門前薬局とは?意外と知らない門前薬局の役割から働くメリットまで解説

門前薬局とは?意外と知らない門前薬局の役割から働くメリットまで解説

病院やクリニックなどの近隣にあり、主に周辺の医療機関から発行された処方箋を受けて調剤する「門前薬局」。地域ではよく見かけますが、知っているようで実は詳しくわからないという方も多いのではないでしょうか。

門前薬局は時代のニーズを受けて新たな変化が求められており、門前薬局で働く薬剤師にもこれまでとは違った役割を担っていくことが求められています。

ここでは門前薬局の役割や課題、そこで働くメリット・デメリットなどについて解説します。

1.門前薬局とは

門前薬局とは病院やクリニックのすぐ近くにあり、近隣の医療機関からの処方箋に基づいて、薬を調剤したり販売したりする薬局のことをいいます。

門前薬局が地域に増えてきたきっかけは、厚生労働省が医師と薬剤師の専門性を活かすために医薬分業を進めたことにあります。昭和49年に診療報酬の改定があり、処方せん料が100円から500円へと大幅にアップしました。

その結果、医療機関にとって収益が見込める院外処方が増え、調剤薬局の需要が高まったのです。日本薬剤師会による令和2年の統計では、医療機関の7割以上が院外処方を選択しています。院外処方の数は年々増えており、この傾向はまだ続いていくことが予測されます。

参照元:日本薬剤師会/処方箋受取率の推計
参照元:厚生労働省/処方箋受取率の年次推移

2.門前薬局の役割とは

薬が院外で処方されることによって、病院で働く薬剤師は入院患者さまへの対応をはじめ、病院での業務に集中することができるようになりました。

一方、外来患者さまの処方を扱うために誕生した門前薬局は、薬の調剤と販売だけでなく、患者さまそれぞれに合わせた薬の量や組み合わせの確認と服薬指導、医師に疑義照会をして薬の変更を提案すること、健康相談を受けることなど、「地域の健康カウンセラー」としての役割を果たすことが期待されていました。
しかし、実際には調剤業務に偏りがちで、期待された役割を果たしていないという現状がありました。

そこで、厚生労働省は門前薬局の役割について改めて見直しをおこない、処方箋の一括管理や医療機関との連携、そして24時間対応や在宅対応も可能な「かかりつけ薬局」として役割を果たすことを推進しました。さらにそこへ、地域住民の健康維持・増進のための支援をおこなう役割も加えて「健康サポート薬局」として、地域に根付く取り組みもはじめています。

参照元:大分県薬剤師会/「薬剤師の仕事は多種多様」内「薬局薬剤師」
参照元:日本薬剤師会/かかりつけ薬剤師・薬局とは?
参照元:日本薬剤師会/健康サポート薬局とは?

3.門前薬局の課題とは

医薬分業の推進によって広がってきた現在の門前薬局が抱える課題について解説します。

3-1.薬剤師が不足している

門前薬局は、長年慢性的な薬剤師不足の状況です。
その理由は、まず新規採用の面でも、大手薬局チェーンや調剤併設ドラッグストアの店舗出店による薬剤師の需要増に対して、中小が多い門前薬局まで薬剤師の供給が追い付いていないことが挙げられます。

また、薬剤師業界に限らず在職者の定着の面でも、一般的に薬剤師の男女比は3:7と女性の方が多いため、結婚や出産を機に退職や休業など仕事の調整をすることも多く、女性が多い職場では、一時的に薬剤師不足が生じやすいのです。
新卒採用の面でも就職希望者が少なく、地域や薬科大学のない地域での薬剤師の獲得は難しいようです。

つまり門前薬局にとっては、新規採用、在職者の定着、新卒の採用、すべての面で薬剤師不足の傾向といえるでしょう。

3-2.人の繋がりが希薄になっている

情報社会のいま、人の繋がりが希薄になっており、あえて直接コミュニケーションを取らずとも、インターネットで欲しい情報だけを入手することができます。また、薬剤師として専門性が発揮できる薬の管理や服薬指導なども、SNSを使ったサービスなどで同じようなことができるようになってきています。
足を運ばなくても薬のことがわかるようになった現代は、処方を受ける患者さまと直接話して、個々の健康状態を把握して、継続してサポートする地域の門前薬局の強みが薄れてしまいます。

