薬剤師の資格は独学で取得可能?資格取得の方法や薬剤師に求められることとは

薬剤師の資格は独学で取得可能?

病院や調剤薬局、ドラッグストアなど幅広い場所で働くことができる薬剤師の資格を魅力的に感じている方も多いのではないでしょうか?薬剤師の資格を取得したいと考えている方の中には、できれば大学に通わずに独学で資格取得を目指したいという方もいるかもしれません。しかし、そもそも薬剤師の資格は独学で取得できるのでしょうか?

今回は、薬剤師の資格を取得する方法や薬剤師に求められるスキル・能力について解説します。また、薬剤師になってから役立つ資格についても紹介しているので、薬剤師として働きたいと考えている方はぜひ参考にしてください。

1.薬剤師資格は独学で取得できない

独学で薬剤師の資格を取得したいと考えている方に、結論からお伝えしますと、そもそも薬剤師資格は独学で取得できません。なぜなら、薬剤師資格を取得するために必須となる薬剤師国家試験を受けるために、6年制の薬学部を卒業しなければならないからです。

ここでは薬剤師資格を取得する条件について詳しく見ていきましょう。

1-1.6年制の薬学部を卒業することが必須

すでにお伝えしたように、薬剤師の資格を取得するには、6年制の薬学部を卒業することが必須です。薬剤師の資格は薬剤師国家試験を受験し、合格しなければなりません。
この薬剤師国家試験を受験する条件として、6年制の薬学部を卒業することが定められています。そのため、薬剤師は独学で資格を取得することはできないのです。

以前までは薬剤師の国家試験を受けるために必要な修業年限は、4年とされていました。しかし、平成18年度から薬剤師を養成するための教育期間は4年から6年に延長されました。
教育機関が延長された理由としては、平成16年に公表された「薬学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」による「薬学教育の改善・充実について(最終報告)」によると、以下の理由が挙げられています。

  1. 従来の主として化学に立脚した物質を対象とする学問はもとより、「ヒト」を対象とする薬物治療に直接関連する学問の発展。
  2. 薬学の基礎的な能力と臨床に関わる知識を身に付けることが重要。
  3. 人間理解のための幅広い教養、患者さんとのコミュニケーション能力、問題発見・解決型の能力、倫理観、医療事故や薬害を防ぐ危機管理能力などを育成することが重要。

以上の理由に加え、医療技術が高度になっていることや医薬分業の進展などを背景に、薬剤師を養成するための薬学教育には6年間が必要だと報告されています。

参照元:厚生労働省/第109回薬剤師国家試験の施行
参照元:厚生労働省/薬剤師国家試験
参照元:文部科学省/薬学教育の改善・充実について

1-2.薬剤師資格の取得条件

薬剤師資格の取得条件は、年に一度行われる薬剤師国家試験を受験し、合格することです。厚生労働省が公表している「過去の薬剤師の結果」によると、令和5年に行われた第108回の合格率は69.00%、第107回の合格率は68.02%、第106回の合格率は68.66%と、直近の合格率は約70%でした。

薬剤師国家試験を受けるための条件としては、薬剤師法第15条において以下のいずれかに該当するものと定められています。

  1. 試験は、次の各号のいずれかに該当する者でなければ、受けることができない。
    一 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に基づく大学において、薬学の正規の課程(同法第八十七条第二項に規定するものに限る。)を修めて卒業した者
  2. 外国の薬学校を卒業し、又は外国の薬剤師免許を受けた者で、厚生労働大臣が前号に掲げる者と同等以上の学力及び技能を有すると認定したもの

参照元:e-Gov法令検索/薬剤師法 第15条の受験資格

つまり、薬剤師国家試験を受験するためには、国内の6年制の薬学部を卒業するか、外国の薬学部を卒業する、または、外国の薬剤師免許を取得する必要があります。

一方で、上記の条件以外には受験制限などはありません。そのため、すでに社会人として働いている方や、年齢を重ねている方も、上記の条件を満たすことで薬剤師国家試験を受験し、薬剤師資格を取得することが可能です。

2.独学でできる範囲はどこまで?

