登録販売者のブランク期間や実務経験の数え方は?就職ポイントや制度についても紹介
2023年度の登録販売者制度改正によって、登録販売者として一人で売り場に立つための要件が変更になりました。以下の3つのうち、いずれかを満たす必要があります。
- 直近5年間に通算して2年以上の実務経験がある。
- 直近5年間に通算して1年以上の実務経験があり、かつ継続的研修並びに追加的研修を修了している。
- 通算して1年以上の実務経験があり、かつ過去に店舗管理者等として業務に従事した経験がある。
登録販売者の職を離れていた「ブランク期間」がある場合、注意しなくてはいけない点がいくつかあります。
この記事では、ブランク期間の考え方や実務経験の数え方、また、ブランクを経て再び登録販売者として就職する際のポイントなどを紹介します。
<訂正:2023年9月>
本記事において、登録販売者を国家資格とする表記がございました。お詫びして訂正いたします。
目次
1.登録販売者のブランクの期間に注意
育児休暇の取得で登録販売者を離職したり、いったん登録販売者以外の職に転職したりした方が再び登録販売者の仕事をしようとする場合、正規の登録販売者の要件を満たせなくなっている可能性があります。
ブランク期間の考え方や実務経験のカウントの仕方を、具体的に見ていきましょう。
1-1.ブランク期間は最大累計4年まで
正規の登録販売者になるには、直近5年間で「通算して」1年以上または2年以上の実務経験が必要です。
ブランク期間があっても、その期間を含めた5年の間に1年以上または2年以上の実務経験があればよいわけです。
直近5年間に通算して2年以上の実務経験があれば、すぐに正規の登録販売者として働くことができますが、1年以上2年未満なら、追加的な研修を受講する必要があります。
つまり、直近5年間のブランク期間が累計4年までであれば、要件を満たす方法はあるということです。
追加的な研修を受講したくないという場合は、ブランク期間は累計3年以内に留める必要があります。
ブランク期間があるために直近5年間の実務経験が足りない場合は、また1から実務経験を積まないといけないわけではなく、足りない分の実務経験を積み、従事期間が通算1年以上または2年以上となったときに、要件を満たすことができるようになります。
例えば、直近5年間に通算して1年間の実務経験があり、その後3年間のブランクを経て再び登録販売者に就きたい場合は、追加的な研修を受講するか、残り1年分の実務経験を積めばよいのです。
なお、過去に店舗管理者等として業務に従事した経験がある場合は、通算1年以上の実務経験があれば、追加的な研修を受講することなく、すぐに正規の登録販売者として働くことができます。
1-2.実務経験の正しいカウント方法は?
前述のとおり、実務経験は「通算して」一定以上であればよいので、途中にブランク期間があっても構いません。連続して1年以上または2年以上の実務経験が必要ではないということです。
実務経験のカウントの仕方については、2023年4月1日以降、新しい基準が追加となっているため、改めて確認していきましょう。
- これまでの基準
直近5年以内の実務経験が通算2年以上(累計1,920時間以上) - 2023年に新たに追加された基準
・直近5年以内の実務経験が通算1年以上(累計1,920時間以上)、かつ継続的研修並びに追加的研修の受講
・通算1年以上の実務経験(累計1,920時間以上)、かつ過去に店舗管理者として業務に従事した経験
参照元: 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行等について」(【厚生労働省】令和5年3月31日薬生発0331第14号厚生労働省医薬・生活衛生局長通知)
これまでは、実務経験が累計1,920時間以上であったとしても、従事期間が2年以上でなければ、正規の登録販売者にはなれませんでした。
例えば、フルタイム(8時間)で20日間×12か月(1年間)働いて実務経験が1,920時間ある人でも、もう1年実務経験を積む必要があったのです。
今回の改正では、追加的な研修を受けること等を条件に、従事期間が「1年以上」に緩和されました。
これに伴い、登録販売者になれるチャンスが広がったことになります。
1-2-1.実務経験を数える際の注意点
正規の登録販売者として認められるためには、「直近5年以内に1年以上または2年以上(累計1,920時間以上)」の実務経験が必要です。
ここで、注意が必要なのは、従事期間(1年以上または2年以上)と就業時間(累計1,920時間以上)の両方を満たさなければならないということです。
従事期間が1年以上2年未満の場合は、追加的な研修も受講しなければなりません(過去に店舗管理者等として業務に従事した経験がある人を除く)。
また、従事期間は月単位で計算することになっており、月の途中で退職をしている場合は、その月は実務経験にカウントできないこともありますので、ブランク期間がある人は特に注意しましょう。
直近5年間の従事期間が1年以上2年未満の場合は、1か月に160時間以上従事した場合に必要な実務経験を満たしたものと認められますが、働き方が多様化していることを踏まえ、直近5年間のうちに、月当たりの時間数にかかわらず月単位で従事期間が通算して1年以上あり、かつ合計1920時間以上従事した場合は、1年以上の実務経験を積んだものとみなして差し支えないとされています。
