薬局経営を考えている薬剤師必見-開業に必要な資格や申請について詳しく解説

薬局経営を考えている薬剤師必見-開業に必要な資格や申請について詳しく解説

薬剤師のキャリアプランとして、独立経営も一つの選択肢です。所属している会社のルールにとらわれず、自分の理想とする職場環境で仕事をしたいですよね。

独立開業には薬剤師としての知識はもちろん、経営に関するノウハウも必要です。

ここでは、薬局開業に必要な条件や資金、開業までの手続きをわかりやすく解説します。薬局の独立開業を考えている方はぜひ参考にしてください。

1.薬局経営に薬剤師資格は必要?

薬局の経営だけをおこなう「オーナー」は薬剤師の資格は必要ありません。

店舗管理者となる薬剤師を雇用すれば、薬剤師の資格をもっていない方でも薬局開業が可能です。

ただし、薬剤師を雇用するための人件費がかかるため、より高い売上が必要になります。

薬剤師の資格があるなら、まずはオーナー兼管理薬剤師として働き、経営が安定してから管理薬剤師を雇ってオーナー業に専念する方法が一般的です。

2.薬局開業に必要な条件

薬局開業に資格は必要ありませんが、許可申請や設備要件など一定の要件を満たす必要があります。

薬局開業の必要な条件は都道府県や自治体によって違いがあるため、ここでは一般的な薬局開業の条件について解説します。

2-1.薬局開設許可申請

薬局開業の要件を満たしたうえで、都道府県に薬局開設許可申請を提出します。申請様式は各都道府県のホームページから取得できます。

2-1-1.設備要件

構造面積は概ね19.8平方メートル以上(事務所・更衣室・トイレを含まない)、明るさは薬局内60ルクス以上、調剤台の上は120以上などの設備要件を満たす必要があります。

設備要件は工事着工前に管轄の保健所で事前相談を受けましょう。平面図をもとに、設備要件を満たしているか確認してくれます。

参照元:千葉市HP/薬局新規開設の流れ

2-1-2.人的要件

許可申請者が禁錮以上の刑に処せられていないかなどの要件があります。また1日の平均処方箋数が40までである場合は薬剤師1人、40以上増える毎にさらに1人の人員配置が必要です。

1日の処方箋数は、近隣の病院やクリニックからどれくらいの処方箋がでるのか調査しておく必要があります。

参照元:厚生労働省/薬事法施行規則及び薬局及び一般販売業の薬剤師の員数を定める省令の一部改正について

2-2.保険薬局指定申請

保険薬局指定申請とは、公的医療保険を適用して調剤をおこなうための手続きです。

保険薬局指定申請の際には、社会保険や労働保険の加入状況の確認があります。

保険薬局指定申請には指定用紙に加えて保険薬剤師の免許証の写しや法人登記簿謄本の写しなども必要です。

事前に管轄の地方厚生(支)局にどの書類が必要なのか問い合わせておきましょう。

参照元:関東信越厚生局/保険医療機関・保険薬局の指定申請

3.薬局開業するための資金はどれくらい?

薬局開業に必要な資金は立地や契約方法によってさまざまです。賃貸物件で開業した場合、内装工事や設備費なども含めて最低でも総額1,500万円前後の費用を考えておきましょう。

ただ物件や条件によって価格差があり、例えば地方で居抜き物件を借りて500万円程度で開業できる場合もあれば、土地を購入して新築での出店または都市部で開業すれば3,000万円以上の資金が必要なケースもあります。

4.薬局開業までにかかる資金の詳細

薬局開業には多額の資金が必要です。薬局経営にはどれだけの資金がかかるのか詳しく解説します。

4-1.物件の保証や仲介手数料

個人で実績もなくこれから賃貸店舗を借りるには保証会社への加入を求められることがあります。

そこで保証会社に加入するための保証料や不動産会社に支払う仲介手数料がかかります。

保証料の目安は月額家賃+管理料の30〜100%と毎年の更新料になります。仲介手数料は家賃の1ヶ月分を上限として不動産会社に支払います。

物件の費用は初期費用や今後のランニングコストに大きな影響を与えます。そのため、安易に契約を決定せず、不動産会社やオーナーと納得のいくまで交渉しましょう。

4-2.設備工事費用

薬局の設備工事費は200〜1,000万円以上の費用が必要です。設備初期費用の大部分を占めるため、複数の業者から相見積もりをとり、慎重に契約を決めましょう。

運良く居抜き物件を契約できた場合は、最小限のリフォームで開業できるため200万円程度で済む場合もあります。

しかし、内装をスケルトン状態にしてフルリフォームした場合は1,000円以上の費用が掛かるケースもあります。

内装はOTC医薬品の売上に大きく影響します。薬局のコンセプトに合った内装デザインを採用しましょう。

4-3.機材や備品の費用

薬局の運営には厚生労働省の規則に基づいた機材や備品が必要です。

調剤台や薬剤棚、メスピペット、水浴、はかりなどで100〜200万円、分包機やレセコン、レジなどでさらに100〜200万円以上必要です。高額な医療機器は一括購入が難しいため、リースでの導入が一般的です。

