メディカルアフェアーズ(MA)とは?仕事内容・年収・転職のポイントを解説

メディカルアフェアーズ(MA)は、医療の高度化に伴い、医療従事者がエビデンスに基づく診療を行うために必要な医学・科学的情報の創出や提供をする役割を担っています。社外医科学専門家や医療従事者、患者団体などの多様なステークホルダー(利害関係者)から情報を収集・提供することで、患者さんの利益につながる医療に貢献することを目的としています。現在、多くの製薬会社で、メディカルアフェアーズの導入が進んでいます。

本記事では、メディカルアフェアーズの概要や仕事内容、主な部署について解説するとともに、年収や将来性、転職するときのポイントを伝えします。

1. メディカルアフェアーズ(MA)とは?

メディカルアフェアーズとは、高度な医学・科学的知識をベースに、医療現場のニーズ、特に「アンメットメディカルニーズ」を解決することを目的とした機能・組織を指します。

アンメットメディカルニーズとは、いまだに有効な治療法が見つかっていない疾患や現在の治療では効果や副作用などの面で不十分な疾患に対する医療ニーズのことです。その中で、自社のメディカルプラン等において具体的なアクションに移せる可能性があるものを「インサイト」と呼びます。

また、メディカルアフェアーズは、営利目的が主となるMR職とは異なる立場をとっているのが特徴です。自社のリソースを活用しつつ、学術論文や社外医科学専門家等の見識などを踏まえて、総合的に評価した上での情報発信が求められます。

参考:メディカルアフェアーズ部門が行う『医学・科学的情報提供』に関する手引き|日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 メディカルアフェアーズ部会

2. メディカルアフェアーズの仕事内容

メディカルアフェアーズの仕事内容は、大きく四つに分類されます。ここではそれぞれの仕事内容について解説します。

2-1. アンメットメディカルニーズの把握

アンメットメディカルニーズを把握する主な目的は、医療ニーズを顕在化させ、解決すべき医学・科学的課題を明確化することです。主な業務例として、医療関係者などとの医学・科学的交流やアドバイザリーボード会議の企画・実施が挙げられます。

アドバイザリーボード会議とは、専門的な意見を収集するために開催される諮問委員会のことで、主に社外有識者で構成されます。メディカルアフェアーズが開催する場合は、メディカル戦略や開発戦略の企画・立案などを目的とします。

また、患者団体などから患者ニーズを収集したり、クリニカルクエスチョンを特定したりすることも大切な業務です。クリニカルクエスチョンとは、診療ガイドラインのある疾患の検査や治療において、重要で明確な答えを示す必要がある課題のことです。新たなエビデンスが示された場合や複数の治療法を並立している場合など、最適な治療法を選択する必要があるケースが考えられます。

2-2. メディカルプランの作成

メディカルプランを作成する主な目的は、把握したアンメットメディカルニーズに関して、どの疾患領域でどのようなエビデンスを創出し、どのように医療現場へ還元するか、具体的に計画することです。

主な業務例として、「エビデンスの創出に関する戦略」「論文公表・学会発表」「医療関係者とのメディカル・エデュケーション会合」「疾患の認知向上や医薬品適正使用の知識等の向上を目的とした啓発活動」に関する計画の作成が挙げられます。

2-3. エビデンスの創出

エビデンスの創出を行う主な目的は、メディカルプランにのっとった医学の進歩や医療の発展に貢献することです。主な業務例として、研究者主導の臨床研究の支援や、共同臨床研究の企画・実施、企業主導の臨床研究の企画・実施などが挙げられます。

2-4. 医学・科学的情報の発信・提供

医学・科学的情報の発信・提供をする主な目的は、創出したエビデンスを活用しての情報提供や外部交流を通じたアンメットメディカルニーズの解決や、疾患に関する理解促進です。

主な業務例として、以下のようなものが挙げられます。

  • 面談などによる科学的情報交換
  • メディカル・エデュケーション会合やウェブサイトを活用した情報発信・提供
  • 外部のステークホルダーからの問い合わせ対応を目的とした定型化された回答例の作成
  • 求めに応じた未承認薬・適応外薬に関する情報提供
  • 論文公表・学会発表
  • 市民公開講座等を通じた疾患の啓発活動

メディカルアフェアーズは、医療関係者や有識者、一般の方などの幅広いステークホルダーに向けて、情報発信・情報提供をします。

参考:製薬企業のメディカルアフェアーズ(MA)とは|日本製薬工業協会

3. メディカルアフェアーズの主な職種・業務

前述した通り、メディカルアフェアーズの業務は多岐にわたり、それぞれに高い専門性が求められます。また、日本におけるメディカルアフェアーズの歴史は浅く、企業によって業務を担う職種や職種の名称、定義などが異なっているのが現状です。そのため、ここでは、メディカルアフェアーズに所属する主な部署の一般的な業務内容を紹介します。

