薬剤師の将来性は?飽和状態や仕事がなくなる疑問について徹底解説!

薬剤師の将来性は?飽和状態や仕事がなくなる疑問について徹底解説!

薬剤師として特に気になるのが「将来性」ではないでしょうか。

これから薬剤師になってもよいのか、このまま薬剤師を続けてもよいのか、続けるにしても一体どうしたらよいかわからない……など、薬剤師の将来性について一度は悩んだことがある人は多いと思います。AIの登場で薬剤師の立場が危ぶまれたり、近い将来には薬剤師の数が充足して不要になる日がくるなんて恐ろしい噂もあったりします。

今回はそんな不安を感じている方に向けて、薬剤師の将来性について考え、今後のキャリア設計の参考となるような内容をお伝えしていきます。ぜひ、ご自分の将来を考える上での参考にしてください。

目次

1.薬剤師の転職市場について

薬剤師といえば、昔から資格を持っているだけで一生仕事に困ることはないといわれてきました。

売り手市場と言われる状況は今も大きくは変わっていません。

しかし、昔と比べて「薬剤師であれば誰でも就職先が見つかる」という状況から「キャリアやスキル、人柄などを見られる」という時代にシフトしつつあります。

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1-1.有効求人倍率は年々低下傾向

求職者に対してどれくらいの求人数があるかの割合を示す指標として、有効求人倍率があります。

例えば有効求人倍率が10の場合、薬剤師1人が仕事を探そうと考えた場合、約10社の中から選ぶことができるということです。厚生労働省が発表している「一般職業紹介状況」から医師、薬剤師等の有効求人倍率を見てみると

  • 2018年3月・・・5.35
  • 2019年3月・・・4.55
  • 2020年2月・・・3.41
  • 2021年3月・・・2.04
  • 2022年3月・・・2.03

と、有効求人倍率が年々低下しているのがわかります。

参照元:厚生労働省/一般職業紹介状況(令和3年3月分及び令和2年度分)について 参考統計表
厚生労働省/一般職業紹介状況(令和4年3月分及び令和3年度分)について 参考統計表

1-2.地方は、まだまだ薬剤師不足な地域も?

薬剤師不足について語る際、地域差があることについても触れておかなければなりません。人が集まりやすい都市部である東京都のほかに兵庫県、徳島県などは人口あたりの薬剤師数が多い傾向にあります。

一方で、沖縄県、青森県、福井県などの地方や過疎地になると人口あたりの薬剤師数は少なくなる傾向にあります。

都市部への流出による人材不足によって地方の薬局や病院などは深刻に頭を悩ませているため、積極的な採用を行っています。

仕事が欲しい薬剤師にとっては、薬剤師が少ない地域での就職は年収が上がりやすく、仕事が見つかりやすいなどメリットが多いといえるでしょう。

1-3.セルフメディケーションによる薬剤師の必要性

セルフメディケーションとは、「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」を意味します。

近年、高齢化社会が進み平均寿命が長くなってきており、いかに健康な生活を送れるかという点がとても重要になります。

健康に過ごすために自分自身で健康管理をしていても、風邪などで体調が悪くなったり、軽いケガをしたりするのは仕方のないことです。そんな時に医療従事者の中で一番身近で声をかけやすいのが、街中のドラッグストアの薬剤師ではないでしょうか。

体質にあった薬や対処方法の提案、他の薬との飲み合わせなどをチェックし、思わぬ副作用や重複投与を阻止することができます。薬剤師はセルフメディケーションのサポート役として必要不可欠な存在といえるでしょう。

2.薬剤師の需要や飽和状態と言われる理由について

厚生労働省が2022年3月に発表した「医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」では、2020年に薬剤師の数が32万人を突破し、2022年3月に行われた薬剤師国家試験では9,607人が合格しています。

薬剤師の総数は右肩上がりで、2022年薬剤師国家試験の合格者数はコロナ禍に入る前である2018年薬剤師国家試験の9,584人と同等のレベルを維持しています。そのため、コロナ禍に入っても依然として薬剤師人気は続いているといえるでしょう。

薬剤師の総数
2016年 301,323人
2018年 311,289人
2020年 321,982人

参照元:
厚生労働省/平成28年(2016年)医師・歯科医師・薬剤師調査の概況
厚生労働省/平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況
厚生労働省/令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況

