調剤薬局事務に必要な資格はある?主な仕事内容からおすすめの資格まで徹底解説
調剤薬局事務は、未経験者でも比較的挑戦しやすい医薬系の事務職の一つです。フルタイムから時短勤務まで、フレキシブルな働き方がしやすいことや、確実に手に職を付けることができるため、近年注目を浴びています。
この記事では、調剤薬局事務に資格は必要かどうか、どのような資格を取得すればメリットになるか、そして実際の仕事内容について解説します。
目次
1.調剤薬局事務の主な仕事内容とは
調剤薬局事務とは、薬局の運営に必要な事務作業、接客作業などを専門に行う事務職の一種です。
調剤薬局の窓口で患者さんの処方箋や保険証、個人情報などを預かる受け付け業務や、お薬の交付後の会計業務だけでなく、月ごとに診療報酬請求書(レセプト)を作成し保険者に請求する業務も行います。
そのほか、薬局の開店・閉店準備や在庫確認、納品業者との物品のやりとりなど、調剤薬局の運営・補助に関わる幅広い業務を担当します。
2.調剤薬局事務に資格は必要?取得するメリットについて
調剤薬局事務の仕事は、資格がない未経験者でも就業可能です。ただし、資格は必須ではないものの、調剤薬局事務に関する民間資格を取得しておくことで、即戦力として働くことができます。
また、職場によっては、有資格者に対して給与面や賞与面で上乗せが期待できるケースがあるため、調剤薬局事務関連の資格を取っておくとよいでしょう。
3.調剤薬局事務におすすめの資格
調剤薬局事務に関わる資格にはさまざまな民間資格があります。ここでは、調剤薬局事務におすすめの主要な6つの資格について、その特徴や取得方法とともに、詳しく解説します。
3-1.調剤事務管理士
「調剤事務管理士」は、技能認定振興協会(JSMA)が設立した調剤薬局事務に特化した民間資格です。協会が定める検定試験に合格した人だけが取得できます。
調剤薬局で求められる患者さんへの接客スキルや、処方箋の内容から調剤報酬を計算する知識とレセプト作成技術を身に付けることができます。
検定試験の受験資格は設けられておらず、誰でもチャレンジできます。検定試験では、保険制度や保険請求事務関連の知識、薬に関する基礎知識を問う学科試験(マークシート形式10問)があり、合格率は60%程度です。
3-2.調剤事務実務士
「調剤事務実務士」は、特定非営利活動法人 医療福祉情報実務能力協会が設立した民間資格です。
薬剤師のサポート役や薬剤情報の提供まで実施できる高度な人材を養成し、調剤報酬請求に関わる一定の能力を保証する資格とされています。協会が定める検定試験に合格することで資格が取得できます。
受験資格は特に定められておらず、併願もできます。検定試験の出題範囲は、薬学の知識、医療保険制度の知識、点数算定の知識、接遇マナーなどに関する筆記試験(20問)と、処方箋から調剤報酬明細書を作成する試験(3問)があり、合格率は60%前後となっています。
3-3.調剤薬局事務検定試験
「調剤薬局事務検定試験」は、日本医療事務協会が2018年から実施している検定試験です。
学科試験(調剤報酬算定に関わる基礎知識)および実技試験(調剤報酬の算定及び調剤報酬明細書作成)のトータル90分の試験(マークシート式)で、調剤薬局における請求事務業務の基礎的な知識と技能レベルを確かめます。
受験資格は、日本医療事務協会が認定する団体の講座を受講した者、受験申請をした高校、専門学校、短期大学、大学等の学生、受験申請をした一般受験申込者になっています。在宅でも受験することができるため、合格率は90%前後で比較的チャレンジしやすい試験といえるでしょう。
3-4.調剤事務認定実務者
「調剤事務認定実務者」は、全国医療福祉教育協会が設立した調剤事務に関する民間資格です。受験資格は特になく、誰でも受験することができます。
医療関連法規や薬理・薬剤に関する知識、調剤報酬請求に関する知識が問われる学科問題(15問)と、調剤報酬明細書作成の実技試験(2例)が出題され、全てマークシート形式です。合格率はおおむね60~80%です。
3-5.調剤報酬請求事務専門士
「調剤報酬請求事務専門士」は、一般社団法人 専門士検定協会が設立した民間資格です。調剤に関わる調剤報酬を的確に算定し、説明することができる即戦力となる人材の育成を目指して設立されました。受験資格は特になく、資格上位から1級、2級、3級と分かれています。
