健康サポート薬局とは?基本的な機能やサービスについて解説

健康サポート薬局とは?

「健康サポート薬局」という表示を掲げた薬局を見かけたことはないでしょうか。健康サポート薬局とは、患者さまの健康維持や健康増進を包括的に支援する役割を担う薬局のことです。

しかし、健康サポート薬局として認証を受けた店舗数はまだ少ないため、一般的にはあまり知られていないのが現状です。

今回は健康サポート薬局が担う基本的な機能や仕事内容、提供しているサービスの内容、「かかりつけ薬剤師・薬局」との違いなどについて詳しく解説します。

1.健康サポート薬局とは?

「健康サポート薬局」とは、「かかりつけ薬剤師・薬局」としての基本的な機能を備えたうえで、患者さまによる主体的な健康の保持増進を積極的に支援する「健康サポート機能」を持つ薬局のことです。

薬局薬剤師が中心になり、分散しがちな服薬情報を一元化するとともに、国民の健康増進と健康寿命の延伸するための医療体制をさらに充実させたいという厚生労働省の考えに基づき、平成28年に創設されました。

参照元:日本調剤/健康サポート薬局
日本薬剤師会資料/健康サポート薬局Q&A(制度関連)

1-1薬局機能と健康サポート機能とを併せ持つ

健康サポート薬局の薬剤師は、保険調剤に関することはもちろん、市販薬(要指導医薬品・一般用医薬品)に関するアドバイス、さらには健康面に関する相談全般や、介護用品などに関する相談にも応じ、適切なアドバイスを提供します。

健康サポート薬局の土台となる「かかりつけ薬剤師・薬局」が行う相談・アドバイスは原則的に薬に関することに限られますが、健康サポート薬局は、疾病前の未病の段階も含む健康全般の相談・アドバイスを行います。

「健康サポート薬局」として表示することができる薬局は、もともと「かかりつけ薬局」としての基本的な機能を持っており、かつ厚生労働大臣が定める一定の基準をクリアした上で、各都道府県知事に届出をした薬局に限られます。

現在、全国の約6万店舗の薬局のうち、2608店舗が健康サポート薬局として活躍しています(2021年6月時点)。

参照元:厚生労働省/地域包括ケアシステムにおいてかかりつけ薬剤師・薬局に期待される役割

2.健康サポート薬局で薬剤師ができることとは

健康サポート薬局の薬剤師は、かかりつけ薬剤師よりもさらに幅広い健康に関するアドバイスやサポートを行います。健康サポート薬局の薬剤師ができることについて詳しく見ていきましょう。

2-1.健康相談

健康サポート薬局の薬剤師は、患者さまの健康に関するあらゆる相談に対して、専門家としてアドバイスができます。

たとえば、「最近体重が増えて気になっているけれど、どのような食事や運動習慣が良いのかわからない」、「サプリメントについて教えてほしい」、「最近こういう症状があるのだけれど、何科を受診すればよいかわからない」、「病院で受けた血液検査の結果の見方がわからない」などの疑問に対してもアドバイスを提供します。

血液検査の結果や症状のヒヤリングをふまえ、医療機関の受診が必要だと薬剤師が判断した場合は、近隣の医療機関を紹介することもできます。

介護を必要とする患者さまに対しては、在宅医療などやケアマネージャーなどのサポートが受けられるよう、地域連携医療機関を紹介することもできます。

これまでの薬剤師の業務は、すでに疾患があって薬物治療が必要な患者さまに対するアドバイスに限られましたが、健康サポート薬局では、疾患の方だけでなく、未病の段階からアドバイスを積極的に幅広い提供するのが特徴で、職責の範囲が広くなっています。

2-2.医薬品・介護用品に関する相談

健康サポート薬局の薬剤師は、保険調剤に関する基本的業務や患者さまへのアドバイスはもちろんのこと、市販薬(要指導医薬品・一般用医薬品)に関するアドバイスも積極的に行います。

健康相談の内容に基づいて薬剤師が判断し、その場で症状に合った市販薬をおすすめすることもあります。介護用品に関する知識や商品の取り扱いもあるので、介護用品の選定のアドバイスや、介護用品の調達もサポートします。

2-3.週末や休日の相談

健康サポート薬局は、週末や休日、夜間など多くの薬局が休んでいるときでも患者さまからの相談に24時間で対応し、また、在宅医療にも対応しています。

これは、健康サポート薬局の土台となる「かかりつけ薬剤師・薬局」の機能に準じるものです。

3.健康サポート薬局の適合基準

健康サポート薬局になるには、厳しい適合基準をクリアしなくてはならず、その土台としての「かかりつけ薬局としての基本的機能」と上乗せ機能の「健康サポート機能」が求められます。健康サポート薬局の主な適合基準を、詳しく見ていきましょう。

参照元:神奈川県/いつでも、気軽に、気兼ねなく「健康サポート薬局」
厚生労働省/医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行等についてp4~p13

3-1.かかりつけ薬局としての基本機能

健康サポート薬局になるには、かかりつけ薬局としての基本的な機能を有している必要があります。かかりつけ薬局として求められる機能は主に以下の7つです。

  • 患者さまがかかりつけ薬剤師を選択し、正しくサービスを受けられるための運営業務体制を整えること
  • 服薬情報を一元的・継続的に把握するよう取り組み、患者さまが受診した医療機関や処方薬のすべての情報を薬剤服用歴への記載するよう努めること
  • 懇切丁寧に服薬指導や副作用などのフォローアップを実施すること
  • お薬手帳を活用すること
  • 特に初診の患者さまに対して、かかりつけ薬剤師・薬局のメリットを説明し、普及に努めること
  • 24時間対応・在宅医療対応の体制を整えること
  • 医療機関や他職種と連携し、必要に応じて疑義照会、受診推奨などを行うこと

