居宅療養管理指導とは?薬局の薬剤師に求められる役割と合わせて紹介
昔は、夜中にかかりつけの医者に往診をお願いすることがありましたが、あくまでも急性期の往診だけが在宅医療として認められていました。しかし超高齢化社会を迎え、フレイルやサルコペニア、認知症といった、入院よりも在宅での療養が好ましい患者さんの増加、社会保障制度の維持、医療資源の確保など社会構造の変化が、医療制度の改革に波及することとなりました。
平成4年医療法の改正に伴い、在宅医療が入院医療、外来医療に次ぐ第3の医療として認められました。平成6年には医療保険の元での「在宅訪問薬剤管理指導」が、平成12年には介護保険の元での「居宅療養管理指導」がそれぞれ認められ、さらに平成24年には住み慣れた地域で、在宅を基本とした生活の継続を目指す地域包括ケアシステムの構築がすすめられるようになりました。
その中で、薬剤師の役割も期待される居宅療法管理指導について解説します。
目次
1.居宅療養管理指導とは
在宅医療における「居宅療養管理指導」について説明していきましょう。
1-1.居宅療養管理指導の概要
「居宅療養管理指導」とは、通院が困難な患者さんのご自宅や高齢者介護施設など日常生活を送っている居宅に、地域の医療従事者が訪問して提供する在宅医療の業務のうち、介護保険を利用する場合を言います。
在宅医療は、医師、歯科医師、薬剤師、管理栄養士又は歯科衛生士等が担い、ケアマネージャーなどの介護支援専門員が連携して行います。患者さんの心身の状況や置かれている環境など社会生活面にも目を向け、必要であれば地域社会にあるさまざまな介護支援サービスにつなげられるように多職種間で相互に情報共有し、療養上の管理、指導するものです。
どのように暮らしたいかといった患者さんやご家族の意向を踏まえ、どうしたら居宅で自立したより良い日常生活を送ることができるかを包括的に考えた在宅医療を行います。
急性期の疾患や怪我などにも対応しますが、基本的には介護と看護と療養を支えるものです。
1-2.居宅療養管理指導の対象者
在宅医療の対象者は、通院が困難で医師が必要と認めた患者さんです。そのうち「居宅療養管理指導」の対象者は、基本は介護保険サービスの利用できる65歳以上で、要介護1~5と認定されている患者さんです。
ただ、在宅医療が必要な方は高齢者ばかりではありません。介護保険に加入している40歳以上で、がんや神経疾患などを含む16種類の特定疾病と診断され、医師が在宅医療の必要性を認めた場合には65歳未満でも介護保険が利用でき「居宅療養管理指導」の対象となります。
居宅療養管理指導を行った際に算定できる費用は、職種ごとに要件や報酬の基本単位が決められています。
薬局の薬剤師の場合、医師又は歯科医師の指示により薬剤師が作成した薬学的管理指導計画に基づいて患者さんの居宅を訪問し、薬学的な管理指導を行い、介護支援専門員に対して居宅サービス計画の作成に必要な情報提供を行った場合に、1ヵ月に4回まで算定出来ます。
令和3年介護報酬における薬局の薬剤師が行う場合の「(介護予防)居宅療養管理指導費」は以下の通りです。
居宅療養管理指導費 | |
---|---|
単一の建物の居住者1人に対して行う場合 | 517単位 |
単一の建物の居住者2~9人に対して行う場合 | 378単位 |
単一の建物の居住者10人以上対して行う場合 | 341単位 |
参照元:厚生労働省/指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する件
その他、疼痛緩和(とうつうかんわ)のための特別な薬剤に対する指導加算100単位、情報通信機器を用いた服薬指導加算45単位(1ヵ月1回)の他、離島や中山間地域等に対するサービスの提供により別途加算されます。
1-3.居宅療養管理指導の需要増加
厚生労働省の介護給付費実態統計によると、居宅療養管理指導を受給している方の人数は年々増加し、2009年度には約28万人でしたが、2019年度には80万人を超えています。特に2016年から2020年までの5年間の統計によると訪問看護、訪問リハビリを含めた在宅サービスの中で、居宅療養管理指導の利用が約1.4倍と最も増加率が高くなっており、今後ますます需要が高まると考えられます。
また、利用者の増加に伴い居宅療養管理指導費も増加し、介護給付費全体に占めるその割合も2001年の0.4%から2018年には1.1%に増加しています。在宅患者数の増加に伴い、居宅療養管理指導の請求事業者数も増えており、業務を担う薬局の薬剤師も売り手市場といえます。
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2.居宅療養管理指導における薬局の薬剤師の意義
薬局薬剤師が行う居宅療養管理指導では、患者さんの居宅を訪問し服薬指導や薬歴管理などを行います。薬剤師が介入することで残薬の発見によるアドヒアランス不良や有害事象の早期発見、服薬状況の改善が期待でき、非常に意義があります。
これに加えて、令和3年介護報酬の改定では、居宅療養管理指導の基本方針とともに、多職種間における薬剤師のあり方も見直されています。
患者さんができる範囲で自立した日常生活を送るために、医師または歯科医師は社会生活面の課題にも目を向け、地域におけるさまざまな介護支援サービスにつなげる取り組みを進める動きがあります。その中で、薬剤師は、医師又は歯科医師に対して、居宅療養管理指導における指導や助言等につながる情報を積極的に患者さまから把握し必要な情報を提供します。
