薬剤師はブラックな仕事? 実際の就労環境や理想の働き方を実現するポイントを解説

薬剤師はブラックな仕事? 実際の就労環境や理想の働き方を実現するポイントを解説

仕事量の多さや人間関係のストレスなど、薬剤師として悩みを抱えながら働いている方の中には、現在の職場環境はブラックなのではないかと感じている方もいるでしょう。

本記事では、薬剤師の仕事がブラックといわれることがある具体的な理由を紹介するとともに、状況を改善するための方法を解説します。今の働き方を見直すきっかけとして、参考にしてください。

1. 薬剤師はブラックな仕事?

薬剤師は「ブラックな仕事」という声を耳にしたことがある方もいるかもしれません。確かに、職場によっては残業が多かったり、人手不足で1人あたりの業務負担が大きかったりするケースはあるでしょう。しかし、統計データを見ると、他職種と比較して薬剤師という職業そのものがブラックとは言い切れない実態が見えてきます。

まず、薬剤師の平均残業時間について確認してみましょう。厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、薬剤師(企業規模計10人以上、男女計)の超過実労働時間数は月8時間でした。医師の超過実労働時間数は月19時間、臨床検査技師は月10時間となっており、薬剤師はこれらの職種を下回っています。

また、同調査によると、薬剤師の平均給与は599万3,200円でした(「きまって支給する現金給与額×12カ月+年間賞与その他特別給与額」により算出)。一方、国税庁が報告した「令和6年分民間給与実態統計調査」によると、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は477万5千円です。調査の対象や期間が異なるため単純な比較はできませんが、薬剤師の年収水準は決して低くないことが分かります。

ただし、ここで押さえておきたいのは「ブラックな仕事」には明確な定義がないという点です。残業時間や給与だけでなく、人間関係や教育体制、休みの取りやすさなど、何をブラックと感じるかは人によって異なります。薬剤師という職業全体がひとまとめに「ブラック」なのではなく、あくまで職場や自身の状況によるところが大きいといえるでしょう。

参考:令和6年賃金構造基本統計調査|厚生労働省
参考:令和6年分民間給与実態統計調査|国税庁

2. 薬剤師がブラックといわれることがある理由

先述のとおり、ブラックな仕事であるかどうかは一概に判断できないケースが多いといえますが、薬剤師がブラックだといわれることがある背景には、薬剤師ならではの働き方や業務の特性も関係していると考えられます。ここからは、薬剤師がブラックといわれることがある主な理由について解説します。

2-1. 職場によっては仕事量が多く残業が発生する場合がある

薬剤師がブラックといわれることがある理由の一つに、仕事量の多さや残業の問題が挙げられます。先ほど紹介した「賃金構造基本統計調査」のデータを見ると、薬剤師の残業時間は、他の医療関連職種と比べて特別に多いわけではありません。

しかし、日本薬剤師会の調査によると、薬剤師の充足状況について「不足している」と回答した薬局は全体の24.0%に上ります。人員が足りない職場では1人あたりの仕事量が増えるため、残業が発生しやすい状況になりがちです。

また、薬剤師の仕事量は、季節的な要因が関係することもあるでしょう。冬場のインフルエンザや風邪、春先の花粉症など、特定の時期に患者さんが集中しやすい診療科の門前薬局では、処方箋枚数が一時的に増加し、残業時間が増える傾向にあります。

加えて、かかりつけ薬剤師や在宅薬剤師として働いている場合には、患者さんからの急な問い合わせや自宅への薬の配達といった業務が加わり、業務の終了時間が患者さんの状況に左右されることもあるでしょう。

参考:薬局薬剤師の業務について~薬剤師・薬局の現状と課題~|日本薬剤師会

2-2. 資格取得後も勉強し続ける必要がある

薬剤師は6年制の薬学部を卒業し、国家試験に合格することで得られる国家資格です。しかし、資格の取得はゴールではありません。薬剤師として働き続ける限り、常に新しい知識を学び続ける必要があります。

