薬剤師の仕事内容とは?勤務先別での違いや資格取得、年収を徹底解説!

薬剤師の仕事内容とは?勤務先別での違いや資格取得、年収を徹底解説!
薬剤師は、「調剤」のできる唯一の国家資格であり、医療の中で重要な役割を果たしています。
薬学部で6年間学び、国家試験に合格する必要があるため、取得する難易度が極めて高い資格ですが、調剤や医薬品の供給、薬事衛生の面から、人々の健康を守るという重要な役割を担うことができ、それに見合った高収入を得ることもできます。

この記事では、「薬剤師になる方法は?」「薬剤師は実際にはどんな仕事をしているの?」といった疑問の他に、給与や仕事のやりがい、将来性についてお答えします。

1. 薬剤師とは

薬剤師は、国家資格を持つ「薬の専門家」です。薬(医薬品)は、製薬会社などで研究開発され、製造・流通を経て、病院や薬局、ドラッグストアなどを通して患者さんの手元に届きますが、そのあらゆる工程に薬剤師が深く関わっています。

特に、医師の処方箋に基づいて薬を量ったり包んだりする「調剤」は、薬剤師にだけ与えられた資格であり、患者さんに薬の使い方や注意点などを説明する「服薬指導」といった業務は、一般の人にとってもなじみが深いことでしょう。

1-1.薬剤師は女性の割合が多い?

薬剤師の年代比と男女比
厚生労働省が行った「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、全国の届出薬剤師数は、321,982人で、男女比は、男性が約12.4万人(38.6%)、女性が約19.7万人(61.4%)と、女性の割合が多くなっています。

また、薬局・医療施設に従事する薬剤師の場合、女性の割合を年代別で見ると、29歳以下が64.6%、30〜39歳が59.6%、40~49歳が68.0%、50~59歳が70.5%、60~69歳が67.0%となっており、どの年代でも女性の割合が多い職業と言えます。

中でも特徴的なのは、30代は女性の割合が最も低く、それ以降は70%前後となっています。これは、30代で出産・育児を経験し、それ以降に職場復帰をするため、割合が高くなっているとも言えます。薬剤師は女性のライフスタイルに合わせて従事できる職業であることを如実に表しているのではないでしょうか。

参照元:厚生労働省/性、年齢階級別にみた薬局・医療施設に従事する薬剤師数
参照元:厚生労働省/令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)の概況
参照元:厚生労働省/令和3年度「出生に関する統計」の概況
参照元:厚生労働省/人口動態統計特殊報告
参照元:厚生労働省/令和2(2020)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況

1-2.薬剤師の仕事着や道具にはどんなものがある?

薬剤師の仕事着や業務に使用する道具には、どのようなものがあるでしょうか。仕事着と道具について見ていきましょう。

1-2-1.薬剤師の仕事着

●白衣

薬剤師の仕事着のイメージは白衣ですが、白衣はフォーマルな印象で、患者さんに清潔感と信頼感を与えることができます。着る側としても、長袖のため薬品や汚れから身を守ることができるメリットがありますが、最近では、動きやすい短い丈や半袖のものも見かけるようになりました。

●ケーシー白衣

ケーシー白衣は、通常の白衣よりも半袖、短丈で動きやすく、脇で開けられるハイネックになっているため1枚で着られることがメリットです。医師、歯科医師、作業療法士などさまざまな分野の医療従事者の仕事着として知られています。
職場のユニフォームとして、カラーのケーシーの上下など、機能性に優れたおしゃれな仕事着も一般的です。

●スクラブ

元々は手術着として使用されており、伸縮性に富んで動きやすく、速乾吸湿素材で、洗濯に強く耐久性に優れているという特徴があります。デザインや色のバリエーションが豊富で人気がありますが、患者さんに対する印象はカジュアルなため、調剤薬局より、病院薬剤師の仕事着として使用されることが多いようです。

