【最新版】薬剤師は不足している?転職の際に気を付けるべきポイントも解説

【最新版】薬剤師は不足している?転職の際に気を付けるべきポイントも解説

転職を考えている薬剤師にとって、業界における薬剤師の充足率は転職活動に大きな影響を与える要因になります。

これまでの薬剤師の転職市場においては、「薬剤師不足」の状況が続いてきましたが、その一方で、薬剤師の総数が増えていることから、いずれは薬剤師が過剰になるだろうといった意見もあります。

また、将来的に人工知能(AI)や海外で導入されているファーマシーテクニシャン(調剤助手、調剤技師)が調剤業務に参入してくる可能性を考えると、薬剤師の需要と供給のバランスが今後どうなっていくのか気になるところです。

今回は、薬剤師の過不足に関する現状や、将来の展望、そして最新の転職市場の動向についてまとめました。

薬剤師が転職するときに気を付けるべきポイントも合わせて解説しますので、参考にしてみてください。

1. 薬剤師は本当に不足している?現状は?

薬剤師の転職市場では、長らく「薬剤師が不足している」との声が続いていましたが、現状はどうなのでしょうか?

厚生労働省が毎月発表している有効求人倍率のデータをもとに、薬剤師の雇用状況についてみてみましょう。

ちなみに有効求人倍率とは、企業からの求人数(有効求人数)を求職者(有効求職者数)で割った値のことで、雇用動向を示す指標の一つです。それによると、国内の全職種の有効求人倍率の平均は令和2年9月現在で0.95倍でした。

それに比べ、薬剤師の有効求人倍率は2.01倍であり、全体平均よりもかなり高い値になっています。

これはつまり、求職している薬剤師1人に対して、2件以上の求人が出ているという状況を示しており、このデータからは「まだまだ薬剤師は不足している」という状況がうかがえます。

参照:厚生労働省 一般職業紹介状況(令和2年9月分)について 職業別一般職業紹介状況[実数](常用(含パート))

しかも薬剤師の雇用状況には地域による格差があり、薬剤師不足は都市部以外の地域において顕著です。

厚生労働省による平成30年の「医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」では、薬剤師の充足状況を都道府県別に詳しく発表しています。

それによると「都道府県(従業地)別にみた薬局・医療施設に従事する人口10 万人あたりの薬剤師数(平成30年)」の全国平均は、190.1 人で、平成28年度に行われた前回調査(181.3 人)に比べ 8.8 人増加していました。

ところが、この全国平均を上回った地域は、徳島県(233.8人)、東京都(226.3人)をはじめ、兵庫県、広島県、大阪府、山口県、香川県、福岡県、高知県、神奈川県、佐賀県の11都府県のみにとどまり、そのほかの地域では全国平均を下回っていました。

特に沖縄県(139.4人)、福井県(152.2人)、青森県(153.0人)、山形県(160.1人)、福島県(161.9人)、岐阜県(163.1人)、岩手県(163.4人)などの地域では、人口10万人あたりの薬剤師の数が全国平均を大きく下回っており、特に薬剤師が不足している現状が浮き彫りになりました。

これらのデータから、薬剤師の総数は増えてはいるものの、有効求人数に対する薬剤師の人数は不足した状態が依然として続いており、特に都市部以外で薬剤師不足の傾向が強いといえます。

2. 薬剤師不足の今後の展望は?

このような薬剤師不足の状況は、今後どのように推移するのでしょうか?
およそ20年後までの薬剤師の需要と供給のバランスの変化をシミュレーションした厚生労働省研究事業による研究報告があります。

薬剤師の需給動向の予測に関する研究(平成30年度)」によると、「今後数年間は薬剤師の需要と供給のバランスが均衡している状況がしばらく続くものの、長期的には薬剤師が過剰になるだろう」と予想しています。

この報告を聞くと、薬剤師の今後の展望はかなり厳しい印象を抱いてしまいがちです。

しかし実際には、薬剤師資格を持つ人全員が薬剤師として働いているわけではありません。さらに、昨今の働き方改革の影響で、結婚や出産などのライフイベントに合わせて休職したり、他職種に転職したりする人も増えています。

