薬剤師が転職で高収入を得るには?年収アップのコツや方法について紹介

薬剤師が転職で高収入を得るには?年収アップのコツや方法について紹介

病院や薬局で働く薬剤師が、転職先を選ぶ理由の第1位は、「給与水準」であるということが、厚労省の調査でわかっています。

では、専門職である薬剤師のスキルを活かしながら、どのようにすれば高収入が得られるのでしょうか。

今回は、転職で高収入を得るためのコツや、年収アップが見込める職場をご紹介します。

参照元:厚生労働省/薬剤師確保のための調査・検討事業

1.薬剤師で高収入を得ることは可能?

1年おきに中央社会保険医療協議会(中医協)により実施されている「医療経済実態調査(医療機関等調査)」によると、保険薬局に勤務する薬剤師の収入は、2015年の503万円をピークに、徐々に減少傾向を示しています。

なかでも、新型コロナ感染症の影響は大きく、2020年の収入は474万円で、前年の2.2%減と大幅ダウンとなりました。

一方、管理薬剤師の収入は2020年が721万円であり、一般の薬剤師より高く、減少幅1.2.%に押さえられました。

保険薬局の薬剤師の給与の推移このような現状を踏まえた上で、今後どうすれば薬剤師で高収入を得られるか見ていきましょう。

参照元:厚生労働省/第22回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告
厚生労働省/第23回 中医協医療経済実態調査(医療機関等調査)結果報告に対する見解
厚生労働省/第21回中医協医療経済実態調査(医療機関等調査)結果報告に対する見解
厚生労働省/第20回中医協医療経済実態調査(医療機関等調査)結果報告に対する見解

1-1.男女別・地域別の薬剤師の平均年収

保険薬局の薬剤師には、性別や勤務地域によって、平均年収に違いがあります。

以下の表は、「令和3年賃金構造基本統計調査*」における、きまって支給する現金給与額の12ヵ月分」と「年間賞与その他特別給与額」から算出したそれぞれの平均年収です。

*「賃金構造基本統計調査」:毎年厚生労働省がおこなう国の統計調査のひとつで、無作為に抽出された事業所の6月分の給与と前年の賞与額等の報告に基づくため、前述の医療経済実態調査(医療機関等調査)とは異なります。

●男女別平均年収

年収(万円)
男女計 580.5
男性薬剤師 630.3
女性薬剤師 543.3

男女別の平均年収は、男性薬剤師の方が約85万円高く、1ヵ月あたり7万円ほどの違いがあります。

これは、男性の方が、常勤薬剤師の比率が高いことや、認定薬剤師の取得が多いことが理由として挙げられます。

女性の場合、妊娠・出産、育児にともなう退職・再就職や時短勤務など、働き方の変化が平均年収に大きく影響していると考えられます。

●地域別平均年収

順位 都道府県 平均年収(万円)
1 山口県 667.1
2 香川県 652.9
3 茨城県 649.2
4 滋賀県 639.6
5 石川県 638.2
全国平均 580.5

地域別平均年収の1〜5位は表のとおりです。1位の山口県は667.1万円で、全国平均と比べて86.6万円高くなっています。東京都は20位、神奈川県は17位、大阪府は37位であり、大都市圏が必ずしも平均年収が高いとは限りません。

薬剤師の年収に地域格差が生じる理由はいろいろあり複合的です。ひとつは人口当たりの薬局数が多い地域では、薬剤師の競争が激しく年収を押し上げていることが考えられます。

また薬局数が多いということは、経営者比率や管理者割合、常勤薬剤師数が多いため、平均年収が高いということにもなります。

さらに、地域格差が出るもう一つの理由としては、医療資源が乏しく高齢者人口が多い地域では、薬剤師一人当たりの高齢者人口が高く、診療報酬の高い在宅医療の実施率も高くなります。