●シューズ

薬剤師は、立っている時間や動き回っている時間が長いため、疲れにくく歩きやすい、かかとのある靴がおすすめです。白い運動靴などを履いている方がよく見られます。

1-2-2.薬剤師の仕事道具

●印鑑

薬剤師として働く場合、調剤や監査はもちろん、その他あらゆる場面で責任の所在を明らかにするため、「調剤済」「日付」「氏名」が入った「調剤印」と、名字の「認印」が必要です。

●スマートフォン、タブレット端末

スマートフォンやタブレット端末は、薬剤師にとって必要な仕事道具となりました。
その理由は、改正薬機法の施行により、2021年8月以降、医薬品などの箱に添付文書は同梱されなくなり、最新の添付文書を閲覧するためには、医薬品などのバーコードや二次元コードを、専用のアプリをダウンロードしたスマートフォンやタブレット端末で読み取る必要があるからです。

また、添付文書の改訂情報などを確認することもできます。職場のパソコンを利用したり、端末が設置されていたりする場合もありますが、必要に応じて自分のスマートフォンなども使用できる方がよいでしょう。

参照元:(独)医薬品医療機器総合機構/添付文書の電子化について
参照元:ベーリンガープラス/05 改訂情報を確認するには

●事務用品

薬剤師は調剤したり、監査をしたり、患者さんへの対応に出たりなど、1カ所に留まって仕事をすることが少ないため、効率よく業務を行うためには、必要な事務用品は手元にあった方がよいでしょう。
例えば、はさみ、電卓、筆記用具(3色ボールペン)、メモ帳や付箋、定規、針なしのステープラーなどです。

●換算表・投与量などの資料

簡単に確認できる資料を携帯しておくと便利です。製薬会社の配布物や自作の表なども仕事道具と言えます。

●職場の仕事道具

薬剤師の職場の設備は自動化が進んでいます。施設の規模により異なりますが、散薬分包機、錠剤分包機の他、錠剤のピッキング装置、監査システム搭載の散薬秤量機、調剤監査システム、水剤分注装置、注射薬払い出しシステムなどがあり今後も進化し続けていくでしょう。そのため、新しい機器の使い方を習熟することも重要です。

2.薬剤師の主な仕事内容

薬剤師の仕事は多岐にわたります。主な仕事内容について紹介します。

2-1.調剤・監査業務

調剤業務

調剤は、医師・歯科医師の処方箋に基づき、その患者さんのために薬剤を調整し交付する仕事です。

以前は処方箋通りに薬を作って渡すだけという時代もありましたが、今ではお薬手帳や薬歴、患者さんからの聞き取りで得た既往歴やアレルギーなどの情報から、処方内容が適切であるか、飲み合わせや重複投与などがないかなどを確認することも調剤業務の範囲に入ります。また、適切に服用してもらうためには、用法・用量や投与日数、服用方法、保存方法などを正しく記載した薬袋を作ることも調剤の一つです。

薬剤の調製は、錠剤やカプセル剤を取りそろえる計数調剤、水剤や散剤を量って作る計量調剤などがあります。計数調剤や一包化、散剤などを自動で調剤できる設備もあります。

参照元:(株)じほう/保険調剤業務の流れ

監査業務

調剤した薬剤と処方箋を照合して間違いがないか調べる仕事です。

薬剤の種類、数量だけでなく、薬袋の服用量や服用方法などもチェックします。また、薬歴やお薬手帳を参考に、飲み合わせや重複投与なども適切であるかを併せて確認が必要です。

複数の薬剤師がいる場合には、調剤者と別の人が監査したり、ダブルチェックしたりすることが勧められます。人間は間違う動物であることを常に念頭に置き、調剤エラーを防ぐために重要な仕事です。

2-2.疑義照会

疑義照会は、処方箋を受け付けてから薬剤を交付するまでの間に生じた、疑問点や問題点を、薬剤師が処方医師に問い合わせて確認する仕事です。

薬剤師には、医師に疑義照会する責任と義務があり、疑わしいままで調剤してはいけません。疑義照会には、保険証番号や用法・用量の記載漏れなどの形式的なものから、飲み合わせや重複投与、副作用の発現、投与禁忌など薬学的な判断を要する疑義もあります。

