アメリカの薬剤師の年収はいくら?日本との違いについて解説

アメリカの薬剤師の年収はいくら?日本との違いについて解説

薬剤師の中には、「のんびりと働いてみたい」と思ったことがある人がいるのではないでしょうか。精神的なプレッシャーや緊張感がつらくなったり、体力や業務量に負担を感じたり……さまざまな理由が挙げられるでしょう。

本記事では、薬剤師がのんびり働きたいと感じる主な理由や、ゆとりを持って働きやすい職場の特徴、求人を探すときのポイントについて解説します。

1. アメリカの薬剤師の年収はいくら?

米労働統計局(BLS)によると、2025年におけるアメリカで働く薬剤師の年収の中央値は、14万910ドルでした。中央値とは、データを小さい順や大きい順に並べたとき、ちょうど真ん中に位置する値のことです。2026年9月14日時点の為替レート(1ドル=約154円)で計算すると、約2170万円です。なお、時給ベースでは67.75ドル(約1万400円)です。

同年の全職業の年収中央値は5万980ドル、「診断・治療を行う医療従事者(Healthcare diagnosing or treating practitioners)」は同10万3500ドルとされており、薬剤師の年収は高い水準にあるといえます

勤務先によって、給料水準は異なります。勤務先別の年収中央値は、以下のとおりです。

勤務先の種類 年収中央値(2025年)
病院 15万7290ドル
外来医療サービス 15万3920ドル
総合小売店(大型量販店) 15万1370ドル
薬局・医薬品販売店 13万2940ドル

※外来医療サービス:入院を伴わない医療サービスのこと。定期検査や予防接種、画像診断、簡単な手術、リハビリテーションなどを行う

その他、州や都市圏によっても給料の相場には幅があります。アメリカ国内では地域ごとの物価の差も大きく、同じ年収であっても生活水準は異なる場合があるでしょう。

参考:Pharmacists|米国労働統計局

2. 日本の薬剤師の平均年収

厚生労働省の「令和7年賃金構造基本統計調査」によると、日本の薬剤師の平均年収は566万7900円でした(「きまって支給する現金給与額」×12カ月+「年間賞与その他特別給与額」で算出)。

年齢別に見ると、キャリア初期から平均年収は徐々に上がり、40代後半でピークを迎えています。

年齢 日本の薬剤師の平均年収
20代前半 408万3700円
20代後半 494万7600円
30代前半 533万1900円
30代後半 598万円
40代前半 595万2千円
40代後半 675万8400円
50代前半 642万9900円
50代後半 657万4900円
60代前半 550万700円
60代後半 612万300円
70代~ 446万9700円

※「きまって支給する現金給与額」×12カ月+「年間賞与その他特別給与額」で算出

また、厚生労働省の「令和7年賃金構造基本統計調査」における「所定内給与額(中位数)」を基にした、賞与や残業手当などを除いた年収の中央値は427万9200円です。

※年収の中央値=所定内給与額(中位数)×12カ月で算出(年間賞与その他の特別給与額、残業手当などは含まない)

単純に比べられるものではありませんが、日米の薬剤師の年収水準には大きな開きがあることが分かります。さらに、近年は円安が進んでいるため、日本円に換算した時の金額の差は以前より広がって感じられるでしょう。

ただし、年収の差がそのまま生活の豊かさの違いにつながるわけではありません。米国労働統計局(BLS)の家計調査(CE)によると、2024年におけるアメリカの1世帯あたり年間平均支出額は7万8535ドル(26年9月14日の為替レートで約1209万円)でした。その一方、総務省が行った同年の家計調査では、日本の1世帯あたりの年間消費支出は平均約301万円とされています。日本とアメリカでは支出の算出方法などが異なるものの、金額のみの単純比較ではアメリカは日本よりも生活コストが高い傾向が見られます。

参考:賃金構造基本統計調査 令和7年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 表番号5|政府統計の総合窓口 e-Stat
参考:Consumer Expenditures–2024|米国労働統計局
参考:家計調査|総務省

3. アメリカの薬剤師の年収が日本よりも高い理由

アメリカの薬剤師の年収が日本より高い理由として、資格取得までの負担の大きさや医療制度・民間保険事情、薬剤師に求められる役割などの違いが挙げられます。これらの要因が年収にどのように影響しているのか、順に見ていきましょう。

3-1. 求められる学歴と高額な学費

アメリカの薬剤師の年収が高い背景には、薬剤師になるまでに長い教育期間と多額の学費を要することが挙げられます。

アメリカで薬剤師になるには、Pharm.D.(薬学博士)の学位が必要です。Pharm.D.プログラムには、二つの課程があります。

一つは学士課程を修了した人を対象とする4年制の課程です。生物学や有機化学など、入学に必要な科目の単位を満たせば、学士課程の修了を待たずに入学を認める大学もあります。もう一つは、高校卒業後に直接進学できる6年制の課程です。前半の2年はPre-Pharmacyと呼ばれる一般教育に充てられ、後半の4年で薬物動態学や薬物治療学といった専門科目、臨床教育を行います。

