山口真由の勉強法「7回読み」の方法とコツを聞いてみた

賢者の金言
薬剤師の転職や職場で活躍するノウハウを、今注目のスペシャリストが語ります。働き方、学び方、そして、生き方がわかる――悩める薬剤師に専門家が送る珠玉の金言集。

構成/岩川悟(slipstream) 取材・文/辻本圭介 撮影/玉井美世子

薬剤師国家試験に臨む人はもちろんのこと、薬剤師になってからも日々新しい医療知識を吸収し、つねに勉強を続けていかなければなりません。 なかには、キャリアアップのために新しい資格取得を目指す人もいます。でも、勉強しているのになかなか望むような成果が出ない……と焦ってしまう人も多いのではないでしょうか。 薬剤師さんの「学び」の悩みに、東京大学法学部を首席で卒業し、大学生のときに司法試験と国家公務員Ⅰ種に合格した、いわば「学びのプロ」である山口真由さんが答えてくれました。

薬剤師国家試験の勉強にも応用できる7回読みとは?

薬剤師というのは、薬剤師そのものを目指すにも薬剤師国家試験が必要ですし、無事合格して薬剤師になってからも学ぶことが多い職業だと思います。そこでお聞きしたいのは、山口さんが行ってきた勉強法についてです。

同じ教材を7回読むだけで、勉強の成果は確実に上がります。わたしはかねてより、自身が実践して結果を出してきた「7回読み勉強法」を推奨してきました。その方法はとてもシンプルなもので、同じ本を7回読むというもの。この話をすると「え、読むだけなの?」といつも驚かれるのですが、実際は同じ参考書なり問題集なりを「7回読む」人はかなり限られます。

なぜ同じ教材を繰り返す人が少ないのでしょうか。

おそらく、1回1回をしっかり読もうとしているからですね。そうではなく、薄くサラサラと読み流すことを7回繰り返すことがこの勉強法のポイントになります。もちろん、できる人は8回でも9回でも読めばいいわけですが、繰り返し読むことで、学習内容を記憶に定着させるのが「7回読み勉強法」の基本的な考え方です。同じ本を7回読めれば大体の内容は頭に入るので、わたしはこの勉強法で、学生時代も塾などに通うことなく大学受験や司法試験に合格することができました。

7回読みの方法をマスター! 薬剤や医療に関する本や資料を読むのに役立つ読書法

「7回読み勉強法」の具体的な方法を教えてください。

では、順を追って具体的に説明していきますね。

●1回目 章のタイトルや見出しを拾い読み
1回目は、章のタイトルや見出しを、頭のなかのノートに写し取るような感覚で読みます。文章を1行1行読むのではなく、情報が集中している漢字を拾っていくように流し読むイメージ。また、見出し同士の関係をつかみながら全体の構造を感じ取っていきます。

●2回目 3行ずつ斜め読みするイメージ
1回目と同じように漢字を意識しながら、3行ずつ斜め読みするイメージで読み進めます。1回目で見出しなどはだいたい頭に入っているので、そのうえで読み流していくと、全体のアウトラインや文章の構造が頭に入ってきて本の内容を捉えられるようになります。

●3回目 サラサラと流し読みする
2回目と同じ要領で流し読みしていきます。2回目で把握した全体のアウトラインや文章の構造がさらに明確になっていきます。だたし、内容を理解しようとするのではなく、サラサラと読むことがポイントです。

●4回目 普通のスピードで平読みする
頻出するキーワードや詳しく説明されている用語に注目しつつ、平読み、普通のスピードで読んでいきます。この段階でもまだ内容を理解しようとするのではなく、「この単語がよく出てくるな」「この用語を詳しく説明しているんだな」と感じ取っていくだけでOKです。

●5回目 キーワードの間の説明文を意識して読む
基本的に4回目と同じなのですが、ここで重要なのは、キーワードとキーワードの間にある説明文を意識すること。キーワードが「どのように説明されているか」に着目し、そのページや段落の要旨をつかむことを意識して。読書においては、この“要旨をつかむ”という作業が大変重要なので、4回目と5回目にわけています。

●6回目 細部と要旨(論点)を意識して読む
5回目で要旨をとらえ、おおよその内容が理解できているので、6回では細部に目を向けていきます。細部とは、要旨(論点はなんなのか、どのような説があるかなど)を説明する部分のことで、具体的な事例などにあたる部分です。キーワードの意味、キーワードどうしの関係を把握しながら、頭のなかに内容がしっかりコピーされているかを確認するイメージで読み進めていきます。つまり、内容を要約していく段階です。