疑義照会を行った場合には、処方箋の備考欄に、薬剤師名と医師の名前や照会日と時間、疑義の内容について記載します。

疑義照会について詳しくは下記記事をご覧ください。

2-3.服薬指導

服薬指導は、患者さんに安全で有効に薬物治療を受けてもらうために、指導を行う仕事です。

具体的な指導内容は、薬剤名、効能・効果、用法・用量と投与日数、副作用やその初期症状、副作用が起こった時の対策、飲み忘れや飲みすぎた時の対策、保存方法や使用期限、食べ物や他の薬との飲み合わせ、尿や便の色の変化、服用後に医師・薬剤師に報告すべき症状などです。

また、薬の種類や用量が変わった時も、その理由や服用方法なども必ず説明します。特にリスクが高く注意が必要な薬については、医薬品リスク管理計画(RMP)の資材を利用して、副作用の初期症状や対処方法などを詳しく説明します。患者さんの年齢や理解力などを加味して、服薬指導を行うことが大切です。

2-4.薬歴管理

薬歴とは、患者さん一人一人に、薬剤師が行った調剤や服薬指導の内容、処方箋や医師から得た情報、既往歴や体質、生活状況などの患者背景などを記録する仕事で、診療報酬上の算定要件の一つです。薬歴を作成することで、時系列で患者さんの治療の流れを把握したり、過去の指導歴を確認したりすることができるメリットがあります。
薬歴の記載方法はSOAP形式で記載する方法が主流で、患者さんの話したこと(S)、処方内容や検査データ(O)、薬剤師としての判断(A)、服薬指導と次回のチェック事項(P)を記載します。

薬歴について詳しくは下記記事をご覧ください。

2-5.医薬品の管理・販売

医薬品管理

医薬品管理は、医薬品の在庫管理と品質管理をする仕事です。

在庫管理は、患者さんに必要な薬を渡せるように数量を把握して、適正な在庫量を調整する仕事です。在庫管理に伴う仕事としては、卸業者への医薬品の発注や納品の検収、有効期限の管理、在庫数の把握などの仕事を伴います。出荷制限などによる品薄の対策や過剰在庫の把握なども重要な仕事です。

品質管理は、医薬品それぞれに保存条件が定められているため、その保存方法に合わせて保管し、適切な保存方法が守られているかを定期的に管理する仕事です。

医薬品の販売

特定の医薬品については薬剤師が販売することが義務付けられています。特定の医薬品とは、一般用医薬品の第1類医薬品のことで、年齢や他の医薬品の使用状況などを確認し、薬剤師が販売します。

また、医療用薬品から一般用医薬品にスイッチ直後の医薬品と劇薬は要指導薬品とし、薬剤師が情報提供と指導をして販売することができます。このように、医薬品の販売も薬剤師の仕事の一つです。

3.勤務先別の仕事内容

薬剤師の業務は、勤務先によって極めて多岐にわたります。最もよくイメージされる「調剤薬局やドラッグストアで患者さんのために薬を用意している」という薬剤師は、実は6割弱に過ぎません。

病院などの医療施設で働いている人が2割、製薬会社などの企業で営業や研究開発などに携わっている人が1割いるほか、行政機関などで働いている人もいるなど、勤務先は多様です。
勤務先別に、薬剤師の担っている仕事内容を紹介します。

3-1.調剤薬局

調剤薬局
調剤薬局の薬剤師の仕事は、患者さんの持参した処方箋に基づいて薬を「調剤」するという「物」を扱う仕事から、患者さんという「人」を対象とした仕事に変わってきています。調剤自体は、薬剤師の管理の下、調剤助手の方が行ったり、自動化が進んだりしているためです。

人を対象とした仕事とは、患者さん一人一人に対して、処方箋で医師から指示された薬が患者さんに合っているか、他の薬との飲み合わせは大丈夫か、作用が重複した薬はないかといった確認であり、薬の知識が必要です。また、薬の専門家として気になる点があれば医師に問い合わせ(疑義照会)をする義務があります。