医療の現場では新薬が次々と登場することに加え、診療報酬制度は2年に1度改定されます。こうした変化に対応するには、日頃から知識のアップデートを続けることが求められます。業務後に勉強会に参加したり、休日に専門書を読んだりと、プライベートの時間を使って勉強している薬剤師も少なくありません。

日本薬剤師会が定めた「薬剤師行動規範」にも「薬剤師は、生涯にわたり知識と技能の水準を維持及び向上するよう研鑽するとともに、先人の業績に敬意を払い、また後進の育成に努める」と明記されています。

薬剤師にとって、日々の勉強は職業上の責務とはいえ、一般的な仕事と比べて負担が大きいと感じてしまうケースもあるでしょう。

参考:薬剤師行動規範|日本薬剤師会

2-3. “一人薬剤師”として働く場合がある

調剤薬局の中には、勤務薬剤師が1人だけという「一人薬剤師」体制の店舗があります。厚生労働省の「薬局薬剤師に関する基礎資料(概要)」によると、1日の勤務薬剤師数が平均1人の薬局は全体の20.4%を占めています。また、1.1〜2人の薬局は33.0%あり、時間帯によって一人薬剤師体制となっている薬局も存在します。

一人薬剤師の場合、処方箋の受け付けから調剤、監査、服薬指導、薬歴の記載まで、全ての業務を一人でこなさなければなりません。その分、スキルが身に付きやすい、人間関係の悩みが生じにくいといったメリットもあります。

しかし、薬剤師同士でダブルチェックを行い、調剤ミスを防ぐ仕組みがある薬局の薬剤師と比較すると、一人薬剤師はミスが起きた場合のリスクや責任も自分に集中するため、精神的なプレッシャーを感じることもあるでしょう。

参考:薬局薬剤師に関する基礎資料(概要)|厚生労働省

2-4. 人間関係が悪化すると業務に支障をきたしやすい

薬剤師の職場は少人数で運営される傾向があり、人間関係が業務に影響しやすい環境です。限られた人数で働く職場にいると、関係が悪化しても距離を置きにくい場合があります。

他職種と関わる機会が多い職場では、人間関係の範囲が広くなることもありますが、その分、立場の違いから細かな気遣いを求められる場面もあり、気疲れにつながることもあるでしょう。

また、職場によっては異動や転勤といった方法で環境を変えるのが難しいこともあり得ます。人間関係に悩んでいても、同じ職場で同じメンバーと働き続けなければならない状況だと、問題が長引きやすいでしょう。

2-5. 他職種や患者さんとの円滑なコミュニケーションが求められる

薬剤師の仕事は、薬を調剤するだけではありません。医師や看護師、患者やその家族、ケアマネジャーや介護スタッフなど、さまざまな人とのコミュニケーションが日常的に求められます

患者への服薬指導はもちろんのこと、処方内容に疑問がある時は、医師に電話で疑義照会を行う必要があります。在宅医療に関わる場合は、患者さんの自宅を訪問し、家族や介護職と連携しながら服薬管理を行うことになります。また、ドラッグストアで働く薬剤師は、OTC医薬品の販売に関する接客業務を任される場合もあります。

特に仕事に慣れないうちは、コミュニケーションが苦手な方は心理的な負担を感じることがあるでしょう。

2-6. キャリアアップの選択肢が限られやすい

薬剤師としてのキャリアに行き詰まりを感じ、それがブラックだという印象につながることもあるかもしれません。

例えば、調剤薬局では、管理薬剤師やエリアマネージャーが主な昇進先です。係長や課長、部長など、役職が細分化されている企業と比較するとポストの数が限られやすいために、希望してもすぐに昇進するのが難しいケースがあります。日々の業務が調剤・服薬指導の繰り返しになってしまうと、スキルの幅が広がりにくいと感じる方もいるでしょう。

病院薬剤師の場合は、がん専門薬剤師や感染制御専門薬剤師といった専門資格を取得することでキャリアアップが可能です。しかし、取得までに長い年月と厳しい要件が求められる資格も多く、簡単に目指せるものではないでしょう。

そのため、薬剤師はなるべく早い段階から将来のビジョンを明確にし、計画的にキャリアプランを立てておくことが大切です。

3. 薬剤師がブラックではない働き方を実現するには?

