MR職に将来性はある?現状や新たに求められている役割について

MR職に将来性はある?現状や新たに求められている役割について
MR認定センターの「2021年版MR白書」によれば、MRの数は2013年の約6万6千人をピークに6年連続で減り続け、2020年には5万3千人まで減少しています。

かつては連日接待に明け暮れ、製薬会社の売り上げを担う「営業マン」としての役割が大きかったMR職ですが、2012年には旧来の接待が原則禁止となり、さらに2019年には情報提供活動の規制が厳格化され、本来の役割である情報提供活動の内容が問われるようになりました。

そんなMRの現状と将来性、さらには新たに求められる役割について解説します。

1. MR職の現状や将来が不安と言われている理由

2012年4月からMRによる医師の接待が原則禁止になりました。

それまでのMRの仕事は接待がメインかと思われるほどでしたが、接待がなくなったことにより病院以外で医師と接する機会は激減し、さらに医療業界にもIT・デジタル化の波が押し寄せ、病院を訪問する機会も減少しています。

多くのMRにとっては、思うように活動できない現状に加えて、将来的な不安要素も少なくないようです。

1-1. MR職が飽和している

オンラインやデジタルツールの導入による効率化が進んだ結果、MRの数は飽和状態となり、製薬各社では支店の廃止や希望退職・早期退職を募るなどMR職の業務体制について見直しを進めています。

2013年のピーク時には65,752人が活躍したMRですが、その後は毎年減り続けて2020年は53,586人となり、この7年間で12,166人の減少となりました。
参照元:MR認定センター/2021年版MR白書

今後も新型コロナ禍における病院からの訪問自粛要請もあり、MR職はさらに減少していくものと予想されます。

1-2. 医師がMRを必要としなくなってきている

製薬企業による接待が原則禁止となった2012年以降、ディオバン事件や三重大病院事件のような世間を騒がせる不正が次々と明るみに出ており、MRと距離を置くようになった医師も少なくありません。

さらに、スマートフォンやインターネットが普及し、社会一般の営業やマーケティングの手法がデジタル化していることから、伝統的なMRの営業スタイルに違和感を覚える医師も増えています。

また、コロナ禍にあってMRと面会できなくても、ウェブ経由で情報を入手できるので困ることはないとする医師も相当数存在するようで、こうした社会的な状況の変化が、医師にMRの必要性を感じさせない要因となっているようです。

1-3. 営業規制が厳しくなってきている

2012年以降、医師と製薬企業の癒着がメディアで大々的に報じられてきたこともあって、製薬業界に対するコンプライアンス強化を求める声が高まりました。

一方、接待が禁止されたことで思うように営業活動ができない状況からか、MRによる行き過ぎた情報提供活動も目立つようになり、2019年4月には厚生労働省より「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドラインについて」が設けられるに至っています。

加えて、2020年以降は新型コロナ感染症対策から、MRに訪問自粛を求める病院が増えています。

訪問可能な病院でも事前アポイント制や面談時間の制限などが徹底され、これまでのような「医師の出待ち」は事実上できなくなっています。

現状ではガイドラインだけでなく病院からも規制をかけられる格好となっており、MRの営業活動は厳しい状況にあるといわざるを得ません。

1-4. 薬価の引き下げ強化や新薬がなかなか開発されない

もともと日本の薬価は欧米に比較して高く設定されていたため、外圧もあって2年ごとの薬価見直しでは、毎回5~8%ずつ引き下げられてきました。

2018年からはさらに政府による薬価引き下げ圧力が強まり、2021年度には初めての中間年改定が行われました。

また、新薬開発には1000億円以上の莫大な費用がかかる上に、基礎研究に対する政府の援助は決して手厚いとはいえず、オプジーボのような画期的新薬=「ピカ新」は生まれにくい状況にあります。

参照元:厚生労働省/医薬品産業の現状と課題

新薬がなかなか上市されないなかで、MRは既存薬と効果の変わらない「新薬」を営業しなければならず、モチベーションの上がらない仕事をなんとかこなしている現状もあります。

