薬剤師の学費は元が取れる?学費分以上の収入を得るまでの年数を紹介

薬学部への進学を考えるとき「6年間でこれだけの費用をかけて、将来ちゃんと元が取れるのだろうか」と、金銭的な不安を感じることもあるでしょう。特に私立大学の場合は合計1,000万円を超える学費が必要になる場合もあり、その投資に見合うリターンがあるのか、具体的な数字で確かめたいと思うのは自然なことです。

本記事では、薬剤師として働いた場合に得られる生涯年収の目安や、学費回収にかかる年数について、具体的なデータをもとに解説します。さらに、薬剤師として収入アップを実現するための方法も紹介します。

1.薬剤師の学費は元が取れる?

結論から言うと、薬剤師として継続的に働けば、薬学部の学費を上回る収入を得ることは十分に可能です。

厚生労働省の資料「薬剤師の偏在への対応策」によると、65歳まで常勤で勤務した場合の累積年収の中央値は、病院薬剤師で2億3,280万円、薬局薬剤師で2億2,768万円とされています。

この金額は、私立大学薬学部の学費が1,000万円以上かかる場合があることを考慮しても、十分なリターンが見込める水準です。もちろん、実際の年収は勤務先や勤務形態、キャリアの選択によって異なりますが、将来の経済的な見通しを立てる上でひとつの目安となるでしょう。

2.薬学部の学費はいくら?

薬学部の学費は、文系の学部などと比較して高くなる傾向があります。主な理由は、薬剤師免許の取得には原則として6年制の課程を修了する必要があるためです。一般的な4年制の大学よりも2年間長く在学することになり、その分、学費も多くかかります。

6年制薬学部の学費は、国公立大学と私立大学で異なります。国公立大学では、6年間の学費はおよそ350万円から400万円前後になります。

一方で私立大学の場合は、大学によって差はありますが、入学金や授業料に加えて、施設設備費や実験実習費などがかかる場合もあり、6年間の合計で約900万円から1,400万円が相場です。

また、学費とは別に、教科書代や各種保険料、後援会費なども必要になることがあります。自宅外から通学する場合には、家賃や食費といった一人暮らしの生活費も考慮しなくてはなりません。

3.薬剤師の平均年収はいくら?

厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、薬剤師の平均年収は599万3,200円でした。この平均年収は、「きまって支給する現金給与額」の12カ月分と、「年間賞与その他特別給与額」を合算して算出した金額です。年収とは、所得税や社会保険料などが控除される前の年間総支給額を指します。

また、新卒薬剤師の初任給の目安となるデータも出ています。同調査によると、新卒薬剤師にあたる「経験年数0年目の所定内給与額」は32万1,500円でした。時間外手当(残業代)などを含まない金額ですが、賞与を考慮せずに12カ月分で計算すると、年収は385万8,000円となります。

もちろん、これらの数字はあくまで全体の平均値です。実際の年収は、性別や年齢、業種、勤務先の地域によって差があります。また、正社員かパート・アルバイトかといった勤務形態によっても給与水準は異なります。

参考:賃金構造基本統計調査 令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)|政府統計の総合窓口
参考:賃金構造基本統計調査 令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 10 職種(小分類)、年齢階級、経験年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)|政府統計の総合窓口

4.薬学部の学費分以上の収入を得るには何年かかる?

前述した薬学部の学費をもとに、薬剤師として何年働けばその分を上回る収入を得られるのか、簡単なシミュレーションをしてみましょう。

手取り年収から生活費などを差し引き、年間100万円を学費の回収に充てられると想定した場合、国公立大学の学費総額である約350万円を回収するには、およそ3年半かかります。一方、私立大学の学費を約1,200万円と想定した場合、同様の条件でその金額に到達するには12年ほどかかる計算です。

ただし、これらはあくまで目安であり、実際には昇給や支出などによって期間は前後するでしょう。

5.薬学部の奨学金を返済するには何年かかる?

厚生労働省の「薬剤師確保のための調査・検討事業 報告書(令和3年度厚生労働省医薬・生活衛生局総務課委託事業)」では、病院および薬局に勤務する薬剤師を対象に、奨学金などの返済状況に関する調査が行われています。

この調査によると、返済にかかる期間は病院薬剤師で平均15.6年、薬局薬剤師で15.0年という結果が示されました。薬剤師として働く場合、奨学金の返済には平均して15年程度を要するケースが多いことがうかがえます。

奨学金等の返済金額
(総額)
奨学金等の返済金額
(年返済額)
奨学金等の返済期間
平均値 中央値 平均値 中央値 平均値 中央値
病院薬剤師 約458万円 約360万円 約54万円 約24万円 15.6年 17年
薬局薬剤師 約446万円 約360万円 約59万円 約24万円 15.0年 15年

参考:第12回薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会 参考資料3 薬剤師確保のための調査・検討事業 報告書(令和3年度厚生労働省医薬・生活衛生局総務課委託事業)|厚生労働省

6.薬剤師が収入アップを実現するには?

