MRは文系でも就職できる?求められるスキルやMR職につくには

MRは文系でも就職できる?求められるスキルやMR職につくには

製薬会社の営業部門に勤務し、医師に対して自社の医薬品を処方してもらうよう働きかけるのがMR職の仕事です。

自社製品の特長、適正な使用法、効能効果、副作用から薬価まで、医薬品のすべてを知り尽くしたエキスパートであることから、MR職には薬学や化学など理系出身者が多いイメージがあります。しかし、実はMR職は文系出身者の方が多いのです。

ここでは、MR職が求められていることや、文系出身者がMR職で生かせる経験やMR職に就く方法などについてご紹介します。

1.MR職には文系出身者も多い?

薬剤師や理系出身者が多いイメージのあるMR職ですが、意外にも文系出身者のほうが多く、2016年に発表されたMR認定センターの調査によれば、出身専攻分野は薬剤師の有資格者13.2%、その他の理系出身者27.7%に対して、文系出身者は56.9%と過半数を占めています。

かつてMR職は「医師の接待が仕事」とまでいわれていたように、通常の業務以外に酒席やゴルフ、観劇やスポーツ観戦のお供など、昼夜休日を問わず働いていた時代がありました。

そうした通常業務外の接待を中心とした長時間労働体質が目立った業界だったこともあり、企業は医薬品の知識のある理系よりも接待などのコミュニケーション力が期待できる文系を多く求めたのかもしれません。

しかし、現在はかつてのような接待はほぼ姿を消し、女性MR職も増えています。現代のMR職には接待抜きでコミュニケーションを図ることが求められており、この点では文理の差はないと言えるでしょう。

しかし、医師との会話において医薬的知識は少なからず必要になってきます。
医薬品に対する理解と知識という点においては、薬学部、中でも化学や生物学などに関連した学科の理系出身者のほうが、文系出身者に比べて大学で学んだ知識を活かせる場面が多いかもしれません。

2.MR職に求められること

MR職は製薬会社の「営業マン」であり、医師やディーラーからみれば「製薬会社の顔」といっていい存在です。第一に求められるものは医薬品の売り上げを上げるための「営業力」であり、買い手である医師を説得するコミュニケーション能力です。

しかし、MR職の扱う「商品」は医薬品ですから、商品知識に優れていることもコミュニケーション力と同じくらい重要な職能であることは間違いありません。

2-1.医療従事者とのコミュニケーション

2015年にMR認定センターが実施したアンケートによれば、MRが1か月に合う医師の人数はのべ100~149人と答えた割合が24.6%で最も多く、200~249人との回答も13.1%ありました。

また、1か月間に面談する薬剤師は1~19人が32.6%と最も多く、20~39人が26.8%で2位でした。

つまりMR職は、毎日数名の医師や薬剤師などとコミュニケーションを図っており、MR職に第一に求められることは医療従事者とのコミュニケーション力である、といってもいいでしょう。


また、MR職は医療従事者以外の方とのコミュニケーションも重要です。

現在は製薬会社が医薬品卸に販売し、医療機関との取引は価格交渉を含めて医薬品卸が行うことと定められているため、MR職にとって医薬品ディーラーのMS職(マーケティングスペシャリスト)とのリレーションは医師との関係と同じくらい重要です。

MS職は医療機関と直接の取引があるため、MR職よりも多くの情報を持っており、特に競合情報や医療機関内での自社製品の評価などについてMS職は重要な情報源となります。また、医薬品情報を管理するDI担当者にも情報提供を行う必要があります。

2-2.医療や製薬の知識参考

MRとは、厚生労働省の省令により「医薬品の適正な使用に資するために、医療関係者を訪問すること等により安全管理情報を収集し、提供することを主な業務として行う者をいう。」と定められています。

つまり、MR職が取り扱う医薬品の安全性や有効性などの情報提供を行う一方で、臨床現場での使用状況や副作用などの医療情報を収集し、所属企業へのフィードバックも行わなければならないため、医療や製薬の知識は必須となります。



また、近年、生活習慣病など従来のプライマリー領域の医薬品だけでなく、がんなど難治性疾患向けのスペシャリティ領域製品も増え、作用機序や効能効果が複雑化しています。

多忙な医師や薬剤師が自ら文献を調べるのは大きな負担となるため、MR職は医師や薬剤師の負担を軽減するためにも、製薬についての知識が求められるのです。

3.MRの資格を取得するには

MR職になるために必要な資格というものは存在しませんが、ほとんどの製薬会社は自社の新人MRに対して、MR認定センターの実施する「MR認定試験」の受験を義務付けており、認定試験に合格して「認定MR」となってはじめて、一人前のMR職として認められることになります。

MR認定センターが公表した「MR白書2021年版」によれば、「認定MR」はMR総数の97.9%を占めており、ほぼすべてのMR職が、製薬会社に入社して営業部門に配属されたのち、MR職としての実務経験を積みながら認定試験合格を目指すことになります。

それでは、ここからMR認定証交付までの流れを簡単に紹介します。



●登録企業在籍者の場合
新人MRは4月の入社直後から半年間、会社でMR導入教育を受けて、MRの受験資格が得られます。その後MR経験を半年間積みながらMR認定試験を受験し、合格することでMR認定証が取得できます。

