薬剤師の産休・育休取得や仕事と子育てを両立する働き方のポイントについて解説

薬剤師の産休・育休取得や仕事と子育てを両立する働き方のポイントについて解説

薬剤師の中には、産休・育休制度について詳しく知りたい人や派遣薬剤師・管理薬剤師が産休・育休を取得できるのか気になっている人もいることでしょう。近年では、育児・介護休業法の改正によって男女ともに育休を取得しやすくなっており、理想の子育て・働き方を実現しやすい環境が整いつつあります。

本記事では、産休・育休の概要や薬剤師の取得状況についてお伝えするとともに、産休・育休を取得するための手続きやもらえる給付金・手当について解説します。加えて、薬剤師が産休・育休明けに無理なく働くためのポイントについてお伝えします。

1. 産休・育休とは?

産休・育休は、それぞれ労働基準法、育児・介護休業法で定められた制度です。そのため、要件を満たす労働者は産休・育休を取得する権利があります。

また、2025年には育児・介護休業法が制度改正され、男女ともに育休を取得しやすい状況が整いつつあることから、産休・育休の取得を考える人だけでなく、一般社員や管理職も制度の理解を深める必要があるでしょう。ここでは、産休・育休について解説します。

1-1. 産休(産前産後休業)とは?

産休とは、産前産後休業のことで、出産日を含めた出産前に取得できるのが産前休業、出産の翌日から取得するのが産後休業と呼ばれています。産後休業における出産とは、妊娠4カ月以上の分娩のことで、死産や流産も含まれています。

女性労働者は、産前休業については請求することで出産予定日の6週間前から、双子の場合は14週間前から取得できます。出産の翌日からは基本的に8週間の産後休業を取得しなければなりません。

参考:産前・産後休業を取るときは|妊娠出産・母性健康管理サポート|働く女性の心とからだの応援サイト

1-2. 育休(育児休業)とは?

育休とは、育児休業のことで、原則1歳未満の子どもを養育することを目的に、一定期間会社を休める制度です。保育所への入所を希望しているが入所できない等の特別な事情がある場合には、子どもが最大2歳になるまで育休が取得できます。ここでの「子ども」とは、労働者と法律上の親子関係がある子を指しています。そのため、実子、養子は問われていません。

参考:育児休業|育児休業制度特設サイト|厚生労働省

また、2022年10月から設けられた産後パパ育休(出生時育児休業)は、1歳までの育児休業とは別に取得できる制度で、産後8週間以内に4週間を限度に2回に分けて取得できます。休業開始予定の2週間前までに事業主に申し出なければなりません。男性が事実婚の場合は、申し出をした時点で認知を行っている必要があります。

参考:産後パパ育休|育児休業制度特設サイト|厚生労働省

2. 薬剤師の産休・育休の取得状況

厚生労働省では、薬剤師の産休・育休の取得状況について調査しています。2024年の調査結果は以下のとおりです。男性の育休取得は一定数あるものの、女性と比較すると取得率は低くなる傾向にあります。

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総数 24歳以下 25〜29歳 30〜34歳 35〜39歳 40〜44歳 45〜49歳 50〜54歳 55〜59歳
産休 総数 1,065人 162人 531人 295人 74人 1人 2人
男性
女性 1,065人 162人 531人 295人 74人 1人 2人
育休 総数 5,441人 503人 2,679人 1,815人 413人 27人 2人 2人
男性 483人 68人 224人 141人 44人 3人 2人 1人
女性 4,958人 435人 2,455人 1,674人 369人 24人 1人

※男性の産休制度は設けられていないため「・」とする
参考:令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計 表番号11|政府統計の総合窓口

2-1. アルバイト・パートや派遣社員の薬剤師は育休・産休を取れる?

アルバイトやパート、派遣社員であっても、産休・育休を取得することは可能です。ただし、「休業」は会社等に在籍しているときに取得するものであるため、産休・育休中に雇用期間が満了して次の契約更新がされない場合は、残念ながら取得できません。

しかし、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法で、妊娠や出産を理由に解雇や契約更新をしないことは禁止されています。そのため、有期雇用労働者であっても、復帰後に働き続けることは可能なため、働き続けたい場合は就業先に意向をしっかり伝えることが大切です。

参考:専門家がお答えします|働く女性の心とからだの応援サイト 妊娠出産・母性健康管理サポート

2-2. 管理薬剤師は産休・育休を取れる?