全体として求職者が年々増えているものの、求人数は減っていくため、結果的に薬剤師の需要は低下し、雇用は飽和状態に向かいつつあります。
下記は、厚生労省が発表した「一般職業紹介状況について」における「医師、薬剤師等」の数値を抜粋したものです。

年代 求職者数 求人数
2020年 3,734人 12,715人
2021年 4,894人 9,986人
2022年 4,848人 9,855人

参照元:
厚生労働省/一般職業紹介状況(令和2年3月分及び令和元年度分)について 参考統計表 職業別一般職業紹介状況[実数](常用(含パート)
厚生労働省/一般職業紹介状況(令和3年3月分及び令和2年度分)について 参考統計表
厚生労働省/一般職業紹介状況(令和4年3月分及び令和3年度分)について 参考統計表

とはいうものの、一般的な仕事の有効求人倍率(季節調整値)は2022年2月のデータによれば1.21倍となっています。

それに比べれば、薬剤師の2.03倍(2022年3月)という値は需要が高く、人手が足りない状況を示唆しています。

3. 業種別の薬剤師の将来性

この先、薬剤師の数が飽和になり、過剰になる時代が来る……と、どこかで聞いたことはありませんか?実はこれは何年も前からいわれ続けています。

実際のところ、薬剤師の就職や転職において薬剤師の将来はどうなのか、それぞれ4つの業種について見ていきましょう。

3-1.調剤薬局

前出のとおり、薬剤師の求人数は年々減少の一途をたどっています。

一方で、調剤薬局で働く薬剤師は2016年から2020年の4年間で約1.6万人増加しており、徐々にですが有効求人倍率が減っていくといえます。

薬局の従事者
2016年 172,142人
2018年 180,415人
2020年 188,982人

参照元:厚生労働省/平成28年(2016年)医師・歯科医師・薬剤師調査の概況
厚生労働省/平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況
厚生労働省/令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況

2019年に厚生労働省から、薬局事務員の一部のピッキング行為を認める通知があったことも、調剤薬局で働く薬剤師の将来に不安を感じる理由の一つではないでしょうか。

ですが、患者に対して集中してコミュニケーションを取り、薬剤師としての職能を十分に発揮できるようになるといった意味では、むしろ意欲がある薬剤師にとってプラスに働きます。

逆に言うと、AIに取って代わられる仕事しかできない薬剤師は将来、危ういといえます。

そして高齢化社会の到来により、在宅医療がますます広がりを見せています。
薬剤師の能力は在宅医療でこそ充分に発揮でき、患者や医療従事者にとってもキーパーソンとなるでしょう。

また、2019年11月に厚生労働省で制定された「改正医薬品医療機器等法(薬機法)」に基づき、薬局は3つの役割に分類されています。

  • 域連携薬局(地域密着型で在宅医療などに対応)
  • 専門医療機関連携薬局(高度薬学管理型で抗がん剤など特殊な薬の対応)
  • 普通の薬局(上記どれにも属さない)

このように、薬剤師に求められるものは、より専門化、多様化、細分化されています。自分のスキルを常にブラッシュアップし、さまざまな変化についていけるような薬剤師であれば、調剤薬局での将来は明るいといえます。

「地域連携薬局」や「専門医療機関連携薬局」について詳しくは下記記事をご覧ください。

参照元:厚生労働省/医師・歯科医師・薬剤師統計(旧:医師・歯科医師・薬剤師調査):結果の概要

調剤薬局の求人をお探しの方は、こちらをご覧ください。
> 調剤薬局の薬剤師求人を見る


3-2.ドラッグストア

日本チェーンドラッグストア協会によると、ドラッグストア業界は着実に成長を続けており、2020年度には売上高は7兆2,000億円を突破、店舗数は22,000店舗を超えました。対前年比の売上高の伸び率は約6.6%となっています。

ドラッグストア各社の成長の要因はそれぞれですが、店舗数の増加が大きなウエイトを占めます。2022年の売り上げランキング10社における店舗の増加数(対前年比)の平均は116店舗です。

このことから、各社シェア拡大のため活発的に店舗数を増やし、成長、増収に結びつけることに成功したことがわかります。

ドラッグストア業界では、こうした店舗数の増加に伴い、調剤併設型の店舗も増えたため、薬剤師の需要は高まっている状況です。

また24時間営業であることも多いため、特に薬剤師の人員確保が難しくなっています。そのため企業の将来性はもちろん収入面も期待できるでしょう。

また、新型コロナウィルスの影響で、今後ますますお客さまの予防意識が高まり、セルフメディケーションの実践のためにドラッグストアの利用が増えることが予想されます。そのため調剤併設型の薬剤師には、調剤と共に一般薬の知識や栄養など幅広い知識が期待されるでしょう。

