薬剤師の仕事で後悔した理由とは?後悔のない転職をするためのポイントや注意点
今の職場に満足しておらず、将来についてあれこれと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。その状況を打開する方法の一つが転職です。ただし、次の職場が必ずしも希望どおりの環境だとは限りません。転職はチャンスである一方で、リスクもはらんでいるのです。
転職後に「こんなはずじゃなかった」「これなら前の職場の方が良かった」と後悔しても、元の職場に戻るのは難しいもの。だからこそ、「後悔のない転職を実現するためには、何が必要なのか」について、あらかじめ考える必要があります。
ここでは、薬剤師が辞めたい・後悔したと感じる理由や、転職で失敗する原因、後悔のない転職を実現するためのコツなどについて解説します。
目次
1.薬剤師が辞めたい・後悔したと感じる理由
一大決心をして就職に成功しても、すぐに辞めたいと感じてしまうのは残念なこと。そういった失敗がないように、あらかじめ後悔するポイントを把握しておきたいものです。
ここでは、薬剤師が辞めたい・後悔したと感じる理由には、どのようなものがあるかを見ていきましょう。
1-1.人間関係のトラブル
どんな仕事においても、人間関係のトラブルはつきものです。薬剤師の仕事環境は閉鎖的な場合が多いため、合わないと感じる人がいると、逃げ場がなく苦しくなってしまうでしょう。
人間関係は入職してみないとわからないことも多いですが、従業員の平均年齢や人数はどうか、他店舗や他施設との交流(研修会・勉強会を含む)はあるか、社員の相談窓口はあるかなどの情報を確認し、自分に合っているかを考えておく必要があります。
1-2.業務ミスが多い
薬剤師の業務ミスは、患者さんの健康に直結する大きな問題です。業務ミスは個人の力量によるところが大きいですが、なかには体制づくりに問題があって、業務ミスが発生しやすくなるケースもあります。
たとえば薬剤師が一人体制の場合は、ダブルチェックができないため、ミスに気づかないまま薬を渡してしまう可能性が高まります。
逆に、ピッキング監査システムを導入している職場や、調剤室が常に整理整頓されている職場は、ミスを防ぐための工夫・配慮がなされているといえるでしょう。
自分の身を守るためにも、ミスが起こりにくい環境づくりをしている職場を選ぶことが大切です。
1-3.最新情報のアップデートや勉強がつらい
医療現場は常に進化しています。次々に新しい薬が上市され、診療報酬の仕組みも定期的に改定されるため、薬剤師は情報や知識を随時アップデートしなければなりません。業務時間外に、研修会への参加を求められることもあるでしょう。
しかし、社会人になってから、仕事と勉強を両立させるには大きな苦労がともないます。事実、情報のアップデートの大変さや勉強時間の多さから、こんなはずではなかったと後悔する薬剤師も少なくありません。
1-4.イメージしていた仕事と違った
期待に胸を膨らませて入職したのに、実際に働いてみたらイメージと違った……。そうした状況では、誰しもモチベーションが下がってしまいます。
とはいえ、募集要項の仕事内容にはない雑務が多かったり、自分が力を入れてやりたい業務が実は稼働していなかったりということは、十分にあり得る話です。可能であれば職場見学や転職エージェントを通じて質問をするなどして、事前に職場の実情を把握しておくと良いでしょう。
多くの薬剤師が仕事を辞めたいと思った理由を知れば、ミスマッチを防ぐための対策が立てやすいので、ぜひこちらの記事も参考にしてください。
1-5.労働時間が長い・体力的につらい
労働時間が長く、体力的につらいことも、薬剤師を辞めたくなる理由の一つです。
労働時間が長くなる背景としては、薬局の増加にともない薬剤師の数が不足していることが挙げられます。たとえば、第1類医薬品や要指導医薬品などを取り扱っている薬局は、薬剤師を常駐させる必要があり、店舗の営業形態によっては労働時間が長くなってしまいます。
また、薬剤師は立ちっぱなしで仕事をすることが多い仕事です。一人薬剤師の場合は休憩も取りにいでしょう。
上記のように体力的につらくなる環境では、薬剤師を辞めたいと感じてしまう方が多く見られます。
