薬剤師を辞めて違う仕事をしたいと思ったら-資格を活かせる職場や転職成功のコツを紹介
調剤補助員の登場やAIの普及などで、薬剤師の将来に不安を感じている方はいませんか?
実際に、身近で薬剤師から別の仕事に転職していく人を見送った経験のある方もいるのではないでしょうか。
しかし、薬剤師からの転身は、必ずしも現状への不満や将来を悲観してのことだけではありません。
薬剤師とは別の仕事に就きたい、そう感じているあなたに、資格やこれまでの経験を生かせる職場や転職のコツなどについて解説します。
目次
1.薬剤師を辞めて違う仕事がしたいと考える理由
薬剤師は転職経験者の多い業種ですが、職場を変えるだけでなく薬剤師を辞める方も少なくありません。実際に多くの薬剤師が以下のような理由で現状に満足できていない、としています。
- 職場の人間関係
- 人手不足、人材不足
- 休めないこと
- 残業など業務量の多さ
- 上司の理解
- 妊娠や育児中の風当たり
- 給与格差
薬局・病院を問わず、これらは薬剤師に共通の悩みと言えそうです。どの職場に転職しても同じような問題を抱えているなら、いっそ薬剤師ではなく違う仕事に就きたい、と思うのも無理はありません。しかし、薬剤師が別の道を選択するのは、こうした悩みだけが理由ではないようです。
参照元:J-STAGE/薬剤師のワーク・ライフ・バランスに関するアンケート調査
参照元:J-STAGE/病院薬剤師の職務満足度に関する多施設アンケート調査
2.薬剤師が活躍している場所とは
厚生労働省の「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、薬剤師が活躍している職場で最も多いのは薬局で約18万9千人、2番目に多いのは病院・クリニックなどの医療施設で約6万1千人となっています。そのほかでは医薬品関係企業が約3万9千人、行政・保健衛生施設が約6.8千人、大学約5千人です。
このなかで、薬局と医療施設で働く薬剤師の数は年々増えており、特に薬局薬剤師は右肩上がりで大幅な増加が続いています。しかし、他方では地域包括ケアの推進、門前薬局からかかりつけ薬剤師・薬局への転換、タスクシフト・シェアと調剤補助員の登場など、薬剤師を取り巻く環境は急激に変化してきました。
新たな薬剤師像が提示される一方で、薬剤師がそのスキルと資格を生かして活躍できるフィールドが、薬局や医療施設以外へと広がりを見せているのも事実です。
参照元:厚生労働省/令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況
3.薬剤師の資格が生かせる職場
薬局・医療施設を問わず、薬剤師の主な仕事は調剤と患者さんへの薬剤の交付、薬歴管理ですが、近年では薬剤師の資格や経験を生かして調剤業務以外の職場で活躍する薬剤師が増えています。
ここでは、薬剤師の資格が生かせる職種について見ていきましょう。
3-1.医薬情報担当者(MR)
医薬情報担当者(MR)は製薬会社に所属する営業職で、医療機関を訪問して主に医師に対して自社医薬品の営業活動を行います。医薬品の適切な使用法と有効性はもちろん、安全性や品質についても精通した医薬品のプロフェッショナルであり、薬剤師の資格が存分に生かせる職域です。
かつては休日昼夜を問わず接待やセミナーが行われていたため女性のMRは少数派でした。しかし、製薬業界の自主規制による過度な接待の禁止、さらにコロナ禍によるリモート営業の増加、外資系企業によるダイバーシティの推進などにより、現在は女性のMRも活躍しています。
医療情報担当者(MR)の仕事内容、必要な資格などについてはこちらの記事をご参照ください。
3-2.MSL(メディカル・サイエンス・リエゾン)
MSL(メディカル・サイエンス・リエゾン)は、製薬会社の営業部門とは別の部門・組織に所属し、医師や専門家に対して、自社製品以外の医薬品も含め、最新の知見に基づく医薬品の情報提供を行うのが業務です。MRに近い業務内容ですが、自社製品の販促活動はしない中立的な立場で医師・専門家と接します。
