AI活用でどう変わる?AIが薬剤師の業務に与える影響とは

AI活用でどう変わる?AIが薬剤師の業務に与える影響とは
最近よく耳にするようになったAIですが、まるで人間のようになんでもできる汎用型人工知能の誕生には、まだ数十年は必要だといわれています。現在のAIは特定の作業しかできない特化型人工知能ですが、今後10~15年のうちに労働者のおよそ半数がAIに置き換わるともいわれています。

囲碁や将棋で人間を打ち負かすまでになったAIは、すでにさまざまな仕事に使用されており、調剤薬局への導入も始まりつつあります。今後、薬剤師の業務もAIへの移行が進んでいくと予想されますが、いずれ薬剤師はAIに取って代わられてしまうのか、AIが薬剤師の業務に与える影響について考えてみます。

1. 現在の主な薬剤師の業務

はじめに、薬剤師の主な業務内容を再確認し、人間とAIのどちらがその業務に向いているのか、また、AIが関与することによってどんな点が変化していくのか予想してみましょう。

1.1. 薬剤師の中心的業務である「調剤業務」

調剤薬局における薬剤師の業務の流れは、処方せんの受付⇒処方せん鑑査⇒疑義照会⇒調剤⇒薬剤鑑査⇒服薬指導⇒交付・会計となります。
ここでは処方せん鑑査から薬剤鑑査までの調剤業務をチェックしてみます。

1.1.1 処方せん鑑査と疑義照会

薬剤師法第24条には「薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによって調剤してはならない」と定められています。

処方せんの誤りを確認する処方せん鑑査と、疑わしい点があった場合に医師への問い合わせを行う疑義照会は薬剤師の義務であり、かつ非常に重要な業務です。

処方せん鑑査は、記載もれや書き間違いなどはもとより、用法用量や処方薬の組み合わせ、副作用などについても薬剤師の知識をもって正確にチェックしなければなりません。そして誤りや疑わしい箇所がある場合は、処方した医師に確認し、疑義を正さなければなりません。

書類のチェック自体は、データ認識を正確に行えるAIのほうが得意ですが、疑義照会の相手は人間である医師ですから、今のところAIに任せることはできません。処方せん鑑査と疑義照会については、薬剤師とAIが協調して行うべき業務といえるでしょう。

1.1.2. 調剤と薬剤鑑査

本来ならば、調剤は薬剤師にとって最も重要な仕事ですが、薬局の業務の中では処方せん受付と並んで最も自動化が進んでいます。複数の錠剤をひとつのパッケージにする分包機、散薬を混合する調合ロボット、水剤用の分注機など、資金さえあればすべての調剤プロセスを自動化することも可能です。

薬剤鑑査とは、調剤した薬剤師とは別の薬剤師が、調剤に誤りがないかを確認する業務です。この分野においても高性能な監査システムが普及しており、薬剤師を強力にサポートしてくれます。

調剤と薬剤鑑査においては、AIの登場を待つまでもなく、すでに機械化や自動化が進んでいます。調剤のプロセスでは、薬剤師は最終的な鑑査を行い、あとはすべて機械に代行させることが可能です。

1.2. 薬の情報提供を行う「服薬指導」

調剤が完了したら、患者さんに処方薬についての解説と正しい飲み方の指導を行い、薬を交付します。薬剤師にとって重要な業務が、この服薬指導です。

2019年4月に厚生労働省から通知された「調剤業務のあり方について」のなかで、薬剤師による業務は「処方せんに基づいて適切な医薬品を提供する」ことから、「患者さんに安全に正しく薬を飲んでもらう」ことへのシフトが明確にされています。

医薬品の効果や副作用などのリスク、医薬品同士の相互作用など、情報提供だけであればAIの方が人間よりも正確に伝えることができるでしょう。しかし、どんなに高性能なAIであっても、患者さんごとに異なる生活環境や食生活、患者さんがあえて言おうとしない情報などを、会話の中から導き出すことはできません。

また、患者さんの声や表情、行動などから体調の変化に気づくこともAIには不可能です。服薬指導においては薬剤師のスキル以外に頼るすべはなく、しばらくの間AIの出番はこないでしょう。

1.3. 薬歴を管理する「薬剤管理」

薬剤服用歴(薬歴)の管理指導料は調剤報酬の対象であり、ドラッグストアや調剤薬局の不適切な薬歴管理はこれまでも度々問題とされてきました。ただ、服薬状況から残薬の状況確認、服薬中の体調変化や併用薬の情報、効果や副作用の有無など、記録すべき情報量が多く、店舗業務で多忙なときなどにはおろそかになるケースも少なくありません。

この分野では音声入力やクラウドサービスによる薬歴管理が普及し始めており、薬剤師がAIを活用することによって、より速く正確に薬歴管理が行えるようになるでしょう。

2. AIによって効率化される業務

AIの最大の強みは膨大なデータベースに瞬時にアクセスし、最適な答えを導き出すところにあります。また、さまざまな入力装置やロボットへの搭載により、人間に代わって正確な作業を行うことも可能です。

AIが導入された場合、薬局業務がどんな風に効率化していくのか、業務フローに沿ってシミュレーションをしてみましょう。

2.1. 調剤業務や薬歴管理が効率化される?