そのため、薬剤師が不足していることが多く、給料を引き上げることで人員確保の狙いがあると考えられます。

なお、薬剤師の都道府県別の年収について、詳しくは、関連記事をご覧ください。

参照元:e-Stat/第令和3年賃金構造基本統計調査
厚生労働省/薬剤師の需給動向把握事業における調査結果概要

1-2.職種によって年収1,000万円以上を目指すことも可能

他の業種より比較的収入が高い薬剤師のスキルや資格を活かして、将来的に年収1,000万円以上を目指すには、次のような職種が選択肢として挙げられます。

  • 大手製薬メーカーの研究・開発職
  • 医薬品や医療機器のメーカーの薬事や学術
  • 外資系の治験を受託する機関(CRO)の臨床開発モニター(CRA)
  • 外資系製薬会社のMR職
  • 大手化粧品メーカーなど

なお、薬剤師の年収アップについて詳しくは関連記事をご覧ください。

2.薬剤師が高収入を実現するためのコツやポイント

高収入が見込める職種があるものの、薬剤師という職業にも仕事自体の魅力ややりがいを感じている方も多いと思います。

薬剤師でありながら高収入を実現するにはどうすればよいでしょうか。そのコツやポイントを紹介します。

2-1.スタート年収だけでなく、昇給幅を確認する

初年度の収入の高さは就職の決め手のひとつですが、長期的な視点で見ると昇給制度や昇給幅も重要なチェックポイントです。

提示された年収は高いものの、まったく昇給しない職場もあれば、初年度の年収は低いけれど、どんどん昇給していく職場もあります。昇給制度と昇給幅を事前にしっかりと確認しておきましょう。

2-2.より年収の高い地域や職種に転職を考えてみる

いまより年収の高い職場への転職を考えてみるのも一つです。

前述のとおり、地域別の平均年収に違いがあります。

令和3年度の厚労省の「薬剤師確保のための調査・検討事業報告書」によると、半数以上の薬局薬剤師が出身地で勤務しており、今後も現在の勤務地を希望すると回答していますが、より高い年収が実現できる地域に一歩踏み出してみることも大切です。

また、薬剤師にこだわらず、高い年収が見込める他の職種にチャレンジするのも良いでしょう。

前述の製薬メーカーの開発、研究、臨床治験モニター、MR職などは、薬剤師になるために学んだことを十分活かせるはずです。

参照元:厚生労働省/薬剤師確保のための調査・検討事業

2-3.キャリアを積み、将来的な高収入を目指す

保険薬局でキャリアを積んで管理薬剤師になれば、一般薬剤師よりも確実に収入はアップします。

また、専門薬剤師などの資格取得や薬剤師としての知識と技術を培うことができれば、専門的立場が必要とされる職場では、高収入が期待できます。

例えば、薬局の常勤薬剤師の場合、40代以降の約5%が年収1,000万以上という報告もあります。将来的な高収入を目指すには、まず現状でキャリアを積むことも大切です。

参照元:厚生労働省/検討会のとりまとめへの対応状況等

2-4.副業を考えてみる

高収入を目指すには、副業を考えてみるのもひとつの方法です。とはいっても公務員薬剤師の場合、国家公務員法または地方公務員法によって、あらゆる副業は禁止されています。

管理薬剤師の場合、他の薬局や、薬事に関する仕事はできませんが、まったく別の業種であれば副業が可能です。

一般の薬剤師であれば、薬局を掛け持ちしたり、派遣薬剤師として単発で働いている方は多くいます。

また、休日を利用して、在宅でメディカルライターや医薬論文の翻訳、理系の家庭教師などで収入を増やすことを考えてみるのも良いでしょう。

薬剤師の副業について詳しくは関連記事をご覧ください。

3.年収アップに必要なスキル

業務時間が長くなれば、残業代を含めて年収をアップさせることもできるでしょう。しかし、転職においては自身のスキルを認めてもらうことで、収入アップを交渉できるきっかけとなります。

薬剤師としての知識を基盤として、収入につながるスキルアップを考えてみましょう。

3-1.管理薬剤師や企業の管理職となるための管理能力

どんな業種であっても、年収をアップさせるための近道として考えられるのは、管理職となることです。

管理職はスタッフのスケジュール管理や仕事の調整を行い、ときには新人の指導や上司への交渉など、さまざまな業務をこなさなくてはなりません。

また、薬局の経営に携わる機会もあり、売り上げや利益といった経営力が求められることもあるでしょう。加えて、そうした業務を滞りなく進めるためには、コミュニケーション力も必要です。