ドラッグストアの求人をお探しの方は、こちらをご覧ください。
> ドラッグストア(調剤併設)の薬剤師求人を見る
> ドラッグストア(OTCのみ)の薬剤師求人を見る

3-3.病院

病院で働く薬剤師の将来は比較的明るいといえるでしょう。最先端の医療に触れることができるということで、薬学生や薬剤師にとって病院への就職は人気です。

専門薬剤師の資格取得の条件が整っている環境なので、感染症専門薬剤師や、がん専門薬剤師などの認定薬剤師も増えています。

高齢化社会が進む中で専門的なスキルやコミュニケーション能力を持った薬剤師の価値は高まります。2012年に薬剤師の病棟業務が評価され、「病棟薬剤業務実施加算」が新設されました。

この影響により薬剤師の需要が増え、病院での薬剤師数が増えています。2020年の病院薬剤師数は55,948人で、2018年と比較して3.3%増加しています。

今後病棟での服薬指導などの業務がますます増えていくことでしょう。

病院の求人をお探しの方は、こちらをご覧ください。
> 病院・クリニックの薬剤師求人を見る

参照元:厚生労働省/令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況

3-4.製薬企業

製薬企業に関しては以前よりも厳しい状況が続いています。

なぜかというと、製薬会社関連の勤務者の数が2016年から2020年の4年間で2,980人減っているからです。

医薬品関連企業の従事者数
2016年 42,024人
2018年 41,303人
2020年 39,044人

参照元:厚生労働省/平成28年(2016年)医師・歯科医師・薬剤師調査の概況
厚生労働省/平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況
厚生労働省/令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況

とりわけMRの減少が顕著で、2021年のMR白書によると2016年度のMR数63,185人が2020年度には53,586人と9,599人減りました。

理由としては、国の後発医薬品使用促進が後押しになり、後発品のシェア拡大により新薬が出づらくなったことがあげられます。

いまは、特許が切れればすぐに後発品に切り替わってしまう時代で、後発品をプロモーションしてもほとんど意味をなさず売り上げに結びつかないのです。その結果、MRの仕事が減ってきています。

また、薬価改定による利益率の影響が大きく、今後さらに市場は厳しくなってくると考えられます。

製薬企業の求人をお探しの方は、こちらをご覧ください。
> 一般企業(管理薬剤師:商社、卸、メーカー、物流など)の薬剤師求人を見る

4.薬剤師の働く環境の変化

調剤や薬剤監査の自動化や機械化など、薬局内の環境の変化や調剤報酬改定などの制度変化は、薬剤師がこの先働く上で避けて通れないものです。

薬剤師を取り巻く変化について細かく見ていきましょう。

4-1.登録販売者の需要増加

薬剤師にとって登録販売者は、薬剤師業務をサポートしてくれる頼りがいのある存在です。OTC販売では、第1類医薬品以外の一般用医薬品を取り扱うことができます。

そのため薬剤師の負担が減り、本来の専門的な業務に集中することができます。
薬剤師より登録販売者の方が安く雇えるため、ドラッグストアやスーパーなどで登録販売者の需要が増加しています。

それにより、2019年度までは登録販売者の受験者数は増加の一途をたどっていました。

2020年度は、新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的に、自治体によっては他の都道府県からの受験を制限したり、試験の日程を延期したりしたため、総受験者数は2019年度と比較して約1.2万人減少しました。

このようにコロナ禍で一時的な減少は見られたものの、2021年度は他県からの受験を制限する自治体があったにも関わらず、受験者数および合格者数が前年よりも大幅に増加しています。

2021年8月には「2分の1ルール」が撤廃されたため、今後も登録販売者の需要は増加していくことが期待されます。

参照元:厚生労働省/これまでの登録販売者試験実施状況等について
厚生労働省/令和元年度登録販売者試験実施状況
厚生労働省/令和2年度登録販売者試験実施状況
厚生労働省/令和3年度登録販売者試験実施状況
厚生労働省/ 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則等の一部を改正する省令の施行について(販売制度関係)
厚生労働省/医薬品の販売制度

