登録販売者の仕事がなくなる?需要と将来性について解説

登録販売者の仕事がなくなる?需要と将来性について解説

2009年、当時の薬事法が改正され、いわゆる市販薬(一般用医薬品)の販売方法が変わりました。

一般用医薬品は人体に対するリスクの度合いにより、第一類医薬品、第二類医薬品、第三類医薬品に区分されます。
第一類は改正以前と同様、薬剤師による販売・授与が義務付けられ、第二類と第三類については薬剤師以外に販売・授与が可能な資格として「登録販売者」が新たに創設されました。

登録販売者は、ドラッグストアや薬局を中心に薬剤師不足を補う人材として、また一般用医薬品の販売に参入しようとするコンビニやスーパーからも必要とされる注目の職業です。

2017年からは一部の一般用医薬品が医療費控除の対象となり、市販薬の積極的な利用が推進されている昨今の状況を踏まえ、登録販売者の現状と将来性について解説します。

<訂正:2023年10月>
本記事において、登録販売者を国家資格とする表記がございました。お詫びして訂正いたします。



1.登録販売者の現状

登録販売者は、一般用医薬品をリスクに応じて第一類から第三類に分類し、第二類・第三類医薬品に限って販売できる専門家として2009年に誕生しました。

2006年に大学の薬学部が4年制から6年制へと延長され、薬剤師には調剤や医薬品販売以外の役割も求められるようになるなか、薬剤師の負担を軽減し、新たな雇用を生み出すために創設されたのが登録販売者の資格です。

2008年に行われた第1回登録販売者試験は全国で91,024人が受験し、58,715人が合格、合格率は64.5%でした。

当時は受験資格に実務経験が必要だったため、受験者の大半はドラッグストアや調剤薬局の従業員でした。翌2009年の第2回目から2014年までは毎年2~3万人が受験し、1万人から2万人弱の合格者を輩出しています。

ところが2015年に受験資格の改正があり、実務経験が不要になると状況は一変、受験者は約5万人に急増し、合格者も約2万3千人にのぼる結果となりました。

その後受験者数は毎年6万人前後となっており、合格率は40%台で推移しています。

一方、登録販売者の主な職場となるドラッグストア業界は、近年市場規模が拡大し続けており、ここ数年はその勢いがとどまることはなさそうです。

また、これまでは実務未経験の登録販売者試験合格者が正規の登録販売者として働くためには、「2年以上」の実務経験が必要とされてきましたが、2023年に登録販売者制度が改正され、追加的な研修を修了することなどを条件に「1年以上」の実務経験に要件が緩和されました。これにより、今後は雇用の機会がより増えるとみられます。
登録販売者の活躍の場はますます広がっていくことでしょう。

参照元:厚生労働省/これまでの登録販売者試験実施状況等について

2. 登録販売者の需要について

2009年に創設されてから、主にドラッグストアや調剤薬局で薬剤師をサポートする専門家として、一般用医薬品の販売に従事してきた登録販売者ですが、少子高齢化の進行により新たな役割が求められつつあります。
ここでは、これからの登録販売者に求められる役割と需要について解説して参ります。

2-1.地域包括ケアシステム

厚生労働省が推進する「地域包括ケアシステム」とは、高齢者が自宅で最期を迎えられるように、地域が連携してバックアップを図るシステムのことです。

団塊の世代が後期高齢者となる2025年には75歳以上が人口の25%を占めると予想されており、社会保障費だけでは少子高齢社会を支え続けることが困難とされています。

そのため、国は介護や医療の中心を施設・病院から自宅へと移すことを前提に、自治体を中心としたケアシステムの構築を急いでいます。

地域包括ケアシステムでは、薬局・薬剤師は地域の「かかりつけ」として、健康や医薬品についての最初の相談窓口となることが想定されます。

薬剤師はこれまでの調剤中心の業務からアドバイザーとしての対人業務が増えるため、一般用医薬品の販売については登録販売者が責務を担う場面が多くなります。

地域包括ケアシステムは介護、医療、予防、生活支援、住まいと住まう方、の5つを構成要素とし、要介護の高齢者をバックアップするだけでなく、要介護にならないための予防にも注力します。

介護や医療をあまり利用しない高齢者が、代わりに一般用医薬品を購入する機会が増えることで、登録販売者の需要はさらに高まっていくるでしょう。

2-2.セルフメディケーション

2017年に導入されたセルフメディケーション税制のセルフメディケーションとは、「自分で病気を治す」という意味であり、厚生労働省では文字通り「一般用医薬品を使用して疾病が軽度のうちに治癒させる」ことを想定しています。

セルフメディケーション税制は、対象となる一般用医薬品の購入費に応じて課税所得が控除される仕組みで、定期健康診断の受診とセットになっており、税制上の優遇措置と健康診断によって健康意識を高め、医療費の低減につなげようとする取り組みです。

セルフメディケーションを心がけ、ドラッグストア等で市販薬を購入するとき、自分の症状に合った医薬品はどれなのか、セルフメディケーション税制の対象となる商品はどれなのか、一般の消費者が識別するのは容易ではありません。

