薬剤師の転職事情と転職市場|未経験で中途採用を狙うべき転職先は?
「ずっと調剤薬局で働いてきたけど、企業に転職したい」「育児と両立できるよう、企業からドラッグストアなどに転職したい」といった異業種への転職を目指す場合、「実務未経験でも中途採用してもらえるのか」という点が気になる方も多いでしょう。
薬剤師の未経験転職が成功するかどうかは、転職を希望する職場によって異なります。ここでは、未経験薬剤師の中途採用事情について見ていきます。
目次
1.薬剤師は、未経験でも転職しやすい?
薬剤師の求人では、「未経験歓迎」「未経験OK」としている職場を多く見かけます。比較的、未経験者に寛容で、異業種へのキャリアチェンジがしやすい職種であるといえるでしょう。
しかし、未経験の場合、転職を成功させてからが大変になるといわれています。「とにかく環境を変えたい」と見切り発車のように転職したり、「未経験歓迎と書いてあるから、なんとかなるだろう」と中途半端な気持ちで転職したりすると、転職後に後悔することになりかねません。
未経験で異業種への転職にチャレンジするときは、次の2点を念頭に置きましょう。
- 同じ薬剤師でも、職場によって仕事内容はまったく異なり、新しい仕事を覚えるには苦労が伴う。
- 職場ごとにルールがあり、「今までのやり方」が通用しない場面が多い。
薬剤師として十分なスキルと経験があっても、業種が違えば求められるものも変わります。転職する際は、「初めはギャップに苦労するだろう」という覚悟と、「失敗を恐れずに新しいことを吸収しよう」という意欲が欠かせません。
逆にいえば、覚悟と意欲を持って臨めば、未経験でもやりがいを持って働けるということです。転職を希望する職場の雰囲気や仕事内容をしっかり理解した上で、転職活動を進めるようにしましょう。
求人票に書いていない情報を知るには?
しっかり覚悟を持って仕事に臨むためにも、転職前に自分の希望と求められることを照らし合わせる作業は大切です。求人票に書いていない情報は、エージェントに聞いてみると詳しく教えてくれます。
2.薬剤師の転職先でメインとなる4つの業種とは?
未経験でも転職が決して不可能ではない薬剤師ですが、改めてどのような業種があるかについて再確認しましょう。
メインとなるのは「調剤薬局」「ドラッグストア」「病院」「製薬会社」の4種です。それぞれにメリット・デメリットがあり、年収から勤務時間に至るまで大きく異なります。もちろん、店舗ごと、病院ごと、企業ごとに大きく異なりますが、基本的な特徴は抑えておいて損は無いでしょう。
以下の記事では、薬剤師の転職先であるメインの4業種について、より詳しく説明しています。それぞれのメリット・デメリットについて曖昧な方は、一度ご覧いただくことをおすすめします。
3.未経験転職がしやすい職場、しにくい職場
薬剤師が未経験でも転職しやすいのは、研修制度が充実している大手ドラッグストアチェーンや調剤薬局チェーンです。中には中途採用者1名に先輩が1名というマンツーマン体制で実務を指導してくれるところもあり、未経験者を受け入れる体制や風土が整っています。
また、慢性期病院も、未経験で転職しやすい職場のひとつです。慢性期病院は、急性期病院ほど患者の体調が急激に変化したり、急患が運び込まれたりといった慌ただしさがなく、業務もルーティンワークが中心です。扱う薬剤の種類も急性期病院ほど多くないので、自分のペースで業務に慣れていくことができるでしょう。
一方、未経験では転職しづらいのが急性期病院、大学病院、製薬会社です。急性期病院や大学病院は業務が多岐にわたる上、非常に多忙で、中途採用者にじっくり研修を行う余裕がないところがほとんどです。そのため、中途採用には即戦力を求めている場合が多いです。
また、製薬会社の研究・開発職の中途採用も、ほぼ実務経験がある人のみに限られ、未経験でも可とする求人が出ることは少ないと考えたほうがいいでしょう。
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見つけるのが難しい求人は転職サービスへ
転職サービスでは企業が直接表に出していない「非公開求人」を多数取り扱っています。登録することで、自分では出会えなかった転職先を見つけることができるでしょう。
4.薬剤師の転職、4つの狙い目パターン
薬剤師の転職について、具体例とともに紹介します。薬剤師は転職しやすい職業といえますが、未経験者より経験者のほうが有利なことは間違いありません。
実務経験がない場合は、4つ目の事例で紹介しているように、まずは「現場を経験する」ことから始めたほうがいいでしょう。
4-1. 事例1 調剤薬局から病院へ
まずは、調剤薬局での勤務経験を生かして、病院に転職したいというケースです。
調剤薬局のおもな仕事は、調剤業務、服薬指導、健康に関するアドバイスなどですが、病院では調剤業務を中心として製剤業務、注射薬混合調製業務などに携わります。
中には外来化学療法室で抗がん剤治療の計画書をチェックしたり、抗がん剤治療の説明や副作用の確認、処方の提案をする仕事を任される場合もあり、業務の幅は広がりますが、調剤業務が中心であることに変わりはありません。
調剤薬局から病院へ転職する人の多くは、「医療人の一人として、やりがいのある仕事がしたい」という志を持っています。未経験からのチャレンジでは慢性期病院が多く、年齢を重ねてからの急性期病院への転職は厳しい面もありますが、求人がないわけではありません。