MSL発祥の欧米では博士相当の学位を持つのが一般的で、日本製薬工業協会でも医師や薬剤師などの有資格者であること、あるいは自然科学分野での学位を持つことが要件です。しかし、現実的には資格を持たないMRがMSLに異動するケースもあり、有資格者ではないMSLも存在しています。
本来は薬学の専門家が就くべき職種であり、薬剤師の資格はMSLへの転職に大きなアドバンテージとなり得るでしょう。
MSLの仕事内容やMRとの違いについては、こちらの記事をご参照ください。
参照元:製薬協/メディカル・サイエンス・リエゾンの活動に関する基本的考え方
3-3.治験コーディネーター(CRC)
治験コーディネーターは、業界内ではCRC(クリニカル・リサーチ・コーディネーター)と呼ばれる専門職で、被験者と医師や医療施設のスタッフなど治験に関わる関係者の間を取り持ち、治験や臨床試験を円滑に進める役割を担います。
特別な資格を必要とする職種ではありませんが、主にSMO(Site management Organization、治験施設支援機関)と呼ばれる治験業務受託企業に所属し、業界団体である日本SMO協会や日本臨床薬理学会など民間の認定資格を取得するのが一般的です。
SMOではなく病院など医療機関が治験を実施する場合は、薬剤師や看護師がCRCの役割を担うことが多く、患者さんとの交流で培われたコミュニケーションスキルや医薬品・薬学の知識を活かせる仕事です。
CRCの仕事内容や転職のコツなどはこちらの記事をご参照ください。
3-4.臨床開発モニター(CRA)
医療機関など治験の現場で活躍するCRCに対して、製薬会社側の立場から治験の実施状況をモニタリングして進捗管理を行うのが、臨床開発モニター(CRA=クリニカル・リサーチ・アソシエイト)の仕事です。
CRAは主にCRO(Contract Research Organization)と呼ばれる「医薬品開発業務受託機関」もしくは製薬会社に所属し、治験のモニタリング業務に従事します。
治験を実施する医療機関や責任医師を選定し、契約の際にはプロトコル(治験実施計画書)の説明も行います。治験実施中は医師へのヒアリングと症例報告書のチェック業務もあるため、医学・薬学だけでなく臨床試験や承認審査などの知識も必要です。
CRAとしてCROでスキルを磨き、製薬会社の新薬開発部門へとキャリアアップするのも夢ではありません。薬剤師としてやりがいのある職種と言えるでしょう。
CRAの詳しい業務内容や勤務形態、年収などについてはこちらの記事で紹介していますのでご確認ください。
3-5.メディカルライター
メディカルライターとは、一言でいうと「医療や健康に関する文章を作成する文筆業」となりますが、実際の業務は広範囲に及びます。
NPO法人日本メディカルライター協会では、専門家を対象とするメディカルライティング/テクニカルライティングと、一般市民への情報提供と啓蒙活動を目的とするヘルスコミュニケーションに大別しており、メディカルライティングの場合は製薬会社・医療機器メーカー・研究機関などで、主に薬事申請や治験に関する申請書および報告書、研究論文の作成やサポートを行います。専門知識に基づき、正確かつ正しい専門用語を駆使したプロフェッショナルな文書作成のスキルが必要です。
一方、患者さんや一般消費者に向けたライティングでは、正しい情報に基づいていることを前提としながらも、専門用語を使わず分かりやすく平易な文章で原稿を作成するスキルが必要とされます。
いずれも、医学的な専門知識を持ち、患者さんにわかりやすく薬について説明できる薬剤師の経験が役に立つ仕事と言えます。ただし、専門家向けのテクニカルライティングでは、最新の論文や海外の報告書を読み込む英語力が要求される場合もあります。
メディカルライターの詳しい仕事内容などについてはこちらの記事をご参照ください。
参照元:日本メディカルライター協会/医療や健康に関するコミュニケーターとは?