さらに、調剤した薬の服用方法や使用方法、副作用について患者さんに説明したり、不安点がないか相談に乗ったりする「服薬指導」は非常に重要な仕事です。こうした患者さんファーストとも言える仕事をするために、患者さんの病気や薬歴を管理する「薬歴管理」もあわせて行っています。
万一、ミスがあれば患者さんの健康にも関わるため、責任は重大です。薬剤師同士で連携しながら、薬の専門家として活躍しています。

3-2.ドラッグストア

ドラッグストア
ドラッグストアの薬剤師は、主に処方箋がなくても買える「一般用医薬品(OTC医薬品)」を販売しています。来店したお客さんの相談に乗り、薬を選んだり、副作用について説明したり、健康アドバイスなども行います。
一般用医薬品の多くは登録販売者でも販売することができますが、特に副作用のリスクが高い第1類医薬品だけは、薬剤師しか販売することができません。
調剤室を併設しているドラッグストアの場合は、調剤薬局と同様に「調剤」や「服薬指導」といった業務も併せて行います。

3-3.病院・クリニック

病院・クリニック
病院やクリニックの薬剤師は、医療施設内の薬局が勤務先です。
病院薬剤師は、主に入院患者さんのための調剤と服薬指導や薬の管理、退院時の指導などをします。
院内で使う注射薬を調製したり、市販されていない薬を製剤したりといった業務を行うこともあります。チーム医療の担い手として、医師や看護師などと連携して患者さんへの対応に当たります。
また、病院によっては例えばがんや精神科などは、特に安全への配慮が必要な薬を扱う可能性も高くなるため、こうした領域では、スペシャリスト(認定・専門薬剤師)として活躍している人もいます。

一方、クリニックは、病院と異なり入院施設がないか、あっても19床以下です。そのため、薬剤師の主な仕事は患者さんへの服薬指導と院内の医薬品の管理などです。クリニックでは院外処方箋の所が多いため、薬剤師を雇用しているケースは少ないですが、美容外科クリニックや透析クリニックなど専門領域に特化したクリニックでは、薬剤師が必要とされています。

3-4.製薬会社などの企業

製薬会社などの企業
製薬会社の営業職(MR)として働く薬剤師は、病院や薬局を訪問して自社の薬のプロモーションや情報提供をしています。研究開発を担当する場合、新薬を開発(創薬)するための基礎研究や臨床試験(治験)などを行います。学術情報の提供や薬の管理を専門にする人もいます。

そのほかの企業薬剤師としては、医薬品卸会社の営業や在庫管理、化粧品メーカーや食品メーカーの研究開発や、新薬の開発に携わる開発業務受託機関(CRO)などで、臨床開発モニター(CRA)、治験コーディネーター(CRC)として働く薬剤師もいます。

薬剤師は全体として増加傾向にありますが、製薬会社に勤務する薬剤師は若干減少傾向にあり、厚生労働省が行った「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計」では「医薬品関係企業の従事者」は39,044人で2,259人減少しています。

参照元:厚生労働省/令和2(2020)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況

3-5.保健所などの行政機関

全体の2%程度と少数派ですが、国や都道府県などで公務員として働く薬剤師もいます。
例えば自治体の保健所で働く薬剤師は、調剤薬局などの医薬品販売店舗の許可・監査・指導や、地域の公衆衛生に関わる啓蒙活動、各種検査などが主な業務です。そのほか、麻薬取締官、自衛隊の薬剤官、刑務所内の薬剤師などとして活躍する人もいます。

3-6.小中学校・高等学校

幼稚園や小中学校、高校などの大学以外の学校には、薬剤師を置くことが法律で義務づけられています。
学校薬剤師は、プールの水質検査、教室内の換気や照明といった環境衛生の調査、子どもたちの健康相談や保健指導などを行います。
業務が毎日あるわけではないため、多くの場合、普段は調剤薬局や病院などで働く薬剤師が兼務しています。