そんなとき、的確な情報を提供してくれる「頼れるアドバイザー」として、より多くの登録販売者が求められています。

2-3.OTC医薬品の販売

医薬品には、医師の処方せんが必要な医療用医薬品と、使用する人が自分で選び購入するOTC医薬品があります。

OTC医薬品は「要指導医薬品」と「一般用医薬品」の2つに分けられ、一般用医薬品は第1類~第3類に分類されます。

これらの医薬品のうち、登録販売者が販売できるのは第2類と第3類のみですが、この2種類だけでOTC医薬品の約9割を占めています。
OTCとはOver The Counterの略で薬局の「カウンター越しに買える」市販薬を意味しています。

OTC医薬品には、これまでに医療用医薬品として使用歴のない成分がOTC医薬品として発売される「ダイレクトOTC」と、医療用医薬品からOTC医薬品へと使用領域が拡大された「スイッチOTC」と呼ばれる医薬品が含まれます。

ダイレクトOTCは原則として薬剤師が販売しますが、スイッチOTCのなかには「指定第2類医薬品」として登録販売者が販売できる商品もあります。

政府によるセルフメディケーションの推進によってスイッチOTCは増えており、この点からも登録販売者の需要は増えていくと考えられます。

3.登録販売者の将来性

前項にあるとおり少子高齢社会が加速するなか、増加する社会保障費に歯止めをかけるべく、政府は地域包括ケアシステムやセルフメディケーションを強力に推進しています。

調剤を行うドラッグストアや薬局には、地域の「かかりつけ薬局」として医療機関や高齢者施設との密接な連携が求められており、薬剤師は調剤中心の業務から対人業務や医療機関、施設との連携に業務の主軸を移さざるを得ない状況です。

3-1.将来的に登録販売者に期待されるもの

そんな中、一般用医薬品の9割以上を占める第2類、第3類医薬品を専門に取り扱う登録販売者は、購入者に対する最初の相談者として下記の業務を担っています。

  • 健康相談を受けアドバイスを行う
  • 正しい医薬品の選択を助言し、服薬の指導を行う
  • 患者をよく観察し症状のヒアリングを行い、場合によっては受診勧奨を行う

など、地域のプライマリーケアの担い手として、将来の活躍を期待されています。

3-2.「2分の1ルール」廃止による登録販売者への影響は?

また、2021年3月、厚生労働省はいわゆる「2分の1ルール」を薬機法から撤廃する方針を発表しました。

「2分の1ルール」とは、「OTC医薬品を販売する店舗は1週間の営業時間のうち、2分の1以上の時間は薬剤師または登録販売者を常駐させなければならない」というルールです。

24時間営業のコンビニエンスストアなどの場合、一日12時間以上は登録販売者を常駐させなければならず、コンビニ大手が加盟する日本フランチャイズチェーン協会が厚生労働省に撤廃を強く働きかけたとされています。

店舗あたり複数の登録販売者を確保するのが難しいコンビニ業界は2分の1ルールがOTC販売のネックとなっていたからです。

2分の1ルールが撤廃されることで、コンビニやディスカウントストアは早朝や深夜のみなど、ドラッグストアや薬局が営業していない時間帯だけ医薬品を販売し、新たなニーズを取り込むことが可能となります。

一方で、現在OTC医薬品を販売しているスーパー、コンビニ、ホームセンターなどの店舗では、登録販売者の就業時間が短くなることも予想されますが、逆に医薬品を取り扱う店舗の数は増える可能性があります。

たとえ2分の1ルールが撤廃されたとしても、少子高齢化に伴い、セルフメディケーションは、ますます推進されていきます。

そうした中で多数の医薬品の中から自分に合った医薬品を選択するためのアドバイスなど登録販売者の将来的な価値は引き続き高まっていくことでしょう。

4.登録販売者の資格でキャリアアップを目指そう

登録販売者とは一般用医薬品のうち、第2類・第3類を販売、授与する医薬品のスペシャリストであり、登録販売者の資格を取得するためには厚生労働省のガイドラインに基づいて各都道府県や自治体が行う認定試験に合格する必要があります。

なお、認定試験に合格しても2年間の実務経験を積むまでは「研修中」の登録販売者として扱われます。

一般医薬品の販売・カウンセリングを行う資格である登録販売者の資格を取得することにより、医薬品業界や医療、介護業界で働くうえでのキャリアアップにつながることは確実です。

登録販売者の仕事内容と認定試験の詳細については以下の記事で詳しく紹介していますのでご参照ください。

5.まとめ

登録販売者の受験資格から実務経験が不要となった2015年以降、認定試験の合格者は増え続けています。

少子高齢化による地域包括ケアシステムの構築が急がれるなか、セルフメディケーションの推進と課税控除を追い風に、さらに登録販売者は増えていくことでしょう。

2分の1ルールの撤廃を登録販売者への逆風とみる向きも多いですが、これまで医薬品販売に参入できずにいたコンビニやディスカウントショップ、スーパー、ホームセンターなどの新規参入が増えることで、逆に登録販売者の活躍の場は増えていくものと考えられます。

登録販売者の側も、これまでどおりドラッグストアで働く専業だけでなく、コンビニやディスカウントストアなどで深夜早朝の限られた時間帯だけ働く兼業も可能となり、働き方の自由度も高まりそうです。

今後の需要と活躍が期待される登録販売者は、今もっとも注目度の高い職業といえるでしょう。

この記事の監修

ライター

朝倉哲也

日本臨床栄養協会認定NR・サプリメントアドバイザー
「病気·症状別 サプリメント·健康食品の効き目事典(同文書院)」など書籍、雑誌に実績多数

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