4-2.ファーマシーテクニシャン制度について

現在、日本ではファーマシーテクニシャン制度は認められていません。

欧米などでは一般的に取り入れられており、錠剤のピッキングや事務的な作業など専門的な知識がなくてもできる業務を担っています。

そのため、通常の雑務から解放され、薬剤師が本来の職能を発揮できます。2019年4月に厚生労働省から発表された「調剤業務のあり方について」という通知は、薬局事務員のピッキングの一部を認めるという内容でした。

もちろん、最終的に薬剤師が管理するという条件つきです。

この通知により、公に薬剤師の調剤業務の負担が軽減されることになり、薬剤師業務が対物から対人へと大きく変化を遂げたことになります。

参照元:厚生労働省/調剤業務のあり方について

4-3.6年制薬学教育施行による変化

2006年度から制度が変更になり、薬剤師になるための薬学教育の修業年限が4年から6年に延長されました。

これにより、5年の時に病院と薬局で約6ヶ月以上にわたる実務自習を履修することが義務づけられました。

医療の進歩や医薬分業の進展など環境が変化する中、知識や技術に加えて豊かな人間性や、問題解決力、そしてコミュニケーション能力などを身に着けた薬剤師の育成が必要とされているのです。

そして、このようなスキルを持った6年制の薬剤師が毎年誕生し活躍しています。

参照元:文部科学省/薬学教育制度の概要
厚生労働省/薬学教育6年制導入と今後の展望

4-4.育児や時短など、働く環境は変化している

厚生労働省が発表している令和2年(2020年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況を見ると、女性薬剤師の割合は61.4%となっています。

他職種と比較して女性の割合が比較的多い薬剤師ですが、近年ワークライフバランスが重視されるようになり女性の社会進出と共に働き方も変容してきています。

それに伴い、子育てのために、働くことが難しい人のため時短勤務や保育施設の提供など、職場の環境は整備されつつあります。

働きやすい環境を整えることで、人材不足が解消されるのなら企業にとっても好ましいことといえるでしょう。

5.薬剤師の”仕事がなくなる”は本当?

今まで薬剤師の市場や将来性について紹介してきました。一方で、巷では「薬剤師の仕事がなくなる」と聞いた方も少なくないでしょう。

ここでは、「薬剤師の仕事がなくなる」と言われる理由について深堀していきます。

5-1.薬剤師の仕事がなくなると言われる理由

「薬剤師の仕事がなくなる」と言われる理由については諸説考えられますが、AIやITの高度化による業務の自動化や、リフィル処方の導入による業務の簡易化によって薬剤師の業務量が減ることを心配する声が主なところでしょう。

結論としては、実際はどれも薬剤師の仕事をなくすものではなく、より高度な業務を効率良く行うためのツールに過ぎないため、心配しすぎるよりも上手な付き合い方を模索することの方が大切でしょう。

5-2.AIに取って代わる業務

AIやロボットは、正確性が高い上に学習能力もあるため、多くの業種で非常に期待されています。例えば、調剤業務や処方解析、相互作用のチェックや医薬品の在庫管理などはAIが得意とするところでしょう。

AIは人為的なミスを防ぐための心強いパートナーとなり得ます。一方で、患者さまがどんな痛みや苦しみを感じているか把握したり、怪我や病気に対してどう向き合っていけばよいのかなど患者さまに合わせてアドバイスしたりするような仕事は、AIにとっては苦手分野です。

AIに薬剤師の仕事を全て取られるということを心配する必要はなく、将来はAIにできることはAIに任せた上で、人間は「相手の気持ちに寄り添い、心情をくみ取って言葉を返すなど人間しかできないことや得意なことに集中する」といった役割分担が求められることになるでしょう。

5-3.処方箋の電子化やオンライン診療など進むIT化

IT化によって処方箋の電子化やオンライン診療などの医療を取り巻く環境が変わってきています。

少子化の傾向は今後も歯止めがきかず、2025年には団塊の世代が後期高齢者になるなど高齢者の数は急激に増加するでしょう。これは、医療や在宅医療のニーズがさらに加速し、医療従事者の負担が増えることを意味します。

