薬剤師国家試験へ向けた勉強方法とは-継続のコツや流れについても解説

薬剤師国家試験へ向けた勉強方法とは-継続のコツや流れについても解説

薬剤師の国家資格を取得するには、必要な教育課程を修了した後に国家試験に合格する必要があります。国家試験の合格率はおおむね7割程度となっており、大学に6年間在籍して勉強に集中できる環境でも、3割は不合格となる難関試験です。
この記事では、薬剤師国家試験に向けた基本的な勉強の流れや方法、そして合格には欠かせない継続のコツなどについて解説します。

1.薬剤師国家試験とは

薬剤師国家試験とは、薬学部の教育課程を修了した者を対象とした資格試験です。医療従事者としての倫理観・使命感といった基本的な姿勢はもちろん、薬学に関する全領域の知識、医療現場における実践的な知識や技能、態度が体系的に習得しておかなければなりません。

1-1.試験は毎年2月頃

薬剤師国家試験は年に1度、毎年2月頃に実施されます。近年は2月の第3週目の土日におこなわれました。第106回試験は2021年2月20日(土)・21日(日)、第107回試験は2022年2月19日(土)・20日(日)、第108回試験は2023年2月18日(土)・19日(日)に実施されています。
試験会場は例年、北海道・宮城県・東京都・石川県・愛知県・大阪府・広島県・徳島県・福岡県の9か所で実施されています。

参照元:厚生労働省/第106回薬剤師国家試験問題及び解答
参照元:厚生労働省/第107回薬剤師国家試験問題及び解答
参照元:厚生労働省/第109回薬剤師国家試験

1-2.試験の出題範囲

薬剤師国家試験は必須問題試験(90問)、一般問題試験(255問)に分類されます。

必須問題試験は「物理・化学・生物」、「衛生」、「薬理」、「薬剤」、「病態・薬物治療」、「法規・制度・倫理」、「実務」の7領域からの出題です。
一般問題は「薬学理論問題(105問)」と「薬学実践問題(150問)」にさらに分類され、実務に関する単独問題や各領域と実務を合わせた複合問題が出題されています。

複合問題は実践的な問題抽出・解決能力が求められ、選択肢の中から最も適切なもの、最も不適切なものを選択する問題も出題されます。
出題範囲の領域は相互に関係しているので、どの領域もまんべんなく習得しておく必要があります。

参照元:厚生労働省/新薬剤師国家試験について

1-3.合格の基準

平成30年(2018年)8月に厚生労働省から『「新薬剤師国家試験について」の一部改正について』にて、下記のように発表されています。

以下のすべてを満たすことを合格基準とすること。
(なお、禁忌肢の選択状況を加味する)
①問題の難易を補正して得た総得点について、平均点と標準偏差を用いた相対基準により設定した得点以上であること。
②必須問題について、全問題への配点の70%以上で、かつ、構成する各科目の得点がそれぞれ配点の30%以上であること。

つまり①のとおり、合格の総得点は、毎年その難易度に応じて異なります。
ちなみに2023年の第108回試験の合格基準では、全問題の得点が470点以上(690点満点)でした。
その上で②のとおり足切り基準が、必須問題を70%以上かつ、各科目を30%以上取らなければならないということになります。
さらに禁忌肢の選択状況が加味され、合格基準以上に禁忌肢を選択してしまうと、総得点で合格基準に達しても不合格となります。ただ禁忌肢は、それほど心配する必要があるものでなく、薬学部で学び、医療人として良識がある人であれば、通常選ぶことのない選択肢と言えるでしょう。2023年の第108回試験の合格基準では、禁忌肢問題選択数は2問以下でした。

2.薬剤師国家試験に向けた勉強の流れ

薬剤師国家試験は年に1度しか実施されないため、試験日に標準を合わせた学習が必要です。出題範囲が膨大な上、暗記が必要な分野も多いので、効率よく学習を進める必要があります。薬剤師国家試験に向けた勉強の流れについては次のとおりです。

2-1.試験内容や期日を把握する

効率よく試験勉強を進めるには、まずは試験の試験内容や期日を把握しておきましょう。薬学部の授業や臨床実習では、薬剤師として働くためのさまざまな知識・スキルを学びますが、学習する内容が広いため、全てを復習すると膨大な時間を要します。そのため、全領域をまんべんなく勉強するのではなく、出題傾向の多い領域に時間をかけて勉強しましょう。

出題傾向については、参考書や過去問題を解くことでおおむね把握できます。また、厚生労働省が発表する試験要項も必ず目を通しておきましょう。

2-2.逆算してスケジュールを立てる

試験対策は、試験日から逆算してスケジュールを立てていきましょう。薬剤師国家試験は例年2月に実施されるので、その年の初めまでには模擬試験で合格基準に到達する学力が必要です。
現在の学力を考慮し、どれくらい勉強時間を確保すれば合格基準を達成できるのかスケジューリングしましょう。
国家試験に向けての対策は、試験日の半年~1年前から本格的に準備が必要です。大学の定期試験で順調に点数を取れていれば問題ありませんが、学力に不安があるのなら早めに国家試験の対策に取り掛かっておきましょう。