3-6.研究職
製薬会社の研究職は、主に新薬候補の基礎研究を行いますが、製剤や分析、剤形の改良、DDS(ドラッグ・デリバリー・システム)についての研究なども業務の範囲内です。創薬研究は大学やベンチャーなどとの共同研究も多く、コミュニケーション能力が必要とされる職種でもあります。
もともと研究職の中途採用募集が少ない上に、研究の実務経験や修士号・博士号の学位が応募条件となっていることもあり、現役薬剤師からの転職はハードルが高いと言えるでしょう。
薬剤師から研究職への転職を希望する場合は、ぜひ以下の記事を読み、しっかりと対策を立てていただきたいと思います。
3-7.製薬会社
薬剤師が活躍できる製薬会社の業務には、ご紹介したMR、MSL、CRA、研究職のほかにも、多くの職種・部門があります。
開発職
創薬プロセスの最終段階となる治験から申請までを担います。
学術(DI)
医薬品に関する情報収集と資料作成、外部からの問い合わせ対応、MRの教育などに携わります。
薬事
新薬の承認申請、添付文書の作成・改訂など薬事規制に対する業務全般を行います。
品質管理(管理薬剤師)
工場ではGMP文書作成、製品分析などによる製品の品質管理、本社・営業拠点での在庫管理などを行います。
製薬会社での薬剤師の主な仕事については以下の記事をご参照ください。
3-8.教員や講師
そのほかにも薬剤師の資格を生かせる仕事として、大学薬学部の教員や学校薬剤師などがあります。特に薬剤師養成のための6年制過程では、薬剤師として現場で培われたスキルや経験が役に立ちます。後進の指導・育成に力を注ぐのも薬剤師としての自負、誇りと言えるでしょう。中には病院薬剤師と教員を両立しているケースもあります。
薬学部の教員採用では修士号以上が必要ですので、大学院での過程を修了することが必要です。その後、助教から講師、准教授とステップアップしていきます。助教は契約期限が設けられていることが多いので、その間に実績を積み講師を目指します。
また、教員とは違いますが、学校で働く学校薬剤師という仕事もあります。学校には、児童生徒が使用する多くの薬や、理化の実験で使用する化学薬品が大量に保管されており、これらを安全に保管し、適切な使用法と保健指導をするために学校薬剤師の配置が義務付けられているのです。
学校薬剤師についての詳しい解説や求められるスキルなどについては、こちらの記事に詳しく書かれていますのでご一読ください。
4.医療関係以外の仕事に就くことは可能?
薬剤師が活躍できるフィールドは医療関係のみに限定されるのでしょうか? ここでは医療業界以外への転職について考えてみましょう。
スポーツファーマシスト
スポーツにおけるドーピングの歴史は古く、近年では国を挙げての不正が問題視されるまでとなっています。一方で薬学の知識がないために、「うっかりドーピング」となってしまうアスリートも後を絶ちません。
スポーツファーマシストは「ドーピングからアスリートを守る」ために、誕生した薬剤師のための資格です。薬局に勤めながらアスリートのサポートをしているのが現状ですが、将来的にはプロのアスリートをサポートするチームのメンバーとして職業化する可能性もあります。
スポーツファーマシストについては以下の記事をご参照ください。
データサイエンティスト
全地球的に網羅されているインターネット網では膨大な情報・データが行き交っています。こうしたビッグデータをはじめ、統計上のデータや試験データなどを解析し、合理的な判断を意思決定に生かすのがデータサイエンティストの仕事です。
医療業界でも臨床試験や治験、コホート研究などさまざまなデータ収集が行われており、データ解析は欠かせない業務となっています。薬剤師の知見を生かしてデータ解析を行う仕事の求人も増えており、データサイエンスのエキスパートとなって、医療業界とはまったく違う分野で活躍しているケースもあります。
そのほか、チェーンストアの店長からエリアマネージャーを目指すキャリアプランや、病院や介護施設などのコンサルタントへの転身、薬事監視員・麻薬取締官・自衛隊薬剤師など公務員薬剤師の仕事もあります。いずれも薬剤師の資格や経験を生かせる仕事であり、どのような職種を選ぶにしても、自分のこれまでのキャリアやスキルを無駄にしないことが大切です。
5.転職を成功させるためのコツ
薬剤師から別の道へと進む意志を固めたら、転職活動を始める前にどのような準備をしておくべきか、転職を成功させるためのコツについてご紹介します。
5-1.スキルや経験、資格を棚卸する