●7回目 頭のなかに情報を定着させる
だいたいの内容は、頭のなかに写し取れているので、最後にしっかりと定着させます。最後となる7回目では、「ここにはこんな内容が書いてあるはずだ」と、先に頭のなかで要約し、読みながら答え合わせしていくつもりで読むのがおすすめです。

基本はサラサラと読み流すことを繰り返しながら、回数を重ねるごとに少しずつ読み方を深めていくわけですね。

1~3回目で全体像を感じ、4~5回目でキーワードを意識して要旨をつかみ、6~7回目で内容を把握するという流れで1冊の本を読むのが「7回読み勉強法」です。どんなことも、「知らないこと」は理解できません。そこで、本の内容を理解する前に、まずその本と「知り合い」になっていくことをイメージすればわかりやすいと思います。

「7回読み勉強法」は、薬剤師のふだんの仕事にも役立ちますか?

「7回読み勉強法」は、もちろん薬剤師さんの仕事にも役立つはずです。たとえば、薬剤師さんは、薬剤や医療に関する本や資料をたくさん読む必要がありますよね。膨大な資料であったり、次々と新しい知識を吸収したりしなければならず、職場で戸惑ってしまうこともあると思います。
そんなとき、まず見出しなどを拾いながら全体を1~3回読み流してください。「探していることはどこに書いてあるか」を意識しながら、より深く読むべき箇所を見つけていくのです。そして、4~5回目でその部分の要旨をつかんでいけば、よりスムーズにリサーチすることができるでしょう。

薬剤師国家試験の過去問でも同じ 記憶=才能ではない。「反復と継続」で定着するもの

具体的な方法はわかりました。でも、サラサラと読み流すだけで本当に内容を理解できるのでしょうか?

わたし自身、記憶というものは、才能ではなく「反復と継続」で定着すると考えています。そこで、同じ項目を何度も繰り返し頭に入れていくことで、理解を深めて定着させることができるわけです。また、何度も読んでいると、読むたびに「こういうことだったのか!」「1、2回目では気づかなかったけどこんなことが書いてあったんだ!」と新しい発見もあり、勉強を楽しく続けることができます。同じ本を何度も読むことは、金銭的な負担も少なく誰にでもすぐにはじめることができるはずです。

ふだんの仕事では読むべき資料は決まっています。ただ、試験などを控えている場合は、どんな教材を選べばいいのでしょう。

学ぶべき内容を詳細にカバーした網羅性が高い本を選びましょう。同じものを7回読むということは、「必要な情報がすべて書いてある」と信頼できる教材を選ぶ必要があります。ヌケモレがあるものを何度読んでいても、必要な知識を得ることはできませんよね。そこで、学ぶべき内容が詳細にカバーされた網羅性が高い1冊の本を選ぶことが大切になるのです。

たとえば、薬剤師国家試験でもキャリアアップのための他の資格試験でも、「これをやればいい」と定評がある教材があると思います。まずはその教材を7回読んでいく。そして、その後は過去問も繰り返し解いていきます。資格試験に臨むなら、必ず過去問から出題傾向を把握しておきましょう。

薬剤師国家試験の直前対策とは 試験直前は新しい教材に手を出さない、会場の下見を

正しい方法で勉強していても、なかなか結果が伴わないときもあります。勉強の効果を最大限に引き出す方法はありますか?

勉強は、「取り組んだ時間」がすべてです。薬剤師国家試験はもちろんのこと、その後のキャリアアップに向けた資格試験に向けてどれくらい勉強を積み重ねてきたか、その勝負なのです。現在薬剤師をされている方は、大学の専門過程で学んだ後に資格を取得されているので、過去にたくさんの勉強をしているはず。では、なぜ社会人になってからの勉強で成果が出ないことがあるのでしょうか?

