薬剤師の転職では、”通勤時間”も一つの目安に!

薬剤師の転職では、
薬剤師が職場を探すとき、年収、勤務形態、残業の有無、各種手当、有給休暇の取りやすさなどの条件に注目して比較検討する方が多いと思いますが、ここで意外に見落としがちなのが“通勤時間”です。

「少し家から遠い」「乗り継ぎが多い」と感じながらも、年収などの条件に惹かれて一旦は就職したものの、毎日通勤を続けるうちに辛くなってくるという方は少なくありません。ましてや時間当たりの給料水準が高い薬剤師にとって、貴重な時間を通勤のために無駄にしてしまうのはもったいないと感じてしまいます。

薬剤師が仕事への意欲を維持して、良好なライフワークバランスを保つためには、通勤時間を考慮しておくことがとても大切です

今回は、薬剤師が転職先を選ぶときに重要な“通勤時間”について紹介します。

1. 通勤時間は実際に苦痛?

会社勤めをしていると避けることができないのが“通勤時間”。公共交通機関で通うにしても、自動車などで通うにしても、通勤時間は毎日生じる無給の時間となります。

たとえ残業がなく、勤務時間が9時~17時であっても、通勤で片道に45分かかっていた場合、1日で1時間半もの時間を通勤のために費やすことになります。もちろん、通勤にかかる時間に対しては、プライベートの時間を削って通勤に充てているのが現状です。

薬剤師の場合は、特に時間給が高い職種なので、余計に無駄に感じてしまう方も多いことでしょう。

2. 転職理由の一つに通勤時間が当てはまる

実際、我が国の労働に関する国による調査結果をみてみると、通勤時間を理由に離職をした方が一定の割合でいることが分かります。

総務省統計局の労働力調査(令和3年、4~6月期平均結果)によると、「家事・通学・健康上の理由」のために離職をした方は、全ての離職者のうち約15%程度を占めており、人数にして約25万人にのぼっています。やはり、通勤時間がネックになり、離職し新たな転職先を探すという方は一定数いるようです。

また、通勤時間が短い方が良いと考える方のなかには、必ずしも正規職員としての就職にこだわらないという傾向がみられます。それを裏付けるのが、令和2年(平均)の労働力調査のデータです。この調査では非正規の職員・従業員を対象に、「非正規で働こうと思った理由」を調査しています。

その結果、現在非正規で働いている約2090万人のうち、約95万人の方が、非正規の勤務形態を選んだ理由として、「通勤時間が短いから」と回答しています。正規職員でなくても良いから、通勤時間の条件を優先してあえて非正規雇用を選んでいる方もいるということです。

このように、「通勤時間」の問題は、離職・転職を考える場合の一つの指標になっていることが分かります。

参照元:総務省 統計局/労働力調査(詳細集計)2021年(令和3年)4~6月期平均結果
参照元:総務省 統計局/労働力調査(詳細集計)2020年(令和2年)平均

3. 通勤時間を考えて職場を選ぶには

薬剤師が職場を選ぶとき、通勤時間でつらい思いをしなくて良い職場を選ぶ際には、具体的にはどのような職場を選べばよいのでしょうか?

薬剤師に人気の職場を例に、通勤時間で失敗しないための職場探しのポイントをお伝えします。

3-1. 薬局・ドラッグストア

薬局・ドラッグストアは、正規・非正規を問わず、たくさんの求人があり、本人の頑張りようによっては年収アップが期待できるため、薬剤師にとって常に人気の職場です。ただし、大手のチェーン店に正規で入職した場合は、遠方への転勤が課せられたり、自宅から遠くの店舗に配属されたりすることも多いようです。

非正規雇用の場合でも、店舗を多く抱えている大企業の場合は、自宅から遠方でも人手が足りない店舗へと一時的に配属されたりする場合があるので注意が必要です。ただし、最近では、転勤や遠方への通勤を避けたいという声を反映して、「転勤なし(勤務地限定)」、「ホームタウン制度」などを取り入れている求人もあります。

3-2. 調剤薬局

調剤薬局は、主に近隣の医療機関の受診時間に合わせて営業するので、夜勤や休日出勤がほとんどないため、平日の決まったスケジュールで働きたいという薬剤師に人気の職場です。通勤時間に関しては、地域密着型の会社や、個人経営の調剤薬局であれば異動や転勤によって、通勤時間が長くなってしまうという心配は、ほぼないでしょう。

ただし、大手チェーンの調剤薬局の場合は、遠くの店舗への異動や転勤を命じられることもあるので、注意が必要です。

3-3. 病院

病院薬剤師の通勤時間は、病院や医療法人の規模によってもさまざまです。地域密着型の病院であれば、異動があったとしても地元地域内に限られるので、通勤時間が大きく変わることはないと考えてよいでしょう。

しかし、広い地域に病院を展開している医療法人や大学病院などの場合は、隣の町やへき地などに配属されることがあるので注意が必要です。また、病院自体に入院施設や救急医療体制を備えている場合は、薬剤師にも夜勤シフトや当直などもあるため、事前にチェックしておくことをおすすめします。

4. 通勤時間の許容範囲はどれくらいが理想?

