薬剤師がエリアマネージャーになるには?薬局長との違いや向いている人について紹介

薬剤師がエリアマネージャーになるには?薬局長との違いや向いている人について紹介

複数店舗のある調剤薬局には、定期的にエリアマネージャーが巡回していることが多いようです。エリアマネージャーは、管理薬剤師と薬局開設者との橋渡しの役割を担っており、経営戦略や人事を含め、その業務は多岐にわたります。

しかし、調剤薬局の法令違反の事例が相次ぎ、法令遵守に対する体制づくりとその確認が薬局開設者に義務付けられたことで、エリアマネージャーの役割は変化が求められています。ここでは、薬剤師エリアマネージャーについて、くわしく解説します。

参照元:日本薬剤師会/薬局における法令遵守体制の整備について

1.薬剤師のエリアマネージャーとは

エリアマネージャーは、多数の店舗がある保険薬局や大手チェーン薬局などに設置されている役職です。エリアマネージャーの役割と、薬局長や管理薬剤師との違いについて説明していきます。

1-1.エリアマネージャーの役割

エリアマネージャーの役割は、地域の複数店舗において、実務面から経営面まで統括し、各店舗と経営する本部をつなぐ立場というのが一般的で、会社ごとに業務や権限が異なっているというのが現状でした。

しかし、令和元年の「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下薬機法)の改定にともない、令和3年に作成された厚生労働省の「薬局開設者及び医薬品の販売業者の法令遵守に関するガイドライン」や、日本薬剤師会の「薬局における法令遵守体制整備の手引き」において、エリアマネージャーを配置する理由や、責任の所在が明らかになりました。

参照元:e-gov/医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
厚生労働省/「薬局開設者及び医薬品の販売業者の法令遵守に関するガイドライン」について
日本薬剤師会/薬局における法令遵守体制の整備について

  • エリアマネージャーを配置する理由
  • 薬局において法令違反の事例が相次いだことから、薬局開設者には薬事に関する法令遵守の体制を確立し、その状況を確認することが義務付けられました。そこで、複数の薬局や店舗において、この義務を遂行するために、薬局開設者を補佐する人材として、一定の地域ごとにエリアマネージャーを配置することが明記されました。

    参照元:厚生労働省/「薬局開設者及び医薬品の販売業者の法令遵守に関するガイドライン」について p6(1)薬局開設者等が2以上の許可を受けている場合の必要な措置

  • エリアマネージャーの責任の所在
  • エリアマネージャーは、薬局開設者を補佐するための人材であり、管理薬剤師との橋渡しの役割を担っていますが、薬事に関する責任のすべては、薬局開設者と管理薬剤師にあります。例えばエリアマネージャーの不適切な行為によって法令違反が発生した場合、エリアマネージャーだけでなく、薬局開設者や法人の場合は薬事に関する法令遵守のための責任役員にも責任が及ぶということになります。

参照元:厚生労働省/「薬局開設者及び医薬品の販売業者の法令遵守に関するガイドライン」について p6~7(1)薬局開設者等が2以上の許可を受けている場合の必要な措置

1-2.薬局長との違い

エリアマネージャーと薬局長との違いは「立場と役割」です。

エリアマネージャーは、薬局開設者の補佐という立場と薬局開設者と管理薬剤師の橋渡し役という役割が、厚生労働省のガイドラインにおいて明記されています。複数の薬局を担当し、薬局開設者につなぐのがエリアマネージャーです。

一方、薬局長は一般的に、各薬局において独自に設けられた役職です。管理薬剤師が兼務している場合を除き、薬機法上の責任や管理の権限はありません。

薬局長は、例えば勤務する薬剤師の人数が多く、多岐にわたる業務をおこなっているような薬局において、薬剤師の育成やシフトの作成、薬局内の問題点を掌握して管理薬剤師と他の薬剤師との橋渡しをしたりすることなどが主な仕事です。一つの薬局内に目を向けて、心を砕くのが薬局長です。

