「薬局のカウンターというバリアを飛び越える」久保恵子が目指す薬剤師とは
構成/岩川悟(slipstream) 取材・文/清家茂樹(ESS) 写真/榎本壯三
目次
薬剤師と子育て、両立の秘訣は? 「ママ薬剤師との連携と1本の缶ビール」
薬剤師に限らず、母親という立場で働き続けることは本当に大変です。わたしの場合、主人がバスケットボールチームのコーチ(川崎ブレイブサンダース・ヘッドコーチ・北卓也氏)なので、遠征が続くとずっと家にいないということもざらです。ですから、家事はほとんどがわたしの担当。主人がやってくれるのはゴミ出しくらいですかね(笑)。
しかも、小学5年の娘が所属しているミニバスケットボールチームの保護者代表にもなっちゃった……。ですから、試合によっては車を出すこともあります。主人のチームでも、一応「女将さん」的立場ですから、顔を出さないと「しばらくいらっしゃっていませんね?」なんて言われちゃう(笑)。仕事と家事をしながら、主人のチームのことも娘のチームのことも考えないといけないから大変です。
いま、朝は5時起き。娘のお弁当をつくって、娘を起こすのが5時40分。娘はバスケットボールの練習で疲れて夜は勉強ができないので、朝6時から7時半までを勉強時間にしているんです。朝ご飯を食べて7時50分頃に家を出て車で娘を学校に送り、そのまま出勤します。
仕事は19時まで。退勤したら部活をしている娘を学校に迎えに行って、帰宅するのが20時半くらい。娘がお風呂に入っている間に夕食の支度をします。食べ盛りなので、毎日のようにから揚げをつくっていますね(笑)。娘を22時半くらいに寝かせて、わたしが寝るのは23時半くらいかな。
主人が遠征帰りのときがもっと大変なんですよ!試合が終わってそこから移動してくるので、娘がやっと寝たくらいの時間に帰ってくる。しかも、主人は割と試合の話を聞いてほしいというタイプ。23時くらいから晩酌に付き合って、寝るのは午前1時くらいになりますね。そんなハードな生活を頑張れる秘訣は、しっかり寝ることと、食べること。あとは、1日の終りに飲む1本の缶ビールかな。それしかありません(笑)。
【久保恵子さんの毎日】
5:00 起床・娘の弁当づくり
5:40 娘を起こして朝食の準備
7:30 朝食
7:50 家を出て娘を学校に送る
8:30 出勤
9:00 業務開始
19:00 退勤後、娘を迎えにいく
20:30 帰宅して夕食の準備
21:30 夕食を食べて翌日の準備など
23:30~26時 就寝
助かっているのは、職場にわたしと同じようなママが多いということです。お互いの立場がわかっているので、つねに連絡を取り合って、たとえば娘が熱を出した場合などには誰かに代わりに出勤してもらうというふうに助け合っています。母親の立場で働くには、まわりを巻き込んでいくことがとても大事だと思います。
薬剤師として今後目指すものは… 「医療心理学と小児医療を学びたい」
そんな毎日なので、いまは仕事と家事で手いっぱいで自分の時間はなかなか取れません。ですから、すごく勉強をしたいんですよ!戻れるのなら、もう一度、大学で勉強したいくらい。ただ、それは現実的には難しいので……娘が中学に進学したら勉強の時間をつくるつもりです。 医療心理学を学んで、いま携わっている在宅医療(インタビューPart1参照)に生かしたいと思っています。
それから、小児医療についてもまたあらためて勉強したい。もともとわたしが小児医療に興味を持ったのは、娘が小さなときに喘息だったからです。娘の病気をきっかけに、喘息をはじめ、子どものアレルギーに関してものすごく勉強しました。喘息の治療のためのガイドラインがきちんとできたのは、ほんの15年ほど前のこと。むかしは「子どもは大人の小さいもの」という考え方が医療現場でも一般的でしたが、いまは子どもと大人はまったくちがうものだと認識され、小児医療はどんどん進化しています。
そして、かつては見過ごされていた子どもたちの症状がキャッチされるようになってきました。いま注目を集めているADHD(注意欠陥多動性障害)もそうですし、鼻炎や滲出性中耳炎などもそうでしょう。いまはきちんと診断されて病名がつけられ、治療がおこなわれますよね。
語弊があるかもしれませんが、医療の進歩によってむかしなら生きられなかった子どもたち、障害児が増えているという一面もあります。子どもの人口が減っている時代だからこそ、小児医療の重要性は増していくと考えています。
薬剤師のイメージアップを目指して 「アンテナを張り活躍のフィールドを広げる」
わたしが薬剤師として頑張っていることを娘もわかってくれているのか、彼女が将来の夢の候補として挙げた職業に薬剤師も入っていたんですよ。やっぱりうれしいですね。ただ、いちばんの夢はバスケットボール選手だったんですけどね(笑)。
もし娘が薬剤師を志すのなら、そのときには薬剤師という職業の地位がいまよりも確立されたものになっていてほしい。ですから、わたしはそうなるように努力していくつもりです。この仕事を、もっともっと周囲に認めてもらえるものにしたいですね。
そのためにはやっぱり、薬剤師自身が努力しないといけない。いま、一般の人の薬剤師のイメージは調剤薬局の薬剤師ではないでしょうか?もちろん、それも立派な薬剤師としての仕事です。でも、正直なところ、あまりコミュニケーションを取らない無愛想な人たちだと思われている一面もあるでしょう。そのイメージを変えていく必要があります。
薬剤師という仕事は、自分の興味関心によって活躍できるフィールドをどんどん広げることができるものです。わたしが興味を持っている在宅医療や小児医療というフィールドの他、緩和専門で活躍する薬剤師や、ケアマネジャーの資格を取って介護というフィールドで頑張っている薬剤師もいます。
これからの時代を薬剤師として生き抜いていくために、自分がどんなことに興味や適性があるのかを見極め活躍のフィールドを広げていくには、いつも医療業界の動きや情報に対してアンテナを張っておくべきです。それは、薬剤師としてどう生きていくのかと自分自身に問うことに他なりません。そうでなければ、AIやコンピューターが加速度的に発達していくこれからの時代に生き残れないでしょう。
そしてこう思うのです。かつての薬剤師には、患者さんとのあいだに薬局のカウンターというバリアがあり、患者さんとの間に距離があった。でも、そのままでは薬剤師の立ち場やイメージは変えられない。本来なら薬剤師という仕事は医療関係者にとっても患者さんにとってもすごく重要なものであるはずです。そういう認識を持ってもらうために、これからの薬剤師は、カウンターというバリアを飛び越えていかなければなりませんね!
Vol.5 タレントから薬剤師へ…久保恵子はなぜキャリア変えたのか?
プロフィール
久保恵子
(くぼ・けいこ)
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「マイナビ薬剤師」編集部からのコメント
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