なお、国家試験の対策は、学校や就職に関するスケジュールも加味しておきましょう。例えば、第Ⅰ期の開始は4年次の2月下旬以降、第Ⅳ期の終了は5年次の3月まで臨床実習が入り、その間は試験対策が難しくなります。また、6年次の秋には就職活動が本格化するため、就職試験や面接対策も行わなければなりません。こうした学校や就職活動で試験対策が難しくなる時期があることを見込んだ上で、スケジュールを立てるようにしましょう。

2-3.過去の問題集を解く

国家試験の対策は、過去の問題集を解いて出題の傾向をつかむことが重要です。遅くとも5年次の秋~冬には過去問題を一度解いておき、暗記が必要な教科や苦手な領域を把握しておきます。

あらかじめ問題を解いておけば「勉強にはこれくらいの時間がかかりそう」と必要な学習時間をおおよそ予測できますが、試験まで残り日数が少ないと取り返しがつきません。
まずは2~3年分の過去問題を解いておくと自分の苦手な領域や問題を把握できるので、効率よく試験勉強を進めることができます。

薬剤師の国家試験は、過去の類似問題が再出題されるケースがよくあります。そのため、最終的には7年分の過去問題を3~5回繰り返して解いておくと出題傾向がよくつかめるでしょう。

2-4.繰り返し、習慣化する

国家試験の勉強は「問題を解く」→「間違えた問題を復習する」の2ステップを繰り返します。間違えた問題の解答だけを暗記するのではなく、間違えた問題の前後の知識も復習しておくことが重要です。

勉強の方法を確立したら、毎日勉強できるよう「習慣化」することも大切です。できれば、実際の試験時間に合わせて勉強を実施しましょう。当日は朝(9:30分頃)から試験が開始されます。本番の環境に慣れるために、夜遅くに勉強するのではなく朝からの勉強を習慣化することが大切です。

3.薬剤師国家試験の勉強方法

薬剤師国家試験の勉強を始めるという方は、どうやって勉強したらいいのか分からないという方もいるはず。国家試験は大学の定期試験とは違い、膨大な範囲を勉強する必要があるため、効率よく学習を進めていくことが必要です。
薬剤師国家試験に合格するための具体的な勉強方法を紹介します。

3-1.参考書を活用する

参考書を一度通読し、一通り読み終えたらまず問題を解き、出題の傾向をつかむとともに分からなかった問題の分野を参考書で再度読み返して知識を深めていきましょう。

参考書の内容は、特に「重要な部分や語句」「引っ掛かりやすい部分」を中心に学習していくことが大切です。参考書の赤色で強調されている部分や「重要な語句」と記述されている部分は、周辺の関連情報も含めて確実に理解を深めておきましょう。

通読のフェーズが終わり、参考書の内容を定着させたい時期になったら、過去問題を解くだけでなく、知識をアウトプットさせることが重要です。アウトプットの方法としては、参考書を見ながら、ノートに書き込んだり、人に教えたりするなどがあります。

3-2.問題の出題傾向と対策をまとめる

頻出問題や苦手な問題は、ノートに出題傾向と対策をまとめましょう。何度も間違えた問題や参考書を読んでも理解できなかった部分はテキストでさらに深掘りし、周辺知識も含めてノートにまとめます。特に苦手な部分は、科目別でノートを分けるだけではなく、同じノートに分からない部分をまとめることで、科目を横断して苦手な部分の知識を深めることができるでしょう。

3-3.問題集を解いていく

薬剤師国家試験は、出題の傾向をつかむことが重要です。そのため、過去問を解いてどのような問題が出題されるのか全体像を把握しましょう。2~3回分の過去問を解くと、出題傾向や得意な分野・苦手な分野が分かってきます。

次に、間違えた問題や理解が深まっていない部分を学習していきます。特に出題傾向が多い領域を中心に問題を解いていきましょう。よく出題される分野に時間をかけて学習することで、点数をとりやすくなります。

また、最近は暗記だけで解ける問題だけでなく、「考えさせられる問題」も増えている傾向があります。問題に多く触れておくことで、応用問題に対応できる力も身に付けていきましょう。

最後に問題を解く練習は制限時間を設定して、テスト形式で学習する方法も有効です。問題を一通り解く集中力や時間配分の練習になるので、6年次の春頃にはテスト形式の学習を頻繁に取り入れてください。

