多職種連携とは?必要性やメリット・薬剤師の役割について解説

多職種連携とは?必要性やメリット・薬剤師の役割について解説

超高齢社会により地域医療の需要が高まり、地域で暮らす方々のさまざまなニーズに対応できるケアやサービスが求められています。

医師や看護師だけでなく、さまざまなコメディカルが関わり多職種連携をとることで、地域で安心して暮らせるための包括的な医療・介護サービスを提供することができます。

いま、多職種連携がなぜ必要なのか、多職種連携の定義とそのメリット、そして薬剤師として期待される役割について解説していきます。

1.多職種連携とは

多職種連携とは、医師や看護師だけでなく医療や介護福祉に関わるさまざまな専門職種が互いの専門性を活かし、一つのチームとして地域に働きかけることをいいます。

地域の方々が必要とされるケアについて情報を共有し、解決すべき課題を見つけ、解決に向けてアプローチします。職種ごとにその専門性が活かせるよう業務を分担しつつ、多方面から包括的に地域の方々を支援します。

多職種連携も薬剤師にとって重要なスキルの1つです。
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2.多職種連携はなぜ必要とされている?

わが国の高齢化は世界の中でも急速に進行し、医療ニーズが多様化しています。それにともなって専門職の活躍と医療・介護サービスにおける質の向上が求められています。

厚生労働省の見通しによると、65歳以上の高齢者数は2025年に人口の約30%に達し、2055年には40%に近づく見込みとなっています。

また、人口の減少によって高齢者を支える人口も少なくなるだけでなく、支える側の高齢化も問題となっています。

そこで、厚生労働省は2025年を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活へのサポートによってより自分らしい暮らしができるための「地域包括ケアシステム」の構築を推進しています。

支援が必要とされる方々の健康状態や社会背景はさまざまであり、支援やサービスのニーズもそれだけ多岐にわたります。それらのニーズに応え、質の高いケアを提供するために、さまざまな専門職が関わってケアを提供する多職種連携が必要とされているのです。

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参照元:厚生労働省/多職種協働・地域連携
日本医師会/地域包括ケアと多職種連携~指導者用ガイドブック~
厚生労働省/今後の高齢者人口の見通し

3.海外では多職種連携が推進されていた

世界的な高齢化、災害や感染症の流行などを受け、WHOは世界的な医療従事者不足を問題視しています。

そしてその問題を緩和するための手段の一つとして、専門職の連携と連携医療の教育が重要であると提言しています。

それを受けて、世界のさまざまな国で多職種連携による医療・保健福祉分野の改革がおこなわれています。

  • イギリスでは、2000年に「国民保健医療サービス計画」を制定し、国民が必要とするニーズに対して提供する医療保健サービスや社会サービスの見直しをおこなう。
  • カナダでは、2008年に専門職連携に関わる条項を盛り込んだ条例を可決した州もあり、多職種連携を推進する動きが高まる。
  • ノルウェーでは、専門分野の領域を越えて職務ができる学生の育成のために、医療分野専攻の学生に共同教育の実施が発表され、多職種連携の礎を築いた。
  • ブラジルでは、憲法改正で統合・分権型医療システムが確立。ファミリーチーム(医師1名、看護師2名、地域医療従事者)が結成され、医療ニーズのモニタリングを担当する。

医療の質を保つためには、人材資源を確保し続けることが必要であるため、連携医療に関する教育や即戦力となる人材育成も並行しておこなうことが重要とされています。そのため、さまざまな国の大学や教育機関において多職種連携を学び、研修をおこなうカリキュラムが組まれるようになりました。

参照元:WHO/専門職連携教育および連携医療のための行動の枠組み
J-STAGE/専門職連携コンピテンシー

4.多職種連携のメリット

多職種連携を行うことでどのようなメリットがあるのでしょうか。利用者、薬剤師それぞれの立場でみていきましょう。

4-1.医療の質の向上

多職種がケアやサービスに関わることで、それぞれの専門性を活かした幅広い情報収集が可能となります。そして、専門職の視点で問題提起や解決に向けての解決策が提示できます。

問題ごとに担当を決め、業務を分担することで職種ごとに自分の役割に集中して能力を発揮でき、結果として医療の質が向上します。

4-2.視野・知識の幅が広がる

多職種連携では、ほかの専門職と密なコミュニケーションを取ることになります。

患者さまや利用者さまの情報共有、抱えている課題や解決策などへのアプローチ、ケアやサービスの提供、たくさんの段階を経ていく中で、職種それぞれの視点や考え方を学ぶことができます。

