薬剤師に求められる「プラスアルファの能力」

賢者の金言
薬剤師の転職や職場で活躍するノウハウを、今注目のスペシャリストが語ります。働き方、学び方、そして、生き方がわかる――悩める薬剤師に専門家が送る珠玉の金言集。

構成/岩川悟(slipstream) 取材・文/清家茂樹(ESS) 写真/榎本壯三

1993年、現役大学生の「元祖お天気お姉さん」として一世を風靡した「クボケー」こと久保恵子さんは、いま薬剤師として働いています。情報番組のレポーターをはじめ、女優としてドラマや舞台でも活躍してきましたが、華々しい芸能界から一線を引き、薬剤師の仕事を選んだのはなぜだったのでしょうか。その経緯、薬剤師という仕事のやりがい、そして、これからの薬剤師のあるべき姿について語ってもらいました。

芸能活動と薬剤師のダブルワーク 「紆余曲折を経てたどり着いた薬剤師という仕事」

いまでこそ薬剤師としてやりがいと誇りを持って働いていますが、ここに至るまでには紆余曲折ありましたね。そもそも、わたしが最初に行った大学は薬科大ではありませんでした。上智大の理工学部で化学の勉強をしていたのです。でも、どうもやりたい勉強とはちがった…。
悩んでいるときに大学院の先生に相談したら、「なら、薬科大に行ってみたら?」とアドバイスされたのです。すでに芸能活動もしていた頃のことで、しかも、いくつかの企業から内定も頂いていて…。本当に迷って、迷って考えて薬科大進学を決め、芸能活動をしながら受験勉強をして明治薬科大に入学したのです。

薬科大に通った4年間も、芸能活動と勉強を両立させながらの生活でした。昼間は勉強があるので、仕事は『プロ野球ニュース』(フジテレビ)など夜や土日のものだけにしていましたね。そうして薬剤師免許を取って明治薬科大を卒業。その後は、「芸能一本でやってみよう」と思って、そこからしばらくは芸能の仕事に打ち込みました。ただ、3年ほどすると、ここでもやっぱり「ちがう」と思ってしまった。

じつはこの頃、芸能活動の合間に調剤薬局でアルバイトをしていました。それだけでなく、薬剤師の仕事がだんだん楽しくなってきて病院にも勤めています。当時の所属事務所からは「どうするんだ?芸能をやるんだろう」というふうに聞かれましたが、もうわたしのなかでは「やっぱり薬剤師の仕事が好きだ」という気持ちに変わっていたように思います。

薬局、病院…仕事を“続けておく”ことが大事 「薬剤師にとって怖いのは長すぎる“ブランク”」

結果的に、薬剤師として生きていくことを決断して本当に良かったと思っています。というのも、薬剤師のみなさんならよくわかると思いますが、 ひとことで薬剤師といっても、自分の興味関心によってどんどん新たなジャンルの仕事にチャレンジできるからです。

芸能活動をしながらわたしが勤めていた病院は横浜の病院でした。外国からたくさん船がやって来る街の病院だけに感染症にすごく強い。そういう病院に勤務した経験からから、いまも時間があれば感染症についての勉強もしたいと思っています。

自分の子どもが生まれてからは、小児薬物療法認定薬剤師の資格を取得しました。主人がバスケットボールチームのヘッドコーチ(川崎ブレイブサンダース・ヘッドコーチ・北卓也氏)なので、一時は公認スポーツファーマシストの資格も持っていましたね。

そんな興味や関心によって仕事の幅を広げられることの他、出産のタイミングや子どもの成長などライフスタイルの変化に合わせて仕事を休んだり勤務時間を変えられたりする点でも、薬剤師という仕事は特に女性にとって魅力的だと思います。転居することがあっても、どこでも薬剤師は求められているものですしね。

でも、いくら資格があるとはいえ、薬剤師にとって怖いのは「ブランク」かもしれません。薬は進化するスピードが速いですから、ブランクがあり過ぎると、新たな薬の情報や最新の機器を使うのにとても苦労すると思います。いま休職している人も、薬剤師の仕事を続けていきたいのであれば、1週間のうちの本当に少しの日数でいいので薬剤師として働いておくべきだと思います。