1級は“調剤報酬の基礎・応用を理解し、的確に説明することができる(教育者・リーダーレベル)”、2級は“調剤報酬の基礎応用を理解し、実務に生かすことができる(中堅社員レベル)”、3級は“調剤報酬の基礎を理解している(新入社員レベル)”に相当し、級が上がるほど、試験の出題範囲が広がり、難易度が高くなります。
全級共通の試験項目としては、保険調剤に関連する学科試験(30問)と調剤報酬明細書の作成に関する実技(3例)があります。2級以上は追加問題があります。2級ではマークシート形式の応用問題20問が追加され、1級では応用追加問題20問(マークシート形式)に加え、処方箋から調剤報酬明細書の設問箇所点数を求める(手書きレセプト)1例が課されます。
受験方法は、1級は会場での受験が必要ですが、2級、3級に関しては会場受験の他、FAXによる通信受験も可能です。受験対策として、同協会からe-ラーニングのプログラムも提供されています。2021年の合格率は、1級が約20%、2級が約40%、通信2級が30~40%、通信3級が50~60%です。ただし、資格取得後も2年に一度の更新が必要です。
3-6.医療保険調剤報酬事務士
「医療保険調剤報酬事務士」とは、医療保険学院が設立した民間資格です。資格を取得するためには、医療保険学院が実施する通信講座を受講し、全3回の中間試験に合格し、さらに修了検定試験に合格する必要があります。
講座の内容は、調剤薬局における実践的な業務を反映させた専門性の高い内容になっています。試験は年に12回実施され、内容は、医療保険制度の知識や保険請求業務に関する知識を問う学科試験と、レセプトの点検および作成スキルを確認する実技試験になっており、自宅での受験が可能です。
医療保険調剤報酬事務士の修了検定試験は、医療保険学院の通信講座の受講生かつ全3回の中間試験に合格した人が対象の試験のため、合格率はほぼ100%になっています。
参照元:医療保険学院/調剤薬局事務
4.資格を取得するための勉強方法
調剤薬局事務関係の資格を取得しようとするとき、検定試験に向けての勉強方法は、主に独学か、あるいは通信・通学講座で学ぶかの2つのパターンがあります。
4-1.独学
調剤薬局事務関係の資格の中には、独学だけで取得を目指せるものも少なくありません。そこで、まずは独学についてのメリットとデメリットを見ていきましょう。
メリット
自分に合ったペースやスケジュール、自分が使いやすいテキストを選択して勉強ができるといった自由度の高さが挙げられます。そのため、現在は別の仕事に就きながら、あるいは家事や育児をしながら勉強したいという人も取り組みやすいという魅力があります。また、テキスト代以外に経済的負担が少ないのもメリットです。
デメリット
大きなデメリットには、調剤薬局事務検定試験や医療保険調剤報酬事務士など、独学だけでは受験資格が得られない資格もあり、挑戦できる資格の選択肢が狭くなってしまうことが挙げられます。
その他、試験に向けてのスケジュールや参考書のセレクトなどを自分で管理する力が求められます。自分自身を客観的に観察し、試験に向けてのペース配分や一日の勉強量などを決め、継続していくことができない人には難しいことを留意しておきましょう。
4-2.通信・通学
調剤薬局事務関係の資格取得を目的とした通信講座や教育プログラムにのっとって勉強する方法です。資格認定の主催団体が講座を実施しているケースや、各種人材育成・教育系の企業が講座を開設しているケースなど、さまざまな教育機会があります。
例えば、調剤薬局事務検定試験や医療保険調剤報酬事務士などの資格に関しては、主催団体が定める講座を受講することが必須のため、これらの資格取得を目指す人は、必然的にこの勉強方法を選択することになります。通信・通学の主なメリット・デメリットは次の通りです。
メリット
最大のメリットは、検定試験に求められる知識やスキル、試験合格のためのノウハウをピンポイントで享受できることです。調剤薬局事務関係の資格の難易度は、それほど高くないため、用意された教育プログラム、スケジュールに沿って勉強を進めておけば、見通しも立てやすく、合格できる確率も高まります。
勉強をしていて分からないところがあれば、講師に質問できるところも大きなメリットです。さらに通学の場合は、同じ資格取得を目指す仲間ができ、モチベーションも高められることもメリットといえるでしょう。
