薬剤師の転職には職場見学が必須?その理由やポイントを紹介

薬剤師の転職には職場見学が必須?その理由やポイントを紹介
薬剤師の転職に関する情報を調べていると、よく目にするのが「職場見学のすすめ」です。

転職先の情報については、インターネットで勤務条件や給与、扱う処方箋枚数や薬剤の種類など、おおよその内容を知ることができるのが当たり前になっている今、「それでも職場見学は必要なの?」と思う方もいるでしょう。
しかし、職場見学は、求人票やネット上では知ることのできない“職場の雰囲気”や“勤務実態”などを詳しく知ることのできる絶好のチャンスです。本気で転職を考えているなら、ぜひ職場見学に行くことをおすすめします。

今回は、薬剤師が職場見学に行くべき理由や、見学時のチェックポイントについて詳しく解説します。

1. 薬剤師の職場見学とは

職場見学はその名の通り、転職を希望する企業の職場を訪れ、現場を見学する機会のことです。

薬剤師の場合、出勤から退勤まで、同じメンバーと同じ空間で過ごすことがほとんどのため、実際の職場を見学することによって得られる情報量は多く、職場に関する不安や疑問を解消したり、就職後の自分の働き方をイメージしたりするのに大いに役立ちます。

2. 薬剤師が職場見学をした方が良い理由


職場見学を受け入れているかどうかは、企業によって判断が異なりますが、できることならぜひ職場見学をしておいた方が良いです。

薬剤師が職場見学をした方が良い理由についてみていきましょう。

2-1. 職場とのミスマッチを防げる

薬剤師の職場は、調剤薬局・病院・ドラッグストア・企業など多岐にわたり、社風や現場の雰囲気もさまざまです。求人情報に掲載されている内容だけで判断し、転職を決めてしまうと、入社してから、求人情報の内容と現場の間の大きなギャップに気付き、仕事が続けられなくなることもあります。そうすると、また別の転職先を探さなくてはなりません。

このようなミスマッチによる失敗を防ぐためには、実際の職場を見学してみるのが一番です。転職先探しにおいて、自分の目で見て体験したことは、求人情報の文言よりも大きな決め手になります。

2-2. 求められるスキルや職場の雰囲気が掴める

薬剤師として働く上で、誰しもが気になるのは職場の雰囲気だと思います。
「上昇志向のある薬剤師が揃っている活気のある職場」であったり、「地域の人から親しみをもたれるようなアットホームな職場」であったりと、その職場の持つ雰囲気も多種多様です。

また、薬剤師に求められるスキルも職場によってさまざまです。
例えば、小児科クリニックに併設された薬局では、赤ちゃんや子どもにも対応できる指導スキルが求められるでしょうし、大学病院周辺の薬局では、幅広い診療科の薬の調剤・指導技術が求められるでしょう。

あらかじめ職場見学をしておけば、自分の持っているスキルと、その現場の雰囲気や温度がかけ離れていないか、ある程度判断することができます。

3. 薬剤師の職場見学で見るべきポイント

では実際に、職場見学に行く場合は、どのようなことに気を付けて見学をすればよいのでしょうか。薬剤師の職場見学で見るべきポイントについて解説します。

3-1. 年齢や性別などの構成

薬局には、主に「管理薬剤師」「薬剤師(正社員またはパート)」「受付・事務」などのスタッフが在籍しています。まず、それぞれの職種における年齢の構成をチェックしましょう。特に、年齢層に大きな偏りのある職場は、注意が必要です。

若手層が中心の職場だった場合、一見活気のある職場に見えますが、その分、ベテラン薬剤師が馴染みにくかったり、あるいは結婚・子育てなどのライフイベントを迎えた時に、勤務を続けるのが難しくなったりする側面があるかもしれません。

年配のスタッフが中心の職場の場合は、経験の浅い薬剤師や若い薬剤師がすぐにやめてしまうといった事情があるのかもしれません。

また、性別の構成もチェックしておきましょう。男性中心の職場の場合は、子育てや介護などの家庭の事情に対する配慮が期待できない可能性があります。

自分のライフスタイルや仕事に対する考え方とマッチしているか、入社して周囲と馴染めそうかどうか、しっかりとチェックをしましょう。

3-2. スタッフの応対

薬剤師と事務スタッフのやり取りや、患者さんへの応対の様子をしっかりチェックし、職場内の人間関係や、店舗全体の雰囲気を掴みましょう。

薬剤師同士のやり取りがぎこちなく、どことなく不安を感じる職場の場合、人間関係に問題を抱えており、転職しても長続きしない可能性があります。また、薬剤師と事務スタッフが、うまく協調しながら業務を進められているか、薬剤師が事務スタッフに対して横柄な態度で接していないかなど、細かく観察することも大切です。

もし、質問ができる機会があれば、実際に働いている薬剤師に何か尋ねてみて、見学者に対する応対を見てみるのもよいでしょう。見学者に対しても、きちんと挨拶をし、応対してくれる職場であれば、入社後も円滑にコミュニケーションが取れるでしょう。逆に、見学者に対する応対が雑であった場合は、教育体制や人間関係に問題を抱えているか、あるいはあまりにも業務が多忙すぎて、余裕のない職場だということも考えられます。

3-3. 使用機材や設備

散剤分包機や薬袋発行機、レセコンなど、調剤・管理業務に使用する機材がどの程度充実しているか、チェックしておきましょう。自動化が進んでいる職場であれば、薬剤師の業務の負担も軽減され、働きやすい職場といえるでしょう。自分が使い慣れた機種が入っていれば、入社後すぐに調剤業務にあたることができます。

また、入社して快適に働くことができるかどうかを見るために、従業員用の更衣室やトイレ、ロッカー、休憩室などの設備が充実しているか、整頓や清掃が行き届いているかもチェックしましょう。

4. 薬剤師が職場見学をするには?

