

職場に対する疑問や不満があった場合、派遣会社の専門スタッフに相談できるのも大きなメリットといえるでしょう。

あなたのことを良く知る担当者が職場への質問や交渉などを行ってくれるため、直接派遣先の企業と話し合う必要はありません。気軽に相談できるサポート役がそばにいるというのは、心強く、働きやすい環境をつくれます。

また次の派遣先を見つける際には、あらかじめ担当者に希望の条件などを伝えておけば条件に合った就業先を何点か提案してくれます。自分が職場を探す手間が省けるので、仕事を探しやすいといえるでしょう。

3.派遣薬剤師として働く場合の注意点

派遣薬剤師という働き方は、メリットばかりではありません。注意すべき点についても確認しておきましょう。

3-1.雇用期間が決められている

雇用期間が決められているという派遣の形態は、メリットであると同時に、デメリットでもあります。雇用契約の期限が切れれば、どんなに自分が働きやすい良い職場でも働き続けることはできません。契約が終了する可能性を常に念頭に置きながら、働く必要があるでしょう。

3-2.勤務地を選べない

必ずしも希望の場所での勤務先が見つかるとは言えません。通勤時間や、勤務時間など細かい条件をつけるほど、限定されてしまいます。

運よく希望の職場が見つかったとしても、次の仕事を見つけるのに苦労することも。条件に合ったところが見つかるまで、提案先の企業に無理して通う場合もあるかもしれません。

3-3.柔軟な姿勢が求められる

短いスパンで職場が変わるため、そのたびに新たな人間関係を築き、患者さんとの信頼関係を築かなければなりません。さらに、職場ごとのルールや採用薬剤、取り扱いOTCなどについて、その都度、多くのことを覚える必要があります。

即戦力として期待される派遣薬剤師は、臨機応変に対応できる柔軟性が求められます。

3-4.多忙な職場が多い傾向にある

そもそも、派遣薬剤師を募集している職場は、人手不足の傾向があり、おのずと多忙になる可能性が高くなります。慣れない初日から主力として働かなければならないケースも珍しくありません。

3-5.仕事のない期間や派遣切りの心配

自由な働き方が魅力の派遣薬剤師ですが、求める条件と求人内容が合致しなければ、仕事を得られない場合があります。派遣先が決まらないリスクを負うより、ある程度条件を妥協する必要があるかもしれません。

契約期間が切れたあと、次の仕事がなかなか決まらなければ、年収減になることもあるでしょう。実際に、派遣薬剤師の市場は縮小傾向にあります。

調剤報酬改定が繰り返されるといったような薬剤師を取り巻く環境の変化のなかで、利益の減少もあり、時給の高い派遣薬剤師はできれば使いたくないと考えるのが企業の本音です。

しかし、慢性的な薬剤師不足、急な職員の退職などにより派遣薬剤師に頼らざるをえない場面も少なくありません。正社員やパート薬剤師が確保できたタイミングで、真っ先に経費削減として切り捨てられるのは、多くの場合紛れもない派遣薬剤師です。

今後、薬剤師が充足されていくと、今まで以上に派遣という働き方が厳しくなるかもしれません。

3-6.仕事内容が偏る可能性がある

在宅業務やかかりつけ薬剤師業務など、患者さんと長期に渡り信頼関係を築く必要がある業務は、期間限定で働く派遣薬剤師では担当しづらいところがあります。そのため、調剤と投薬のみを担当するといったルーチンワークに偏りがちです。

3-7.【秘訣】準社員という働き方を知ろう

このように、メリットと同様に注意点も多い派遣社員。一長一短であるがゆえに、派遣社員を検討する前に、他の選択肢を知っておくべきではないでしょうか?

そんな選択肢の一つが「準社員」です。

準社員とは、正社員や契約社員のように労働基準法で定められた雇用形態ではありません。企業が独自に設定している形態です。

企業ごとに設定されているため、勤務条件や待遇は大きく異なります。ただ、基本的に残業は少ないことや、転勤を指示されることがないなど、共通した特徴もあります。

以下の記事では、そんな特徴についてまとめています。選択肢を増やす意味でも、ぜひ目を通していただければと思います!