1-6.プライベートとの両立が難しい
薬剤師の仕事は調剤や服薬指導のほか、在庫管理、事務作業など多岐にわたり、夜間や土日祝日の対応が必要な場合があります。また、薬剤師は配置基準の制約などから、長時間労働になりがちで、プライベートとの両立が難しい仕事といえます。
仕事に追われワークライフバランスを取りにくいために、薬剤師を辞めたいと思う方はけっして少なくありません。
1-7.給与と業務内容が見合っていないと感じる
薬剤師として働くには6年制の薬学部を卒業し、薬剤師国家試験に合格しなければいけません。そのため、給与は比較的高めで、政府統計(2023年調査)によると、薬剤師全体の平均年収は577.9万円となっています。
しかし、業務量の多さやミスが許されない環境などを考えると、薬剤師の仕事には苦労が絶えません。そのため、給与と業務内容が見合ってないと感じ、辞めたくなる薬剤師も多く見られます。
1-8.教育環境が整っていない
薬剤師は常に新しい情報を得て、継続的に知識やスキルを磨いていく必要があるため、研修体制やフォロー体制が整っているかどうかはとても大事です。
研修体制や教育環境が整っていない職場の場合は、スキルアップが難しく、仕事の幅も広がりにくいでしょう。知識やスキルを磨けないまま仕事に忙殺されると、モチベーションの低下にもつながってしまいます。
2.転職をする前にもう一度確認してみよう
転職は現在の職場に不満がある場合の有効な打開策です。ただし、転職にはリスクがともなうことを忘れてはいけません。漠然とした理由で転職活動を進めると、「転職先が現在の職場以上に合わなかった」ということになりかねないため、気をつけましょう。
ここでは、転職で後悔しないために、事前に確認しておくべきことを紹介します。
2-1.上司や先輩に相談してみる
転職を検討する方の多くは、今の職場に何かしらの不満を感じているものです。
不満の内容は勤務時間や業務内容、待遇など人それぞれですが、前述したように転職したからといって、理想の働き方がかなうとは限りません。転職で失敗しないためにも、まずは今の職場での悩みを上司や先輩に相談し、不満を解消する手立てがないかを探ってみましょう。
無理な希望だと諦めていたことでも、実際に相談してみると意外な解決策が出てくるかもしれません。場合によっては、会社側が「退職されるぐらいなら、体制を変えて課題に対処しよう」と考える可能性もあります。
相談することで、転職という方法を取らなくても自分の希望がかなうかもしれない。そう考えれば、実践してみる価値はあるでしょう。
2-2.同じ悩みを持つ人の話を聞いてみる
転職の悩みを持つ人は意外に多いものです。また、転職を経験した人や、転職に関して同じ悩みを持つ人の話は大変参考になります。転職を考えた時は、学生時代の友人や同僚と連絡を取って、悩みを打ち明けてみてはいかがでしょうか。きっと、同じような悩みを抱えている人がいるはずです。
悩みを共有できなかったとしても、友人や同僚に意見を聞いてみることで、思いがけない解決策が見つかるかもしれません。
2-3.転職して改善できる理由なのかどうか
通勤時間の短縮や給与アップなど、目に見えて改善されたことがわかる理由は、転職して良かったと実感しやすいものです。
しかし、やりがいや人間関係はその人の感じ方次第であり、職場を変えることで改善できるかどうかは不明瞭です。もしかすると、前の職場の方が良かったと感じるかもしれません。
だからこそ、「自分は転職に何を求めているのか」「それは転職によって改善できるものなのか」を明確にしておくことが大切です。
2-4.将来どうなっていたいか
やみくもに転職を繰り返して、最終的な生涯年収が低くなったり、希望の仕事に就けなかったりしたのでは、あまり意味がありません。だからこそ、転職の前にはきちんとキャリアプランを立てることが重要です。
将来どのような自分になりたいのか、そのためにはどういったキャリアが必要なのか、転職はそのキャリアを積むために必要なのかなどについて、目標から逆算して考えてみましょう。
キャリアプランの作成について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
3.薬剤師の転職で失敗しやすい原因は?