3-7.在宅医療

在宅医療は、主に調剤薬局の薬剤師や在宅専門薬剤師が行います。
具体的な仕事内容は、訪問医療の医師が発行した処方箋に基づき、在籍する薬局で調剤を行い、定期的に患者さんの自宅や入居中の施設に届けることです。その際、服薬指導のほかに、患者さんの服薬状況や副作用のチェック、残薬調整などを行います。高齢の方の場合には、特に薬の管理が難しいことが多いため、飲み忘れを防止する工夫なども在宅薬剤師の重要な仕事です。
また、医師や地域包括のメンバーの一員として、患者さんから得られた情報を書面などで共有したり、他職種に対して医薬品に関する教育したりします。定期的な訪問以外にも、薬の変更の対応や、患者さんからの電話相談なども担当する薬剤師の仕事です。

参照元:厚生労働省/在宅医療における薬剤師業務について

在宅医療薬剤師について詳しくは下記記事をご覧ください。

4.薬剤師の1日の流れや休日は?

薬剤師の1日の業務の流れや休日の過ごし方について紹介していきます。

4-1.薬剤師の仕事

ここでは、病院薬剤師を例に、1日の業務のおおよその流れを紹介します。

8:20 出勤
8:30 朝礼 ・当日の業務分担(調剤、製剤、注射調整など)を確認します。
・夜間に使用した薬や、麻薬・向精神薬などの数量を確認します。
・引き継ぎ事項や連絡事項を共有します。
9:00 各分担での業務 ・病棟担当は、医療チームとの打ち合わせや担当入院患者の薬剤管理、服薬指導などを行います。
・薬局内担当は、入院患者の定期処方の調剤・監査や、注射薬の調整を行います。
12:00 昼休憩
13:00 各分担での業務 ・病棟担当は、退院患者への退院時指導を行います。院内のカンファレンスに参加することもあります。病棟の医薬品の管理も行います。
・薬局内担当は、定期処方の払い出しや臨時処方や処方変更に対応します。
・入院患者の持参薬を鑑別し、院内処方への変更や代替薬の提案などを行います。
16:30 1日の記録と翌日への引き継ぎ 各担当とも、服薬指導録や業務日誌などを記録し、翌日への連絡事項なども確認します。
17:30 退勤

4-2.薬剤師の休日

薬剤師の休日は、勤務している職場によって異なります。大きく分けて、調剤薬局、ドラッグストア、病院に分けて見ていきましょう。

調剤薬局

調剤薬局は、基本的には処方箋を応需しているクリニックや病院に合わせた開局時間となっているため、週休2日を確保するためには、日曜日以外に週に1日、順番に休日を取ることになります。薬局によって、週休が決まっている場合、週単位~月単位で休日が決まる場合などいろいろなケースがあります。

ドラッグストア

ドラッグストアは年中無休、長時間開店していることが多く、併設の薬局の薬剤師は、日曜・祝日を含めて出勤日と休日のシフトを組むことになります。それぞれの都合や事情を踏まえて、休日が取りやすい体制が望まれます。

病院薬剤師

病院薬剤師の場合は、当直があるか、夜間救急を受け付けているかや、土日祝日における周辺薬局の開局状況などで、日々確保すべき薬剤師の人数が決まります。当直、夜間、日直を含めた上で、しっかり休日が取れるシフトを組んで勤務に当たるたります。

5.薬剤師になる方法や注意点とは

薬剤師になりたいと思ったら、どうすればよいのでしょうか。薬剤師は、取得までの道のりが最も険しい国家資格の一つです。その詳細と注意点を説明します。

5-1.6年制の薬学課程を修めること

まず大学の薬学部で6年間の課程を修める
薬剤師になるには、薬科大学または薬学部のある大学に入学し、6年制の薬学過程を修め、薬剤師国家試験に合格し、薬剤師という国家資格を取得する方法しかありません。
全国には、6年制の薬学課程を置いている大学が77校(2022年5月現在)あります。大学では、4年間かけて体のしくみや薬の働きについて学び、共用試験で身に付けた能力を確認した後、5年目には病院や薬局で実務実習を経験し、6年目には、卒業研究や薬剤師国家試験に向けた勉強に取り組むことになります。

大学を選ぶときに、注意すべき点があります。薬学部のある77大学のうち、約6割の49大学は6年制の学科のみですが、28大学には4年制の学科も併設しています。薬剤師になりたい場合は、必ず6年制の学科を選ばなければなりません。