管理薬剤師であっても、法律上は産休・育休を取得することは可能です。しかし、管理薬剤師が産休・育休を取得するには、事前に入念な準備が求められます。

まず、管理薬剤師は、薬局に必ず1人配置することになっているため、代わりとなる管理薬剤師をあらかじめ決めておく必要があります。また、かかりつけ薬剤師をしている場合や、勤務先が地域支援・医薬品供給対応体制加算(旧・地域支援体制加算)を算定している場合は、業務の引き継ぎが必要です。余裕をもって引き継げるよう早めに上司と相談して、次の管理薬剤師や担当患者さんを任せるかかりつけ薬剤師を決めることが大切でしょう。

また、管理薬剤師になるための要件である在籍・勤務期間については、育休等の期間を除いた期間を通算するため、産休・育休を取得しても管理薬剤師として復帰することができます。とはいえ、復帰後に管理薬剤師のポジションに戻れない場合や時短勤務を希望する場合など、管理薬剤師を継続するのが難しいこともあるでしょう。休業前より収入が減る可能性があるため、生活面で不安がないように備えておくことも必要です。

参考:疑義解釈資料の送付について(その1)令和4年3月31日|厚生労働省

3. 薬剤師が産休・育休を取るための手続き

産休・育休は、ルールに沿った手続きをすることで取得できます。ここでは、産休・育休を取得するための手続きについてお伝えします。

3-1. 産休を取得するための手続き

産前休業は、会社へ請求することで、出産予定日の6週間前から取得することができます。請求方法は、「上司に産休の希望を伝える」「会社規定の書類を提出する」など、会社によって異なるため、早めに確認しましょう。

産後休業については、妊娠4カ月以上の出産である場合、必ず取得しなければなりません。流産や死産であっても対象となります。会社が手続きを行うため、早めに出産日を報告しましょう。

産後休業は出産の翌日から8週間取得することになっていますが、産後6週間を経過しており、かつ医師が認めた業務の範囲であれば、8週間を待たずに復帰することができます。

参考:産前・産後休業を取るときは|妊娠出産・母性健康管理サポート|働く女性の心とからだの応援サイト

3-2. 育休を取得するための手続き

育休を取得するためには、取得する1カ月前までに育児休業申出書を会社に提出する必要があります。産後パパ育休については、休業開始予定の2週間前までの提出となっています。育休を取得すると、それぞれ異なる給付金が支給されます。

育休と産後パパ育休の違いは以下のとおりです。

育休(育児休業) 産後パパ育休
(出生時育児休業)
対象期間・取得可能日数 原則、子どもが1歳まで。
最長2歳まで延長可能
出生後8週間以内に
4週間まで取得可能
取得可能回数 分割して2回取得可能
休業中の就業 原則不可 一定条件を満たせば就業可能
支給される給付金 育児休業給付金 出生時育児休業給付金

参考:教えて!出生後休業支援給付金の話|厚生労働省

また、育休や産後パパ育休は、育児・介護休業法で定められているため、会社に育休の規定がない場合でも取得することが可能です。会社で育休を取った例がないといった場合も法律を根拠に取得できるため、取得したい場合は会社に確認しましょう。

なお、1歳以降も育休を継続して取得したい場合は、2週間前までに申し出る必要があります。

参考:働きながらお母さんになるあなたへ|厚生労働省

4. 妊娠・出産時や育休取得時にもらえる給付金・手当

妊娠・出産時や育休の取得時には、生活を支えるための給付金や手当が設けられています。ここでは、給付金や手当の種類、支給金額や支給対象者についてお伝えします。

4-1. 妊娠・出産時にもらえる給付金や手当

妊娠・出産時に設けられている給付金や手当の種類と受給者、支給元、受給額は以下のとおりです。

種類 受給者 支給元 受給額
妊婦のための支援給付 本人 自治体 妊婦の認定(妊娠初期):5万円
胎児の人数の届出(妊娠後期〜産後):5万円×人数
出産育児一時金 本人 健康保険 子ども1人につき、50万円または48.8万円
出産手当金 給与の約67%
※市町村が運営する国民健康保険には該当する制度なし
※国民健康保険組合の場合は、加入組合による