これにはさまざまな原因があると思いますが、ここでわたしが提唱したいのは「隙間時間」の使い方です。たとえば、わたしは移動時間や店の待ち時間などで、4分あれば本を読み、6分座れたらパソコンをすぐに開きます。こうした「隙間時間」の積み重ねは、本当にあなどれません。わたしの妹は専門医ですが、「今日は移動中にこれを読む」と決めて、薄い教材や資料を必ず持ち歩いていますよ。繰り返しですが、勉強は「取り組んだ時間」がすべて。勉強時間をどれだけひねり出せるか、ふだん何気なく過ごしている「隙間時間」の使い方を見直してみてはいかがでしょうか。

「隙間時間」に勉強する習慣を付けるコツがあれば教えてください。

これはもう、「やる!」と決めてしまうしかありません(笑)。たとえば、「移動時間は教科書を読む」と決めてしまい、とにかく移動時間は本を開いてみる。このとき大切なのは、内容があまり頭に入ってこなくても、「読んでいない時間よりは絶対にマシだ」と自覚すること。「少しでも読んでいるのだから」「今日はよくやっているな」と、意識的に自分をほめてほしいのです。勉強が進まないときは、「計画通りいかなかった……」とネガティブに評価しがちですが、そもそもスタートをゼロに置くと捉え方はまったく変わります。ほんの4分でも教材を開き、2~3行でも読むことから始めればいいのです。そうした行動を積み重ねていくことで、隙間時間に勉強する習慣が少しずつ付いていきます。

また、専門的な領域の勉強では、どうしても苦手な項目も出てくると思います。そんなときも、まずは「やり出すこと」。そのためにも、隙間時間に本を開くことが突破口になるでしょう。結果が出ていなくても自分でほめられるところを見つけ、自己肯定感を高めておく。焦らず繰り返すことが、習慣付けの大切なアプローチなのです。

しかし、社会人ともなると毎日の仕事で疲れてしまって、どうしても勉強の集中力が続かないときもありますよね。薬剤師もたくさんのストレスのなかで仕事をしている人が多く、思うように勉強がはかどらないことも多いようです。

そんなときは、場所を変えてみるのはいかがでしょう。家で勉強が続かないならカフェでやってもいいし、わたしも職場と家にわけて勉強しています。そして疲れてきたら、お気に入りの音楽をかけるなど、自分の好きなことと関連付けるのがおすすめ。わたしの場合は入浴でリラックスしたり、「ここまでやったら休憩しよう」と決めて夜に甘いケーキを食べたりもしています(笑)。勉強は我慢してやっても絶対に続かないので、気分をうまくコントロールすることがポイントです。

試験などを控えているとき、直前にはどのような勉強をすべきですか?

試験直前は、なによりも不測の事態に備えることです。たとえば、会場を一度見ておくこと。じつは、わたしは1回会場まで行けず、ものすごく焦ったことがあります。そんな事態に陥らないように準備することが大切です。また、マークシート形式なら、シャープペンシルではなくやわらかめの鉛筆を用意しておけば、左右2往復でマークできます。ささいなことですが、こうした準備が意外と効くのです。

あとは新しい教材に手を出さないこと。試験直前に新しい教材をやると、必ず「これ知らない」という項目が出てきてどんどん自信を失います。むしろ、直前はこれまでしてきたことの総復習をしてください。1回解いた過去問をもう一度解くのもいいでしょう。

やはり勉強の基本は、「反復と継続」に尽きるのです。

「マイナビ薬剤師」編集部からのコメント

「マイナビ薬剤師」編集部からのコメント

山口さんのように会場に迷うことがないように、場所をしっかりと確認しておきましょう。
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NY州弁護士・コメンテーター 山口真由さん

プロフィール 山口真由
(やまぐち・まゆ)

東京大学法学部を首席で卒業。大学3年次に司法試験、翌年には国家公務員Ⅰ種に合格。学業成績は在学中4年間を通じて「オール優」で4年次には総長賞も受ける。2006年4月に財務省に入省し、主税局に配属。08年に退職し、09年から15年まで大手法律事務所に勤務し企業法務に従事。15年から1年間ハーバード・ロースクールへの留学、修了し、ニューヨーク州弁護士資格も取得。現在は、テレビのコメンテーターや執筆でも活躍している。著書に『東大主席が教える超速「7回読み」勉強法』、『東大主席が教える「間違えない」思考法』(以上PHP研究所)、『リベラルという病』(新潮社)、『東大首席・ハーバード卒NY州弁護士と母が教える 合格習慣55:家庭でできる最難関突破の地頭づくり』(学研)など多数。

賢者の金言 インタビュー 一覧

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