しかも、多くの製薬企業が必要なときだけCSO(医薬品販売業務受託機関)にMRを派遣してもらい、自社で雇用するMRは必要最小限に抑える方向にシフトしており、将来に不安を募らせているメーカーMRは少なくありません。

2. MRとして働いていくには

医師との面談が仕事であるMRにとって、現在の状況はとても働きにくい環境といえます。

しかし、このような状況にあってもMRが不要ということではありません。

製薬企業と医師の双方にとってMRは今後も必要な存在であり、MRという職種そのものがなくなることはないでしょう。

これからもMRとして働いていくために、現在の苦しい状況を乗り越えられる職場選びについて考えます。

2-1. 資本力のある会社で働く

MRにとってピカ新はもちろん、改良型の新薬であるゾロ新(改良型新医薬品)であっても、とにかく承認数の多い企業を職場に選びたいものです。

新薬を生み出すための研究開発費の金額が多い国内の大手製薬企業や、大手企業よりも研究開発費は少ないが、新薬承認数の多い企業もあります。

そのため、資本力と承認実績の両面から評価する必要がありそうです。

また、ドラスティックな人員削減などは気になりますが、実績ある外資系企業も選択肢の一つではあるでしょう。

2-2. CSOで働く

人員削減によって最低限のMRしか確保していない製薬企業に対して、一時的に営業リソースを補完するのがCMR(コントラクトMR)です。

CSO(医薬品販売業務受託機関)に所属し、委託を受けた企業に派遣されて一定期間だけ即戦力としてMR業務に従事します。

委託側には雇用が発生せず効率的な人員の運用ができるメリットがあり、受託側のCMRには、異なる分野の医薬品を手掛けられる、同時に複数の企業を掛け持ちできる、といったスキルアップやキャリアアップにつながるメリットがあります。

未経験からの転職組が多いCSOでは、メーカーのMRから転職すると収入が減ってしまう可能性もありますが、一方では人員削減の対象となるリスクを避けるため、メーカーからCSOに転職するMRも増えています。

3. 新たにMRに求められる役割

製薬業界では新薬の上市が少ない反面、ジェネリック薬品は増加の一途をたどり、新薬メーカーの経営を圧迫しています。

一方で高齢者の主要な医療現場は病院から在宅へと移され、地域包括ケアシステムの実体化と多職種連携が急務となっています。

社会と医療の関わりが急速に変化していくなかで、MRにも変革が求められることは必然といえます。

これまでMRは自社の新薬と、担当する医師の専門分野に特化した情報提供を行ってきました。

しかし、医療が在宅中心となり患者さんごとにオーダーメイド化されていくなかでは、個別の臨床に対する情報提供を行っていく必要が生じます。

MRの新たな役割として、担当する医師とともに患者さんとの接点を持ち、個々の患者さん向けの処方について情報提供を行うことが、今後は求められていくでしょう。

4. MRの考えられるキャリアとは

薬価の引き下げ圧力、新薬リリースの減少、ジェネリック薬品の拡大、さらにコロナ禍による訪問の制限と医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の進化などが相まって、ここ数年MRのニーズは減少傾向にあります。

しかし、MRという職業がなくなることはないとみられ、旧来型の営業スタイルとデジタルとのハイブリッド型MRに収れんしていくと考えられます。

それでは、現在苦境に立たされているMRが今後目指すべきキャリアパスを探ってみましょう。

4-1. 管理職を目指す

現在苦境にあるメーカーMRには、CSOやほかの職種への転身を試みるか、MRとして管理職を目指すか、選択肢はいずれか一つです。であれば、最初の選択肢はキャリアパスの王道ともいうべき管理職への道を検討してみてはどうでしょうか。