3-3.調剤併設型のドラッグストアの存在

地域の調剤薬局は門前薬局だけでなく、調剤併設型のドラッグストアもあります。調剤併設型のドラッグストアでは、「買い物のついでに薬も購入できる」という大きなメリットがあります。
処方箋を提出しておけば買い物をしている間に薬の調剤が終わるため、調剤を待つ時間を有効に使えます。また、どの医療機関で出された処方箋にも対応できるよう、取り扱う薬の種類が多いという特徴もあります。

一方、クリニックの近くの門前薬局では扱う薬の種類はクリニックが専門としている診療科に偏りがちです。もし、取り扱いのない薬であった場合には、薬を取り寄せてもらうかほかの薬局に行くことになります。

このように、調剤併設型のドラッグストアにはクリニックの近くの門前薬局にはない利便性があり、門前薬局にとって競合となる存在です。

4.門前薬局が生き残るためには

門前薬局が生き残るためのヒントになる「地域」「相談」「在宅」について解説します。

4-1.地域に根付いた薬局を目指す

厚生労働省は、「患者のための薬局ビジョン」を制定し、門前薬局が地域を支える薬局としての役割を果たすように変化を求めています。

ビジョンを踏まえて、2021年、調剤薬局に「地域連携薬局」と「専門医療機関連携薬局」がスタートしました。
「地域連携薬局」には「かかりつけ薬剤師・薬局機能」や「健康サポート機能」が求められ、「専門医療機関連携薬局」にはがん治療のような専門的な高度薬学管理機能が求められます。こうした調剤薬局を患者さまが地域で選べるようになることが、門前薬局が生き残るポイントになるでしょう。

参照元:厚生労働省/「患者のための薬局ビジョン」~「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へ~
参照元:厚生労働省/患者のための薬局ビジョン
参照元:厚生労働省/認定薬局について
参照元:厚生労働省/医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の概要

4-2.相談できる薬局にしていく

2015年に厚生労働省が打ち出した「患者のための薬局ビジョン」では、薬局の役割として「健康サポート機能」、「高度薬学管理機能」、「服薬情報の一元的・継続的把握」、「24時間対応・在宅対応」、「医療機関等の連携」といった、5つの役割が挙げられています。

超高齢化社会の日本では、身近に自分の健康をサポートしてくれる場所があることが大切で、門前薬局には患者のための薬局ビジョンにある「健康サポート機能」としての役割が期待されます。処方箋の対応だけでなく、一緒に健康相談や介護相談もできるようにしたり、健康情報の発信や健康食品の販売をしたりするなどの工夫が大切です。

このように、地域の方々が健康管理のために相談できる薬局として特色を出していくことが、門前薬局が生き残る一つのヒントになるでしょう。

4-3.在宅に対応可能な薬局にする

高齢化が進み超高齢社会となったいま、在宅医療の需要は高く「居宅療養管理指導」は年々増加しています。支援や要介護と認定され、通院が難しい方を対象としたサービスである「居宅療養管理指導」は医師や看護師をはじめさまざまなコメディカルが関わることで、安心して充実した在宅医療・介護が受けられることを目指しています。

実際に、在宅業務をおこなうところでは、患者さんが薬の管理を間違っていることや大量の残薬を発見でき、在宅医療・介護を受ける方の健康管理に大きく寄与しています。
居宅療養指導をおこなう職種の中でも薬局薬剤師に対する介護給付費は高く、2016年度以降からは医師についで2番目となっています。また、調剤報酬改定に伴って在宅訪問の点数が加算されていることからも、在宅可能な薬局にすることが、生き残るためのポイントとなります。

参照元:厚生労働省/居宅療養管理指導
参照元:日本薬剤師会/令和2年度調剤報酬等改定項目(p.7 区分15、15の2)

5.門前薬局で働くメリット

薬剤師が職場として門前薬局を選んだ場合、どのようなメリットが得られるのでしょうか。

5-1.地域に根付いた業務ができる

クリニックは地域に住む方々が体調を崩したときに最初に受診する診療機関です。よって、クリニックの門前薬局であれば、関わる方々はその地域に住んでいることがほとんどであり、地域の健康管理をサポートする立場で貢献できます。

5-2.アットホームな雰囲気がある

人数が少ない職場ほど一緒に働く機会が増え、スタッフ同士のコミュニケーションも増えます。また、クリニックの近くの門前薬局のようにその地域の患者さまが多く通う薬局では、同じ患者さまと長く関わる機会が増え、患者さまとの距離も近くなります。
このように、クリニックの近くの門前薬局には地域のスタッフ同士やおなじみの患者さまとの自然な会話が生まれやすく、アットホームな雰囲気のところが多いようです。