3-1. メディカル・サイエンス・リエゾン(MSL)

メディカル・サイエンス・リエゾンは、営業部門から独立し、販売促進を目的とせずに、中立的な立場で社外専門家や医療従事者へ情報提供をする職種です。

疾患や研究の最新情報を集めたり学んだりして、アンメットメディカルニーズやクリニカルクエスチョンを抽出し、それらの知見を社内に還元することで、メディカル戦略やメディカルプランの立案・実行に貢献します。

3-2. メディカル・インフォメーション(MI)

メディカル・インフォメーションは、医療関係者や患者などからの問い合わせに対して情報提供を行う職業です。一般的な情報のほか、未承認・適応外の情報提供も行います。また、アンメットメディカルニーズやインサイト(潜在的な医療ニーズで解決できる可能性のある課題)の情報を入手することもあるため、メディカルプランの作成につなげる役割もあります。

さらに、アンメットメディカルニーズやインサイトの収集、社外医科学専門家向け資料の作成も、メディカル・インフォメーションが行います。

3-3. メディカル・エデュケーション(ME)

メディカル・エデュケーションは、特定の医薬品に偏らない疾患領域全般に関する情報提供や、会合・講習会の開催を通して医療関係者の専門的能力の向上を図ります

参考:メディカルアフェアーズ部門が行う『医学・科学的情報提供』に関する手引き|日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 メディカルアフェアーズ部会

4. メディカルアフェアーズの年収

メディカルアフェアーズの年収は、公的には示されていないため、具体的な年収は分かりません。しかし、製薬会社で働く職種の年収は、厚生労働省が運営する「職業情報提供サイトjob tag」で以下のように掲載されています。

メディカルアフェアーズは、幅広い高度な医学・薬学的知識が求められるため、高年収になることが推測されます。ただし、企業規模や年齢、経験年数、今までの経歴などによって、年収は異なります。

5. メディカルアフェアーズの将来性

メディカルアフェアーズは2010年以降、日本の製薬企業に導入されるようになりました。歴史が浅く、これから大きく成長していく領域といわれています。

医療の高度化やプロモーションの規制強化により、製薬企業には中立で医学・科学的な情報提供が強く求められるようになりました。電子カルテやレセプトなどのリアルワールドデータの活用が求められたり、デジタル治療やAI診断などの新しい医療技術が普及したりする中で、医療現場と科学をつなぐメディカルアフェアーズの役割はますます重要になるでしょう。

今後は、医療従事者や専門家と協働しながら、潜在的な医療ニーズの把握やエビデンスの創出、医薬品の適正使用の推進など、医療の質を向上させるための活動が求められます。そのため、メディカルアフェアーズの需要は、今後も高まっていくと考えられます。

6. メディカルアフェアーズに転職するには?

メディカルアフェアーズには高度な専門知識やスキル、経験が求められます。そのため、転職するには、必要なスキルを身に付けておくことが大切です。

メディカルアフェアーズに求められるスキルの一つに、医療・科学に関する専門知識が挙げられます。医薬品の作用機序や疾患への理解、安全性情報などの基礎知識が必須です。そのため、医師や薬剤師などの医療系資格や理系の修士・博士などを取得していると強みになります。CRAやMRなどの医療関係職種での実務経験があることも有利になりやすいでしょう。

また、中立的科学的な姿勢を保ちながら、医師や薬剤師などの医療従事者や医学科学系の専門家、患者団体などのステークホルダーとコミュニケーションを取るスキルが必要です。加えて、論文公表や学会発表、海外本社との会議などにも携わる可能性があるため、英語力が求められます

メディカルアフェアーズの求人に効率的に応募するためには、転職エージェントを活用するのがおすすめです。自身の経歴や希望条件に合わせた求人をピックアップしてもらえるでしょう。

7. メディカルアフェアーズに就職するための準備

メディカルアフェアーズは、医療現場の潜在的なニーズを把握し、エビデンスの創出や医学・科学的情報提供を通じて医療の発展に寄与する専門性の高い職種です。メディカルアフェアーズには、本記事で挙げた部署以外にもさまざまな部署があり、企業によって名称が異なります。業務内容も企業ごとに違いがあるため、メディカルアフェアーズで活躍したい場合は、各企業のホームページで詳しい業務内容を確認したうえで、必要なスキルや経験を身に付けることが大切です。

この記事の著者

薬剤師ライター

秋谷 侭美

薬剤師ライター。病院・薬局で幅広い診療科を経験。現在は2児の子育てをしながら、Webライターとして活動中。専門的な資料や情報をわかりやすくかみ砕き、現場のリアルに寄り添う言葉で伝えることを大切にしている。同じ薬剤師として、日々の悩みやモヤモヤに共感しながら、少しでも役立つヒントや気づきを届けられるように試行錯誤中。

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