3-4.付箋やメモにまとめていく

問題のポイントやよく間違える問題、暗記が苦手な部分は、すぐに付箋やメモにまとめておくと、自分の弱点を可視化できます。付箋やメモは一冊のノートにまとめて、時間があるときに繰り返し学習しましょう。せっかく付箋やメモにまとめても、後から読み返さないと意味がありません。自分でまとめた文章は、後で振り返りやすい状態にしておくことが大切です。

また、薬剤師国家試験は時事問題が出題されることがあります。第99回の国家試験では、微小粒子状物質(PM2.5)が社会問題となったことを受けて出題されました。時事問題は参考書や問題集には収録されていないので、薬剤や公衆衛生などに関して気になるニュースがあれば、付箋やメモに書き残しておくと、時事問題に対応しやすくなります。

参照元:参議院/PM2.5をめぐる問題の経緯と今後の課題
参照元:環境省/微小粒子状物質等専門委員会(第9回) 議事録

4.勉強を継続させるためのコツ

国家試験の本格的な勉強期間は半年から1年ほどの長丁場です。1日に集中できる時間は限られているので、毎日コツコツと勉強を続けられる「継続力」が重要です。そこで、勉強を継続させるための具体的なコツを紹介します。

4-1.分からないままにしない

問題を解いている際、分からない部分はすぐに解決するよう心がけましょう。分からないまま後回しにしてしまうと、自分の弱点を克服するせっかくの機会を失ってしまいます。分からないままにせず、参考書で調べたり、友人や先生に聞いてみたりしてその場で解決するように学習を進めていきましょう。

4-2.勉強方法をいくつか試してみる

勉強の方法はいくつかあるので、自分に合った勉強方法を試してください。例えば、脳科学を活用した「時間帯別勉強法」は、脳が最も活発に働く起床後3時間に計算問題や実務問題といった負担の掛かる勉強をして、記憶が定着しやすい就寝前に暗記をするといった勉強法です。朝に集中して勉強できる方は試してみましょう。

「参考書の内容を理解できない」という方は、参考書の内容を効率よくインプットする方法として、「7回読み」という方法があります。同じ本を反復して読むことで、知識をより定着させることが可能です。7回読みについての具体的な方法は以下の記事で詳しく解説しています。

4-3.時間配分を考えて解いていく

薬剤師国家試験は限られた時間内で問題を解いていくため、時間配分を考えて問題を解く練習も必要です。
例えば、1日目に行われる必須問題試験は、90分間の試験時間で90問出題されるので1問につき1分ペースで回答していく必要があります。最後に見直しをする時間を含めて、試験時間内に回答できるか確認してください。
しかし、自分だけで実際の試験と同じように1日分の問題を解くのは大変なので、模擬試験を活用して時間配分をチェックするとよいでしょう。

4-4.暗記カードやシートを使う

生物や衛生、薬理・病態、そして薬物治療・法規は、暗記が必要な問題が多い科目です。逆に言えば、暗記さえできれば得点につながりやすい科目となるので、暗記問題は取りこぼしのないよう学習していきましょう。
暗記には暗記カードや赤・緑のシートで消えるペンが有効です。問題集や参考書によっては重要事項をシートで見えなくするタイプもあるので、うまく活用してください。
最近は暗記カードのスマホアプリ版もあるので、通学や休憩中のスキマ時間を活用して、反復して学習しましょう。

4-5.勉強する時間を決めて習慣化する

学習を習慣化するには、勉強する時間を決めておくことが重要です。「10時には勉強を開始する」「夕食後は2時間勉強する」といった勉強を始める時間・勉強時間をあらかじめ決めておくと、勉強を習慣化しやすくなります。
やる気がでない日は、5分でもいいから勉強しておき、勉強しない日をつくらないよう意識しましょう。

4-6.集中して勉強できる場所を作る・見つける

効率よく勉強を進めるには、集中して勉強できる場所が必要です。自宅はテレビやゲームなどの誘惑が多いので、大学の教室や図書館、カフェといった誘惑の少ない場所を選びましょう。また、スマホは勉強の妨げになるため、勉強中は電源を切っておき、目の前の学習に集中できる環境をつくることが大切です。

5.まとめ

薬剤師国家試験の概要や勉強の流れ、勉強に集中するコツを紹介しました。薬剤師国家試験は7領域という膨大な範囲から出題されますが、ポイントを押さえて勉強に取り組めば合格を目指せる試験です。まずは大学の講義や定期試験をクリアして基礎的な学力を身に付け、国家試験に向けて対策をしていきましょう。

この記事の著者

医学ライター・理学療法士

北岡 健

新卒で総合病院に勤務。リハビリテーションをはじめ看護学や薬学といった幅広い医学分野全般に精通。医学ビジネスに関する記事執筆にも携わっており、調剤薬局の経営や独立に関するライティングを得意とする。

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