保健所へ転職する薬剤師が知っておくべき5つのこと|年収やメリット

保健所へ転職する薬剤師が知っておくべき5つのこと|年収やメリット

薬剤師としてのキャリアを考えるとき、公的機関での勤務を考える人もいるでしょう。なかでも、保健所への就職は、地域貢献へのやりがいがあり、公務員として安定した収入が見込めるという利点があります。

しかし、薬剤師資格を持ちつつ保健所で働く人はごくわずかです。

厚生労働省の「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、薬剤師資格を有するもののうち薬局薬剤師は全体の58.7%という一方で、衛生行政機関又は保健衛生施設勤務はわずか2.1%となっています。

もともと、募集人数が少ないこともあり、保健所で働きたいと思っていても、あまり情報を得られないのも事実です。今回は、保健所への転職を考える人に向けて、事前に知っておきたい5つのポイントをお伝えします。

1.保健所における薬剤師の仕事について

保健所は、地域保健法において設置義務が定められている施設で、保健衛生機関という名前のとおり、担当地域における保健・衛生の管理監督業務を行う機関です。

各保健所は、管轄地域の住民とより近い立場で、健康や衛生環境を見守っていくため、薬局や病院とは別のアプローチから地域に貢献できる職場と言えます。

保健所で勤務する薬剤師は、民間企業の調剤薬局やドラッグストアなどとは異なり、公的な行政機関で働く地方公務員という立場です。具体的な仕事内容は所属する部署によって異なりますが、主に以下のような業務が挙げられます。

1-1. 薬事衛生

医薬品、医療機器などの品質、有効性や安全性の確保のために、薬局・店舗販売業・卸売販売業・医療機器販売業・毒物劇物一般販売業等に対しての許可・監視・指導等の対応を行うのが「薬事衛生」の業務です。

対象として、医薬部外品、健康食品、サプリメント、化粧品などに関するものも含まれます。

また、事業所のみならず、地域住民に対する医薬品等の安全使用に関する注意喚起・情報発信や、麻薬・覚せい剤・危険ドラッグなどの薬物乱用防止の啓発活動、献血の啓蒙活動など、内容は多岐にわたります。

薬局開設や許可更新などの際の立ち入り検査で実際に接する機会があるため、保健所の薬剤師が担当する仕事のなかでは、調剤薬局や病院勤務の薬剤師にとって、最も認知度の高い業務と言えるかもしれません。

1-2. 食品衛生

食品製造業者・飲食店などに対する許可・監視・指導等の対応を行う「食品衛生」も保健所勤務の薬剤師の仕事です。

食品の製造から、製品が消費者に渡るまで、また渡ったあとに起こった有害事象の把握や対応など、食に関する全ての安全を確保するのが目的です。

食品取り扱い事業所や地域住民に向けた、食中毒予防のための啓発活動なども業務に含まれます。

1-3. 生活衛生

旅館やホテルといった宿泊施設、温泉や銭湯といった公衆浴場、クリーニング店、理容室・美容室などにおいて、一定以上の衛生水準の維持・向上のための指導や許可・届出・監視指導等の対応を行うのが「生活衛生」の業務です。

1-4. 水道衛生

「水道衛生」の業務として、地域住民の生活に不可欠である水道水の安全な供給のため、元となる水道事業者に対する監視・指導、旅館やホテル等の建築物衛生法に規定される特定建築物における水質管理、プールの衛生管理指導などを行います。

1-5. 試験検査

食品に含まれる添加物などの規格基準検査や、放射性物質等の検査など化学検査全般を行う「試験検査」業務。

そのほか、自治体によっては、インフルエンザのパンデミックに備えた健康危機管理、医療供給体制整備、廃棄物衛生、生活環境保全、創薬研究、治験、住民の健康相談など非常に幅広い分野でさまざまな業務を担当します。

2.保健所に勤務する薬剤師の年収事情

保健所薬剤師の給与体系は公務員の規定に準じ、国の人事院勧告に従って決定されます。そのため、転職の際には民間企業のように給与に関する交渉などはできず、規定に沿った一定の金額となります。