より良い職場で働きたくて転職したのに、実際に働きはじめたらイメージと違っていてがっかり。転職活動においては、こうした事例も珍しくありません。なぜ、転職に失敗してしまうのかを知るために、ありがちな4つの原因について見ていきましょう。
3-1.理想と現実で乖離があった
転職を後悔した・失敗したと感じてしまう原因の一つに、自分の理想と転職先の実情が乖離していることが挙げられます。
多くの方が今の職場より良い環境を求めて転職しますが、「良い環境」の定義は、給与であったり、人間関係であったり、自分に合った業務内容であったりと人それぞれです。一方で、「前職ではかなわなかったことを実現させたい」という思いは多くの人に共通しています。
しかし、実際働いてみると、思い描いていたイメージと現実とが乖離しているケースは少なくありません。そのギャップこそが、転職を後悔する原因です。
また、転職先に求めていたことがかなっても、別の部分で合わないと感じることもあります。たとえば、年収アップを目的に転職活動をし、前職より年収が上がったにもかかわらず、業務量が大幅に増えて身体を壊してしまったなどのケースです。
仕事の満足度は一つの指標で決まるものではなく、さまざまな要素のバランスの上に成り立っているということを忘れてはいけません。
3-2.焦って転職先を決めてしまった
「早く転職しなくては!」と焦ってしまい、働き方や条件を十分に検討しないまま転職した結果、理想がかなわなかったケースは少なくありません。
たとえば、高収入を優先して選んだ職場なのに、実際には長時間労働が常態化していたり、キャリアアップの機会が少なかったりで、期待はずれだったということもあり得ます。
選んだ職場が自分の価値観や目標と合わないと、再び転職を検討することにもなりかねないので注意しましょう
3-3.自己評価が正しくできていなかった
薬剤師の転職で失敗しやすい原因の一つに、自己評価が正しくできていないことが挙げられます。
自己分析を怠って自分の適性や能力、価値観、目標などを正確に把握しないまま転職すると、転職先とのミスマッチが起こりやすくなります。
転職先が専門性を生かせない業務形態だったり、希望とは違う労働環境だったりすると、フラストレーションがたまりやすくなるので、事前の自己評価はしっかりと行いましょう。
3-4.よく調べずに待遇だけ見て決めてしまった
「収入が良い」「福利厚生が充実している」など、待遇だけで転職を決めてしまうのも、失敗につながりやすいパターンです。
事実、「給料は前職より高くなったけれど、想像以上に残業が多く、プライベートの時間がほとんどなくなってしまった」「転職したドラッグストアではOTC製品の研修がなかった。そのため自分で勉強しなければならず、通常業務と重なって疲弊している」といった声を聞くことも珍しくありません。
やりがいを求めて転職したのに、モチベーションが下がる一方では本末転倒です。転職する際は、応募先の実態を把握してから行動するようにつとめましょう。
転職の失敗事例や、失敗しないためのポイントを知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
4.薬剤師の転職で後悔しないためのコツやポイント
ここまでは、転職を後悔・失敗したと感じる原因を解説しました。ここからは、薬剤師の転職で後悔しないためのコツやポイントを説明していきます。
4-1.希望条件の優先順位を決める
給与も人間関係も良く、長期の休みがとれて、自分のやりたい業務ができる。そんな転職先が見つかれば、何もいうことはありませんが、そんなふうにすべての希望がかなう職場を探すのは難しいものです。
後悔のない転職を実現するためにも、転職先に求める条件には、必ず優先順位をつけましょう。優先順位をつける際は、「ここだけは譲れない」というポイントと、「ここは妥協してもいい」というポイントにわけて考えることが大切です。自分で熟考して決めた「譲れないポイント」を転職先選びの条件にすることで、転職後のミスマッチが起こりにくくなるでしょう。
4-2.キャリア設計を考えておく
転職においては、将来のキャリア設計を考えておくことが重要です。たとえば、将来的に薬局を経営したいという夢があり、そのコンセプトが「在宅医療に対応できる薬局」だったとしましょう。
在宅医療に対応するには、無菌調製やフィジカルアセスメントの経験があると有利です。そして、それを学べるのは病院薬剤師です。加えて、薬局での在宅医療の実務経験も必要になります。
そこで病院薬剤師として5年、薬局で10年程経験を積み、その後に開局するプランを立てたとします。すると、まず働くべき病院は注射を多く扱う急性期病院で、その後で在宅医療を扱う薬局に転職するという道筋が見えてくるのではないでしょうか。
このように、キャリア設計のゴールを決めておけば、「必要な転職か」「不要な転職か」を明確にすることができます。
