零売薬局について解説!メリットや今後の課題について
近年、注目され始めている「零売薬局」を、今後の働き先として考えている方もいらっしゃると思います。
さて、零売薬局ですが、そもそも「零売」という言葉に聞き馴染みがない方も一般社会の中では多く、その実態も浸透していないのが現状です。情報も少ないため、転職先として検討しづらい方もいるでしょう。
ここでは零売薬局のメリットや今後の課題について、詳しく解説していきます。
目次
1. 零売薬局の「零売」とは?
零売という言葉を、普段生活の中であまり耳にすることはありません。
零売とは、分割販売とも呼ばれ、購入者が自分の症状を把握できる場合、薬剤師がカウンセリングをおこなったうえで、最低限度の医療用医薬品を処方箋なしで販売できる方法です。
医薬品の販売は、原則として医師の処方箋が必要です。なので、この零売という方法には、一定の条件が必要となります。
2. 零売薬局のメリット
零売薬局から医療用医薬品を購入するメリットはさまざまあります。
購入できる医薬品は「処方箋医薬品以外の医薬品」の中の一部であり、日本の病院で使用されている医療用医薬品の約半数がこれにあたります。
「処方箋がなくてもよい」という点で、購入する患者さんやお客さんへのメリットは大きくなります。
2-1. 受診料がかからない
通常であれば、医療用医薬品を購入する際には、病院やクリニックでの受診が必要となります。これは、医師に診てもらい、処方箋を書いてもらうというステップが必要なためです。
それに対し、零売薬局では薬剤師のカウンセリングを受けることで医療用医薬品を対面販売で購入できるため、「病院などへ受診する」必要がありません。受診をするというステップを踏まないため、受診料を節約することができます。
2-2. 時間を短縮できる
病院などへの受診を必要としないため、病院への予約をはじめ、通院にかかる時間を短縮することができます。
とくに、仕事をしている方は「受診のために仕事を休まなくてはいけない」ということがネックになり、服薬治療に遅れが出てしまう場合があります。
そういう方にとっては、零売薬局を利用し、受診にかかる一連の時間を減らせることは、大きなメリットになります。
2-3. いつでも購入ができる
処方箋には有効期限があるため、医師が処方箋を発行した日から、4日以内に薬局などで薬を購入しなくてはいけません。この有効期限には休日や祝日も含まれるため、受診日とともに薬局に行かなくてはいけない日も限られるでしょう。
零売薬局であれば、処方箋を必要としないため、医療用医薬品をいつでも購入することができます。
2-4. 薬剤師の需要が高まる
セルフメディケーションの観点から、零売薬局の需要が高まり、2020年には一般社団法人日本零売薬局協会も発足しました。
零売には薬剤師による判断が重要視され、専門性も求められています。薬剤師自身が購入者と向き合い、カウンセリングやアフターフォローをおこなっていくなど、専門性を活かすチャンスにもなっていくでしょう。
3. 零売薬局で働く際の注意点
購入を検討する方の中には、「零売薬局」の仕組みをよく分かっていない方も多くいます。
「安く買いたい」「簡単に買いたい」など、ニーズばかりが先立ってしまうと、本来あるべき安全性や薬剤師の専門性が損なわれてしまう場合もあります。薬剤師としての役割と専門性を、薬剤師自身がしっかりと認識することが必要です。
3-1. カウンセリング・服薬指導をしっかりおこなう
零売をおこなう際の条件として、「薬剤師によるカウンセリングや服薬指導」があります。医師からの処方箋がないため、薬剤師に求められる専門家としてのアドバイスや判断が非常に重要になります。
そのため、購入を検討している方から十分なヒアリングをおこない、健康状態を把握し、適切に服薬指導をするようにしましょう。
また、販売したあとに、症状が改善しなかったり、副作用が出てしまった場合の連絡方法や窓口など、相談体制を整えることも必要です。
3-2. 使用経験のない薬に関しては慎重に判断する
基本的に、販売する医薬品は、これまで医師から処方された薬であることが望ましいです。薬の効果や副作用は、人それぞれ異なるため、その薬を以前使用したことがあるかどうかは重要です。
使用経験のない薬を販売する場合には、慎重に判断しましょう。購入者の生活背景やかかりつけ医の有無も確認し、副作用が出た際には医師の診察をすすめるなど、適切に受診勧奨をおこなえることも、薬剤師に求められています。
4. 零売薬局の課題
2020年3月に、一般社団法人日本零売薬局協会が発足しました。処方箋がなくても医療用医薬品が購入できるという点で、安全性への懸念が大きくなっていましたが、協会が発足することで環境整備が進んでいます。
今後の課題を確認していきましょう。
4-1. 安全性への懸念
「零売」と聞くと、処方箋がなくても医療用医薬品を購入できるというイメージが先立つため、安全性への懸念がありました。実際、販売する薬剤師の判断に委ねる部分も大きいため、安全性への懸念は今後も課題であるといえます。
また、零売は、医薬品副作用被害救済制度の対象・補償から外れてしまう可能性があるため、購入者への説明や十分な相談体制、その後の受診勧奨を含む対応などが求められます。
その他にも、薬を使用する方への対面販売が零売の条件となっているため、個人売買を目的とした購入をされないよう、購入前のカウンセリングにおいては、薬剤師として十分な聞き取りや判断をおこなっていくことが必要です。
4-2. 通販などでは購入ができない
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律や一般社団法人日本零売薬局協会が定めたガイドラインでも、対面販売をおこなうことが、零売を実施する条件となっています。
つまり、通販をはじめ、在宅や施設などでの販売も禁止しています。これは、購入する方の健康状態をきちんとカウンセリングし、その方の理解度に合わせた服薬指導などをするためです。また、その後の相談窓口を設ける必要もあるため、通販などでの購入はできないのが現状です。
4-3. 保険適用外である
医師が処方して薬局で購入した医療用医薬品と同じ薬を、零売薬局から購入する場合、零売薬局で販売される医療用医薬品は保険適応外のため、金額が異なります。
価格はそれぞれの零売薬局が設定しているため、処方箋をもとにした医療用医薬品の購入額よりも、安くなる場合もありますが、その反対に高い金額となる場合もあります。
5. まとめ
「零売」は近年、医療費の増大や購入者のニーズを背景に注目が集まっています。安全性への懸念も、2020年に発足した一般社団法人日本零売薬局協会がガイドラインを定めることにより、環境が整ってきている現状です。
今後、新たな薬の販売ルートとしてますます求められ、薬剤師としての専門性を発揮できる場となることでしょう。
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