初任給は20万円程度からのスタートとなり、ドラッグストアや調剤薬局などの初任給と比べると低めの設定です。

しかし、勤務条件に応じて給与が増減する民間企業とは異なり、勤務年数に比例して確実に給与が上がります。初任給は低めでも、同じ勤続年数で民間企業に勤務する役職を持たない一般薬剤師と比較すると、将来的には給与を上回るケースもあります。

また、退職金に関しても、民間と比べて公務員のほうが手厚い場合がほとんどです。生涯賃金として考えると、結果的に薬局よりも保健所に就職したほうが、給与は高い傾向にあるでしょう。

3.保健所で働くメリット

保健所で働く一番のメリットは、やはり公務員ならではの安定した雇用条件で働けることでしょう。民間と比べて、利点と感じられるポイントをまとめてみました。

メリット1. 休日・有給休暇・勤務時間

休日や有休の面で、公務員としての働き方には大きな魅力があります。土日はほぼ休みで定時終業、有休も取得しやすく、体力的にもプライベートを楽しめる余力を感じられるはずです。

メリット2. 福利厚生や各種手当が充実している

保健所に限らず、公務員は福利厚生や各種手当が充実しています。ただし、民間でも福利厚生がしっかり整備されている企業もあり、勤務地によっては同等の利益が享受できるかもしれません。

メリット3. 地域貢献に対するやりがい

病院や薬局とは違う形で地域に貢献できるのは、薬剤師にとってのやりがいとなります。薬の知識に限らず、公衆衛生の知識も活用することができる職業であり、専門性をフルに生かせる職場とも言えます。

公務員として働くことで、特に将来の安定性を重視する方には適している職場と言えるかもしれません。

4.転職の際に求められる条件

保健所での勤務は、薬剤師の資格だけでなく、公務員としての試験にも合格しなければいけません。求められる条件について確認しておきましょう。

4-1. 地方公務員試験

保健所への転職に向けて、自治体によっては地方公務員試験のうちの上級(自治体によって「大卒程度」「Ⅰ類」など呼び方は異なる)試験に合格する必要があります。

注意したいのは年齢制限があること。自治体によって異なるものの、22歳~29歳までがそのほとんどとなっており、早めの決断が必要になります。大学卒業または卒業見込みの者、もしくは大学卒業程度の学力を有する者を対象とする難易度の試験です。

4-2. 各自治体による試験

地方公務員試験ではなく各自治体で試験を設けている場合もあります。小論文や面接などによって合否を決定しますが、地域によって条件はさまざまです。職務経験5年以上や、受験年齢は30歳までなど、受験資格の幅が異なるので事前の確認が必要です。

5.保健所の薬剤師をめざす際の注意点

地方公務員試験に合格しても自治体の職員になったというだけで、必ず保健所に配属されるとは限りません。

保健所薬剤師をピンポイントに募集している場合であれば、この限りではありませんが、他の部署に配属になる可能性もあるということは念頭に置いておきましょう。

また、公務員は定期的な部署の異動が行われることも多く、保健所に配属になったとしても、その後異動する可能性があります。

5-1. 受験資格と年齢制限を確認する

転職先として保健所薬剤師を目指す場合、最初に確認しておきたいのが「受験資格と年齢制限」です。現在の仕事と並行して公務員試験の受験勉強をする場合、勉強時間の確保が一番の課題になるかもしれません。

初任給が低いため、年収減を見据えたライフプランを立てる必要もあります。今後の生活状況やローンなどの問題は事前に計画しておきましょう。

この記事の監修者

薬剤師専任キャリアアドバイザー

中村 貴大

薬剤師の転職サポート歴7年。
調剤薬局、病院、ドラッグストアなどの法人担当だけでなく、多くの求職者様の転職活動を成功に導いた経験と知識を活かし、転職活動を開始される皆さまを全力でサポートさせていただきます。

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