薬剤師の年収は本当に低い?理由や年収アップさせる方法について解説

薬剤師の年収は本当に低い?理由や年収アップさせる方法について解説

薬剤師は、一般的には高収入で安定した職業といわれていますが、職場や働き方によって大きく異なることもあり、実際の年収はあまり知られていません。

今の自分の年収が平均よりも高いのか低いのか、はっきりと答えられる方はそう多くないでしょう。まわりの薬剤師がどのくらいの年収なのか、気になりますよね。

この記事では、薬剤師の平均年収や平均年収よりも低い場合の理由、年収をアップさせる方法について、ご紹介していきます。

1.今の年収が平均より低いと感じる理由

医療系の専門職である薬剤師は、世間一般的に年収が高いことで知られています。しかし実際に薬剤師として働いている人の中には、今の年収が平均より低いと感じる方もいるでしょう。
ここでは、薬剤師が実際のところ年収が低いと感じる理由をみていきます。

1-1.都市部や地方によって違いがある

かねてから薬剤師の需要と供給には地域格差があり、待遇が異なることが知られています。
薬剤師が供給過多といわれる都市部では、給与水準が低い傾向にあるのに対して、交通の便が悪く、薬剤師が少ない地方では、好条件を提示する傾向があります。

実際に令和4年賃金構造基本統計調査のデータから、薬剤師の地域別の年収を比較してみると、都市部では東京都555.2万円、神奈川県513.5万円、大阪府574.7万円であったのに対し、青森県では584.8万円、茨城県627.6万円、大分県565.4万円など、地方によっては都市部よりも年収が高いケースがありました(薬剤師の男女合計「きまって支給する現金給与額×12カ月+年間賞与その他特別給与額」で算出)。

このように、薬剤師の年収には地域格差が存在するため、特に都市部で働く薬剤師の年収は、平均よりも低くなる傾向があります。

参照元:政府統計の総合窓口/令和4年賃金構造基本統計調査
参照元:政府統計の総合窓口/賃金構造基本統計調査
参照元:令和4年賃金構造基本統計調査(全国~11埼玉)【Excelダウンロード形式】
参照元:令和4年賃金構造基本統計調査(12千葉~23愛知)【Excelダウンロード形式】
参照元:令和4年賃金構造基本統計調査(24三重~35山口)【Excelダウンロード形式】
参照元:令和4年賃金構造基本統計調査(36徳島~47沖縄)【Excelダウンロード形式】

薬剤師の年収の地域格差についてもっと知りたい方はこちらも参考にしてみてください。

1-2.職場によって給与水準に違いがある

薬剤師の仕事内容は、勤め先の種類によって大きく異なります。

薬剤師は調剤薬局や病院などの医療機関で働く方が大半を占めますが、他にもさまざまな職場において薬剤師は活躍しています。

製薬会社やドラッグストアは、給与水準が比較的高いことが知られています。

また、病院や調剤薬局の中でも、当直の多い急性期の病院や処方せん枚数が多い基幹店は、給与水準が高い傾向のようです。

1-3.昇給金額や手当が低い

入社時の年収が平均的な水準であったとしても、昇給金額が極端に低い場合には、数年後の年収は平均年収よりも低くなることもあります。

長く勤めれば勤めるほど、昇給額は重要となるので、転職活動をおこなう際には昇給金額をしっかりと確認するようにしましょう。

また、薬剤師としてのキャリアを積む中で、管理薬剤師や薬局長などのポジションを任されることがあります。

管理薬剤師手当などが支給されることにより、年収アップが期待できますが、手当がない場合や極端に少ない場合もあるため、昇給金額と同様に注意が必要です。

1-4.医師の年収と比較してしまうから

医師は、薬剤師と同様に6年生大学を卒業し、国家資格を得て働いています。薬剤師の中には自分の年収が低いと感じ、同じ職場で働く医師の年収が気になる方もいるでしょう。医師と薬剤師の年収は、実際にどのくらい違うのでしょうか。

厚生労働省が発表している「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、医師の平均年収は1428.8万円で、歯科医師は810.4万円、獣医師は686.6万円と報告されています(平均年収は「きまって支給する現金給与額×12カ月+年間賞与その他特別給与額」で算出)。

一方で薬剤師の平均年収は583.4万円でした。医師は薬剤師より約2.4倍の平均年収を受け取っているのです。また、歯科医師や獣医師の平均年収も、薬剤師より高い水準です。