参照元:厚生労働省/「薬局開設者及び医薬品の販売業者の法令遵守に関するガイドライン」について p6(1)薬局開設者等が2以上の許可を受けている場合の必要な措置

1-3.管理薬剤師との違い

エリアマネージャーと管理薬剤師の大きな違いは、管理薬剤師には薬機法管理者としての権限が与えられているということです。

特に薬局の開設が法人の場合、エリアマネージャーの方が管理薬剤師より会社的な役職・立場が上であっても、管理薬剤師に指示する関係になることはありません。
エリアマネージャーに限らず、店長などの役職であっても同様です。

参考までに、管理薬剤師の薬機法上の権限は以下の通りです。

  1. 薬局に勤務する薬剤師、その他の従業員に対する業務の指示及び監督に関することの他、薬局の管理をおこなうこと。
  2. 医薬品の試験検査及び試験検査の結果の確認
  3. 薬局の設備、医薬品その他の物品の管理
  4. 薬局の管理に関する事項を記録するための帳簿の記載
  5. 特定生物由来製品に関する記録の保存(管理薬剤師に限る。)
  6. 薬局開設者に対して必要な意見を書面により述べ、その書面の写しを3年間保存すること。

この他、管理薬剤師には少なくとも5年以上の薬局での実務経験と、薬剤師認定制度認証機構等による認定薬剤師であることがすすめられていますが、エリアマネージャーには、特に求められている要件はありません。

参照元:日本薬剤師/薬局における法令遵守体制整備の手引き

管理薬剤師について詳しくは以下のページをご覧ください。

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2.薬剤師のエリアマネージャーの仕事内容

前述でも解説した通り、エリアマネージャーの仕事は、薬局開設者と管理薬剤師の橋渡しです。

担当地区の薬局の管理薬剤師から必要な情報を収集し、薬局開設者に速やかに報告することと、薬局開設者の指示を受けて管理薬剤師に伝えることです。

例えば、管理薬剤師が勤務する薬剤師や従業員を管理する上での問題点や、物品管理などの面での相談があれば、薬局開設者へ報告し、改善策や対応策を管理薬剤師に提示します。

また、管理薬剤師から提出されたデータを基に、薬局開設者から業務改善の指示を伝えることなどもあるでしょう。

こうした橋渡しの仕事の中で最も重要なのは、薬局開設者から法令違反の指示があった場合に、その指示を拒否し、法令違反である旨を書面にして薬局開設者に伝えることです。エリアマネージャーは、薬局が薬事に関する法令を遵守して業務を遂行するために、重要な役割を担っています。

参照元:日本薬剤師/薬局における法令遵守体制整備の手引き

3.薬剤師のエリアマネージャーに向いている人

薬剤師のエリアマネージャーは、どのような方が向いているのでしょうか。紹介していきましょう。

3-1.薬事に関する法令遵守を徹底できる意思のある方

エリアマネージャーとして求められるのは、徹底して薬事に関する法令を遵守出来る方です。エリアマネージャーは自ら法令違反を指示しないのはもちろんのこと、法令違反に当たる指示は断固として拒否し、法令遵守を徹底できる生真面目さが必要です。

3-2.コミュニケーション能力

エリアマネージャーは薬局開設者と管理薬剤師の橋渡し役のため、コミュニケーション能力は、エリアマネージャーに最も必要とされる能力の一つです。

また、多くの薬局や店舗がある場合には、エリアマネージャー同士の意見交換も必要でしょう。エリアマネージャーは、常に人とのコミュニケーションの元に仕事が成り立つからです。

3-3.マネジメント能力

エリアマネージャーに要求されるマネジメント能力とは、担当する薬局において管理薬剤師をサポートし、処方箋枚数や診療報酬などを踏まえた経営分析、在宅薬剤師やかかりつけ薬剤師の確保などの人材配置、周辺環境に応じた経営戦略など総合的に管理する能力が必要です。

3-4.リーダーシップ

エリアマネージャーは、直接現場を管理する管理薬剤師の苦労をサポートしながら、薬局開設者の経営ビジョンを旗頭として、薬局業務が滞りなくおこなわれるように導くリーダーシップも必要です。

3-5.情報収集能力

エリアマネージャーは、担当する薬局周辺の環境、他の薬局、医療機関、高齢者施設、住んでいる方の年齢層など、薬局の経営に大きな影響がある情報に対して、多方面にアンテナをはった情報収集能力の高さが必要とされます。

4.エリアマネージャーは未経験でもチャレンジできる?