職場を選ぶにあたって、通勤時間は短いに越したことはありません。とはいっても、必ずしも自宅近くによい職場があるわけではなく、多くの方は公共交通機関や自動車などを使って通勤することになります。

では、通勤時間はどれぐらいまで許容できるのでしょうか?毎日通っても苦痛にならない通勤時間について考えてみましょう。

4-1. 1時間半以上は避けるべき?

通勤時間の許容時間を考えるにあたって、参考にしたいのが「日本人の平均的な通勤時間」です。平日仕事をしている人は、どれぐらいの時間をかけて通勤しているのでしょうか?

総務省統計局 が5年ごとに調査している「社会生活基本調査」の最新の平成28年のデータによると、平日に通勤・通学している人の「通学・通勤時間の平日1日あたりの平均(全国)」をみると、1時間19分と報告されています。これは、往復にかかる時間ですから、片道にするとおよそ40分程度ということになります。

ただし、地域ごとの通勤時間をランキングでみると、特に都市部では、1位神奈川県:1時間45分、2位千葉県:1時間42分、3位埼玉県:1時間36分になっており、通勤・通学にかかる時間が長い傾向がみてとれます。

このように、都市部など、どうしても通勤時間が長くかかってしまいがちな地域を除いては、日本人労働者の平均である1時間19分が、通勤時間の許容範囲のボーダーラインと考えてよいでしょう。それよりも長い、1時間半分以上通勤にかかってしまう場合は、平均を上回ることになり、通い続けるにはかなりの覚悟が必要です。

参照元:総務省 統計局/平成28年社会生活基本調査― 生活時間に関する結果 ―

5. 通勤時間が短いメリット

5. 通勤時間が短いメリット
通勤時間が短いと、具体的にどのようなメリットが得られるでしょうか。
通勤時間短縮による4つの大きなメリットをみていきましょう。

5-1. 睡眠時間がとれる

通勤にかかる時間が短ければ短いほど、自宅での睡眠時間がとれるようになります。通勤時間を見越して早起きをする必要がなくなり、出勤ギリギリまで寝て、帰りも早く帰宅して休むことができるので、睡眠不足を避けることができます。

5-2. 時間の余裕ができる

たとえ片道10分の短縮であっても、往復で20分、それを平日5日間続けるとなると、1週間当たり1時間40分の時間をセーブできることになります。このように、時間の余裕が生まれることで、資格を取る勉強をしたり、語学・読書などの時間に充てたりするなど、自己成長のために時間を費やすことができるのです。

5-3. 長時間通勤によるストレスの軽減

毎朝毎晩、長時間の通勤を続けることは、心身ともに大きなストレスになってしまいます。特に、朝夕の通勤ラッシュや、交通渋滞のなかで通勤しなくてはならない方にとっては、通勤時間を短縮することによって、その負担が少なくなり、心身を良い状態に保てるようになります。

5-4. モチベーションアップにつながる

ただでさえ、体力と集中力を要求される薬剤師の仕事。つらい通勤時間が短縮できれば、通勤に伴うストレスや体力の消耗も軽減できるので、仕事へのモチベーションが上昇し、仕事により集中できるようになります。

6. 通勤時間が長いデメリット

勤務先がどうしても遠方になってしまう場合は、長い時間をかけて通勤することを覚悟しなくてはなりません。通勤時間が長いことによるデメリットについても知っておきましょう。

6-1. プライベートの時間が減る

通勤にかかる時間に対してお給料は出ないものの、実質的には拘束時間のようなものです。出勤前・退勤後の自分の時間を削って、通勤に充てるわけですから、通勤時間が長ければ長いほど、その分、家族・友人と過ごす時間や、買い物・家事などのプライベートな活動に充てる時間が減ってしまいます

6-2. ストレスがたまる

通勤時間が長いと、朝まだ眠たいうちに出勤し、仕事を終えて帰宅したころには夜になってしまい、ほとんど職場と自宅を往復するだけの生活になりがちです。体力的にきついだけでなく、職場での対人ストレスにさらされやすい薬剤師にとっては、人ごみのなか、長時間通勤しなくてはならないとなると、さらにストレスを溜め込みやすくなります

6-3. 睡眠不足に陥りやすい

勤務先が遠く、通勤に時間がかかるとなると、どうしても早めに起きて出勤しなくてはなりません。毎朝寝足りないのに無理に電車に乗って、満員電車で立ったまま居眠りしてしまうということも…。また、退勤後、自宅に着くのにも時間がかかり、その分寝るのも遅くなってしまいがちです。「寝足りない」という状態を毎日積み重なることで、深刻な睡眠不足に陥ることもあります

7. まとめ

薬剤師が転職先を探すとき、どうしても給与面や待遇に惹かれて求人を選びがちです。しかし、いくら好条件でも通勤時間がかかりすぎると、健康面や仕事へのモチベーション、ライフワークバランスなどに影響がでてきます。

転職先を探す場合は、毎日の通勤時間もしっかり比較し、心身ともにベストな状態で薬剤師としての仕事続けられる職場を見つけることが大切です。

この記事の著者

医学博士、医学研究者

榎本 蒼子

最終学歴は京都府立医科大学大学院医学研究科博士課程卒業。2011~2015年 京都府立医科大学にて助教を勤め、医学研究および医学教育に従事。

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