●登録企業に在籍していない場合
MR導入教育実施機関にて基礎教育を受講、修了し、MR認定試験に合格した上で、製薬企業などに就職し、実務教育とMR経験を半年間修了することで、MR認定証を取得できます。
※MR認定試験の合格証の有効期限は5年間です。その間に半年間のMR経験を修了しないと、再受験となります。

受験科目は、下記の3科目で、各科目単位で合格点に達しなければなりません。
1)医薬品情報
医薬品情報では薬学に基づいた薬物の作用や、添付文書について

2)疾病と治療(基礎、臨床)
基礎…人体の仕組みや生理学などについて
臨床…疾病の原因、診断と治療、検査などについて

3) MR総論
MRに求められる倫理観や医療制度、関連法規について

薬剤師の有資格者(免許証取得者)は「医薬品情報」と「疾病と治療」の試験が免除されるので、認定試験において、さらには中途採用では文系出身者よりも有利になる場合があります。



認定試験の詳細や採用状況については別の記事に詳細をまとめていますので、ぜひこちらもご参照ください。

4.文系出身者の経験はMR職でも活かせる?

文系出身者は、MR職に求められるコミュニケーション能力が理系よりも高い、と考える方もいると思いますが、実際に社会に出てみれば「長」や「リーダー」と呼ばれる方たちは文理の区別なくコミュニケーション能力の高い人が多いものです。

MR職の仕事のなかで、文系出身者と理系出身者に違いがあるとすれば、薬学や化学に長じている理系は、仕事の話で医師との意見交換や意思疎通が容易な反面、会話が専門分野の話題に終始しがちで、打ち解けた間柄になるのに時間がかかる傾向があるかもしれません。

逆に文系出身者は、政経学部ならば政治や経済に興味のある医師とベクトルを合わせやすいですし、外国語学部出身であれば旅行好きな医師と海外事情で、体育系ならばスポーツの話題で盛り上がることができるでしょう。

医師とプライベートな話題で会話が弾めば、より親密なリレーションが築きやすく、こうした面で文系には文系ならではの利点があるといえます。

5.文系出身者がMR職に就くには

新卒ならば文理にそれほど大きな差はありませんが、キャリア採用となると薬剤師や理系出身に対して有利に働く場面がありそうです。

しかし、MR職は営業であり、文系出身者が多くを占める職種でもあります。ここでは文系の方がMR職に就くために行うべきポイントについてご紹介します。

5-1.OB・OG訪問をして情報収集

今の時代、何をするにしても情報は非常に重要です。まずはMR職に就いているOBやOGを訪ねて製薬会社や業界についての情報収集を行いましょう。

ホームページ上ではMR職の募集をしていない企業でも欠員が出たなどの理由で、個別採用のチャンスがあるかもしれません。また、業界の情報を収集することでOB・OGが所属する会社の競合やCSO(MR職を派遣する企業)の求人についてレアな情報を得ることができるかもしれません。

なにより、現状では文系の多いMR職ですから、上司や先輩となる方たちも文系が多いという共通項があります。OB・OGを通じて製薬営業部の管理職がどのような人材を求めているのか、それとなく聞いてみるのもいいかもしれません。

5-2.学部学科不問の求人に応募する

MR職の求人情報は比較的多く目にしますが、名の知れた製薬大手の求人では多くがMR経験者の募集であり、文理の違い以前に、現在MR職でない未経験者にとって製薬大手への転職は相当な狭き門といえるでしょう。

しかし、なかには経験不問、学部学科不問という求人もあります。

未経験者可とする募集はコントラクトMR(派遣MR)の求人が多く、CSO(MRを派遣する企業)からキャリアを始めて製薬会社への転職を目指す、という道も選択肢の一つでしょう。

CSO(Contract Sales Organization)とは、製薬会社と契約を結び、医薬品のマーケティングと営業活動を製薬会社に代わって行う受託企業です。

CSOで働くMR職をコントラクトMR(CMR)といい、契約した製薬会社に派遣されて活動するMR職のことを指します。

プロパーと呼ばれた時代からMRに呼称が変わるころまでは、製薬会社同士の競争に打ち勝つためMR職が大量に採用されていましたが、規制が厳しくなった2013年をピークに減少傾向にあり、自社のMR職の代わりにCMRを利用する企業も増えています。

5-3.入社後に自ら勉強して知識を身につける

未経験からMR職に就く場合、新卒中途の差なく6か月間の実務経験とMR認定試験に向けた研修が義務づけられます。

未経験者を採用する会社では必ず勉強の機会が与えられるので、まずは採用を目指すことが大切です。多くの場合、未経験者の採用において求められるスキルは、薬学などの専門知識よりも営業力が優先されます。

営業職には文系出身者や体育会系が多く、MR職においても文系が多くを占めているので、理系に対して気後れする必要はありません。

面接などでは、専門知識は入社を機に自らの努力で身につける、と意思表示すればよく、無理をするよりよほど好印象を与えることができるでしょう。

6.まとめ

もともと文系出身者が多いMR職では、理系や薬剤師でなくとも就職できるチャンスは大いにあります。

そして、就職に際して求められるスキルは専門知識よりもコミュニケーション能力の高さであり、人柄であるといえるでしょう。

知識の習得や資格認定はMR職になってから目指せばよく、文系としての経験を最大限に生かすことが、MR職に就くうえでもっとも大事なことではないでしょうか。


この記事の著者

ライター

朝倉 哲也

資格の知見を活かして、サプリメントや健康食品に関する記事など、書籍や雑誌で執筆を行っている。

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