ボランタリーチェーンとは?薬局は加盟すべき?成功例やメリットも紹介
個人経営の薬局は、大手チェーンの規模拡大や調剤報酬の改定などの影響で厳しい経営を強いられています。
そのような背景の中で、最近注目されているのが、ボランタリーチェーンです。
ここでは、ボランタリーチェーンの仕組みやフランチャイズとの違い、メリット・デメリットなどについて解説します。ボランタリーチェーンの具体例や加盟する際のポイントなども解説しています。
薬局を経営している方に限らず、実際に働く薬剤師さんもぜひご覧ください。
目次
1.ボランタリーチェーンとは?
フランチャイズチェーンは聞いたことがあっても、ボランタリーチェーンはあまり馴染みがない方も多いかもしれません。まず、ボランタリーチェーンとはどのようなものなのか、確認していきましょう。
1-1.ボランタリーチェーンの意味
ボランタリーチェーンとは、独立した事業者が主体的に集まって業務を連携したり、仕入れを共同化したりする事業形態のことです。
ボランタリーには、任意や自発的などの意味があり、ボランタリーチェーンは別名、「任意連鎖店」や「自発的連鎖店」などと呼ばれます。
独立した事業者が自発的に集まることにより、個人経営では得られないチェーンオペレーションのメリットを得ることが可能です。
チェーンオペレーションとは、組織的に仕入れや販売、情報などを管理することにより、組織全体の効率を高めていくことを意味します。
1-2.ボランタリーチェーンの仕組み
ボランタリーチェーンは、独立した事業者の集まりですが、それぞれの加盟店に加えて、加盟店により結成された本部組織が存在します。
本部の基本的な役割は、仕入れの管理や業績把握、経営指導などです。個々の加盟店がそれぞれ仕入れをおこなうと、仕入れコストが高くなってしまいます。しかし、ボランタリーチェーン本部が仕入れを集中管理することで、大規模発注による仕入れコストの削減が可能です。
また、加盟店から消費者の動向や店舗経営の成功事例などの情報を集約・分析し、加盟店へ経営改善のフィードバックをおこないます。加盟店はこれらの恩恵を受ける対価として、入会金や会費を支払ったり、本部活動への協力をしたりします。
参照元:一般社団法人日本ボランタリーチェーン協会/ボランタリーチェーン(VC)とは?
2.フランチャイズとの違い
フランチャイズチェーンとボランタリーチェーンとの違いは、大きく以下の3つがあります。
- 本部の仕組み
フランチャイズチェーンの本部はフランチャイザー企業による独立した本部です。
一方、ボランタリーチェーンは加盟店が協力して本部を結成しています。そのため、ボランタリーチェーンの本部は、加盟店が主体となって本部の運営もおこなうことが特徴です。 - 本部と加盟店の関係性
フランチャイズチェーンは本部と加盟店がそれぞれ一対一で、フランチャイズ契約を結びます。フランチャイズ契約を結ぶことにより、本部が持つ商標を取り扱ったり、経営ノウハウを指導してもらったりすることが可能です。一方、ボランタリーチェーンの場合は、加盟店同士が本部を結成していることから、本部と加盟店が共同で運営します。
- 加盟店同士の関係性
フランチャイズチェーンは加盟店同士のつながりはほとんどありません。なぜ加盟店同士につながりがないのかというと、フランチャイズチェーンは本部と加盟店が一対一で契約をしているからです。一方、ボランタリーチェーンは、加盟店により結成された組織であるため、加盟店同士のつながりがあります。
3.ボランタリーチェーンの具体例は?