エリアマネージャーになるには、特別な要件などはなく、経験がなくてもチャレンジできます。

もちろん薬剤師としての勤務経験があれば、現場を知っているという意味では強みになるかもしれません。

また、エリアマネージャーになるために、上記で紹介したスキルや能力が必ずしも必要というわけではなく、経験を積みながら十分に身に付けることができるでしょう。

ただし、エリアマネージャーを志す場合には、法令遵守のために薬局開設者を補佐するポジションのため、薬事に関する法令や過去における法令違反の事例などについては、しっかりと勉強しておくことをおすすめします。

5.実際にエリアマネージャーになった方の声

では、実際にエリアマネージャーとして働いている方の声を紹介しましょう。

  • 転職後1年でエリアマネージャーに抜擢された女性薬剤師
  • 大学卒業後、7年間調剤薬局に勤務し、「いろいろなことにチャレンジしたい」と思い、転職1年後に6店舗を管理するエリアマネージャーに推薦されました。担当店舗では、スタッフの働き方を確認し、精神面や健康面での相談に乗り、必要があればスタッフに合った店舗への異動も検討しています。

    >株式会社アイリスファーマの社員インタビューはこちら

  • 薬局長からエリアマネージャーになった男性薬剤師
  • 5年間で4店舗の薬剤師経験。そのうち3年目には薬局長となり、その後エリアマネージャーも兼務。その後、エリアマネージャー業務に専念するようになり、3店舗をマネージメント。エリアマネージャーとしての業務は経営分析や改善点の検討などですが、薬局運営本部副部長や新規事業準備室室長として新事業の立ち上げなどに携わり、薬剤師としてのキャリアアップと新しい可能性にも向きあっています。

    >株式会社パル・オネストの社員インタビューはこちら

6.キャリアアップには転職エージェントの利用がおすすめ

薬局薬剤師のキャリアアップとしてエリアマネージャーを選択してみるのも一つの手です。

調剤薬局のあり方に変化が求められている時代において、調剤薬局をマネジメントするエリアマネージャーは、薬剤師のキャリアアップとして将来性のある職種といえます。

ただ、エリアマネージャーに魅力を感じたとしても、どこにそのポストがあるのでしょうか。

そのような時には転職エージェントの活用をおすすめします。

転職エージェント「マイナビ薬剤師」は、薬剤師に特化した転職支援サービスです。薬剤師専任のキャリアアドバイザーが、調剤薬局やドラッグストア、病院やクリニック、調剤薬局などを経営する企業の中から、キャリアアップの希望を踏まえてご提案することが可能です。

まずはマイナビ薬剤師の無料登録をおこない、情報収集やキャリアアドバイザーに相談することをおすすめします。

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7.まとめ

調剤薬局の法令違反の事例が相次ぎ、厚生労働省では薬機法の改正により薬局開設者に対して法令遵守に関わる体制の確保と確認を義務付けました。

これまで、薬剤師のエリアマネージャーは、地域における複数の店舗を巡回し、経営面や人材面での管理をおこなってきましたが、法令遵守の義務を果たすための薬局開設者の補佐として、管理薬剤師と薬局開設者の橋渡しの役割が明示されました。

エリアマネージャーは薬剤師のキャリアアップの一つとして、将来性のあるポストであることが期待できます。

参照元:日本薬剤師会/薬局における法令遵守体制の整備について

この記事の著者

薬剤師・ライター

小谷 敦子

病院・調剤薬局薬剤師を経て、医療用医薬品専門の広告代理店・制作会社に所属し、販促資材やMR教育資材、患者向け冊子などの執筆に従事。
専門医インタビューによる疾患や治療の解説などを、クリニックHP上に掲載するなどの執筆活動も行っている。

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