参考:妊産婦への伴走型相談支援と経済的支援の一体的実施(妊婦等包括相談支援事業・妊婦のための支援給付)|こども家庭庁

出産育児一時金については、原則として50万円が支払われますが、在胎週数22週未満での出産や産科医療補償制度に未加入の医療機関等での出産の場合には、受給額が48.8万円となります。

参考:「出産育児一時金等の医療機関等への直接支払制度」実施要綱|厚生労働省

4-2. 育休取得時にもらえる給付金や手当

薬剤師は専門知識を生かした副業がしやすい職種でもあります。例えば、医療系ライター、研修講師、ドラッグストアのスポット勤務などが挙げられます。

副業を組み合わせることで、本業の年収に加えて年間数十万円〜100万円以上の収入増を実現できるケースもあります。働き方改革により副業を認める企業もあり、選択肢が広がっています。

  • 育児休業給付金
  • 出生時育児休業給付金
  • 出生後休業支援給付金

参考:育児休業等給付について|厚生労働省

上記は原則として、休業の取得前2年間のうち、雇用保険に12カ月以上入っており、休業中に休業前の給与の80%以上が支払われていないことが支給要件です。ただし、給付ごとに具体的な支給要件は異なります。

続いて、それぞれの給付金について詳しくお伝えします。

4-2-1. 育児休業給付金

育児休業給付金は、従来から支給されている給付金です。原則として1歳未満の子どもを養育するために、育休を取得した被保険者に支給されます。支給額は、育休開始から180日目までは給与の67%、181日目以降は給与の50%です。

なお、母親は産後8週間を経過する日の翌日から育休を取得できるため、申請することで育児休業給付金を受け取れます。父親については、出産予定日から育休を取得することで、給付金の受給が可能です。

参考:育児休業|育児休業制度特設サイト|厚生労働省

4-2-2. 出生時育児休業給付金と出生後休業支援給付金

出生時育児休業給付金は2022年10月から、出生後休業支援給付金は2025年4月から設けられた給付金です。それぞれの対象者と支給額は以下のとおりです。

基本条件 支給額
出生時育児休業給付金 出生後8週間までに、4週間以内の産後パパ育休(出生時育児休業)を取得すること 給与の67%
上限28日分
出生後休業支援給付金 以下の2つの要件を満たすこと

・配偶者等が、出生後8週間までに14日以上の産後パパ育休または育児休業をしていること
・母親が、産後休業後8週間までに14日以上の育児休業をしていること

原則として両親共に育休を取得していることが要件となっていますが、以下の場合には母親か父親のどちらかの単独取得での給付金受給が可能です。

【配偶者の育児休業を要件としない例外条件】
1.配偶者がいない
2.配偶者が被保険者の子と法律上の親子関係がない
3.被保険者が配偶者から暴力を受け別居中
4.配偶者が無業者
5.配偶者が自営業者やフリーランスなど雇用される労働者でない
6.配偶者が産後休業中
7.1〜6以外の理由で配偶者が育児休業をすることができない

給与の13%
上限28日分

参考:教えて!出生後休業支援給付金の話 ママ編|厚生労働省
参考:「出生後休業支援給付金」を創設しました|厚生労働省

自営業やフリーランスなど会社と雇用関係にない人は、育児休業を申し出る相手がいないため、育休を取得することができません。そのため、パートナーが自営業やフリーランス、配偶者がいないなどの場合、出生後休業支援給付金の要件を満たせないことになってしまうため、上記のような例外条件が定められています。

なお、出生後休業支援給付金は給与の13%ですが、上限額が1万6千110円と定められており、給与が一定以上の場合には支給額が調整されることがあります。

5. 薬剤師が産休・育休明けに無理なく働くためのポイント

薬剤師が産休・育休明けに無理なく働くためには、事前準備が欠かせません。ここでは、復帰後に無理なく働き続けるためのポイントについてお伝えします。

5-1. あらかじめ会社や上司に相談する

産休・育休からの復帰をスムーズにするには、早めの相談と情報共有が欠かせません。復帰前に相談しておくとよいポイントとして以下のような点が挙げられます。

  • 時短、固定シフト、残業の可否など希望する勤務形態
  • 看護休暇の利用など、子どもの急病時の対応
  • かかりつけ薬剤師や在庫管理、レセプト業務など、担当業務の調整