薬剤師として学費以上の収入を早く得るには、収入アップにつながる行動を意識することが重要です。ここからは、薬剤師が収入を上げる方法を具体的に紹介します。

6-1.認定・専門薬剤師の資格を取得する

専門性を客観的に証明する資格の取得は、薬剤師としての市場価値を高め、収入アップにつなげられる手段のひとつです。

認定薬剤師は、特定の分野において一定水準以上の知識やスキル、経験を持っていることを証明する資格です。一方、専門薬剤師は、特定の専門領域において高度な知識と実践的なスキルを持ち、他の医療従事者と連携しながら質の高い医療を提供できること、さらには教育や研究活動にも貢献できることが求められる、より上位の資格です。

資格を取得することで、職場によっては資格手当が支給され、年収アップにつながることがあります。手当がない職場であっても、専門性の高さを評価されて任される業務の範囲が広がることで、職場への貢献度が高まります。その結果、賞与などの評価に反映され、収入アップにつながることもあるでしょう。

6-2.キャリアアップを目指す

管理薬剤師やエリアマネージャーといった上位の役職に就くことで、収入が上がる可能性があります。

例えば、薬局の責任者である管理薬剤師は、基本給とは別に役職手当が支給される場合があるため、一般の薬剤師よりも平均年収が高い傾向にあります。

さらに、複数店舗を統括するエリアマネージャーのようなポジションに進めば、広い視野でのマネジメント経験を積むことができ、自身の価値をさらに高めることにもつながります。

6-3.スキルを生かして副業を始める

近年、政府は働き方改革の一環で副業を後押ししており、2018年には厚生労働省から「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が示されるなど、社会全体で副業を始めやすい環境が整備されつつあります。

こうした潮流の中、薬剤師としての専門知識やスキルを生かして、副業を始めるのもおすすめです。副業は収入が増えるだけでなく、本業とは異なる環境で働くことで新しいスキルが身につき、視野が広がるというメリットもあります。

例えば、医療や健康に関する情報を分かりやすく解説する「メディカルライター」や、海外の医学論文などを翻訳する「医療翻訳」といった仕事は、薬剤師として培った知識を役立てられる副業です。また、動画やSNSで情報発信を行い、自身の発信力が高まれば、新たなキャリアを築くきっかけになるかもしれません。

ただし、公務員薬剤師は法律で副業が禁止されています。また、管理薬剤師も薬機法により、原則として他の薬局で薬事業務を行うことはできません。会社によっては副業を禁止している場合もあるため、副業を検討する際には、勤務先の就業規則を確認しておきましょう。

参考:副業・兼業|厚生労働省

6-4.給料の水準が高い職場に転職する

薬剤師として数年間の実務経験を積んだ後は、より給与水準の高い職場への転職を視野に入れることで、収入アップを実現しやすくなります。

例えば、薬剤師が不足している地方の薬局などでは、都市部よりも高い給与が提示されることも少なくありません。また、調剤薬局や病院で経験を積んだ後に、年収水準が高いとされる製薬会社のMR(医薬情報担当者)などに挑戦するキャリアパスもあります。

ただし、好条件に見える求人の中には「交通の便が悪い」「勤務時間が長い」「休日が少ない」といった、労働環境に課題を抱えているケースもあるため注意が必要です。給与の額面だけで判断せず、なぜその条件が提示されているのかを冷静に見極める視点が求められます。

6-5.薬局を開業して独立する

薬剤師として経験を積んだ先に、自ら薬局を開業して独立するという選択肢もあります。成功すれば、勤務薬剤師よりも高収入を得られる可能性があり、得られた利益がそのまま自身の収入につながる点は大きな魅力です。

また、薬局経営を通じて、薬の知識だけでなく、経営や労務、法律、保険制度など幅広い分野の知識とスキルが身に付きます。医師や他職種、行政担当者などとの関わりも増え、経営者としての新たな人脈が広がることも財産となるでしょう。

一方で、独立には当然リスクも伴います。開業すればすぐに安定した収益が得られるとは限らず、万が一トラブルが発生した場合には、自分で責任を負うことになります。そのため、独立を目指すなら、リスクや責任も含めた総合的な判断が必要です。

7.薬剤師として継続的に働けば、元を取ることは可能

薬剤師として継続的に働くことで、薬学部の学費を上回る収入を得ることは可能です。病院薬剤師や薬局薬剤師の累積年収の中央値は2億円を超えており、私立大学で1,000万円以上の学費がかかる場合でも、それ以上のリターンが見込めます。

学費分を回収するまでの期間は、国公立大学なら3年半ほど、私立大学で12年ほどがひとつの目安となるでしょう。奨学金の返済には15年ほどかかるケースもありますが、資格の取得やキャリアアップ、副業や転職などによって収入を高めることも可能です。自身に合った薬剤師としての働き方を検討してみましょう。

この記事の著者

薬剤師

篠原 奨規

2児の父。調剤併設型ドラッグストアで勤務する現役薬剤師。薬剤師歴8年目。面薬局での勤務が長く、幅広い診療科の経験を積む。新入社員のOJT、若手社員への研修、社内薬剤師向けの勉強会にも携わる。音楽鑑賞が趣味で、月1でライブハウスに足を運ぶ。

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