転職にあたり、薬剤師が職場見学を希望する場合は、主に2つの手段があります。

1つ目は、自分自身で直接店舗に行ってみるという方法、そしてもう1つは、転職エージェント経由で見学を申し込む方法です。

4-1. 実際に足を運ぶ

転職を検討している企業が、調剤薬局や店舗を経営している場合は、顧客として実際に足を運ぶことでおおよその雰囲気を体験することができます。

ただし、この方法の大きなデメリットは、内部の状況を詳細に伺い知ることはできないことです。とはいえ、患者・顧客として実際に接客や指導を受けてみることで、従業員の業務態度を知ることができますし、また全体を見まわせば、スタッフの年齢・性別の構成を知ることもできます。

転職を希望する店舗に見学に行く場合は、詳細な立地条件や、客層などが分かるので、おおよそのイメージを掴むことができるでしょう。

4-2. 転職エージェントを経由する

職場についてさらに詳細に見学をしたい場合は、転職エージェントを介して見学を申し込む方法があります。

例えば薬剤師を専門に扱う転職エージェント「マイナビ薬剤師」では、転職を希望する薬剤師に向けて、全ての転職支援サービスを無料で提供しています。主なサービスとしては、キャリアアドバイザーによる転職先のマッチングや、好印象を与える履歴書の書き方や面接の受け方のアドバイスの提供、各種日程調整や条件交渉の代行、転職に役立つセミナーや相談会の開催などがあり、職場見学の希望者に対しては、職場見学もご案内しています。

「この求人の職場見学をしてみたい」と希望すれば、キャリアアドバイザーが本人に代わって企業への見学オファーや日程調整を行います。実際に、マイナビ薬剤師を介して職場見学をして、「入社前に現場の雰囲気が分かってよかった!」という声も届いています。

とはいえ、新型コロナウイルス感染症が広がる現在、「見学に行くのは不安」という方も多いと思います。見学に際して安全面での不安がある場合もキャリアアドバイザーに相談してみましょう。「1店舗当たりの見学受け入れ人数」など、気になる点を丁寧に答えてくれるので安心して職場見学に挑むことができます。

もちろん、職場見学のみならず、転職に不安や疑問はつきものです。分からないこと、心配なことは何でもキャリアアドバイザーに相談してみましょう。

5. 職場見学をする際に必要な準備


職場見学が決まったら、せっかくのチャンスを活かすために、準備は入念に行いましょう。
ここでは、薬剤師が職場見学をする際に準備しておくことや、心構えについてみていきましょう。

5-1. 自分なりのチェックリストを作る

職場見学で知りたいところ、確認したいところをまとめたチェックリストを作っておき、要点を抑えながら見学ができるようにします。チェックリストを作る時のポイントとしては、転職先を選ぶにあたり、自分が重要視したい点を中心に作成すると良いでしょう。

例えば、薬剤師としての業務に関わるチェックポイントとして、

  • 現場全体の雰囲気
  • 店舗責任者やその他の薬剤師、事務職員の人柄や年齢構成
  • 処方箋応需枚数や主な処方箋発行元の医療機関(診療科)
  • 職場が求める資質やスキル
  • 調剤関連機器の充実
  • レセコンの運用状況
  • 在宅医療・かかりつけ薬剤師制度の実施状況
  • 接客応対や服薬指導の様子

などがあります。

また、従業員としてチェックしたいポイントとしては、

  • 正社員、またはパート職員の勤務体系
  • 残業の有無
  • 転勤の有無
  • 各種手当や補助
  • 休暇のとりやすさ
  • 福利厚生
  • 従業員用スペースの充実(更衣室、休憩室、ロッカー、トイレなど)

などがあります。

5-2. 事前に質問を用意しておく

職場見学に行くと、責任者または従業員への質問の機会をもらえることがあります。

ただし、質問に答えてくれる相手は、あくまでも業務中であることを念頭に置かなくてはなりません。質問する側としては、要点を押さえて質問するのがマナーです。職場見学で質問したい項目をいくつか用意しておくと、慌てることもなく、スムーズにやり取りをすることができます。

6. まとめ

現場の環境を実際に目で見て知ることができる職場見学は、転職を考えている薬剤師にとって、ミスマッチによる失敗を防ぐ絶好の機会です。チャンスがあれば、ぜひ一度職場を見学してみましょう。

ただし、職場見学の受け入れ状況は企業によってさまざまです。求人票や募集要項などに特に記載されていなくても、転職エージェントを経由すれば、職場見学を受け入れてもらえる場合があります。

転職先の候補が決まったら、転職エージェントのアドバイザーに相談し、職場見学の準備を進めていきましょう。

 

この記事の著者

医学博士、医学研究者

榎本 蒼子

最終学歴は京都府立医科大学大学院医学研究科博士課程卒業。2011~2015年 京都府立医科大学にて助教を勤め、医学研究および医学教育に従事。

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