これらの教育課程では、多くの学費がかかります。以下の表は、Pharm.D.課程で必要な学費を、学年ごとに州内授業料・州外授業料・必須費用の平均額で示したものです。

なお、州立大学の授業料は、その州に住む学生と、州外から進学する学生とで金額が分かれており、前者は州内授業料(In-State Tuition)、後者は州外授業料(Out-of-State Tuition)と言われています。日本からの留学生は、州外授業料が適用されます。

学年 州内授業料(In-State Tuition)の平均額 州外授業料(Out-of-State Tuition)の平均額 必須費用(Mandatory Fees)の平均額
1年目 3万4433ドル 4万2115ドル 2363ドル
2年目 3万4653ドル 4万2318ドル 2241ドル
3年目 3万4672ドル 4万2484ドル 2190ドル
4年目 3万3712ドル 4万3221ドル 2494ドル

※「2022-23 Tuition and Fees at U.S. Colleges and Schools of Pharmacy|米国薬科大学協会(AACP)」の学校別データ(139校)を基に作成

このように薬剤師になるまでのハードルが高いことが、高い年収の一因となっていると考えられます。

参考:2022-23 Tuition and Fees at U.S. Colleges and Schools of Pharmacy|米国薬科大学協会

3-2. アメリカの医療制度と民間保険事情

アメリカの医療制度や保険事情も、薬剤師の年収の高さに影響しています。

アメリカには、日本の国民皆保険制度に当たる仕組みがなく、公的医療保険としては高齢者や障害者向けの「メディケア」と低所得層向けの「メディケイド」の二種類のみが存在します。現役世代は民間の医療保険を利用することになりますが、保険料が高額なため無保険のまま過ごす人もいるなど、医療格差が大きいのが実情です。医療費も日本に比べて高い傾向があるため、体調を崩した人がまず向かうのは、治療費のかさむ病院ではなく薬局だといわれています。

こうした社会的背景から、薬剤師の需要は高く、それが年収の高さにつながっていると考えられます。

参考:米国における医療保険制度の概要(2021年6月)|日本貿易振興機構(ジェトロ)
参考:日本と諸外国の医療水準と医療費|日本医師会

3-3. 予防接種の実施など広範囲な臨床サービス

アメリカの薬剤師は調剤だけでなく幅広い業務を担っており、職能の広さが高い年収につながっています

代表例が予防接種です。日本では薬剤師による予防接種は認められていませんが、アメリカの薬剤師はインフルエンザや肺炎球菌などのワクチン接種が可能です。

加えて、薬局やドラッグストアの薬剤師は、地域住民の健康管理の支援にも積極的に携わります。血圧計や血糖値の測定機器を備える薬局では、薬剤師がセルフチェックの方法を指導します。また、慢性疾患を抱える患者に対して、薬剤師が服薬の状況や体調を継続して把握し、必要に応じて受診を勧めることもあります。

3-4. 医師との協働と限定的な処方権(CDTM)

アメリカの薬剤師の年収が高い理由の一つに、アメリカの薬剤師は処方権を持っていることが挙げられます。日本の薬剤師には処方権が認められていません。

処方権とは、処方箋を書く権利のことです。医師の指示を待つことなく、薬剤師の判断で診断や治療方針の決定を行い、処方箋を発行する「独立型処方権」と、一定の条件の下で処方箋を発行できる「依存型処方権」の二つがあります。アメリカの薬剤師に認められているのは、依存型処方権です。

アメリカでは、薬物治療共同管理(CDTM)として導入されています。これは要件を満たした薬剤師が、医師と取り決めた契約(プロトコル)で認められた範囲に限り、薬物治療を管理する仕組みを指します。例えば、高血圧の管理では、薬剤師が降圧薬の副作用モニタリングに必要な検査を指示し、薬の開始や投与量の調節を行うことがあります。ただし、薬剤師に認められる範囲は州によって異なります。

参考:処方権|日本薬科学会
参考:How Pharmacists Can Assist Physicians With Controlling Blood Pressure|Wiley Online Library

4. 日本の薬剤師がアメリカで働くためのステップ

日本の薬剤師資格を保有しているだけでは、アメリカで薬剤師として働くことはできません。日本の薬剤師がアメリカで働く方法として、日本で取得した薬学部資格を生かす方法とアメリカの薬学部(Pharm.D.)を卒業する方法があります。どちらを選ぶかによって、必要な手続きが変わります。

4-1. 日本の薬学部資格を生かす

日本で取得した薬剤師資格を生かす場合、まず外国薬剤師卒業試験委員会(FPGEC)の認定を受ける必要があります。海外で受けた薬学教育がアメリカの薬科大学を卒業した薬剤師と同等の水準にあると示すものです。