ボランタリーチェーンについて理解を深めるために、ここでは実際におこなわれている具体例について紹介します。
3-1.薬局の例
薬局におけるボランタリーチェーンの例です。
ボランタリーチェーンを結成することで、医薬品を共同で一度に大量に仕入れられるようになり、個人で仕入れるよりも仕入れコストの削減になります。
また、加盟店から情報を集めることで地域における医薬品の需要や消費者の動向などを把握して、経営改善をはかることが可能です。
3-2.コンビニエンスストアの例
コンビニエンスストアにおけるボランタリーチェーンの例です。
フランチャイズ契約しているコンビニエンスストアでは、店舗ごとに販売している商品に大きな違いはありません。
一方、ボランタリーチェーンのコンビニエンスストアでは、本部が提供する商品を取り扱いながらも、独自性を打ち出した経営ができます。
また、フランチャイズチェーンのコンビニエンスストアの場合は、売り上げに応じたロイヤリティを支払うことが一般的です。そのため、店舗の売り上げが上がれば、その分、本部に支払うロイヤリティの金額も高くなります。
ボランタリーチェーンの場合は、月に一定の金額を支払うケースが多いですが、月の売り上げによって費用が決まるボランタリーチェーンもあります。
4.ボランタリーチェーンのメリット
ボランタリーチェーンには、主に4つのメリットがあります。各メリットについて詳しく見ていきましょう。
4-1.仕入れコストを削減できる
ボランタリーチェーンでは、個人が仕入れる場合よりも仕入れコストを削減することができます。
医薬品は一般的に一度に大量に仕入れることで、医薬品の卸業者と交渉して、価格を下げられます。
しかし、個人薬局が一度に大量に発注しても過剰に在庫を抱えてしまうことにつながるでしょう。
さらに、売れずに期限が切れてしまうと、仕入れた医薬品が無駄になってしまうかもしれません。
一方、ボランタリーチェーンでは、加盟店が発注した内容を本部が取りまとめて、一度にメーカーや卸業者に発注するため、価格交渉がしやすくなります。
このように個人薬局ではできない大規模発注によるスケールメリットによって、仕入れコストを削減できることがボランタリーチェーンのメリットです。
4-2.加盟店間で情報の共有ができる
ボランタリーチェーンは加盟店同士のつながりがあるため、情報の共有ができます。
顧客に求められている医薬品の需要や売り上げが伸びている他店舗の経営ノウハウなどを共有することで、地域ニーズを踏まえた戦略的に経営がおこなえるでしょう。
例えば、地域で需要が高まっている医薬品の情報がわかれば、いつもよりも多めに医薬品を仕入れておくことも可能です。
このように個人薬局では難しい加盟店同士の情報共有をもとに経営方針を決定できるのは、ボランタリーチェーンのメリットといえます。
4-3.フランチャイズよりも店舗経営の自由度が高い
ボランタリーチェーンは、フランチャイズチェーンと比較すると、店舗経営の自由度が高いです。
フランチャイズチェーンは、フランチャイザー企業がもつブランド力や商標、商品などを扱えますが、その代わりにマニュアルに遵守した経営をおこなわなければならなかったり、指定の商品以外を取り扱えなかったりと、経営の自由度が制限されてしまいます。
一方、ボランタリーチェーンは独立した加盟店の集まりであるため、店舗経営の自由度が高いことが特徴です。
そのため、経営において一部規制される部分はあるものの、取扱商品や店舗の外観・内観などの自由度が高い点もボランタリーチェーンのメリットです。
フランチャイズについては下記記事で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
4-4.地域に密着したサービスを提供できる
ボランタリーチェーンは、加盟店が主体となって本部を結成しているため、各加盟店が地域に密着した独自のサービスで店舗を運営していけます。
個人薬局では、自店で得られる情報をもとにしたサービス提供は可能です。しかし、地域の需要を把握するには、自店から得られる情報だけでは少なく、把握できていない地域の需要に密着したサービス提供は難しいです。
一方、ボランタリーチェーンは前述でも説明した通り、加盟店同士での情報共有ができるため、同じ地域の加盟店と情報を共有して、地域で求められているサービスを把握することができます。
さらに、店舗経営の自由度が高いことから、地域ごとに求められているサービスに対して柔軟に対応できることも、ボランタリーチェーンにおけるメリットの一つです。
地域に密着したサービスという点については、日本ボランタリーチェーン協会もボランタリーチェーンの理念の一つとして掲げています。
参照元:一般社団法人日本ボランタリーチェーン協会/ボランタリーチェーン(VC)とは?