早めに相談することで、職場側も人員配置や業務調整を行いやすくなり、復帰後の負担が大きく減ります。

5-2. 時短勤務やフレックスタイム制度を活用する

育児・介護休業法では、短時間勤務制度やフレックスタイム制度の整備が企業に求められています。薬剤師の現場でも、以下のような制度が活用できるでしょう。

  • 短時間勤務(6時間勤務など)
  • フレックスタイム制度
  • 所定外労働の制限・残業免除

子どもが3歳になるまでの短時間勤務は企業に義務化されており、薬局でも広く導入されています。フレックスタイム制を導入している企業であれば、積極的に活用するとよいでしょう。
薬剤師はシフト制が多いため、制度を活用しつつ「固定時間勤務」「早番のみ」など、現場と調整しながら働き方を検討することがポイントです。

5-3.ブランクを埋めるための勉強をする

薬剤師は制度改正や薬価改定、新薬情報など変化が多いため、ブランクがあると情報ギャップが生じやすい職種です。そのため、育休中から少しずつ勉強しておくと、復帰後の不安が大きく減るでしょう。おすすめの学習方法は次のようなものがあります。

  • オンライン研修(eラーニング)
  • 最新のDI情報のチェック
  • 薬局のマニュアルや業務フローの確認

日本薬剤師研修センターの研修や製薬企業のウェブ講演会などは育児中でも受講しやすいでしょう。医療雑誌や医療情報サイトから新薬・後発品の情報を得ておくと、復帰後役立つかもしれません。

また、復帰前に職場から資料をもらえる場合は、目を通しておくのもよいでしょう。

5-4.働きやすい職場への転職も検討する

現職での復帰や子育てをしながら働くのが難しそうな職場の場合には、転職も有効な選択肢です。薬剤師は有効求人倍率が比較的高く、子育て中の薬剤師を歓迎する職場もあるため、働きやすい職場を探すのも方法です。転職を検討する際のポイントは以下のとおりです。

  • 自宅から通勤しやすい
  • 時短勤務や固定シフトが可能
  • 子育て中のスタッフが多い
  • 急な休みに理解がある
  • 残業が少ない、もしくはゼロ

調剤薬局は店舗ごとに働きやすさが大きく異なるため、子育て中の薬剤師が多い店舗を選ぶと安心でしょう。自転車や徒歩で通勤できる距離であると、保育園や学校からの急な呼び出しにも対応しやすいのでおすすめです。

企業や在宅専門薬局、オンライン服薬指導など、薬剤師には多様な働き方があるため、選択肢を広げることで、理想の働き方を見つけることができます

産休・育休取得実績あり! パパ・ママ薬剤師の転職・求人特集

6.産休・育休明けの薬剤師が安心して復帰するために

薬剤師が育休を取得し、安心して復帰するためには、制度の理解と事前準備が大きな支えになります。あらかじめ、産休・育休の手続きや給付金の仕組みを知っておくことで、経済面や働き方の不安を軽減できるでしょう。

また、復帰後は時短勤務やフレックスタイム制度の活用、業務内容の調整、ブランクを埋める学習などが、無理なく働き続けるためのポイントになります。現職での両立が難しい場合は、子育てに理解のある職場への転職も方法です。

薬剤師は専門性が高く、働き方の幅の広い職種だからこそ、理想の働き方を実現できる可能性が高いでしょう。無理なく安心して復帰できるよう、育休を取得する前から備えておくことが大切です。

この記事の監修者

薬剤師ライター

秋谷 侭美

薬剤師ライター。病院・薬局で幅広い診療科を経験。現在は2児の子育てをしながら、Webライターとして活動中。専門的な資料や情報をわかりやすくかみ砕き、現場のリアルに寄り添う言葉で伝えることを大切にしている。同じ薬剤師として、日々の悩みやモヤモヤに共感しながら、少しでも役立つヒントや気づきを届けられるように試行錯誤中。

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