デメリット
通信・通学共通のデメリットには、独学よりも経済的負担が大きいといった点が挙げられます。
通学のデメリットは、時間の確保が必要な点です。決まった時間に決まった場所へ定期的に通学することになるので、現在の仕事を続けながら、あるいは育児をしながら、まとまった時間を確保するのが難しい点が挙げられます。
通信のデメリットは、誰にも何も言われず、自分一人で実践していく中で、意志を強く持って勉強を行わないと、不明点や多忙などを理由にスケジュールの遅延につながる可能性がある点です。
5.調剤薬局事務に向いている人の特徴
医薬関係の専門職である調剤薬局事務の仕事に向いている人の特徴について見ていきましょう。
5-1.几帳面な人
調剤薬局での事務作業には、医療関連法規に関する知識や、薬理・薬剤に関する知識、調剤報酬請求に関する知識が要求される上、全ての業務において正確性が求められます。
患者さんの個人情報を預かり、会計業務やレセプトのために正しく記録する必要があるなど、正確さが求められる場面が多い仕事です。うっかりミスを起こさないためにも、記入漏れ、記録違いがないか常にダブルチェックの実践や見直しの習慣が求められます。几帳面な人の方が負担を感じず、着実に業務をこなしやすいといえるでしょう。
5-2.人と接するのが好きな人
人とコミュニケーションをとるのが好きという人は、調剤薬局事務に向いているといえます。調剤薬局事務は薬局の窓口として、患者さんと接する機会が多いだけではなく、薬局内外の薬剤師や医師、製薬会社や保険者など、さまざまな立場の人との円滑なコミュニケーション能力が求められるためです。
一日の業務の半分以上を人とのコミュニケーションが占めることもありますが、人と接することが好きな人であれば、むしろそれがモチベーションとなって、仕事に取り組むことができます。
5-3.周りと協力しながら進めるのが好きな人
調剤薬局の業務は、患者さんの健康に関わる責任ある仕事を担うため、周囲の事務スタッフや薬剤師などと十分に協力しながら、仕事を進めることが求められます。
例えば、「分からないところは周囲に聞いて助けを求める」、あるいは逆に「分からないことで困っているスタッフがいれば自分が率先してサポートする」など、自然と互いが協力し合える姿勢が大切です。人と協力しながら、何かに取り組むことが好きという人なら、自分の持ち味を生かした働き方ができます。
6.調剤薬局事務は未経験でも転職は可能?
調剤薬局事務は未経験でも転職を目指すことは可能です。実際に調剤薬局事務に関する求人を見ると、未経験者を受け入れている職場は少なくありません。
ただ、その場合は、未経験者として入職後、日々の実務を通して調剤薬局事務に必要な知識やスキルを身に付けられる環境と自分自身の努力が必要です。
未経験者が調剤薬局事務としての転職を希望する場合は、求人票をよく見て、勤務時間や給与面の条件だけでなく、未経験者の受け入れ体制や、教育などのサポートが充実しているか、スキルアップが見込めるかなどもチェックするようにしましょう。
薬剤師が調剤薬局へ転職する際には、求人票の見方についても知っておきましょう。調剤薬局へ転職する際の求人票の見かたについては、以下の関連記事を参考にしてみてください。
7.まとめ
調剤薬局事務は、調剤薬局の窓口としての受け付け業務だけでなく、調剤報酬の算定やレセプト入力、その他の在庫管理など多岐にわたる業務をこなさなくてはならない職業です。調剤薬局事務になるためには、必ずしも資格が必要なわけではなく、未経験者も可としている求人も少なくありません。
しかしながら、現場では保険調剤に関する専門知識や実践的な専門スキルが求められるため、未経験者が入職し、日々の業務をこなしながら、専門知識やスキルを身に付けていくには、周囲のサポートと本人の努力が重要となってくるでしょう。
また、調剤薬局事務の求人の中には、資格保有者に対する優遇が設けられている場合もあります。
実務未経験者が転職を希望する際は、あらかじめ調剤薬局事務関連の資格を取得し、転職を有利に進められるよう準備を進めておくのも一つの方法です。
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