薬学部は、2006年度以前は全て4年制でしたが、2006年度に法律が改正され、薬剤師になるために必要な修学年数が6年間に延長されました。それに伴い薬学部、薬科大学の新設が相次ぎましたが、少子化、将来的な薬剤師の供給過剰が見込まれ定員割れの大学が増加していることから、2025年度以降は薬学部の新設、定員増が認められないことが決まっています。薬科大学、薬学部を受験する際には、その動向にも注意が必要です。

また、研究者などを目指す人のために、4年制の課程を置いている大学もありますが、4年制の課程を修了しても、薬剤師国家試験の受験資格は得られないため注意が必要です。

参照元:文部科学省/薬学教育
参照元:文部科学省/薬学部における修学状況等 2022年(令和4年)度調査結果
参照元:文部科学省/薬学部における修学状況等
参照元:文部科学省/薬学部の6年制課程における退学状況等

5-2.「薬剤師国家試験」に合格すると免許を取得できる

薬剤師国家試験は、例年1月上旬に受験者の募集が行われ、2月中旬に試験を実施、3月中~下旬に合格発表があります。その年度に卒業見込みであれば受験することが可能です。つまり、薬学部で卒業要件を満たした6年生は受験でき、合格して免許を取得すれば、翌年度からすぐに薬剤師として働くことができるわけです。

薬剤師の国家試験は、2日間かけてマークシート方式で実施されます。試験科目は、「薬理」「実務」など7科目に及ぶ「必須問題試験」と、「薬学理論問題試験」「薬学実践問題試験」があり、「必須問題試験」では、全体の得点率が70%以上、科目ごとの得点率が全て30%以上で合格という足切りの基準があるため注意が必要です。

第100回薬剤師国家試験までは絶対評価のため、合格率が難易度に左右される傾向にありましたが、第101回~第105回の移行期間を経て、2022年第106回薬剤師国家試験からは、平均点と標準偏差を用いた相対基準により合格者が決定することになり、合格者数は9,600人程度に設定されています。そのため難易度にかかわらず、合格点および合格基準は年度により上下しますが、合格率はほぼ横ばいと言えるでしょう。

第106回~108回までの薬剤師国家試験の合格率は、以下の通りです。

  第106回
(2021年)
第107回
(2022年)
第108回
(2023年)
合格率(総数) 68.66% 68.02% 69.0%
新卒者 85.55% 85.24% 84.86%
既卒者 41.29% 40.75% 44.05%

参照元:厚生労働省/第107回薬剤師国家試験 大学別合格者数
参照元:厚生労働省/第108回薬剤師国家試験の結果について
参照元:厚生労働省/第106回薬剤師国家試験の結果について
参照元:厚生労働省/第107回薬剤師国家試験の結果について
参照元:厚生労働省/第108回薬剤師国家試験の結果について

6.薬剤師の平均年収はどれくらい?

年代別 薬剤師の平均年収
厚生労働省が行った「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、平均年齢41歳の薬剤師の平均年収は額面で約583.3万円です。月収として約41.4万円、ボーナスとして年間約85.8万円から算出されます。平均残業時間は、約9時間です。

年齢別に見てみると、就職したばかりの25~29歳(平均年齢27.1歳)(男女)は、464.8万円であり、35~39歳(平均年齢37.2歳では)になると608.7万円、最も月収が高くなる55〜59歳では717.3万円となり、着実な年収アップが見込めます。

薬剤師の平均年収の男女差は、就職する企業規模の違いや、女性では出産・育児などで一時的に離職する場合も多く、男女同年齢では女性の方が平均年収は低いようです。例えば、平均年収が男女とも最も多くなる55〜59歳で、男性の平均年収は855.9万円に対し、女性は608.9万円でした。一方、70歳以上になると男女が逆転し、男性は543.6万円に対し、女性は584.7万円と継続して高収入を得られる職業と言えます。

参照元:厚生労働省/令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況
参照元:政府統計の総合窓口/令和4年賃金構造基本統計調査
参照元:政府統計の総合窓口/賃金構造基本統計調査
参照元:厚生労働省/令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概要 1.一般労働者の賃金

7.薬剤師の仕事のやりがいやメリットは?