また、ケアマネージャーなど居宅介護支援事業所に対しては、居宅サービス計画の作成や提供に必要な情報を提供や助言を行うなど、居宅療養管理指導を行う上での多職種間の調整と中心的な立場が期待されています。
3.居宅療養管理指導における薬局の薬剤師の具体的な業務内容
実際に薬局の薬剤師が行う居宅療養間指導業務について説明します。
3-1.服薬情報に基づく管理・指導
居宅療養管理指導の在宅業務は患者さまの地域にあるかかりつけ薬局の薬剤師が行うことが多く、服薬情報に関する管理や指導は、在宅でも来局でも基本的には変わりません。服薬状況の確認や副作用を含む体調変化、多剤・重複投与、一般医薬品やサプリメント・食物との相互作用などのチェックが薬剤師の基本的な業務です。
その他、居宅療養管理指導で実施される内容としては、患者家族への薬の情報提供、薬の保管方法や服用方法の指導、服薬カレンダー等のツールの利用、一包化・粉砕・嚥下補助剤などの服用しやすい剤型選択の提案などです。
さらに終末期を居宅で過ごしたい患者さまが増えており、麻薬の管理、無菌調整、輸液の管理、栄養管理などの処方支援業務もあります。
3-2.医療機関等との緊密な連携
処方医はもちろん患者さんの在宅医療にかかわる連携先として、最も多いのはケアマネージャーや訪問看護ステーションなどの介護事業者です。訪問時に行った薬学的管理指導の内容は記録し、処方医や他の在宅医療にかかわる職種とも情報提供を行います。
その他、病院薬剤師との連携もあります。外来化学療法を行っている場合には共同の勉強会へ参加やレジメンの共有、患者さんが入院後に在宅医療を受ける場合の退院時カンファレンスに参加し、入院中の医療についての情報共有も在宅医療を担う薬剤師の業務の一つです。
在宅医療を担う薬剤師にとって、患者さんの療養に必要な情報共有のため、多職種と緊密な連携が重要な業務です。
在宅で腹膜透析や在宅血液透析、中心静脈栄養など高度管理医療機器を使用している場合、保険薬局は特定保健医療材料・衛生材料を医療機関の処方せんに基づいて供給することができます。こうした機器を使用している場合、在宅業務を担当する薬剤師は管理や取り扱いについて学術研修等に参加する必要があります。
4.在宅患者さんに対するオンライン服薬指導での薬局の薬剤師の役割について
2020年からはじまったオンライン服薬指導について、その経緯と在宅医療におけるメリットについて説明していきましょう。
4-1.オンライン服薬指導の経緯
薬剤師による服薬指導は原則対面で行うことが法律で定められていましたが、2018年にオンライン診療が開始されました。2019度には医薬品医療機器等法が改正され、2020年9月からオンライン服薬指導が始まりました。
オンライン服薬指導には、下記2点があります。
- 外来におけるオンライン診療時の処方せんに基づく服薬指導
- 在宅訪問診療時の処方せんに基づく服薬指導
②に関して、医療保険による診療報酬では2020年から算定可能でしたが、2021年介護報酬でも1ヵ月に1回45単位が算定出来るようになりました。
4-2.オンライン服薬指導の要件とメリット
電話やスマートフォン、パソコンなどの情報通信機器による服薬指導は、1ヵ月に1回行うことができます。その条件は以下のようになります。
- 居宅療養管理指導を月に1回行い、対面で服薬指導を行った処方薬と同じ内容の場合
- 患者さんの状態が安定していること
- 患者さんのご希望に沿って行われること
- 信頼関係のある薬剤師が行うこと
オンライン服薬指導に伴い、服用指導計画の作成や薬剤服用歴の管理、オンライン服用指導後にはその結果を処方医に情報提供することなどが必要になります。
安定した慢性疾患の患者さんで、服用状況が良好で残薬も管理されている場合には、患者さん、薬剤師双方にメリットがあります。
また新型コロナ感染症に対し十分な予防策がされていても、医療従事者による持ち込みの不安も解消されるということもあります。今後、薬科大学のカリキュラム導入や在宅療養支援認定薬剤師なども検討されており、ますますオンライン服薬指導がすすむことが期待されます。
5.まとめ
超高齢化社会を迎え、介護が必要な高齢者が増えていますが、患者さまは住み慣れた居宅で日常生活を過ごし、見取りまで希望される方も増えています。こうした患者さんに対して、地域包括システムが構築され、多職種が連携して行う在宅医療がすすめられています。
在宅医療は介護保険で居宅療養管理指導として算定され、利用される方や費用の増加が将来的にも期待できます。居宅療養管理指導の中心的役割を担う薬局の薬剤師は、今後も需要が増えることが見込まれています。居宅を訪問し、患者さんに寄り添う薬局の薬剤師という将来像が見えてくるのではないでしょうか。
現在、保険薬局では外来処方箋を応需しながら、かかりつけ薬局の薬剤師として在宅に対応しているところがほとんどです。在宅対応に力を入れている薬局では、薬剤師の人数を増やす方向性にあります。また、高齢者介護施設に隣接した在宅専門の薬局を開局する動きもあります。
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