薬剤師として働いたとしても、非正規雇用で稼いでいるという人も少なくないでしょう。

このような「働き方を選ぶ」動きは今後ますます主流になっていくことが予想されるため、実際の現場ではすぐに薬剤師が過剰になることはないと考えられます。

また、高齢化社会が急速に進んでいる今、薬剤師業界全体の市場が今後も拡大を続けることが予想されます。

現在では、調剤薬局が全国で約59,000店舗、ドラッグストアが約22,000店舗以上に増加しています。

参照元:厚生労働省 厚生労働統計 第2編 83表(平成30年データ、最新)

日本ドラグストア協会 2019年公表データ参照(2021年3月現在)

なかでも大手薬局チェーンやドラッグストアは、都市部だけにとどまらず、郊外の地域への新規参入を続けており、それに伴って新たに薬剤師を確保しなければならないため、転職市場もより活発になる可能性があります。

2-1. AIやテクニシャンによる影響

調剤薬局業務へのAIまたはファーマシーテクニシャンの活用による影響も考えていかなくてはなりません。

AIは、すでに製造業をはじめとするさまざまな産業において、膨大な量のデータ処理、統計処理、在庫管理システムなど、事務的で正確性を求められる業務に活用され始めています。

医学・薬学の分野も例外ではなく、画像診断や手術支援などの診療活動の一部ではすでにAIの導入が始まっており、日に日にその存在感を強めています。

薬剤師が担う業務の中でも、調剤に係る計算や計量、薬歴管理などは今後AIにシフトしていく可能性がありますが、服薬指導や患者さんからの相談対応業務など、薬剤師としての経験と豊かな対人スキルが求められる業務に関してはAIが参入する余地はありません。

AIの参入をマイナスに捉えるよりも、AIはむしろ薬局の事務系タスクを軽減し、一人ひとりの薬剤師が専門知識とコミュニケーションスキルを発揮することに専念できる環境を作ってくれるものだとプラスに捉えると良いでしょう。

一方、ファーマシーテクニシャンは、薬剤師の指示のもと、医薬品の調達や患者さんとの連絡などを含む調剤業務の一部を担う専門スタッフのことで、欧米諸国ではすでに導入が始まっています。

今後日本でも同様の専門職が導入される可能性があり、その動向が注目されています。

しかしながら、ファーマシーテクニシャンの裁量は限定的で、全ての業務は薬剤師の指示のもとで行われます。

決して薬剤師に替わるものではないため、ファーマシーテクニシャンの登場によって薬剤師が余ってしまうという状況は起こり得ないでしょう

AIと同じく、ファーマシーテクニシャンを活用することで、薬剤師の労働負担が減り、より働きやすい環境を整えてくれるものとして捉えると良いでしょう。

2-2. 在宅医療薬剤師やかかりつけ薬剤師の重要性

AIやファーマシーテクニシャンの導入を踏まえたとき、これからの薬剤師に求められることは、専門家としてのより豊かな経験と知識を備え、患者が頼れる相談役としての能力です。

特に後期高齢者の割合が増加する地域では、患者さんとより近い距離で専門的なサービスを提供することのできる薬剤師の存在が重要になっていきます。

そのため、下記の2つなどが特に注目されています。

  • 在宅で療養している患者さん宅を訪問し、さまざまな相談に応じる「在宅療養支援認定薬剤師」いわゆる在宅医療薬剤師
  • 患者さん選任の薬剤師として、一人の患者さんを継続的にサポートするかかりつけ薬剤師

薬剤の調剤や交付、病歴管理などのベーシックな業務だけでなく、患者さん一人ひとりの健康をサポートするこれらの役割は、医療チームの一員としても期待を集めています。

3. 薬剤師の転職で気を付けるべきこととは?

5年、10年前と比較すると、薬剤師の有効求人倍率は年々低くなっていますが、現在の状況としては有効求人倍率2倍台を維持していることから、薬剤師業界は依然として「売り手市場」であると言えます。

売り手市場では、求人件数が求職者数を上回っているので、複数の職場から内定をもらえるという状況が十分起こり得ます。

企業側も、薬剤師を確保するために給料や労働条件を優遇するところも出てくるでしょう。

このような売り手市場は、転職を考えている薬剤師にとっては一見好ましい状況に思われますが、実際に転職するにあたっては、気を付けなくてはならない点があります。

まず職場探しでは、自分自身のライフプランに合った働き方ができるかどうか、自分が望む働き方ができるかどうかを見極めることが大切です。

もともと育児や家族との時間を大切にしながら働けるようにと転職を決めたにもかかわらず、給与面の良さに惹かれて本来の希望とは異なる求人に飛びついてしまうと、思った以上の激務に追われ、再び転職を考えなくてはならなくなるといった事態も起こり得ます。