仕事を含めたトータルでの管理能力は、年収アップに欠かせないスキルと言えるかもしれません。

3-2.研修認定薬剤師や実務実習指導薬剤師などの資格

薬局や企業にとって利益に直結する人材もまた、高収入が提示されやすくなります。

特に保険調剤を扱う薬局では、薬局の利益確保につながる研修認定薬剤師や認定実務実習指導薬剤師の資格を持っていることで、より有利な交渉ができることでしょう。

今後はさらに健康サポート薬局や在宅医療といった活躍の幅が広がり、新たな資格が設けられる可能性もあります。専門的な資格を積極的に取得するのもおすすめです。

4.高収入とされる職場のメリットや注意点

年収アップを目指して転職する場合、高収入が期待できる職場の状況を知ることが大切です。高収入とされる職場のメリットや、転職の際に注意する点をみていきましょう。

4-1.製薬メーカーなどの大手企業の場合

製薬メーカーなどの大手企業の場合、研究・開発、薬事、学術は、特に専門性の高い知識が必要とされるため、薬の専門家としてのスキルが活かせる職場です。

4-1-1.メリット

  • 高収入が見込める
    製薬メーカーや大手企業は、平均と比較して収入が高い傾向にあります。基本給やボーナスが高い上に、家族手当や住宅手当などの手当てが厚く、能力によって上乗せされることもあるようです。また、昇給率も高い企業では、将来的な高収入も期待できます。
  • 安定感
    中小企業などに比べて、大手企業ならではの安定感があります。スケールの大きい仕事ができることも多いです。また、法人税が高い大企業には、2021年度から大企業が採用を増やした場合の税制優遇措置があります。そのため給与が増額、維持されやすい環境があるようです。
  • 福利厚生が充実
    保険制度など法定福利以外の、会社独自に制度化された法定外福利が充実していることが多いです。例えば、社宅、家賃手当や住宅手当、冠婚葬祭費用、ライフワークバランスのための優待制度などです。
  • 教育制度が充実
    教育・研修制度、資格取得のサポートなど、人材の育成に力を入れている企業が多いです。コミュニケーション能力など、ビジネススキルが身に付けられるのも大企業ならではです。

4-1-2.注意点

特に高い専門性を必要とされることが多いため、常に新しい薬学情報を得るなど、日々精進しなければなりません。

職種や部署によっては、抱えている案件次第で休日出勤や残業、出張などが多いことがあることを心得ておく必要があります。また、転勤の可能性があるかは確認しておく方が良いでしょう。

4-2.ドラッグストアの場合

調剤薬局併設のドラッグストアも増えています。

地域に根差した店舗運営のところも多く、かかりつけ薬剤師や在宅医療のほか、介護予防教室・栄養教室などに取り組むところもあります。

4-2-1.メリット

  • 初任給が高く福利厚生も充実
    初任給だけでなくスキルによる昇給率が高いことです。大手ドラッグストアでは、大手企業並みの福利厚生や各種手当なども充実していることが多いです。
  • 勤務時間が柔軟
    シフトを組んで早朝から深夜まで長時間営業していることが多いため、必要に応じて勤務時間や休日の調整がしやすいです。特に妊娠・出産、子育てなどライフステージに合わせた体制が整っているようです。
  • 教育研修制度が整備
    教育制度が整っており、実務や調剤などの薬剤師としてのスキルだけでなく、接客、販売管理などを習得することができます。

4-2-2.注意点

対応する業務内容が幅広く、調剤業務だけでなくOTC販売に携わることが多いことは注意点の一つです。

また、勤務時間が柔軟である一方、シフトが不規則になるというデメリットもあります。

4-3.地方の調剤薬局の場合

厚生労働省の「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」のとりまとめ(令和3年6月30日)によると、二次医療圏*において、薬剤師の偏りがあることがわかっています。

特に、薬剤師1人あたりの高齢者人口が多い地域では、約4割の薬局で薬剤師が不足しており、薬剤師の需要が高くなっています。

*救急医療を含む一般的な入院治療が完結する範囲:市区町村単位

参照元:厚生労働省/検討会のとりまとめへの対応状況等

4-3-1.メリット

  • 需要があり、収入が高い
    薬剤師が不足している地域では、比較的高い給与設定となっていることが多いです。
  • 在宅医療など患者さまとの距離が近い
    高齢者人口が多い地域では、在宅医療やかかりつけ薬剤師などで、患者さまとの距離が近く、地域に密着した仕事ができ、薬局薬剤師としてのやりがいがあります。
  • 地域包括医療の一員としての役割
    地域包括医療において、薬物療法の情報提供などで役に立てる機会が多いです。