3-2.健康サポートの実施体制の構築

健康サポートの実施体制の構築は以下の5つです。

  • 一般医薬品で対応できないなど、必要に応じて医療機関の受診を勧奨すること
  • 介護や健康診断などの医療サービスを必要とする患者さまに対し、行政窓口や地域包括支援センター連携機関などを紹介すること
  • 地域における連携体制をあらかじめ構築し、紹介先リストを作成すること
  • 受診勧奨、又は紹介を行う際に、薬局利用者の同意が得られた場合には、必要な情報を紹介文書により紹介先の医療機関などに提供すること
  • 地域の健康イベントや、学校・高齢者クラブを通じた健康セミナーを開催するなどして、地域の関連団体などとの連携および協力体制を整えること

3-3.常駐する薬剤師の資質

健康サポート薬局に常駐する薬剤師の資質については主に以下の適合基準を満たす必要があります。

  • 要指導医薬品等および健康食品等の安全かつ適正な使用に関する助言、健康の保持増進に関する相談並びに適切な専門職種又は関係機関への紹介等に関する研修を修了し、かつ薬局の薬剤師としての経験が5年以上ある薬剤師が常駐していること
  • 薬剤師は、研修修了後も健康サポートに関する知識の習得に努めること
  • かかりつけ薬剤師としての役割が果たせるよう、当該薬局で業務を行っている薬剤師であること、また、認定や研修を積極的に受けるなど自己研鑽に努めること

4.健康サポート薬局で活躍する薬剤師になるには?

健康サポート薬局で活躍する薬剤師になるために必要な手順についてみていきましょう。

4-1.健康サポート薬局研修を受講する

健康サポート薬局には、薬局における薬剤師として5年以上の実務経験を有し、かつ「健康サポート薬局研修」を修了した薬剤師が常駐することが必要です。

健康サポート薬局で活躍する薬剤師になるためには、健康サポート薬局研修を受けて研修修了証を提出しなくてはなりません。健康サポート薬局研修は、複数の団体・企業が実施しており、修了にはいずれかの団体・企業で合計30時間履修することが必要です。

日本薬剤師会・日本薬剤師研修センターの「健康サポート薬局研修」の内容は以下のとおりで実施され、すべて受講すれば、日本薬剤師研修センターから修了証が発行されます。

  • 技能習得型研修(研修会A):健康サポートのための多職種連携研修 4時間
  • 技能習得型研修(研修会B):健康サポートのための薬剤師の対応研修 4時間
  • 知識習得型研修(e-ラーニング)22時間

5.健康サポート薬局で今後薬剤師の働き方はどう変わる?

健康サポート薬局は、気軽に立ち寄れて健康に関する相談ができる存在として、期待されています。健康サポート薬局で働く薬剤師にとっても、専門家の立場から患者さまのためになる情報やアドバイスを提供できるので、「これまで以上に患者さまの役に立てる」という喜びややりがいを感じることができます。

一方、患者さまの健康を左右する判断やアドバイスを提供することに、責任感からのプレッシャーを感じる方もいるでしょう。また、健康サポート薬局は、24時間対応、時間外対応、在宅対応を実施するかかりつけ薬局としての機能を基盤としており、当然そこで働く薬剤師はその体制を整える役割があります。

これによって、休日出勤や時間外出勤が発生することもあるでしょう。さらに、専門家としての自己研鑽や自己投資も常に欠かせません。健康サポート薬局の薬剤師として働くということは、自身の薬剤師としての在り方や、キャリアプランについてもじっくり見直す機会になるはずです。

もし、自分にとっては負担が重く、休日対応は無理ということであれば、ライフワークバランスを重視したい薬剤師向けの職場を探すのも一つの方法です。

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6.薬の処方から健康相談までトータルで支えるのが仕事

健康サポート薬局の薬剤師は、かかりつけ薬剤師よりもさらに一歩踏み込んで、積極的に患者さまの健康サポートを提供します。

通常の薬局と同様に、処方箋薬の調剤業務、服薬指導などの通常業務をこなしながら、健康に関するありとあらゆる知識や判断力、さらには介護や公衆衛生に関する幅広い知識を駆使して患者さまの抱える問題や相談に寄り添い、解決までトータルにサポートするのが仕事です。

薬剤師の資格を最大限に活かして、「患者さまの健康に貢献したい」、「専門職としてのキャリアとスキルを極めたい」という向上心のある薬剤師に向いている職場だと言えるでしょう。

7.まとめ

これからの少子高齢化社会では、医療や介護を必要とする高齢者や家庭がますます増えることが予想されます。

また、国による健康増進の取り組みやセルフメディケーションの広がりにより、若年層にもヘルスケアへの関心が広がっています。

そんな中、健康サポート薬局は、地域の誰もが利用できる健康の相談窓口として大いに期待されています。

健康サポート薬局で経験値を積めば、薬剤師としての専門性やスキルを高めることができるだけでなく、地域の健康増進やセルフメディケーションおよび医療体制の充実にも貢献することができます。

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この記事の著者

医学博士、医学研究者

榎本 蒼子

最終学歴は京都府立医科大学大学院医学研究科博士課程卒業。2011~2015年 京都府立医科大学にて助教を勤め、医学研究および医学教育に従事。

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