IT化により医師や薬剤師の負担を軽減し、生産性の向上や働き方の改革を推し進めることは、もはや必要不可欠なことといえるでしょう。

さらにコロナ禍に入ってからは、オンライン診療を実施している医療機関が増えてきており、従来の予想よりも早くIT化が進んでいます。

IT化により薬剤師の業務量や需要が減るというよりは、来たる超高齢化社会に薬剤師が適応するための頼もしいツールとして使いこなすことが大切です。

参照元:厚生労働省/厚生労働白書
厚生労働省/今後の高齢化の進展

5-4.リフィル処方箋の導入

リフィル処方箋とは、一定の期間、医療機関を受診しなくても繰り返し使用できる処方箋のことです。

2022年度の診療報酬改定でリフィル処方箋の導入が正式に決まりました。「令和4年度調剤報酬改定の概要(調剤)」では、「症状が安定している患者について、医師の処方により医師及び薬剤師の適切な連携の下、一定期間内に処方箋を反復利用できる」としています。

医師の負担が減るイメージが先行しているため、薬剤師の仕事がなくなってしまうと危惧している方もいらっしゃいますが、薬剤師の負担は逆に大きくなることが予測されます。

理由として、医療機関への受診回数が減れば、薬を小分けにして薬局で購入しようとする患者が増える可能性が考えられます。

また、医師の代わりに患者さまの経過観察を行うなど、薬剤師の業務の幅が広がり、これまで以上に高い薬学的知識と判断能力が求められるようになるでしょう。

参照元:厚生労働省/令和4年度調剤報酬改定の概要(調剤)

2022年度診療報酬改定やリフィル処方箋で薬剤師の業務にどうかわるか興味のある方は関連記事をご覧ください。

>第1回 2022年度診療報酬改定で薬剤師業務はどう変わる? 改定の全体像と背景を読む

6.自身の「薬剤師としての将来性」を高めるには

少し厳しいことを言うと、今後スキルアップをしていかなければ薬剤師としての将来を保証できるものは何もありません。

今までどおりの仕事をしていればもちろん楽ですが、新しい知識やスキルを学ぶことで自分自身の成長にも繋がりますし、意識を高く持つことは周りからの信頼に繋がります。将来の自分のために、いまからできることをお伝えします。

6-1.専門性をさらに磨いて「認定薬剤師」になる

専門性の高い資格を持っている薬剤師はニーズがあり、向上心があると判断され採用されやすいでしょう。

認定薬剤師の上位資格である一歩踏み込んだ知識やスキルを持つ専門薬剤師や、認定・専門薬剤師を育てるための指導薬剤師はさらに需要が高いといえます。

まずは質の高い知識とスキルを獲得し学び続け、認定薬剤師の資格取得を目指しましょう。

6-2.マネジメント能力を磨いて「管理薬剤師」として働く

今までは、管理薬剤師になるために特に必要な要件はありませんでした。しかし、令和元年の「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等(薬機法)の一部を改正する法律」の公布により、管理薬剤師になるにはそれなりの能力や経験が求められるようになりました。

管理薬剤師になるための要件や働き方には一定の条件があるため、資格や条件をしっかりと確認しておきましょう。また、管理薬剤師では管理・指導が適切にできるマネジメント能力も必要とされています。

参照元:厚生労働省/令和元年の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)等の一部改正について

管理薬剤師について詳しくは下記記事をご覧ください。

6-3.コミュニケーション能力で高レベルの「かかりつけ薬剤師」に

コミュニケーション能力があれば、患者さまに対して丁寧にかつ正確に対応でき、満足度の高い医療を受けてもらうことができます。一人ひとりに寄り添い、温かいコミュニケーションを取ることでお互いの信頼関係が深まり、今まで以上に質の高い医療を提供できます。

また、かかりつけ薬剤師になるためには「薬局勤務経験が3年以上」「同一の薬局で1週間に32時間以上勤務していること」といった要件を満たす必要があります。実践を積んで、患者さまに指名されるほど高レベルの「かかりつけ薬剤師」を目指しましょう。

かかりつけ薬剤師について詳しくは下記記事をご覧ください。

6-4.高齢化社会により在宅医療もできる薬剤師の需要も高まる

政府が医療費削減のために入院ベッド数を減らす政策を行っており、今後は徐々に減っていく予定です。

団塊の世代が75歳を迎える2025年には、ベッド数が不足することが予想されます。急性以外で入院が必要にも関わらず、退院せざるを得ないような患者さまが増加する可能性があります。

このような理由から、在宅医療の需要が高まることは確実でしょう。

そのため、在宅医療の経験とスキルがある薬剤師は重宝されます。

6-5.グローバル化に備え外国語のスキルをアップ

外国人観光客や日本で暮らす外国人の増加により、語学ができる薬剤師の価値は高まっています。

都市部をはじめ日本の各地で語学に堪能な薬剤師は不足していると考えられます。英語や中国語など、外国語ができる薬剤師はこれからも重宝されるでしょう。

外国の方にも安心して薬を使ってもらうため、外国語のスキルアップにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