このため、薬剤師の平均年収は一般労働者と比較したら高い水準でも、「薬剤師の年収は低い」と感じてしまう場合があります。

参照元:厚生労働省/令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況
参照元:政府統計の総合窓口/令和4年賃金構造基本統計調査
参照元:厚生労働省/令和4年賃金構造基本統計調査【Excelダウンロード形式】

1-5.学費が高いため安いと感じてしまう

薬剤師になるためには、6年生の薬学部に通わなくてはならないため、一般の総合大学よりも学費が高い傾向があります。
国立大学の場合、年間授業料は53万5800円で、入学金は28万2000円、卒業までにかかる学費は321万4800円のため、トータルでおよそ360万が必要です。
私立大学の場合、学費は大学によって異なりますが、年間授業料は200万円程度、入学金は35~40万円程度、卒業までにおよそ1240万円程度かかるのが相場です。
一人前の薬剤師になるために必要な高額な学費を考えると、薬剤師の給料は安いと感じる人もいるでしょう。

薬剤師になるために必要な準備や費用については、こちらの記事にまとめました。

2.薬剤師の平均年収はどれくらい?

厚生労働省が発表している「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、薬剤師の平均年収は583.4万円と報告されています(平均年収は「きまって支給する現金給与額×12カ月+年間賞与その他特別給与額」で算出)。

性別ごとにみると、男性では673.0万円、女性では540.1万円であり、性別を問わず、比較的高い年収を受け取っていることがわかります。

しかし、これらはあくまでも平均であり、業種や役職によっては、この限りではありません。次の項では、どのような要因が年収に影響を与えるのか、みていきましょう。

参照元:厚生労働省/令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況
参照元:政府統計の総合窓口/令和4年賃金構造基本統計調査

2-1.平均年収の比較

厚生労働省が公表している「令和4年賃金構造基本統計調査」のデータを元に、薬剤師の平均年収について、職業別や性別、年齢などの視点から比較してみましょう。

2-1-1.一般労働者との比較

令和4年賃金構造基本統計調査」のデータを調べたところ、全国の一般労働者(短時間労働者を除く)の平均年収は496.5万円(男女計)で、男女別にみると男性554.9万円、女性394.3万円でした(平均年収は「きまって支給する現金給与額×12カ月+年間賞与その他特別給与額」で算出)。

それに対し、薬剤師の平均年収は583.4万円(男女計)で、男女別にみると男性637.0万円、女性540.1万円でした。

このデータから、薬剤師の平均年収は一般労働者の平均年収よりも約87万円多く、給与水準が高い職種であることがわかります。

また、一般労働者では女性の平均年収が男性の平均年収の約7割程度にとどまっているのに対し、薬剤師では女性の平均年収が男性薬剤師の平均年収の8割程度に達しており、男女差が小さいのも大きな特徴です。

参照元:政府統計の総合窓口/令和4年賃金構造基本統計調査
参照元:政府統計の総合窓口/賃金構造基本統計調査

2-1-2.医療別

では医療分野の中ではどのような立ち位置になっているでしょうか。「令和4年賃金構造基本統計調査」のデータから、医療分野で代表的な職業をピックアップし、薬剤師の年収を比較してみましょう。

薬剤師の平均年収は583.4万円(男女計)でした。それに対し、医師の平均年収は1428.8万円、看護師では 508.1万円、臨床検査技師では 508.9万円でした。
また、年収が低いと感じる理由で説明したように、歯科医師は810.4万円、獣医師は686.6万円となっています。

医師の年収が圧倒的に高いことはよく知られていることですが、看護師や臨床検査技師と比較した場合では、薬剤師の年収の方が高いことが分かります。

参照元:政府統計の総合窓口/令和4年賃金構造基本統計調査

医療別 平均年収(男女計)
薬剤師 583.4万円
医師 1428.8万円
歯科医師 810.4万円
獣医師 686.6万円
臨床検査技師 508.9万円
看護師 508.1万円

参照元:厚生労働省/令和4年賃金構造基本統計調査

2-1-3.年代別

つぎに薬剤師の年収が、年代ごとにどのように推移していくかみてみましょう。
「令和4年賃金構造基本統計調査」のデータによると、薬剤師の平均年収は、年代ごとに変遷があり、着々と年収がアップしていくことがわかります。55歳~59歳の年代でピークを迎え、972.5万円にまで達しています。

年齢 平均年収
20~24歳 343.2万円
25~29歳 486.4万円
30~34歳 580.7万円
35~39歳 678.8万円
40~44歳 770.6万円
45~49歳 839.3万円
50~54歳 878.9万円
55~59歳 972.5万円
60~64歳 667.4万円
65~69歳 765.5万円
70歳~ 764.5万円

薬剤師の年収は一般的には高いとはいっても、これをみると年代による差が大きく、特に駆け出しの若手薬剤師は年収が低いと感じてしまうこともあるでしょう。

参照元:政府統計の総合窓口/令和4年賃金構造基本統計調査【Excelダウンロード形式】

2-2.薬剤師の年収は上昇傾向にある?