参照元: 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行等について」(【厚生労働省】令和5年3月31日薬生発0331第14号厚生労働省医薬・生活衛生局長通知)
2.ブランク期間が長く研修中の場合
長いブランク期間があるために正規の登録販売者の要件を満たせなくなったら、「研修中の登録販売者」という扱いになります(通算1年以上の実務経験、かつ過去に店舗管理者等として業務に従事した経験がある人を除く)。
直近5年間の実務経験が1年以上2年未満であれば、追加的な研修を受講することで正規の販売者として認められますが、1年にも満たない場合は、薬剤師や正規の登録販売者の管理および指導のもとで、医薬品販売の実務に従事しなければなりません。
また、研修中の登録販売者は、薬剤師や正規の登録販売者の管理および指導のもとでなければ一般用医薬品の販売をすることができません。
この期間は、過去の勤務状況を確認し、いつまでに何時間働けば条件を満たすのか確認し、勤務に臨むことが必要です。
また、この期間には、ブランクによって不足している知識や情報の習得も行い、将来的に再び正規の登録販売者、さらには管理者・管理代行者になるための準備をするという意識で働くことが大切です。
3.登録販売者制度改正について
登録販売者制度は一般用医薬品販売に関わる資格として2009年に新設され、2015年には薬事法(現・薬機法)の改正が行われたため、制度が大きく変わりました。
その後2020年3月、2023年3月にも改正があり、正規の登録販売者となるための要件もどんどん緩和されています。
以下、詳しく見ていきましょう。
3-1.登録販売者制度改正で変わったこと
2015年の登録販売者制度改正により登録販売者試験の受験資格が緩和され、それに伴って正規の登録販売者として働くための要件が新たに設けられました。
これまでは、登録販売者として一人で売り場に立つためには、直近5年間に「2年以上」の実務経験が必要でしたが、2023年の改正により、これが「1年以上」に緩和されました。
登録販売者試験の受験資格と、正規の登録販売者となる要件について、詳しく見てみましょう。
受験資格
2015年の改正前は、登録販売者試験の受験資格として大卒・高卒で1年、中卒で4年の実務経験が必要でした。
この受験資格が緩和され、実務経験や学歴に関係なく、誰でも受験することができるようになりました。
正規の登録販売者になるための要件
受験資格が緩和された分、資格取得者が実際に登録販売者として就業するうえで重要視されるようになったのが実務経験です。
登録販売者として就業し、単独で売り場に立つには、これまでは直近5年間に「2年以上」の実務経験が必要とされてきました。
しかし、2023年に登録販売者制度が改正され、追加的な研修を受講すれば、実務経験が「1年以上2年未満」でも、正規の登録販売者として就業できることになったのです。
ここで、実務経験の数え方ですが、直近5年間に「通算して1年以上または2年以上」、かつ「累計1,920時間以上」従事していれば、月当たりの時間数にかかわらず、必要な実務経験を積んだものと認められます。
要件を満たせないと、管理者・管理代行者になることは難しく、研修中の登録販売者という扱いになります。その場合、薬剤師または登録販売者(店舗管理者・管理代行者の要件を満たした者)の管理・指導のもとで医薬品販売の実務に従事しなければなりません。
3-2.2015年までの「管理者・管理代行者」としての働き方
2015年の法改正前は、登録販売者試験に合格すれば、誰でも管理者・管理代行者になることができ、単独で売り場に立つことができるとされていました。
ブランク期間があっても、法律上は管理者・管理代行者として働き続けられるという決まりだったのです。
3-3.現在(2023年)の「管理者・管理代行者」としての働き方
2015年度以降は、実務経験等の要件(正規の登録販売者になるための要件)を満たさなければ、管理者・管理代行者になることができなくなっています。
2015年の法改正の際には、2014年度以前に試験に合格した登録販売者に改正後の要件を当てはめると、登録販売者が不在となって運営に支障をきたす店舗が出てくるおそれがあるため、2014年度以前の合格者はそのまま登録販売者として就業することを認めるという経過措置が設けられました。この経過措置は、2021年8月に期限を迎えています。
2023年7月時点では、「通算5年以上の実務経験があり、かつ法律に定められた研修を通算5年以上受講した場合は正規の登録販売者とみなす」という経過措置が設けられており、終了期間も未定となっています。
この場合は、従事期間は月単位で計算し、1か月に80時間以上従事している必要があります。ただし、近年働き方が多様化していることを踏まえて、この条件を満たさない場合でも、就業時間の合計が4,800時間以上であれば「5年以上の実務経験」とみなして差し支えないとされています。
4.登録販売者の「管理者要件」とは