7.薬剤師としてのあなたの将来の可能性を一緒に考えます

将来、薬剤師として活躍していくために、大切なのがキャリア設計です。

現状に不満があり、もっと自分の能力を高められる職場へと転職を希望したいという人もいるのではないでしょうか。

しかしながら、ただ何となく毎日の仕事に追われている、仕事を給与や待遇だけで決めている、転職すればキャリアアップになる……などと、単純に考えて行動するのは危険です。

しっかりと未来を見据えた転職活動を行うことが大切です。

7-1.転職を繰り返してしまうと年収が下がってしまう場合がある

「仕事が嫌になった」「人間関係に疲れたから」ということで転職を重ねる薬剤師は非常に多いです。

有効求人倍率も高く、資格さえあれば仕事が見つかる確率が高いため、上記のような理由での転職も少なくないのです。

ですが採用側からすると、何度も転職を繰り返している人に対して良いイメージを持ちにくいです。「本人に問題があって仕事が続かないのではないか」、「またすぐに辞めてしまうのではないか」などネガティブな印象を持つ場合もあるでしょう。

いくら経験とスキルがあったとしても、転職を繰り返していること自体がマイナスとなり年収が下がる可能性もあります。

できるだけ長く同じところで勤める方が、年収の交渉をするときにプラスに働くこともあります。

一方で、「転職回数は3回まで」「回数を重ねると落ちる」という話もよく耳にするのではないでしょうか。転職がプラスなのか、マイナスなのか、実際のところは転職先の職場と転職理由やその人次第といったところがあり、一概にはいいきれません。

ただ、転職の時に最も大事なのは「転職理由」です。まずは転職の理由を明確化して、具体的な退職理由と志望動機を考えましょう。ネガティブな理由ではなくポジティブな理由であれば、マイナスに働くことはないでしょう。

また、「転職を重ねたことで経験と知識を豊富に身につけている」と判断されれば有利な条件へと変わります。

今後のキャリアにおいて転職がどのように影響するのか、よく検討してから決めることが大切です。

7-2.将来を見据えた相談もキャリアアドバイザーにお任せ

日本における薬剤師の姿は、取り巻く環境の変化によって近年ますます多様化してきています。

仕事を単にこなしているだけでは将来は危ういかもしれません。

大切なことは「どんな薬剤師に成長したいか」を明確にすることです。この過程において転職が大きな意義を持つことも多いです。

しかし、独りよがりの判断では情報の不足や偏りにより失敗することも少なくありません。

失敗し後悔しないためにも、転職市場を知り尽くしたキャリアアドバイザーにお任せした方が得策でしょう。

自分のキャリアがよくわからない……という人もプロの目線でアドバイスをもらうことができます。

マイナビ薬剤師では薬剤師転職のプロが相談に応じ、あなたに合ったキャリアプランを一緒に考え、最適な職場を見つけるお手伝いをさせていただきます。

もし、薬剤師の将来が不安という方は、ぜひ一度マイナビ薬剤師までご連絡くださいませ!

8.まとめ

薬剤師の将来性についてご紹介してきました。
IT技術の発達やAIの台頭で薬剤師の立場が危ぶまれたり、近い将来には薬剤師の数が充足したりするかもしれないと一度は不安を覚えた方も多いでしょう。

コロナ禍に入り、オンライン診療を中心にIT化が促進され薬剤師の業務を取り巻く環境は大きく変化してきています。

しかし、薬剤師の業務は人の健康に関わるものであるため、需要が大きく減ることはなく今までと同じペースで薬剤師数は増え続けています。

薬剤師が高度な知識と技能を持ったプロフェッショナルとしてさまざまな業界での活躍を期待されていることは間違いありません。

薬剤師の将来性を心配することはもちろん大切です。しかし、予測不可能な社会で活躍し続けるには、常に社会の変化に耳を傾け、適応し続けられるよう努力し続けることが今まで以上に大切になってくるでしょう。

この記事の著者

メディカルライター・薬学博士

菊池 和夫

薬剤師免許を取得後、製薬会社2社で研究開発部門の業務を幅広く経験。医療・健康分野に関する記事の執筆にも多数携わる。 薬機法のリーガルチェックや医療翻訳、メディカルライティングを得意とする。

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