4-3-2.注意点

地方の調剤薬局では、処方箋枚数と比べて、高齢の患者さまが多いことから、処方箋1枚当たりの薬剤数が多く、一包化などの手間のかかる調剤が多いことがあります。

地域に密着したサポートをおこなう場合には、長時間勤務や休日の対応などが求められることもあります。

また、土地柄や人間性など、環境に適応するまでに時間がかかる場合もあります。

5.年収アップを目指して転職するには?

では、転職で年収アップを目指すために、まずやっておくべきことを紹介します。

5-1.自分が持つスキルや資格の棚卸しをする

年収アップを目指して転職するにあたって、まずスキルや資格の棚卸しをしましょう。

棚卸しは、取得・更新している資格だけでなく、調剤や服薬指導など、なんでも良いのです。

いままで自分が携わってきたことを、「できる」、「やったことがある程度」、「あまり自信がない」などのように、ランク付けをしていきます。

また、どんな領域や診療科に強いのか、このような疾患の在宅での指導経験があったかなど、改めて振り返ります。

その他、業務の効率化やスピードアップ、取り組んできた課題などあれば、それもスキルの一つとして挙げていきます。そして、自分という看板の下に、自分の持つスキルや資格をメニューにして売り込みましょう。

5-2.業界・業種の市場調査をおこなっておく

現状よりも有利な条件の転職先を見つけるためには、各業界・業種における薬剤師需要や将来性などに目を向けてみましょう。

例えば、厚生労働省は、少子高齢化や人口減少から、薬剤師の地域偏在を解消するための取り組みをおこなっています。

また、製薬業界では、海外とのドラッグラグやデバイスラグを解消するための薬事申請の迅速化などがすすめられ、薬事の人材が必要とされています。

高収入を目指すには、政治や経済も含めた将来を見据える目を養いましょう。

参照元:厚生労働省/薬剤師関係について

5-3.転職エージェントを活用して年収交渉をおこなう

転職エージェントを活用して、年収アップの交渉をおこなってもらうというのも、一つの手です。

転職エージェントでは、経験やスキルというメニューに加えて、相談やアドバイスをする中で知り得た人柄や性格を含めて紹介するため、はじめに提示された額よりも高い年収で交渉をすることができるケースがあります。

自分で個別に年収交渉するのは、とてもストレスのかかる作業です。

代わりに年収交渉をおこなってくれる転職エージェントを頼ってみましょう。

6.まとめ

薬剤師が高収入を得るには、現職の病院や薬局で管理職を目指したり、研鑽を積んで専門薬剤師や各種認定薬剤師を取得したりするのも方法の一つです。

薬局の兼務やメディカルライターなどの副業で収入を増やす方法もあります。

また、収入が高い地域で勤務するのも、薬剤師としてのやりがいと収入の両方を手に入れられるかもしれません。

ただ、薬剤師には、薬剤師の資格を活かしたさまざまな転職の選択肢があります。

中には、年収1,000万円以上が期待できる職種もあります。高収入が期待できる職種の中で、興味があるものを選んでチャレンジするのも良いでしょう。

高収入という将来を見据えた転職を考えた時には、転職エージェントを利用してはいかがでしょうか。

薬剤師専門の転職エージェントであるマイナビ薬剤師には、薬剤師のスキルと資格を活かせる求人があります。

将来の高収入を目指すためには、いままでの経験を最大限に活かした求人はもちろん、考えたことのなかった職種の提案もあるかもしれません。マイナビ薬剤師を利用して、年収アップを目指してみましょう。

この記事の著者

薬剤師・ライター

小谷 敦子

病院・調剤薬局薬剤師を経て、医療用医薬品専門の広告代理店・制作会社に所属し、販促資材やMR教育資材、患者向け冊子などの執筆に従事。
専門医インタビューによる疾患や治療の解説などを、クリニックHP上に掲載するなどの執筆活動も行っている。

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