5-3.裁量が大きい

処方箋内容の確認や調剤、患者さまへの服薬指導と薬歴管理など、薬剤師が担う業務は多くあります。門前薬局は少人数で運営していることが多いため1人の薬剤師で複数の業務をおこなうことも多く、自分の裁量で業務を組み立てられるやりがいがあります。また、患者さまの健康管理に直接関わり、感謝されることも大きなやりがいとなるでしょう。

6.門前薬局で働くデメリット

少人数で特定の診療科目を中心に対応する、クリニック付近の門前薬局で働くデメリットについてご紹介します。

6-1.処方箋の知識が偏りがちになる

近隣の医療機関の規模や専門とする診療科の影響を大きく受ける門前薬局では、職場によって処方箋の科目が限られてきます。眼科クリニックの門前薬局では、目の病気に対する内服薬・点眼薬を扱うことが多くなります。

また、皮膚科では皮膚の病気に対して内服薬のほか、軟膏やクリームなども扱います。このように、クリニック付近の門前薬局においては、処方箋の知識が偏りがちになります。

6-2.人間関係が閉鎖的になる

門前薬局は薬局として独立しているため、一緒に働くスタッフの職種が限られています。スタッフは薬剤師と調剤補助や事務で構成されており、職場によっては調剤補助者がいないところもあります。病院内の薬局に勤務する薬剤師と比べ、仕事で関わる職種が少なく、スタッフの数も少ない傾向があります。

また、門前薬局は職場のスペースもそれほど広くないことが一般的です。狭いスペースに少人数で長時間過ごすことになるため、人間関係が閉鎖的になりやすい傾向にあります。

6-3.人手不足による業務の負担

中小企業が多い門前薬局では、最低限に近い薬剤師の人数で運営していることが多く、人手不足によって1人あたりの業務負担が大きい傾向があるでしょう。

また、薬剤師は女性が活躍している職場が多く、結婚や出産・育児を機に仕事を休んだり業務時間を調整したりすることで一時的な薬剤師不足が頻繁に生じやすい環境にあります。
さらに今後、在宅医療における薬剤師の需要や調剤薬局を「かかりつけ薬局」として進めていく国の政策もあり、門前薬局の業務はますます増えていくことが考えられます。

このように少人数運営が基本の門前薬局において、頻繁に起こる薬剤師不足や在宅医療・かかりつけ薬局のような新業務が増えるということは、必然的に薬剤師1人あたりの業務量は多くなりやすく、それだけ仕事の負担がますます重くなると考えられます。

参照元:日本薬剤師会/まず、かかりつけ薬局を決めよう!
参照元:日本薬剤師会/かかりつけ薬剤師・薬局の推進について

7.門前薬局の求人は転職エージェントで探してみよう

地域に数多くある門前薬局は、処方箋を受ける近隣の医療機関の影響によって職場の特徴もさまざまです。気になる職場について情報収集をしても、実際の雰囲気や業務の詳細な内容についてはわからない部分も多いのではないでしょうか。
面接前にもっと詳しく知っておきたかった、働き始めてみたら自分に合わなかったなど、転職活動での失敗は薬剤師としてキャリアを積む上で避けたいものです。

そんなときには、転職エージェントを活用して転職の成功につなげましょう。マイナビ薬剤師は北海道から九州まで拠点があり、全国どこのエリアの求人情報も熟知しているので、あなたの地域の門前薬局をご紹介することも可能です。

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8.まとめ

地域でよく見かける門前薬局は、いま変化を求められています。「かかりつけ薬剤師・薬局として利用できる」、「健康相談ができる」、「在宅医療に対応している」といった地域の患者さまに寄り添うことが門前薬局として生き残っていくポイントとなります。

近隣の医療機関によって特徴が異なる門前薬局は、職場によって学べる知識やキャリアもさまざまです。そうした知識やキャリアを有効に活用しながら、今後「地域の患者さまファースト」の姿勢で生まれ変わる門前薬局は、薬剤師にとって大きなやりがいを得られる職場といえるでしょう。

この記事の著者

看護師・医療ライター

八木 美里

大学病院や地域の中核病院にてキャリアを積み、出産を機にフリーライターとして活動を開始。医療系をはじめ多くの記事作成や校閲・監修などに携わる。
現在総合病院に勤務。多岐に渡る領域の臨床経験と転職経験を活かし、医療・健康・就職をキーワードとする分野を得意とする。

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