日本薬剤師会の「電子お薬手帳」を使えば、スマホのカメラで処方せんを撮影、送信することで、薬局へ行かずに処方せんの受付を済ませることができます。このとき、問診を入力するため薬歴の初回入力も同時に行うことができます。

薬局側では送られてきた処方せんの内容をAIが確認し、鑑査結果を出力します。薬剤師は、問診票とAIが出力した処方せん鑑査の結果をチェックし、疑義があれば処方医に疑義照会を行います。

キャリア不足の新人薬剤師では、処方せん鑑査や疑義照会がスムーズにいかない場合も少なくありません。疑義照会の際に、処方した医師や医療機関とトラブルに発展するケースも見受けられます。そんなとき、AIによる疑義の裏付けがあれば処方医とのコミュニケーションも円滑に進められるでしょう。

処方せんの鑑査の後は、調剤作業はシステムにまかせ、薬剤師は調剤鑑査まで完了した薬剤の最終鑑査を行うだけです。調剤業務の負荷が減った分、服薬指導は念入りに行い、AIによる音声認識を使用した薬歴入力を速やかに行います。

薬歴管理がきちんと行われていれば、処方せん受付時にAIが詳細な患者情報を出力してくれるので、薬剤師の業務は疑義照会時の医師とのコミュニケーション、そして服薬指導時の患者とのコミュニケーションが中心となります。

2.2. すでにAIによって行われている業務

薬局における薬剤師の業務のうち、すでにAIによって行われている業務にはどのようなものがあるでしょうか。

受付業務は、スマホを利用した受付や対人ロボットの導入など、すでにIT化が進んでいます。また、薬剤のピッキングもロボット化が進んでおり、これらのシステムは今後一層の普及が見込まれます。

調剤作業については、鑑査システムも含めてすでに機械化が進んでいます。薬歴管理も音声入力を利用したクラウドサービスが提供されており、AIの得意領域となりつつあります。

3. 今後AI活用で薬剤師はどう変わる?

これまで見てきた通り、AIはすでに薬剤師業務の多くの領域をカバーするまでに進化しています。今後さらにAIの活用が進むことで、薬剤師とAIとの分業、あるいは協業がますます増えていくことでしょう。

しかし、高性能なAIといえども万能ではなく、薬剤師が上手に活用してこそ真の実力が発揮できるツールといえます。これからの時代に求められる薬剤師像をイメージしてみましょう。

3.1. AIの苦手分野

現在のAIはある特定の作業に特化した人工知能で、例えば将棋AIなら将棋、自動運転AIなら自動運転しかできません。薬局の業務に例えるなら、受付AI、調剤AI、薬歴AI、といった具合に、AIが業務フローの中で担当できるのはひとつの仕事だけです。

また、AIが検知できるのは言葉や文字だけで、人間の健康状態や感情を感知することも不可能です。総じてAIは、業務フロー全体を監督して突発的な事態に対応することや、人とのコミュケーションを苦手としています。

3.2. 対人業務で大事なこと

薬剤師法では、医師が自らの処方せんにより調剤する場合を除き、薬剤師以外の調剤を禁じてきました。ところが、0402通知(2019年4月2日付、厚生労働省「調剤業務のあり方について」)により、最終的な責任を負う薬剤師の監督のもとであれば薬剤師以外の調剤を認める、と変更されたのです。

この通知の主旨は、薬剤師の仕事の対象が「クスリ」から「患者」になったことを意味しており、かかりつけ薬剤師・薬局の創設にもつながっています。

背景には、多剤服用、重複投与によるリスクを軽減するために服薬情報を一元管理し、地域の医療システムと連携して医療費の削減につなげようという政府の考えがあります。

薬剤師の対人業務はこれまでと違い、自分が交付する薬だけでなく、患者が服用するすべての薬を把握して安全かつ効果的な服薬指導につなげること、さらには健康食品やサプリメントなどによる隠れ多剤服用を防止し、患者の健康に寄与することが目的となります。

これからの薬剤師が目指すべき目標は、患者さんがなんでも正直に話してくれるようになること、自分のアドバイスにしっかり耳を傾け、正しい服薬を心がけてくれるようになることです。こればかりは、どんなに優れたAIにも真似のできない業務です。

薬剤師の将来や、自身の将来性を高める方法などを知りたい方は、こちらの記事もチェックしてみてください。
薬剤師の働く環境は変化していますが、その変化を受け入れて自分がやるべきことを見つけることが、今後の薬剤師人生で重要となってくるでしょう。

4. まとめ

これからの薬剤師には、患者の病態や服薬状況だけでなく、患者の周囲環境や性格を把握し、体調や精神状態の変化まで気づけるようになることが求められます。薬剤師の側から見れば、多くの患者のなかの1人かもしれませんが、患者側からみればかかりつけ薬剤師は「唯一無二」の存在です。

AIは、そんな薬剤師をサポートするためのすばらしいツールであり、上手に活用すれば心強い味方になるでしょう。AIとタッグを組んで患者さんから指名される薬剤師を目指すことで、将来性ある薬剤師の未来像が見えてくるはずです。

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