同じ職種だけで活動しているよりも、たくさんの職種と関わりながら仕事をすることによって視野が広くなり、知識の幅が広がります。

参照元:厚生労働省/多職種協働・地域連携

4-3.患者さまが求めるニーズに対応できる

超高齢社会の到来と生活様式の変化による生活習慣病の増加によって、地域の方が求める医療ニーズは多様化しているため、多職種連携によって柔軟に対応していくことが地域医療にとって大切なポイントとなっています。

日本では、糖尿病や心臓病、認知症などいくつもの慢性疾患と付き合いながら暮らす方が増えています。また、生活様式の違いや家族関係のあり方など、時代の変化によって患者さまや利用者さまの社会背景は複雑化しています。

このような状況に対し、多職種が関わることでそれぞれの視点から患者さまのニーズを細かく把握することができ、それに基づいたケアやサービスの提供ができるようになります。

5.多職種連携の課題

地域において浸透しつつある多職種連携ですが、今後さらに効果的に発揮されるために解決すべき課題もあります。

その課題とは「スキルや人材の教育トレーニング」、「連携するための体制の見直し」、「密なコミュニケーション」です。

  • スキルや人材の教育トレーニング
  • 多職種連携では専門職それぞれが自分の役割を認識し、専門性を活かして活躍することが重要です。

    まだまだ進む高齢化の中で、地域の方々が安心して暮らせるような医療・介護サービスを提供するためには、多職種連携で活躍できるスキルを持つキャリア形成、人材育成が必要とされています。 

  • 連携するための体制の見直し
  • チームとしての機能を十分に発揮するためには、ほかの職種と直接連携を取り、関わり合える環境が必要です。

    しかし、それぞれの職種は互いにほかの業務にも従事しているため、十分な時間が取れなかったり、ほかの職種を経て間接的に連携をおこなったりしているという現状があります。

    得られた情報の共有、方向性の決定、ケアやサービスの提供、その後の見直しといったように、多職種連携は多くの過程を経て成り立っています。

    限られた時間と環境の中でチームとしての役割を果たすために、ほかの職種と随時連絡を取れる環境づくりやオンラインを活用するなど、多様な形態で活動できる体制を作っていくことが求められています。

  • 密なコミュニケーション
  • 多職種連携ではさまざまな職種との密なコミュニケーションが大切です。

    しかし、関わる専門職が多いほど、それぞれの視点、考え方や価値観、問題の捉え方や解決方法などに違いを感じることも出てきます。

    チームとして動くとはいえ、職種間で密なコミュニケーションをとっているからこそ、時に対立することも出てくることがあり得ます。

    チームとして動くために、今までの価値観、アプローチの仕方などを柔軟に広げたり、変えたりする必要も出てきます。

参照元:厚生労働省/多職種協働・地域連携
日本看護協会/多職種連携と倫理

6.多職種連携における薬剤師の役割

健康維持のために内服薬や注射薬を使用している方が多い現代では、薬の管理は重要な課題です。

例えば介護において、理解力低下の中での自己管理や認知症などのために他者による管理があるため、薬の管理に不安を抱えているケースも多くみられます。

そうした課題に対して、多職種連携として薬のエキスパートである薬剤師が参加することで、患者さまや利用者さまが抱える薬の問題点を把握し、解決へ導くことができます。

薬剤師が在宅訪問をおこなうことで薬剤の保管間違いや飲み忘れを把握でき、正しい使い方を指導することができます。

また、複数の医療機関から処方された薬の組み合わせに関して安全性を確認したり、必要に応じて処方医へ処方の調整を依頼したりすることもできます。

薬剤師として専門性を発揮することで、患者さまや利用者さまが薬を安全に使い、安心して暮らせるようになるだけでなく、連携する他の職種の方が自分の担当業務に集中でき、より専門性を発揮できることにもつながるのです。

参照元:厚生労働省/多職種協働・地域連携
厚生労働省/在宅医療におけるチーム医療

7.まとめ

超高齢社会のわが国では、医療機関だけでなく在宅医療までの継続した医療サービスを提供できることが重要です。

地域で暮らす方々のあらゆるニーズに対し、限られた人材資源で質の高いケアを提供するためには、多職種連携が不可欠とされています。

多職種連携によって専門職それぞれが専門性を発揮できるだけでなく、協働することで互いのスキルアップにもつながります。

慢性疾患を持ち治療を継続している方が増えている現代社会において、薬のエキスパートと言える薬剤師の存在は、今や多職種連携において欠かせない存在となっています。

この記事の著者

看護師・医療ライター

八木 美里

大学病院や地域の中核病院にてキャリアを積み、出産を機にフリーライターとして活動を開始。医療系をはじめ多くの記事作成や校閲・監修などに携わる。
現在総合病院に勤務。多岐に渡る領域の臨床経験と転職経験を活かし、医療・健康・就職をキーワードとする分野を得意とする。

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