薬剤師を目指す上で、独学でできる範囲は薬学部に入るまでです。ただし、薬学部のある大学に入学したからといって授業を受けているだけでは、卒業はもちろん、国家試験に合格することも難しいでしょう。そのため、入学以降も自ら勉強する必要があるといえます。

独学でできる範囲は薬学部に入るまでとお伝えしましたが、薬学部に合格することは簡単なことではありません。国公立大学の薬学部であれば、偏差値は60〜70程度必要だとされています。私立大学であれば、やや偏差値は下がりますが、それでも入学試験のためにしっかりと勉強しなければ、合格することは難しいでしょう。
また、薬学部は比較的、人気の高い学部です。そのため、入学倍率が高くなる傾向にあり、他の倍率が低い学部と比べて合格難易度は高くなります。

3.薬剤師を目指したいと思ったら

薬剤師はなりたいと思ってすぐになれる職業ではありません。国家試験の受験資格を満たし、合格した上で、薬剤師として働ける職場に就職する必要があります。

ここでは、薬剤師になるまでの流れを詳しく見ていきましょう。

3-1.薬学部に入学するために勉強する

まず、薬剤師を目指したいと思ったら、薬学部に入学するために勉強をしましょう。多くの薬学部では、入試科目として「英語」「数学」「化学」の3教科型を採用しています。そのため、まずはこれらの3教科を重点的にしっかり勉強しておくとよいでしょう。

さらに受験には直接関係ないため、物理や生物、数学Ⅲを勉強していないという場合は、事前に復習しておくことで大学の授業やテストに役立つでしょう。復習する範囲は、薬学部の内容と重なっている箇所の基礎などを勉強すれば問題ありません。

3-2.薬剤師国家試験を受け、薬剤師免許を取得する

6年制の薬学部を卒業したら、薬剤師国家試験を受験して、薬剤師免許を取得しましょう。
薬剤師国家試験の目的は、下記2点となります。

  1. 薬剤師に求められる倫理観・使命感や一般教養、さらに現場で必要な薬学の知識・技能・態度を体系的に修得されているかを確認する。
  2. 薬学に関する知識と実践に関する総合力が体系的に修得されているか確認する。の

試験内容は、問題を必須問題および一般問題に区分(一般問題にあっては、薬学理論問題および薬学実践問題に更に区分)した上で、試験科目を、「物理・化学・生物」「衛生」「薬理」「薬剤」「病態・薬物治療」「法規・制度・倫理」「実務」としており、マークシート形式で2日間にわたって行われます。

薬剤師国家試験は1年に一度しか開催されないため、不合格になってしまうと翌年
の薬剤師国家試験まで試験を受けることができません。なるべく一度で合格できるように、しっかりと試験対策を行ってから国家試験に臨むとよいでしょう。

また、国家試験に合格したら、薬剤師というわけではありません。薬剤師国家試験に合格した後に、厚生労働省が定める薬剤師名簿に登録する必要があります。この登録が完了することで、はじめて薬剤師になることができるため、忘れずに登録を行いましょう。

参照元:厚生労働省/薬剤師国家試験のあり方に関する基本方針
参照元:大阪府/薬剤師免許証の申請等について

3-3.薬局や病院で薬剤師として働く

薬剤師国家試験に合格し、薬剤師名簿への登録が済んだら、薬剤師として働くことができます。ここでは薬剤師の主な職場である薬局や病院勤務の特徴、メリットについて紹介します。
病院で働く薬剤師の特徴は、所属する病棟や病院によって求められる知識や技術が大きく異なることです。
例えば、がん治療を専門としている病棟や病院に配属された場合は、がん治療に関わる薬剤やその副作用、がん治療に関する専門的な知識などが必要になります。
このように、病院で働く薬剤師は、特定の分野に特化した知識・技術が身に付きやすいでしょう。また、医師や看護師などの他の医療職種とコミュニケーションをとりながら仕事をしていくので、直接話しながら仕事ができることも病院で働くメリットです。