薬剤師は、「人や社会に役立っている」という実感を得やすく、金銭面でも報われることの多い仕事です。その理由を掘り下げて見てみましょう。

7-1.患者さんの役に立てる

患者さんの役に立てる
薬剤師は、「健康でありたい」「病気を治したい」「症状を和らげたい」という患者さんの切実なニーズに応えることができます。
特に、薬剤師に求められる姿は変わってきており、患者さんの薬に関することは全て薬剤師が担うことが求められるようになってきました。以前は、処方箋に従って数を数えて渡すだけというイメージの薬剤師でしたが、今は、本当にこの薬が必要なのか、副作用などの問題は生じていないか、多くの薬を飲み過ぎていないかなど、患者さんの不安に対して調剤だけでなく、心情に寄り添いながら、服薬指導や健康相談などを行うことで医師との間の架け橋となるというやりがいは、他の職種では味わうことができないものです。

また患者さんに直接対応することが多いため、感謝されることも多々あり、人の役に立っているという実感を得ることができます。

7-2.チーム医療に携われる・医療貢献できる

医療に貢献できる
病院薬剤師は、医師、看護師とともにチーム医療に携わり、入院患者さんの薬物療法において、現代医療で使われる多種多様な薬を有効かつ安全に提供するために、欠かせない役割を担っています。
医師は人体や病気の専門家ですが、薬の専門家ではありません。医学や薬物療法が高度化する中、薬が化学物質として体内でどのように働くのか、他の薬や食べ物、病気の状態によってどのように変化するのかについては、薬剤師の方が精通しているのです。チーム医療における薬剤師の存在も、これまでの病棟勤務の薬剤師の尽力と努力のおかげで浸透してきました。今後ますます、チーム医療において薬剤師が貢献することが期待されるでしょう。

また国は政策として「かかりつけ薬剤師」の推進やチーム医療・地域包括ケアの発展に力を入れています。そのため、医師や他職種に薬物情報を提供したり、処方設計に貢献したりするなど薬剤師の活躍の場はますます増えていくでしょう。

7-3.給与水準が高い

「6. 薬剤師の平均年収はどれくらい?」でも説明した通り、平均年齢41歳の薬剤師の平均年収は約583.3万円であり、同調査によると、全労働者の平均年収は311.8万円ということから考えると、薬剤師はそれよりも270万円以上多い収入を得られる、高収入の職業だと言えるでしょう。勤め先や地域などによっても初任給や昇給の仕方は大きく変わりますが、いずれにしても高水準の待遇を期待できるでしょう。さらに、医療業界は景気に左右されにくいというメリットもあります。

参照元:厚生労働省/令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概要 1.一般労働者の賃金

7-4.ライフステージに合わせた仕事がしやすい

薬剤師は女性の割合が高いため、産休や育休といった制度の整っている職場が多いことが特徴です。さらに資格職であり、求人倍率も高いため、もし妊娠・出産や介護などで一度仕事を辞めたとしても、再就職が比較的容易と言えます。

また、正社員だけでなくパートやアルバイト、派遣社員の求人も多いため、場合によっては短時間だけ効率的に働くといった柔軟な対応も可能です。

さらに、全国どこにでも薬剤師の需要はあるため、例えば家族の都合などで転居することになっても仕事を続けやすいこともメリットです。

8.薬剤師の現状と将来性は?