転職に際して最初にやるべきことは自己分析です。これまでどのような職種、業務を経験し、どのような人たちと、どのような関わりを持ってきたか。他者との交流の中で学んだこと、そこで身に付けた自らのスキルを書き出してみましょう。
また、これまで所属してきた組織の中で、自分にはどのような責任と権限が与えられ、どんな役割を果たしてきたのか。成功したときはどのような要因があったのか、失敗したときに何を学んだのか、こうした経験を棚卸してみます。
そして「自分はどのような人物か、周囲からどのように思われているか」「持っているスキルや資格は何か」「自己の価値観、特性の中で強みとなるのはどんなところか」などを客観的に語れるように整理しておきましょう。
5-2.キャリアプランを明確にしておく
これまでに身に付けてきたスキルを今後の仕事にどう生かしていきたいか、新たに身に付けるべきスキルと、さらに伸ばしたいスキルはなにか。これらを骨格として、なりたい自分の将来像を描き出します。そして、そこに到達するためのキャリアプランをロードマップに書き出しましょう。
今、20代ならば、30歳~35歳~40歳~45歳~50歳になった時の、自分のポジションや年収、人物像、その時に身に付けているべきスキルなどを設定し、そこに至るまでのプロセスを明確にしておきます。ロードマップは作って終わりではなく実績を書き入れて修正しながら進めていきましょう。
5-3.自分の中の優先順位を決める
自分の中の優先順位とは、希望する職種や業種についてはもちろん、勤務地、収入、勤務時間と休日、福利厚生など、どれを優先するのか一目でわかるように順位付けをしておきます。こうしておくことで、いくつかの転職先候補の中からより自分に合った会社を選びやすくなるでしょう。
また、優先順位は勤務条件だけでなく、自分の人生において何を優先するのかも、きちんと決めておきましょう。仕事、家族、趣味などはもとより、ボランティア活動や副業なども含めて、優先順位を決めておくことをおすすめします。
5-4.市場調査をしておく
現代は情報を制するものが勝利を手にする社会であり、事前の市場調査は非常に重要です。転職先候補の会社が属する市場の規模やトレンド、成長見込みと過去の推移、今後の動向、その会社の市場でのポジション、これまでの成長の過程、競合他社の動向なども調べておくといいでしょう。
製薬会社を例に取るなら、新薬メーカーか後発薬メインか、国内だけでなく海外でのシェアはどうか、得意とする領域とそこでのポジション、業界内での影響力など、できる限りの市場調査をしておきましょう。もちろん、業界の求人倍率や平均賃金など転職市場の調査も怠らないようにします。
5-5.転職エージェントを活用する
さまざまな転職のコツをご紹介してきましたが、これまでの経験やスキルの中から自分の強みを洗い出し、客観的な人物像を描き出すというのはなかなか難しいものです。
また、応募書類や面接でどのように表現すれば効果的なのかも迷うところ。そんな不安を少しでも感じた時は、転職エージェントを活用しましょう。
たとえ不安を感じないにしても、求人情報を集め、自分のキャリアプランや優先度に応じて応募先を選別し、さらに市場調査を行うとなると時間がいくらあっても足りません。そんなとき、転職エージェントは無料ですので、上手に活用することをおすすめします。
6.転職に悩んだら転職エージェントの活用を
ここまで薬剤師の仕事を辞めて、違う仕事をしたいとお悩みの方に、薬剤師の資格を活かせるおすすめの職場や転職を成功させるコツについて解説してきました。ただ、いざ自分の転職となるといろいろと考えてしまうことも多いはずです。
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7.まとめ
コロナ禍を経て社会の急激なデジタル化が進み、薬剤師を取り巻く環境も大きく変わりつつあります。薬剤師からの転身を前向きに捉え、新たな道に踏み出すのも正しい選択肢の一つでしょう。薬剤師の資格と経験に裏打ちされたスキルを別の仕事に生かすことは可能であり、実際に多くの薬剤師が薬局を出てさまざまな職場で生躍しています。
ただし、転職を成功させるには入念な準備が不可欠であり、自分に合う転職先をみつけるのもそう簡単ではありません。これまでのスキルや経験を生かして、さらなるキャリアアップを目指すのであれば、転職を知り尽くしたプロフェッショナルに相談するのがおすすめです。
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