将来的に年収がアップするのか見極めるためには、単年度の年収だけでなく推移をみることが大切です。そこで薬剤師の平均年収の推移について調べました。

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」に基づく過去5年間の薬剤師の平均年収の推移は以下の通りです。

2-2-1.平均年収の推移

過去5年間の薬剤師の平均年収は、連続して上昇していることがわかります。2022年の平均年収は5年前よりも39.8万円上昇しています。
この結果から、薬剤師の年収は上昇傾向にあるといえるでしょう。

年度 平均年収
2018 543.6万円
2019 561.7万円
2020 565.1万円
2021 580.5万円
2022 583.4万円

参照元:政府統計の総合窓口/賃金構造基本統計調査

2-2-2.男女別の年収推移

薬剤師の年収推移を男女別でもみてみましょう。
女性では、年度によって多少ばらつきがみられるものの、薬剤師の平均年収は男女ともにおおむね上昇傾向にあることがわかります。

年度 平均年収(男) 平均年収(女)
2018 575.1万円 524.6万円
2019 600.6万円 535.6万円
2020 623.8万円 527.2万円
2021 630.2万円 545.2万円
2022 637.0万円 540.1万円

参照元:政府統計の総合窓口/賃金構造基本統計調査

3.年収をアップさせる6つの秘訣

薬剤師が年収をアップさせるためには、どのような方法があるのでしょうか。ここでは、6つの秘訣についてご紹介します。

3-1.年収アップの秘訣-1 資格などを取得する

薬剤師として働くためには、薬学部を卒業した上で国家試験に合格して、薬剤師免許を取得する必要があります。

しかし、現在の医療現場においては、それぞれの医療系職種が専門性を発揮していくことが求められており、薬剤師免許だけがあれば十分とはいい切れません。

認定薬剤師や専門薬剤師の資格を取得することで、業務範囲が拡大し、業務にさらに貢献することができたり、資格手当が支給されたりすることで年収アップにつながることもあります。

例えば調剤薬局で働く薬剤師は、「研修認定薬剤師」や「認定実務実習指導薬剤師」を取得することで、薬局の収益に貢献することも可能です。

また、病院で働く薬剤師は、「糖尿病薬物療法認定薬剤師」や「薬物療法専門薬剤師」を取得することで、他職種のサポートをすることにもつながります。

それぞれの資格の取得方法や認定期間・必要な認定審査料など、詳しくは以下の記事にて紹介しているので、あわせて参考にしてください。

3-2.年収アップの秘訣-2 地方や他業種に転職する

交通の便が悪く、人手の集まりにくい地方では、薬剤師の数はまだまだ不足しています。

深刻な人手不足の状況にある地方の薬局や病院では、好条件の求人も少なくありません。交通の便が悪い場所でも、住宅や自動車の貸与をおこなっている求人もあるので、首都圏で働く薬剤師が転職先として検討することも可能です。
地方への転職に関する情報はこちらの記事を参考にしてみてください。

また、業種によっても年収水準は異なるため、他業種に転職することもおすすめです。

調剤薬局や病院は給与が低めに設定されていますが、ドラッグストアや製薬会社などは年収700万円を超える求人も珍しくありません。

ドラッグストアでは、調剤の経験も活かせます。また、大手製薬企業や外資系企業の管理職となれば、実力次第で年収1,000万円以上を目指すことも可能です。

3-3.年収アップの秘訣-3 副業を考えてみる

薬剤師の中には副業を始める人も増えています。

薬剤師の副業としておすすめなのはパート薬剤師です。調剤薬局などで人手が足りなくなる土日や夜間のパート薬剤師の時給は高い傾向にあり、年収アップが見込めます。雇用主が派遣会社の派遣薬剤師も時給が高く、自由な働き方が可能です。