職場探しの段階では、このようなギャップが起きないように、「自分は薬剤師としてどうありたいか」というブレない軸を持っておくことが大切です。

また、希望の条件に合った転職先が複数見つかった場合、その中から最終的にたった一つの職場を選ぶという判断力が求められます。

単により高収入が得られる職場を目標に転職するのなら、迷うことはないのかもしれませんが、職場の人間関係や雰囲気、休暇の取りやすさなど、求人情報を見ただけではわからない内部事情を考慮するとなると、想像以上に難しいものです。

売り手市場においては、求人情報に記載されている給与・勤務条件だけにとらわれて安易に転職してしまうことがないよう、より慎重にリサーチすることが重要です。

4. 薬剤師の市場価値を高める事が重要

現状としては薬剤師不足が続いている薬剤師の転職市場ですが、社会全体の有効求人倍率の低下と連動し、いつかは薬剤師不足の解消によって薬剤師の有効求人倍率が低下し、将来的に転職が難しくなっていくことも考えらえます。

万が一、薬剤師が過剰になったとしても、企業から「選ばれる」存在として活躍し続けるためには、自らの薬剤師としての市場価値を高めておくことが重要です。

特に後期高齢者が増加するこれからの社会では、在宅医療薬剤師やかかりつけ薬剤師といった専門資格を持つ薬剤師は、全国チェーンの薬局であっても、個人経営の薬局であっても、かけがえのない人員としてますます需要が高まることが予想されます。

もちろん、在宅医療薬剤師やかかりつけ薬剤師などの専門資格を得るためには、定められた実務経験を積む、あるいは研修や試験を受けるなどの自己投資が不可欠です。

薬剤師としての将来の市場価値を高めるためにも、自信のキャリアアップ、スキルアップを目標に、今出来ることから準備をはじめましょう。

5. 薬剤師の転職には転職エージェントの活用がおすすめ

薬剤師としてこれから転職を考えているなら、薬剤師に特化した転職エージェント「マイナビ薬剤師」を活用することをおすすめします。

マイナビ薬剤師は、転職を検討している薬剤師が無料で登録できる転職支援サービスで、自分に合った求人探しから応募書類の書き方、面接のコツに関するアドバイス、面接の日程調整や労働条件の交渉など、転職に必要なプロセスの全てを専門のスタッフが支援してくれます。

なかでも大きな強みは、扱っている求人情報の量と、マッチングの精度の高さです。

プロのキャリアアドバイザーとの面談で、一人ひとりの希望条件や強みを棚卸することで、膨大な数の求人の中からその人に合った職場をマッチングしてくれます。

サービス内容についてより詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

求人情報からは読み取れない転職先の内部事情や雰囲気などの情報もおおよそ把握して提供してくれるので、転職してから「こんなはずじゃなかった」といった失敗を避けることができます。

また、今すぐ転職する予定が無くても、将来に備えたキャリアプランの相談に乗ってもらうことも可能です。転職に興味のある人はマイナビ薬剤師に登録しておきましょう。

6. まとめ

薬剤師の求人有効倍率は徐々に低下しているものの、現在もなお薬剤師が不足している転職市場。特に都市部以外の地域では、薬剤師不足の状況は今後もしばらく続きそうです。

しかし近い将来、調剤業務へのAIやファーマシーテクニシャンが導入されれば、薬剤師の雇用状況は大きく変化し、より専門的な知識やスキルを持った薬剤師に需要が集中することが予想されます。

いかなる状況においても、企業から「選ばれる薬剤師」になるには、自らの市場価値を高めておくことが大切です。

転職にあたっては、各地域の雇用状況を注視しつつ、冷静な判断力を持って、自分に合った職場を見つけることが重要です。

転職エージェントを上手く活用して十分な情報を収集し、転職活動を成功させましょう。

この記事の著者

医学博士、医学研究者

榎本 蒼子

最終学歴は京都府立医科大学大学院医学研究科博士課程卒業。2011~2015年 京都府立医科大学にて助教を勤め、医学研究および医学教育に従事。

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