薬剤師なら転職にも有利
厚生労働省の「調剤医療費の動向」では、2021年度の調剤医療費は2020年度から2.8%の伸び率で、7兆7,059億円にも上り、そのうち技術料が2兆103億円を占め、7.1%の伸び率でした。今後ますます技術料の評価が高まることが予測されています。

その理由としては、調剤薬局の薬剤師の業務は、前述の通り対物業務から対人業務への転換が推進されていることから、令和4年診療報酬改定において、患者情報や処方内容の分析、服薬指導や投与後の継続的な管理など、薬剤師の対人業務に対して適切な評価がなされるように見直しが行われたためです。また、地域包括システムにおける地域への貢献や在宅業務、かかりつけ薬局や健康サポート薬局など一定の機能を有する薬局が評価される傾向にあり、ますます薬の専門家としての薬剤師の活躍が期待されています。

参照元:厚生労働省/最近の調剤医療費(電算処理分)の動向(令和3年度)
参照元:厚生労働省/最近の調剤医療費(電算処理分)の動向(令和4年度)
参照元:厚生労働省/令和3年度 調剤医療費の動向
参照元:厚生労働省/令和4年度調剤報酬改定の概要(P15~16 評価体系の見直し)

薬剤師はどんどん増加傾向にあり、2018年の31万人から2020年の32万人だけでも約3%増えていました。しかしながら、2025年以降、薬学部や薬科大学の定員増は認められなくなるため、将来的には薬剤師の人数は頭打ちになる可能性もあります。今後は、国の施策や社会のニーズに合わせて、質の高い薬剤師が求められる時代になるでしょう。

参照元:厚生労働省/令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 薬剤師

9.薬剤師の転職で悩んだら転職エージェントを利用しよう

薬剤師は、取得難易度の高い国家資格ですが、その分薬剤師として社会に出た後も、自分のキャリアプランやライフステージに合わせて、転職が有利な職業であることは間違いありません。なぜならば薬剤師が活躍する場は、病院や調剤薬局、ドラッグストアや企業など、広く開かれているからです。しかしながら、薬剤師のあり方も物から人へと変化の時期を迎えており、情報や技術のアップデート、認定薬剤師やかかりつけ薬剤師の取得など、要求されることも増えているため、転職を考えた時にはその選択肢に悩むことも多いでしょう。

転職で悩んだ時には、薬剤師専門の転職エージェントを利用することを考えてみましょう。薬剤師専門の転職エージェントは、薬剤師が働くあらゆる業種を熟知しています。どのような人材が求められているのか、どのような働き方ができるのか、また具体的な仕事の内容まで、薬剤師専門のキャリアアドバイザーは情報を把握しています。また、求人広告だけでは分からない、実際の職場の状況などについても熟知しています。その上で、求職者が転職で悩んでいる理由や、自身の性格、今までの職場の状況などを踏まえ、現在のスキルや目指す薬剤師像、働き方などに照らし合わせ、複数の転職先を提案してくれます。まずは、転職エージェントに転職の悩みを相談することから始めてみましょう。

10.まとめ

薬剤師になるためには、6年間の薬学教育を受け、難度の高い薬剤師国家試験に合格しなければなりません。しかし薬剤師になることができれば、医療に貢献できる上に、調剤薬局や病院、ドラッグストアなど活躍の場は多く、女性のライフステージに合わせて仕事もしやすいため、人気の職業の一つです。

また薬剤師の仕事は、対物業務から対人業務への転換期であるとともに、高度医療における薬物療法の専門家として、地域包括ケアシステムやチーム医療における活躍も期待されており、将来的に質の高い薬剤師の需要がますます高まると期待されています。

そこで薬剤師としての自分に合ったキャリアプランを踏まえた転職を考える際には、転職エージェントの活用をおすすめします。薬剤師専門のキャリアアドバイザーに相談をして、キャリアアッププラン作りから一緒に考えることで、目指す薬剤師像に近づけるようサポートしてくれます。

この記事の著者

薬剤師・ライター

小谷 敦子

病院・調剤薬局薬剤師を経て、医療用医薬品専門の広告代理店・制作会社に所属し、販促資材やMR教育資材、患者向け冊子などの執筆に従事。
専門医インタビューによる疾患や治療の解説などを、クリニックHP上に掲載するなどの執筆活動も行っている。

この記事の監修者

薬剤師専任キャリアアドバイザー

中村 貴大

薬剤師の転職サポート歴7年。
調剤薬局、病院、ドラッグストアなどの法人担当だけでなく、多くの求職者様の転職活動を成功に導いた経験と知識を活かし、転職活動を開始される皆さまを全力でサポートさせていただきます。

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