未経験であることを補うだけの熱意があると示すことができれば、可能性は十分あります。医療知識を身につけ、命を左右する現場で働くという責任感を持って転職活動に臨みましょう。
4-2. 事例2 病院から調剤薬局やドラッグストアへ
大学病院や総合病院、民間病院などから、調剤薬局やドラッグストアへの転職を希望するパターンです。
調剤・製剤を中心に幅広い業務に携わってきた病院薬剤師は、即戦力としての活躍が期待されるため、転職市場では高い人気を誇り、最も転職成功の可能性が高いケースであるといっても過言ではありません。
合否の鍵を握るのは、接客業務に適性があるかどうかです。病院でも、医師や看護師、患者とコミュニケーションをとりながら仕事をしますが、調剤薬局やドラッグストアにおける「接客」とは大きく異なります。
サービス業であることを認識し、「ここにまた来たい」と思ってもらえるような対応ができるかどうかがポイントになるでしょう。またドラッグストアではOTC医薬品をはじめ、食品や日用品も販売しているため、薬剤以外の知識も積極的に習得しようという意欲があることも大切です。
4-3. 事例3 調剤薬局から企業へ
製薬会社の研究職や開発職は、基本的に新卒採用で充足しているため、中途採用が行われる場合はすぐに現場で活躍できる経験者にターゲットを絞っていることが大半です。そのため、調剤薬局から企業薬剤師を志す場合、研究職や開発職以外の職種で考える必要があります。
未経験でも採用されることがある職種として挙げられるのは、企業や製薬会社に在籍して薬の情報を説明するDI担当や物流の管理薬剤師、CRA(臨床開発モニター)、CRC(治験コーディネーター)として働くという道です。
CRA、CRCは、リーダーシップやコミュニケーション能力を重視するため、調剤薬局やドラッグストアからの未経験転職でも、十分にチャンスがあります。件数は少ないですが、MRも可能性がないわけではありません。
特に、調剤薬局で役職に就いて部下を持っていた経験がある人や英語力がある人、リーダーシップがあって前向きな人は採用されやすい傾向があります。
4-4. 事例4 資格は持っているが、薬剤師として働いた経験がない
薬剤師の資格を取ってすぐに家庭に入ったり、別の仕事をしていたりして「資格はあるものの実務経験はゼロ」という場合は若手なら求人も多いですが、最初から正社員としての転職をするのは簡単ではありません。
まずはパートやアルバイトで経験を積み、正社員を目指してステップアップしていくことも視野に入れたほうがいいでしょう。
5.薬剤師のよくある転職理由とは?
異業種、同業種にかかわらず、転職を検討されている方には明確な転職理由があることと思います。しかし、今検討している転職理由は、将来的なことまで考えての理由でしょうか?
以下の記事は、よくある転職理由から、理想的な転職をするために知っておきたい転職理由のポイントをまとめて掲載しています。未経験での転職は、少なからずリスクもあります。覚悟を持って転職するためにも、自分にとっての本当の転職理由は必ず理解するようにしましょう。
6.薬剤師の転職に、転職回数はどういった影響を及ぼすのか
薬剤師の方が転職を検討する際に、もうひとつ考慮したいのはご自身の転職回数です。一般的な企業では、転職回数が多ければ多いほど、転職難易度は高くなると言われています。薬剤師の方はどうでしょうか?
厚生労働省の「令和2年転職者実体調査の概況」によると「転職者がいる事業所」の割合は、「医療・福祉」領域で38.3%となっています。総数に対しての平均が33.0 %なのを考えると、「医療・福祉」領域の転職回数の多さを伺わせる結果となっています。
しかし、意味のない複数転職はネガティブな印象を持たれてしまうことに間違いありません。薬剤師の転職活動で転職回数が不利にならないためには、どのような対策が必要でしょうか。
以下の記事では転職理由が多い薬剤師の方へ向けて、転職成功のコツをご紹介しています。転職回数が複数に渡っている方は、ぜひご一読いただければと思います。
7.未経験者が転職を成功させる秘訣
例外はあるものの、中途採用の場合は基本的に即戦力として活躍できる人材が求められています。未経験者は不利な状態からスタートするわけですが、未経験者ならではの自由な発想やポテンシャルに期待して採用に至るケースも多くあります。
特に、大手ドラッグストアチェーン、調剤薬局チェーンなど、慢性的な人手不足に悩む職場は未経験者にも広く門戸を開いていますので、狙い目といえるでしょう。
未経験からの転職を成功させるコツは、「未経験者を本当に歓迎している職場」を見極め、面接でしっかりと意欲をアピールすることです。転職活動を開始する前に頭の中を整理し、「なぜ未経験で異業種にチャレンジするのか」を論理的に説明できるようにしておきましょう。
- なぜ、未経験からチャレンジしようと思ったのか
- 転職して、どんなキャリアを築きたいのか
- これまでの経験のうち、転職先で生かせるものは何か
- 即戦力が欲しい相手にとって、自分を採用するメリットは何か
面接対策は、個人ではなかなか手が回らないものです。面接が鍵を握る未経験転職では、転職エージェントの面接対策を利用して対策を練りましょう。
マイナビ薬剤師の面接対策では、面接でよく聞かれる質問や、それに対する簡単な回答例はもちろん、面接で気を付けたいマナーやポイントもお伝えしています。
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