5.ボランタリーチェーンのデメリット
ボランタリーチェーンには多くのメリットがある一方で、ボランタリーチェーンのデメリットは、主に以下の3つです。
5-1.加盟店による知名度アップの効果は薄い
基本的には個人の独立した事業者の集合体であるため、ボランタリーチェーン加入による知名度アップの効果に結びつかない場合もあります。
大手のフランチャイズチェーンに加入すると、すでにあるチェーンの知名度を利用して、ある程度の売り上げを確保しやすくなります。
一方、ボランタリーチェーンはフランチャイズチェーンのように本部のブランド力を活用することが難しく、知名度をあげていくためには広告や口コミを増やすなどの自社によるブランド戦略が必要となります。
5-2.経営方針を自分で決めなければならない
ボランタリーチェーンは店舗の自由度が高い反面、経営方針を自分で決めなければならないため注意が必要です。
フランチャイズチェーンの場合は、マニュアルによって経営方針が決められています。
そのため、経営経験が浅くても、フランチャイザー企業が蓄積してきたノウハウを活かして、経営をおこなっていくことが可能です。
一方、ボランタリーチェーンの場合は、経営方針は個人に委ねられていることが多く、自分で経営方針を決めておこなっていかなければなりません。
ただし、ボランタリーチェーンによっては本部から経営指導を受けられる場合もあります。
5-3.費用がかかる
ボランタリーチェーンに加盟して利用するためには、費用がかかります。主な費用としては、ボランタリーチェーンに加盟する際の入会金や月々の会費などです。
加入するボランタリーチェーンによっては、月々の会費の代わりに売り上げに応じた費用を収める場合もあります。
このようにボランタリーチェーンに加盟して利用するには、費用がかかることを知っておきましょう。
6.薬局がボランタリーチェーンに加盟する際のポイントや流れ
最後に、薬局がボランタリーチェーンに加盟する際のポイントや流れについて確認していきましょう。
6-1.薬局はボランタリーチェーンに加盟するメリットが多い?
医療費が削減されている昨今では、個人薬局がボランタリーチェーンに加盟することにより、医薬品仕入れコストの削減メリットが大きいです。
少子高齢化が進む日本では、年金や医療費などの社会保障費が年々増加傾向にあります。
この状況を踏まえて、行政は社会保障費を抑えるために、医療費の削減などに取り組んでいます。
その結果、調剤報酬の改定のたびに、薬価の引き下げがおこなわれていることはご存じだと思います。
薬価が下がるということは、医薬品卸業者の売上減少につながり、経営が厳しくなります。
このような状況下で、個人薬局が医薬品卸業者に対して有利な取引をおこなうことは非常に困難です。
一方でボランタリーチェーンに加盟すると、まとめて大規模な発注をかけられるようになり、医薬品の仕入れコストの削減ができます。
薬局にとって大きい医薬品の仕入れコストの削減は店舗の利益向上に直結するでしょう。
さらに、他店舗との情報共有や経営指導を受けられるなど、ボランタリーチェーンに加盟するメリットは多いといえるでしょう。
6-2.ボランタリーチェーンを選ぶ際のポイント
加盟するボランタリーチェーンを選ぶ際には、以下のポイントを注目しましょう。
- 加盟による利幅のシミュレーション
- 加盟時の入会金や会費などの加盟コスト
- 店舗までの輸配送や在庫管理
- 人材教育や販売促進などのリテールサポート機能
- 地域で活動している医薬品卸業者との取引対応 など
上記のポイントを確認しながら、ボランタリーチェーンへの加入を検討してみましょう。
6-3.ボランタリーチェーンへの加入方法や流れ
ボランタリーチェーンへ加入する方法は、一般的に以下の流れになります。
- 加入の申し込み
- 入会の審査・決定
- 入会金や会費の支払い
加入したいボランタリーチェーンが決まったら、申込書に必要事項を記入し、店舗の登記簿謄本などの必要書類を用意して申し込みをします。
加入申し込みの方法は、ボランタリーチェーンによって異なるため、ホームページなどから申し込み方法を確認してください。
申し込みが完了したら、ボランタリーチェーン本部によって審査がおこなわれます。審査を無事に通過すれば、加入可能であると判断され、契約に進みます。
その後、入会金や会費の支払いが済めば、ボランタリーチェーンの一員です。
参照元:一般社団法人日本ボランタリーチェーン協会/入会案内・お問い合わせ
一般社団法人日本ボランタリーチェーン協会/正会員入会規定
7.まとめ
ボランタリーチェーンは、加盟店が主体となって仕入れを共同で行ったり、情報を共有したりする事業形態です。
共同で医薬品を仕入れることにより仕入れコストを削減したり、店舗同士で情報共有をおこなうことで地域に密着したサービスを実現したりできます。
フランチャイズチェーンとは異なり、各店舗の自由度が高いこともボランタリーチェーンの特徴といえるでしょう。
一方で、ボランタリーチェーンは加盟による知名度アップの効果が薄かったり、経営方針を自分で決定しなければならなかったりする点など、違いもきちんと理解しておきましょう。
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