認定を受けるには、FPGEEと呼ばれる試験に合格しなければなりません。併せて、英語力を証明するため、TOEFL iBTの基準スコアを満たす必要があります。

FPGECの認定を取得した後は、病院・薬局でのインターンへの参加や試験の合格など、州ごとに定められた要件を満たすことで、薬剤師として働けるようになります。

参考:Foreign Pharmacy|NABP

4-2. アメリカの薬学部(Pharm.D.)を卒業する

アメリカの薬学部(Pharm.D.)を卒業して、薬剤師免許の取得を目指す方法もあります。

この方法のメリットは、アメリカの臨床現場で使われる薬の知識や考え方を学べることです。薬の使い方や医療制度を現地の基準で身に付けられるため、卒業後にそのまま現場へ移りやすくなります。また、カリキュラムには実務実習が組み込まれているため、服薬指導や処方の確認などで英語を使うことで、現場で通用する語学力も身に付けられるでしょう。

ただし、資格を取得するまでに多くの時間や費用がかかるため、念入りな事前準備が欠かせません。

5. アメリカで薬剤師として働くために必要な知識やスキル

アメリカで薬剤師として働くためには、以下の知識やスキルが求められます。

  • 実践的な医療英語とコミュニケーション能力
  • 医療保険システムの知識
  • 臨床判断スキル

以下で、詳しく見ていきましょう。

5-1. 実践的な医療英語とコミュニケーション能力

アメリカで薬剤師として働くには、薬の名前や用法、副作用などを正確に伝えるために、専門的な医療英語を覚える必要があります。まずは現場でよく使う医療英語を暗記して、分からない単語を調べる習慣を身に付けましょう。

また、医師や看護師などの医療従事者や患者と接する機会の多い薬剤師には、コミュニケーション能力も欠かせません。アメリカの薬剤師資格を取得する際にはTOEFL iBTのスコアが求められることもありますが、実際の現場では、専門的な内容を英語で分かりやすく説明する力も必要です。

コミュニケーション能力を高めるには、英会話教室やオンライン英会話などを利用して実際に話すことが大切です。英語を日本語に直訳すると元の意味やニュアンスがずれることがあるため、訳語だけを覚えるのではなく、その表現が実際にどのように使われるのかを理解することが大切です。

5-2. 医療保険システムの知識

アメリカで働く薬剤師には、医療保険システムの知識が必要です。前述したように、アメリカには日本のような国民皆保険制度は存在せず、人によって加入している医療保険が異なります。

保険の種類によっては受診できる医療機関が決まっている場合があり、契約外の医療機関を利用すると自己負担額が大きくなったり、給付を受けられなかったりします。また、同じ薬であっても加入している保険によって患者の自己負担額が変わることもあるため、薬剤師は調剤の際に保険の適用や負担額を確認する必要があります。アメリカの医療保険の仕組みを正しく理解しておかないと、患者さんへの説明や代替薬の提案で迷う場面も出てくるでしょう。

5-3. 臨床判断スキル

アメリカの薬剤師は、薬物治療共同管理(CDTM)の下で、医師と取り決めた範囲の薬物治療管理を行います。処方された薬を調剤するだけでなく、薬の開始や量をどう調節するかを判断する立場に置かれることもあります。そのため、患者の状態を読み取って治療方針を組み立てる臨床判断スキルが欠かせません。

こうした判断は、最新の診療ガイドラインとエビデンスに基づいて行う必要があります。治療の基準は日々更新されていくため、新しい知識を学び続ける姿勢も求められます。

6. 日本に比べて、アメリカの薬剤師は高年収を得られる傾向がある

米国労働統計局(BLS)によると、2025年におけるアメリカで働く薬剤師の年収の中央値は、14万910ドルでした。アメリカの薬剤師が高年収である背景として、資格取得までの負担の大きさや医療制度・民間保険事情、薬剤師に求められる役割などの違いが関係しています。

日本の薬剤師がアメリカで働くには、日本の薬学部資格を生かす方法と、アメリカの薬学部(Pharm.D.)を卒業する方法の二つがあり、どちらを選ぶかによって必要な手続きが変わります。資格取得には時間や費用がかかりますが、日本とは違う環境で薬剤師としての力を発揮できるはずです。

参考URL

令和6年度薬剤師臨床研修の効果的な実施のための調査検討事業 報告書|厚生労働省
日本と諸外国の医療水準と医療費|日本医師会

この記事の著者

薬剤師

篠原 奨規

2児の父。調剤併設型ドラッグストアで勤務する現役薬剤師。薬剤師歴8年目。面薬局での勤務が長く、幅広い診療科の経験を積む。新入社員のOJT、若手社員への研修、社内薬剤師向けの勉強会にも携わる。音楽鑑賞が趣味で、月1でライブハウスに足を運ぶ。

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