ブラックな環境にいるからといって、ずっと我慢し続ける必要はありません。薬剤師がブラックではない働き方を実現するには、以下のようなアプローチが挙げられます。

  • 同僚や上司に相談して問題解決を図る
  • 仕事内容や働き方を変えてみる
  • 自分に合った職場に転職する

残業時間や人間関係、給与、キャリアなど、自分にとって何がブラックと感じている原因なのかを整理した上で、それぞれの方法を検討してみてください。

3-1. 同僚や上司に相談して問題解決を図る

ブラックだと感じる状況を改善するには、まず信頼できる同僚や上司に相談することを検討してみましょう

相談する際は、具体的なデータや事実をもとに伝えることが大切です。例えば「毎月の残業時間が〇〇時間を超えている」「処方せん枚数に対して薬剤師の人数が足りていない」といった数値を示すことで、客観的に改善の必要性を認識してもらいやすくなります。

問題を言葉にして共有するだけでも、状況を客観的に整理するきっかけになります。一人で悩み続けず、信頼できる人に打ち明けてみましょう。ただし、改善を求めても状況が変わらない場合もあるかもしれません。行動したにもかかわらず変化が見られない場合は、働き方の変更や転職を検討する判断も必要です。

3-2. 仕事内容や働き方を変えてみる

今の職場がブラックだと感じていても、すぐに転職するのはハードルが高いという方もいるでしょう。その場合は、現在の職場で仕事内容や働き方を見直してみるのも有効です。

例えば、正社員としてフルタイムで働くことに負担を感じているなら、パートや時短勤務に切り替えるという選択肢を検討してもよいかもしれません。勤務日数や勤務時間を調整するだけでも、身体的・精神的な負担が軽減されることがあります。

業務内容の面では、担当する業務の範囲を変えてもらうことで状況が改善するケースもあるでしょう。調剤中心の業務を行っている場合は在宅訪問やかかりつけ薬剤師の業務に携わったり、病院勤務であれば担当する病棟の変更や専門チームへの参加を希望したりすることで、新たなやりがいを見つけられる可能性があります。

3-3. 自分に合った職場に転職する

今の職場での改善が難しく、働き方の変更だけでは状況が変わりにくいようなら、転職を検討すべきタイミングかもしれません。職場を変えることで、残業時間や人間関係、給与などの問題を根本から解決できるケースは少なくありません。

転職を考えるときは、職場に求める条件を整理しておきましょう。併せて、転職後にどのようなキャリアを築きたいのかをイメージしておくことで、応募先を比較しやすくなります。

初めて転職活動を行う時は、転職エージェントの利用がおすすめです。非公開求人の紹介や応募書類の添削、面接対策といったサポートを受けられるため、何から始めればよいかわからない方でもスムーズに転職活動を進められるでしょう。

4. ブラックだと感じる原因を整理して、働き方を見直そう

薬剤師がブラックだといわれる主な原因には、人手不足による残業や、一人薬剤師体制の精神的プレッシャーなどが挙げられます。また、業務後や休日にも勉強する必要があることや、少人数の職場で人間関係がこじれても距離を置きにくいことも、ブラックだと感じる一因になりやすいでしょう。

ただし、何をブラックと感じるかは人によって異なり、薬剤師という職業全体を一概に「ブラック」とくくることはできません。ブラックだと感じる原因を整理した上で、自分に合った改善策を探してみてください。

この記事の著者

薬剤師

篠原 奨規

2児の父。調剤併設型ドラッグストアで勤務する現役薬剤師。薬剤師歴8年目。面薬局での勤務が長く、幅広い診療科の経験を積む。新入社員のOJT、若手社員への研修、社内薬剤師向けの勉強会にも携わる。音楽鑑賞が趣味で、月1でライブハウスに足を運ぶ。

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