一方、薬局で働く薬剤師の場合、処方科目にもよりますが、比較的健康な方から難病を患っている方まで、幅広い方が訪れます。そのため、さまざまな疾患に対応できるように、薬に関する幅広い知識や患者さんをサポートする能力が求められるでしょう。このように、薬局で働く薬剤師は、幅広い知識を身に付けられることがメリットです。また、患者さんとの距離が近く、より深いコミュニケーションをとれることも薬局薬剤師ならではといえるでしょう。

さらに詳しく薬剤師になるまでの流れを知りたいという方は、こちらをご覧ください。

4.社会人でも薬剤師になることはできる?注意すべき点は?

一度、社会人として働きだしてから薬剤師になりたいと思う方もいるでしょう。
もちろん、社会人でも薬剤師になることは可能です。

薬剤師になるためには、薬剤師国家試験に受験して合格すればよいため、特に年齢などが理由で薬剤師になれないといったことはありません。しかし、社会人から薬剤師になるには注意すべきことがあります。

ここでは、社会人から薬剤師を目指す際に注意すべきポイントを解説しましょう。

4-1.6年制の薬学部に通う必要がある

薬剤師になるには、6年制の薬学部に通う必要があります。社会人で薬学部を目指す方の中には、働きながら大学に通うとこを検討している方がいるかもしれません。
しかし、現在、夜間制の薬学部はありません。そのため、通常の学生と同じく、日中の授業を受けなければならず、社会人として働きながら大学へ通い、資格取得を目指すことは難しいでしょう。
社会人の方が本格的に薬剤師を目指そうと考えたら、現在の仕事を退職し、学生として学業に集中することも考慮しなければなりません。

4-2.資格取得までにかかる費用を把握しておく

薬剤師の資格を取得するためには、大学へ通う学費や受験費用、教科書・参考書代などの費用がかかってきます。社会人としてフルタイムで働きながら薬学部に通うことは現実的ではないため、資格取得までにかかる費用を把握しておき、準備しておくことが大切でしょう。

費用の中でも最も大きな金額となってくるのが、薬学部へ通う学費です。
国立大学の場合、薬学部6年間の学費は、入学費が28万2,000円、授業料が1年間で53万5,800円となっており、6年間で約350万円かかります。
一方で、私立大学薬学部の場合は、入学金は35万〜40万円程度、年間の授業料は約200万円となっており、6年間の学費は約1,240万円です。国公立と比較すると、大きな差があります。
通う大学によってばらつきはありますが、学費は大きな費用となるため、費用に不安がある方は、奨学金や各大学の授業料免除制度などを利用するとよいでしょう。

このように、薬剤師の資格を取得するには、決して安くない費用がかかるため、あらかじめどれくらいの費用がかかるのか把握しておくことが大切です。

参照元:東京大学/入学料・授業料
参照元:北海道大学/入学料・授業料
参照元:山口東京理科大学/入学料・授業料

5.薬剤師に求められるスキルや能力

薬剤師になる方法についてお伝えしてきましたが、薬剤師に求められるスキルや能力にはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは薬剤師に求められるスキルや能力について紹介していきます。

5-1.薬に関する知識

薬剤師には当然ですが、薬に関する知識が求められるでしょう。薬はさまざまな種類があり、同様の効果を持つ薬でも製薬会社によって薬の名称や形状などが異なります。また、医学の世界は日々進歩しており、毎年新しい薬が世の中に生まれているため、薬に関する知識をアップデートしていくことが大切です。
実際に毎年、新しく承認されている医薬品の数は約100品目を超えており、2022年に承認された新しい医薬品の数は、174品目にもおよんでいます。

さらに医薬品のみならず、医学も、診断や治療の方法、薬の作用機序、副作用情報など、常に変化しいくため、薬剤師は医薬品の知識を高めるだけでなく、関連する医学の情報も常に注意しておくことが欠かせません。