これまで培ってきた経験を糧に、営業所長やエリアマネージャー、さらには本部の管理職へと昇り詰めることができれば、MRとしてのキャリアは成功といえるでしょう。

ただし、営業所の統廃合や同僚との競争など不安要素もあり、険しい道のりであることは間違いありません。

会社や職場の状況と自身の適性をよく見極めた上でキャリア設計をすることが重要です。

4-2. 現在の職場でのキャリアチェンジを考えてみる

人事異動の希望が通るのであれば、転職せずに社内でキャリアチェンジを目指してみるのもいいでしょう。

MRの経験を活かして後進を育成するトレーナーや、業界の知識と営業力を活かしてマーケティング部門を目指す方が多いようですが、もう少し専門性の高いファーマコビジランスMSL(メディカル・サイエンス・リエゾン)を目指してみてはどうでしょうか。

ファーマコビジランスについてはMRとの連携が欠かせないのでなじみ深い職種といえるでしょう。

MRの仕事よりも開発寄りで、医薬品だけでなく疾患についても調べる必要があるため、開発部門のなかにファーマコビジランスを置く企業もあります。

ファーマコビジランスの詳細はこちらの記事をご参照ください。

一方、MSLはディオバン事件以降、急速に普及したメディカルアフェアーズ部門の専門職として注目が集まる新しい職種です。

MRとは一線を画す中立的な立場で医師や研究者と関係性を構築するMSLは、医薬品のリスクとベネフィットを明らかにし、正しく伝えることを目的の核心としています。

国内製薬各社でも新卒採用が始まっていますが、現状はMRからの転身組が少なくありません。

MSLの詳細はこちらの記事をご参照ください。

4-3. 薬剤師への転職を検討してみる

薬剤師への転職を検討してみる

薬学部を卒業するにあたり、薬剤師よりもMRに魅力を感じてメーカーに就職したにもかかわらず、社会は大きく変わりMRは厳しい環境に置かれるようになってしまった、そう感じてMRから薬剤師への逆転職を目指す方が増えているのは当然といえるかもしれません。

MRの仕事では患者さんと接する機会はほとんどありませんが、営業活動のなかで身につけた高いコミュニケーション能力と情報収集力は、薬剤師の業務にも十分生かせる強みとなります。

薬剤師はMRと違って残業や転勤もほとんどなく、安定した生活を築けるというメリットもあります。

薬剤師への転職を考える方は、ぜひこちらもご覧ください。

4-4. 思い切って他業種へ転職してみる

MRとして身につけた営業力と医療に関する知識を活用して、他業種への転職を考えてみるのもいいでしょう。

MRに最も近い職種としては医療機器メーカーの営業職やMS(Marketing Specialist、医薬品卸販売担当者)があげられます。

たとえば、医薬品と医療機器の両方を手掛けるとある企業では、在宅医療事業の営業職全員にMRの認定資格取得を課しており、一人の営業マンが医療機器と医薬品両方の営業を担っています。

ほかにも医療や医薬品に特化した広告代理店や調査会社医療IT企業など、MRの経験とスキルが活かせる業種は少なくありません。

また、医療の中心が病院から在宅へと移るなか、MRが地域医療のなかで果たすべき役割も具現化し始めています。

MRから他業種への転職は大きな飛躍のきっかけとなる可能性を秘めており、キャリアアップにつながる重要な選択肢の一つといえるでしょう。

5. まとめ

ここ数年、AIを使用したチャットボットなど、MR支援の名目でDX化が進んだ結果、MRの数が減少するという逆転現象が起きています。

デジタル化以外にもネガティブな要因は多く、MRの将来性は不安定さを増しています。

最終的に生き残るMRとなるためには、専門分野において突出した知識や経験、あるいは英語力やデジタルスキルに優れているなど、ほかにないユニークな能力を身につける必要があります。

MRの道を究めるにしろ、転職やほかの職種への転身を図るにしろ、もっとも重要なことは情報収集です。

絶え間ない進化と変化を遂げていく医療業界で確実にキャリアアップしていくためには、先を読む力を持ち、リアルタイムで求職情報を提供してくれる優秀なエージェントが必要です。

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この記事の著者

ライター

朝倉 哲也

資格の知見を活かして、サプリメントや健康食品に関する記事など、書籍や雑誌で執筆を行っている。

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