また、薬剤師なら医薬・食品業界などのコールセンターやメディカルライターのパートもあります。知識や経験を生かし、調剤とは異なる業務に挑戦してみるのもおすすめです。

年収をアップさせるのに魅力的な副業ですが、副業が禁止されている薬剤師もいるので注意をしましょう。

管理薬剤師や公務員薬剤師は法律で副業が禁止されています。一般薬剤師でも就労規則で副業を禁止している企業があるため、事前の確認が必要です。

3-4.年収アップの秘訣-4 企業が求めている人材によって決める

薬剤師の即戦力を求めている企業では、給与を高く設定しているところもあります。

どんなスキルや資格・実績を持った人材を求めているのか調べてみるのもよいでしょう。

今まで気づかなかった業種の転職先が見つかるかもしれません。

例えば薬局だけでなく、医薬品メーカーや医薬品卸、CRO(開発業務受託機関)なども、薬剤師の即戦力を求めているところもあります。随時、人材を募集しているのでチェックしてみましょう。

薬剤師の年収アップの業界や企業を効率よく調べるには、薬剤師に特化したキャリアアドバイザーを活用するのがおすすめです。

3-5.年収アップの秘訣-5 独立支援のある企業に転職する

薬剤師として大幅な年収アップが見込めるチャンスの一つとして、独立開業があります。とはいえ、いきなり独立開業するのはハードルが高く、リスクもあります。そのような場合は、「独立支援制度」を設けている企業に転職をするのも一つの方法です。

独立支援制度は、将来的に独立開業を目指す薬剤師に対し、働きながら実績を積み、薬局経営に関するノウハウを学ぶことができる制度です。創業に必要な資金も貯めながら、薬局の運営に関する知識や財務・税務・法律などに関しても学べるので、計画的に独立開業を目指し、年収アップを実現することができます。

3-6.年収アップの秘訣-6 マイナビ薬剤師を活用する

自分の力だけで年収アップを目指すことは、非常に困難です。そんなときには、マイナビ薬剤師のサポートを活用することを検討しましょう。

マイナビ薬剤師は、薬剤師専任のキャリアアドバイザーがサポートやアドバイスをおこなってくれる、薬剤師専門の転職エージェントです。

完全無料で転職サポートが受けられるため、「忙しくて転職活動をする暇がない」「転職の経験がなくどうしたら良いかわからない」という方でも安心のサービスです。

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また「年収を大きくアップさせたい」「年収を上げながらワークライフバランスも確保したい」という方は、ぜひ「マイナビ薬剤師のキャリアアップ求人特集」をチェックしてみてください。

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4.キャリアアップも視野に入れてみよう

年収アップの方法として、薬剤師としてのキャリアアップを考えてみましょう。

薬局の管理責任を担う管理薬剤師は、一般の薬剤師よりも高い年収を得ています。厚生労働省の第23回医療経済学実態調査の報告によると、保険薬局に勤める一般の薬剤師の年収平均が約474万円であったのに対し、管理薬剤師の年収平均は約721万円となっています。

管理薬剤師についてご興味のある方は関連記事をご覧ください。

またラウンダー薬剤師もキャリアアップの一つです。
ラウンダー薬剤師は人員が不足している店舗をカバーするために、複数の店舗で働く薬剤師です。複数の店舗を移動する負荷が加味され、エリアマネージャーを兼任することもあるので、高い給与が期待できます。

5.まとめ

薬剤師の平均年収は一般労働者よりも高いことが知られています。実際、厚生労働省の令和4年賃金構造基本統計調査データからも、薬剤師の年収は、一般的労働者の平均年収よりも高いことがわかりました。
しかし、データを細かくみていくと、薬剤師の年収には、地域格差や年齢によって大きな違いがありました。例えば、薬剤師として駆け出しの20代では、薬剤師全体の平均年収を下回るケースが多いようです。ただし、薬剤師は定年に向けて実務経験を重ねるほど、着実に年収がアップしていることもわかりました。

今、「自分の年収が低い」と感じている人も、薬剤師としての経験を積むことで、段階的な年収アップが見込めます。しかし、若くても向上心を持って、大幅な年収アップを狙うなら、専門スキルや実績を生かして、さまざまな方法で年収アップに挑戦することもできます。専門職としての特性を活かし、管理薬剤師などへのキャリアアップ、地方や他業種への転職、副業など、広い視野で調べてみるのがおすすめです。

ダイバーシティや働き方改革が進められている今、自分だけの新しい働き方をとおして年収アップを実現してみてはいかがでしょうか。

この記事の著者

医学博士、医学研究者

榎本 蒼子

最終学歴は京都府立医科大学大学院医学研究科博士課程卒業。2011~2015年 京都府立医科大学にて助教を勤め、医学研究および医学教育に従事。

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