リースであれば故障時の修理対応や使い方がわからないときに相談することも可能です。

薬局の開業時には、保健所の立ち入り検査時に機材や備品を確認されるため、開業前に必ず揃えておく必要があります。

4-4.医薬品の仕入れ費用

薬局の開業には、医薬品の仕入れ費用も計算しておきましょう。薬局の規模にもよりますが、200万円以上の資金が必要です。

医薬品や一般薬の仕入れルートはコストを削減するために重要な要素です。

普段からMRの方とコミュニケーションをとっておき、医薬品を安く入手する手段を確保しておきましょう。

4-5.運転資金や人件費用

運転資金として、毎月の必要資金の3〜6ヶ月分程度の運転資金の準備が必要です。

人件費や研修費などを含め、300〜500万円以上の運転資金を考えておくとよいでしょう。

4-6.広告費

薬局は広告・宣伝費はあまり必要ありません。店舗の立地が良ければ、看板を見て来店してくれます。

店内用のポスターやチラシは製薬会社からもらえるため、デザイン会社に依頼して広告を制作する必要性は低いでしょう。

ただし、近隣に薬局が複数あるエリアに出店した場合は他薬局との差別化を図るために広告費をかけるケースもあります。

5.自己資金だけで開業が難しい場合

自己資金だけで開業資金を賄えない場合は、金融機関から融資を受けて開業資金に充てるのも一つの手です。

また、国や自治体からの補助金を申請して開業資金を補填する方法もあります。

5-1.金融機関からの融資

開業資金や運転資金は銀行や信用金庫などの金融機関から融資を受けることができます。

しかし、民間の金融機関は経営の実績がないと融資を受けられないケースがあり、初めて開業する方は融資を断られる可能性があります。

政府系の金融機関である日本政策金融公庫は、民間の銀行や信用金庫に比べて無担保・無保証で融資を受けることができます。

ある程度の自己資金があること、事業計画書に不備がないことなどの条件はありますが、無担保・無保証の融資が通れば開業後の資金繰りが楽になります。

また、金融機関の融資が難しいのであれば、ローン会社などのノンバンクから融資を受ける方法もあります。

5-2.補助金・助成金

自己資金が足りない場合は、新規事業の立ち上げを支援する補助金や助成金を開業資金に充てる方法があります。

補助金や助成金は融資とは違い、返済の必要がないというメリットがあります。補助金や助成金も事業計画に盛り込めるため、受給対象となるのか早めに確認しておきましょう。

5-3.自治体の制度融資

各都道府県や市区町村には銀行融資よりも低い金利で融資を受けられる制度があります。

高額な資金調達には向いていませんが、自治体によっては利子の一部を負担してくれる自治体もあります。

6.薬局開業までの流れ

薬局開設許可申請書の提出から薬局オープンまでの流れを解説します。

6-1.薬局開設許可申請書などの提出

薬局開設の要件を満たしたうえで、保健所に薬局開設許可申請書を提出します。平面図や業務体制概要書、事業内容書などの書類も併せて提出します。

6-2.保健所基準調査を受ける

内装工事がすべて完了した後に、現地で薬局の衛生面などを確認するために保健所基準調査を受けます。調査の際には管理簿や劇薬譲受書、指針・手順書などが必要です。

6-3.開設届・保険指定申請書の提出

保健所基準調査で問題がなければ、薬局開設許可証の交付を受けます。薬局開設と保健所の許可が下りれば、一般薬局として営業できます。

その後、保険薬局となるために開設届・保険指定申請書を厚生局に提出しましょう。

6-4.審査会を受ける

薬局開設許可証の交付を受けた後は、厚生局の審査会を受けます。審査会を通れば保険薬局として営業できます。

6-5.薬局のオープン

薬局のオープンまでにスタッフとの打ち合わせや雇用契約の締結、シフト調整などをおこないます。

7.まとめ

薬局の独立開業には多くの手続きや資金が必要です。管理薬剤師として店舗管理ができても、薬局経営や資金繰り、開業に向けての経営計画の立案や手続きを1人でおこなうことは難しいでしょう。

将来的な薬局経営も視野に入れてキャリアプランを考えている方は、マイナビ薬剤師にお気軽にご相談ください。

この記事の著者

医学ライター・理学療法士

北岡 健

新卒で総合病院に勤務。リハビリテーションをはじめ看護学や薬学といった幅広い医学分野全般に精通。医学ビジネスに関する記事執筆にも携わっており、調剤薬局の経営や独立に関するライティングを得意とする。

この記事の監修者

合同会社ゆとりびと代表社員・税理士ライター

服部 大

大学卒業後、名古屋市の老舗税理士法人にて8年間勤務。 勤務期間中に税理士試験に合格し、2020年に服部大税理士事務所を開業。 2021年には合同会社ゆとりびとを設立し、税務顧問以外にも書籍執筆やwebライティングなどの「伝える仕事」に注力している。

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