わたしの場合、出産で休職していたのは8カ月ほど。仕事をしていないと、すぐにママ友とお茶をしたり、ネット通販で余計な買い物をしてしまったりして…(笑)。これじゃいけないと、主人に内緒で子どもの保育園と勤め先を決めて、「明日から働くからね!」と復帰しました。

今後の薬剤師に求められる“在宅”スキル 「在宅医療で患者さんの死に寄り添って…」

いまは管理薬剤師として薬局に勤めながら、在宅医療にも携わっています。在宅医療というのは、多くの患者さんが自宅で死を迎えようとしている状況における医療。つまり、病気を治すというよりも、患者さんに残りの人生の時間をどういうふうに送ってもらえるのかと考えることがすごく大切になってきます。

じつは、つい最近もわたしが見ていた高齢の患者さんが亡くなりました。最初は3カ月で他の薬局と代わる予定だったのですが、その患者さんがわたしに「最期まで見てほしい」と言ってくれて…。

ご家族からも「おばあちゃんは本当に幸せだったと思う、ありがとう」と言っていただき、いい最期を迎えてもらえたことに薬剤師としてのよろこびを感じました。

一方で、在宅医療に関われるような「外に出ていける」薬剤師が足りないとも感じます。もちろん、薬剤師それぞれに向き不向きはありますが、高齢化が進んで在宅医療のニーズがどんどん高まっていることを考えても、いまは「外に出ていける」薬剤師がより求められているのではないでしょうか。

在宅医療なら、当然、人の死に直面することもあります。死に対する考え方が問われ、臨機応変に現場に対応できる柔軟性も求められる。患者やそのご家族だけでなく、ドクターやケアマネジャーと相談しながら使う薬やケアプランを決めていくにはコミュニケーション能力も求められるでしょう。

でも、薬剤師のなかには、意外とコミュニケーションが苦手という人も少なくありません。もちろん、個人差はありますが、一般の人にとっての調剤薬局の薬剤師はまさにそういうイメージではないでしょうか?

ただ、どんどんコンピューターが発達していく今後、業務のオートメーション化が進めば、薬剤師の仕事内容が減っていく可能性も高いはずです。そういう時代に薬剤師はどうあるべきなのかと考えたら、やっぱりコンピューターにはできない部分の能力を磨いていくしかありません。

それこそコミュニケーションなんてその最たるものでしょう。患者さんのちょっとした表情の変化や言葉に「あれ?」と感じてその裏の真意を感じる。こういうことはコンピューターにはなかなかできるものではないはずです。薬剤師の資格はあくまでもベースと考えて、プラスアルファの能力を磨かなければならない時代になってきているのだと思います。

「マイナビ薬剤師」編集部からのコメント

「マイナビ薬剤師」編集部からのコメント

横浜の薬局で働く「クボケー」こと久保恵子さん。育児と薬局業務に加え、週3度は在宅の現場に出向くそう。「薬剤師という仕事が大好き!」というピュアな気持ちが働く原動力なのかも。次回は、そんな「クボケー」のプライベートにも迫ります!
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薬剤師・タレント 久保恵子さん

プロフィール 久保恵子
(くぼ・けいこ)

1972年3月19日生まれ、神奈川県出身。女優、タレント、薬剤師。上智大学理工学部在学中の1992年、同大学のミスキャンパス「ミスソフィア」に選出され、その後、情報番組『FNNおはよう!サンライズ』(フジテレビ)にお天気キャスターとして出演するようになり人気を博す。上智大学卒業後は、芸能活動を続けながら明治薬科大学薬学部に通い、薬剤師免許を取得。2006年にJBLスーパーリーグ・東芝ブレイブサンダース所属のバスケットボール選手・北卓也と結婚。2008年には第一子となる女児を出産した。現在は芸能活動を控え、管理薬剤師として働く。

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