参照元:一般社団法人 松阪地区薬剤師会/無菌調製について
厚生労働省/在宅医療における薬剤師の役割と課題
厚生労働省/在宅医療の体制構築について
4-3.求められるスキルや福利厚生について情報収集を行っておく
一口に薬剤師といっても、ドラッグストアや調剤薬局、病院、学校など職場によって、働き方や求められるスキルは異なります。「自分がどの職場でどのような働き方をしたいのか」「自分が希望する職場ではどのような内容の仕事をし、どのようなスキルが求められるのか」を事前に把握しておきましょう。
たとえば、ドラッグストアであれば、OTC医薬品の知識や販売・接客スキルが求められ、調剤薬局であれば、医療用医薬品や保険調剤業務の知識が必要とされます。病院で活躍するためには、認定薬剤師や専門薬剤師を目指してスキルアップしていく必要があるでしょう。
もう一つ覚えておきたいのは、いくらやりがいのある仕事に就けても、職場環境が悪ければ長く働き続けるのが困難になるということです。
どのような福利厚生の制度があるのか、サポート体制はどの程度整っているのかなどについても、きちんと確認しましょう。たとえば子育て世代であれば、男性の育児休暇の取得状況も福利厚生の重要なチェック項目となります。
4-4.職場見学をして雰囲気を確認する
職場見学を実施しているところであれば、積極的に訪問し、職場の雰囲気や環境を確認しておきましょう。見学することで、求人情報だけでは把握できなかった実際の勤務状況を知ることができます。
1日にどれくらいの処方箋を取り扱っているか、どのようなフローで業務を行っているか、スタッフ同士の連携はできているかなども、あわせて確認しましょう。
実際にお客さんとして薬局を訪れ、客観的に職場の様子を観察するのも効果的です。
4-5.面接の時に自分の希望と合っているか確認する
薬剤師の転職で後悔しないためには、面接の時に「働き方が自分の希望するものと合っているか」を確認することが大切です。入職してから自分の希望と職場の方針や規則が一致しないことに気づき、「こんなはずではなかった」と後悔するのは、主に面接時の確認不足が原因です。事前のチェックを怠らないようにしてください。
たとえば、研修制度について知りたいのなら、「研修はどの程度の頻度で行われるのか」「研修の内容や種類はどのようなものがあるのか」などを具体的に質問しましょう。具体的に聞くことで、自分が求めるスキルアップやキャリア形成の機会が得られるかどうかがわかります。
休みについても、「有給休暇の取得率はどれくらいか」「育児休暇や介護休暇を取得した人はいるか」「育児休暇、介護休暇を取得した後の復帰率はどのくらいか」など、気になることを具体的に確認すると良いでしょう。仕事とプライベートを両立させたい場合、勤務形態や休暇について事前にチェックすることで、理想の働き方に近づけるはずです。
ただし、休みについて聞く時は、タイミングや聞き方に注意が必要です。面接開始直後に休暇のことを聞いてしまうと、「本当にこの会社で働きたいと思っているのだろうか」とネガティブな印象を持たれる可能性があります。一次、二次と段階的に面接がある場合は、最終面接で確認するのが良いでしょう。
その際、直接的に聞くのではなく、業務内容についての質問をメインにし、そのなかで休暇の取り方について触れるとスムーズに確認できます。
4-6.転職エージェントに相談してみる
転職で後悔しないためには、転職エージェントに相談するのも有効です。
転職エージェントでは、キャリアアドバイザーとの面談を通して、自身のキャリア・スキルを明らかにし、それが転職市場でどう評価されるかを知ることができます。そのため、より現実に即したキャリアプランを描けるでしょう。
また、転職エージェントのキャリアアドバイザーは、さまざまな企業・施設とのパイプを持っているため、リアルな職場の様子や入社後のキャリアパスなど、自分一人では知り得なかった情報を入手できます。
信頼できる転職エージェントに協力してもらい、後悔のない転職を実現させましょう。
5.薬剤師の転職で後悔しないためには転職エージェントを活用しよう
転職エージェントは、多くの求人に関する情報だけでなく、多くの転職者との面談を通して、後悔しない転職をサポートするノウハウを持っています。
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6.まとめ
薬剤師の転職において、失敗・後悔をしてしまう原因や、後悔しない転職のコツなどについて解説してきました。
失敗・後悔をしないためにも、転職活動をはじめる前に「この転職に求めることは何なのか」「今の職場では実現できないことなのか」を再確認し、具体的な転職プランを練っていきましょう。
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