参照元:医薬産業政策研究所/日本で承認された新医薬品とその審査期間

5-2.情報収集能力

薬剤師には患者さんの情報を把握する情報収集能力も求められます。薬剤師はただ処方箋どおりに薬を処方すればいいだけの仕事ではありません。患者さんの服薬状況を把握したり、身体状況を聴取したりして、薬剤に関して適切に対応することが求められます。
例えば、患者さんが複数の病院を受診していて、処方されている薬が重複しているときには、薬剤師が医師へ確認することで重複して処方することを避けられるでしょう。このように、薬剤師として適切な対応を行うためには、患者さんの情報収集能力が欠かせません。

5-3.コミュニケーション能力

薬剤師は医師や患者さんなどとコミュニケーションをとることが多いため、コミュニケーション能力が求められるでしょう。医師とは患者さんの治療方針や使用する薬剤の意図などについて、コミュニケーションをとります。普段から医師とコミュニケーションをとっておくことにより、処方箋に問題があったときに医師に確認する疑義照会や、より適切な薬剤を提案する処方提案などが行いやすくなるでしょう。
また、患者さんとのコミュニケーションからは、薬の服薬状況や副作用についてなどを聴取して、適切な対応をとることにより、薬物治療の質を高めることが可能です。

5-4.判断力や正確さ

薬剤師には冷静な判断力や作業を行う際の正確さなどの能力も欠かせません。処方箋によっては、複数の医薬品をミリ単位・グラム単位ではかって混ぜたり、錠剤を粉砕したりする調剤を行います。このときに正確さがなければ、適切な調剤を行うことができません。

また、物事を冷静に判断する能力も必要です。医師への疑義照会や処方提案、患者さんへの服薬指導などは、自身の薬剤師としての知識をもとに冷静に判断しなければ、適切に行えません。そのため、薬剤師には冷静な判断力や作業の正確さなどが求められます。

このように、薬剤師にはさまざまな知識やスキルが求められることを知っておきましょう。薬剤師の仕事内容や求められるスキル・能力について、より詳しく知りたいという方は、以下の記事をご覧ください。

6.薬剤師に役立つ資格も把握しておこう

薬剤師の働き方は多岐にわたります。そのため、将来どのような薬剤師になりたいのか、自身が目標とする薬剤師像を考えることが大切です。

例えば、薬剤師として特定の専門分野に特化したいという方は、認定薬剤師や専門薬剤師の資格を取得するとよいでしょう。認定薬剤師や専門薬剤師には、がんや感染症などの疾患による分類の他、小児や老年、妊婦といった患者さんの分類、また、緊急医療や地域医療といった状況に応じた分類などさまざまです。

また、認定薬剤師や専門薬剤師の資格以外にも薬剤師に役立つ資格があります。漢方アドバイザーやNR・サプリメントアドバイザーなどの資格を取得することで、医薬品以外の提案を行える知識が身に付くでしょう。他にも医薬情報担当者(MR)や治験コーディネーター(CRC)の資格を取得することで、選べる職域が広がります。
薬剤師として働いていく上で役立つ資格をより詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

7.まとめ

この記事では、薬剤師の資格を取得する方法や薬剤師に求められるスキル・能力について解説しました。
薬剤師の資格を取得するためには、6年制の薬学部を卒業して薬剤師国家試験に合格しなければならず、独学で資格取得を目指すことはできません。しかし、薬学部に合格するために独学で勉強することは可能です。

また、社会人になってからでも薬剤師を目指すことはできるので、薬剤師になりたいと考えている方は、薬剤師資格を取得する流れや注意点を理解して、目指してみてはいかがでしょうか。

この記事の著者

理学療法士、Webライター

平井 一真

理学療法士として総合病院や訪問看護ステーションでリハビリテーション業務に携わった後、資格を活かした医療・介護系のWebライターとして活動。根拠に基づいた記事執筆を得意としており、様々なWebコンテンツで執筆実績多数。

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