4.職場別の特徴

派遣薬剤師の仕事は職場によってさまざまです。それぞれの職場の特徴を見てみましょう。

4.1調剤薬局の特徴

業務を効率よく円滑に進めるため、調剤は慣れた薬剤師が担当し、派遣薬剤師は投薬がメインの業務になることが多いです。ですが、在宅専門の調剤薬局の場合、ひたすら一包化や錠剤の粉砕など調剤業務が主なところも。薬局によって派遣薬剤師の活躍の場はさまざまです。

薬剤師の派遣先の企業として多くを占める調剤薬局は求人数が多く、比較的希望している条件に合った職場が見つかりやすいでしょう。

勤務時間や曜日など譲れない条件がある場合は、薬剤師が複数名体制の職場を選択したり、専門的な知識を学びたい場合は、希望する科がある病院やクリニックの近くの企業を絞り込んだりするのも良いでしょう。自分の状況に合った働き方ができ、プライベートを充実したい方にはうってつけの職場となります。

しかし、年間を通してGWなどの祝日、年末年始などのお休みが多いため、月によっては減収になる場合があるのはデメリットと言えます。減収を防ぎ安定した収入を得るため、2つ以上の薬局を掛け持ちしている薬剤師も多くいます。

4.2ドラッグストアの特徴

ドラッグストアは調剤薬局併設の有無がありますが、派遣薬剤師の仕事は一般的な調剤業務及びOTCの接客販売などです。OTCの販売はお客さんの状況をヒアリングし最適なOTCやサプリメントを提案するので、コミュニケーション能力が求められます。

ドラッグストアは全国的にみて店舗数も多く、営業時間が長いことから勤務地や希望時間帯の希望が通りやすいのがメリットといえます。

こうしたメリットを生かして「子どもを迎えに行く時間まで働きたい」、「夜の時間帯だけ集中して働きたい」、「ショッピングセンター内のドラッグストアで働いてみたい」など自分に合った働き方が選びやすい職場といえるでしょう。

場合によってはレジ打ち、品出し、売り場作りなど薬剤師の専門業務以外の仕事にも携わることがあり、薬剤師業務に集中できないことがあるのがデメリットとなります。

4.3病院の特徴

原則、病院内への薬剤師の派遣は「労働派遣法の第四条」 で規制されています。しかし、この法律には例外があります。一定期間勤務後に勤務者と派遣先の双方の同意があった場合に限り直接雇用される「紹介予定派遣」や、正職員が産休、育児休業などで一定の間お休みを取る際の代打としての「産休派遣」は認められています。

病院の勤務時間は8時半~9時始業、17時退勤というスタイルが多く、残業もほぼありません。休日は日曜と祝日のところがほとんど。一般的に正職員は夜勤や当直がありますが、派遣社員にはありません。

よって、夕方以降の時間を有意義に使いたい人や、週末は家族と過ごしたいという人にはメリットのある職場といえるでしょう。しかしながら、病院の求人派遣案件は希少価値が高く人気があるため、募集があったらすぐに埋まってしまうのがデメリットといえます。

5.派遣薬剤師が向いている人、いない人

派遣薬剤師のメリットや注意点を加味すると、向いている人もあれば、他の働き方のほうがあっている人もいることでしょう。それぞれの特徴を見てみましょう。

5-1.派遣での働き方が向いている人

育児や家事、介護などと仕事を両立したい場合、働く時間にも制約があることから、自由に働く時間を決められる派遣薬剤師は最適です。

また、効率よく収入を得たい人にとっては、時給の高い派遣薬剤師なら、短い時間でも高収入を得ることが可能です。フルタイムで働けば、正規雇用された正社員の年収を上回るケースもあります。

そのほか、さまざまな職場を経験したい人にも、派遣という働き方はメリットが多いでしょう。派遣薬剤師は、常に新しい環境で働きたい人や、定期的に職場を変わりたいと考える人に向いています。

5-2.派遣での働き方が向いていない人

一方で、柔軟性がなくコミュニケーションが苦手な人は、派遣での勤務はおすすめできません。新しい環境の繰り返しとなる派遣薬剤師は、コミュニケーション能力や臨機応変な対応が求められるため、条件が合ったとしても、働きにくいと感じることでしょう。

また、良い職場を見つけて安定して長期間働きたいと考えている人にとって、短期間で職場が変わる派遣薬剤師はストレスになるかもしれません。

6.派遣薬剤師のメリット、デメリットを踏まえたうえでの決断を

派遣薬剤師という働き方は、長い目で見れば、将来正社員として働くためのスキルアップに役立つかもしれません。しかし、不安定な要素も多く、少しでも条件に一致しないと感じるのであれば、異なる勤務形態を検討してみるのもおすすめです。

正社員やパートも含めた転職を考えるのであれば、適性に合わせたアドバイスを行うマイナビ薬剤師にご相談ください。

この記事の著者

薬剤師・ライター

黒木 真綾

大学卒業後、大手調剤薬局勤務。その後、大手ドラッグストア勤務を経て、再度調剤薬局にて薬局長(管理薬剤師)として勤務。現在に至る。
薬剤師として約22年働き、そのうち72%の16年間は薬局長として業務に携わる経験を活かして執筆活動を行っている。

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