管理者要件とは、「店舗管理者」になるために必要な要件のことです。
薬局やドラッグストアなど、一般用医薬品を販売している店舗には、必ず「店舗管理者」を一人設置しなくてはいけません。
「店舗管理者」になれるのは、薬剤師または管理者要件を満たす登録販売者のみと決まっています。
2023年に登録販売者制度が改正され、追加的な研修を受講すること等を条件に、「店舗管理者」になるために必要な実務経験が「2年以上」から「1年以上」に緩和されたため、今後は管理者要件を満たす人が増えると予想されます。
繰り返しになりますが、現在の制度の管理者要件を整理してみます。
- 直近5年以内に通算して2年以上の実務経験がある。
- 直近5年以内に通算して1年以上の実務経験があり、かつ継続的研修並びに追加的研修を修了している。
- 通算して1年以上の実務経験があり、かつ過去に店舗管理者等として業務に従事した経験がある。
この3つのうち、いずれかを満たせば「店舗管理者」になることができます。
なお、必要な就業時間は累計1,920時間以上とされています。
5.研修中の登録販売者として再就職するポイント
登録販売者に限らず、ブランク期間がある場合の転職・再就職は不利になりがちです。
ブランク後に研修中の登録販売者として再就職する場合、就職先の企業選びに際して注意しなければならないポイントがあります。
以下、4つのポイントについて詳しく解説します。
5-1.管理者要件を満たすタイミングをチェック
研修中の登録販売者として再就職する場合、管理者要件を満たした正規の登録販売者と比べると収入は低くなってしまいます。
基本給も低く設定されていることが多く、登録販売者手当などの名目で支給される手当の差額も考慮すると、年額では大きな差が生じるといえます。
そこで、研修中の登録販売者として再就職する方は、自分が管理者要件を満たすタイミングをきちんとチェックしておく必要があります。
管理者要件を満たしても、所定の手続きを経ないと、管理者・管理代行者になることはできません。管理者要件を満たしたら、すぐに勤務先に申請しましょう。
5-2.知識面が不安な際は研修制度をチェック
ブランク期間がある場合の不安材料の一つが、商品知識についてです。近年では、新しい薬が次々と登場し、ドラッグストアなどでは取扱商品の点数が多く、入れ替えも頻繁に行われます。
ブランク期間が長いと、知らない商品も増え、お客様に十分な商品説明ができなくなるのではという不安や心配が生じると思われます。
そのような方は、再就職先選びをする際に研修制度が整っている企業を選ぶことをおすすめします。
求人票などにどのような研修制度があるかが記載されているので、ブランクによる知識不足が不安な方は要チェックです。
5-3.研修中の登録販売者がドラッグストアで働く場合
研修中の登録販売者の再就職先として、ドラッグストアは比較的採用されやすく、復職しやすいのではないかと思われます。
一般的に、ドラッグストアには薬剤師や正規の登録販売者が複数いるため、研修中の登録販売者がいても、店舗の運営に支障を来すことはまずありません。
薬剤師や登録販売者の数が少数の薬局、薬店などでは、シフトによって研修中の登録販売者しかいない時間帯がある可能性があります。
それでは店舗運営に支障が生じかねません。
そのため、ドラッグストアで実務経験を積み、再び正規の登録販売者として一人で売り場に立つことを目指すのがよいでしょう。
5-4.前向きなブランクの理由を伝えられるようにしよう
再就職の面接では、ブランク期間について質問されるケースも多いのではないかと思います。その際、ブランクの理由は前向きなものを伝えられるようにしておきましょう。
ブランクが生じた理由は、人それぞれありますが、妊娠・出産による離職など、やむを得ない事情もあります。
いずれにせよ、ブランクを経て登録販売者に復職する場合は、面接対策として説得力のあるブランク理由をきちんと説明できるように準備しておくことが大切だと覚えておきましょう。
病気療養のために休職していた場合は、病気が治って十分に仕事復帰できることや療養中も勉強していたことなどをアピールするとよいでしょう。
他の業種に転職していた方は、そこでの経験を登録販売者の仕事にどのように活かして貢献できるかといった点などをアピールしましょう。
登録販売者の転職成功の大きなカギの一つが、面接対策とも言えるくらい面接対策は大事なもの。
どのような準備が必要か、こちらの記事に目を通しておくとスムーズに対策が始められるでしょう。
6.一生ものの資格を活かして転職を
登録販売者の資格は一生を通して有効に活用できます。
ブランク期間がある方でも、この資格を活かして効果的な転職を果たしたいものです。
そのためには、登録販売者に特化した転職エージェントの活用も検討しましょう。
6-1.ブランクがあっても資格自体はなくならない
登録販売者の資格は、ブランク期間があってもそれが理由で失効することはありません。
実務経験を計算する際にブランク期間が影響するだけであり、資格そのものの効力には影響を与えません。
ただし、これまで述べてきたように、実際に登録販売者、特に管理者・管理代行者として働こうとする場合にはブランク期間に注意が必要です。
6-2.実務経験の計算方法で不安なら相談もできる
「実務経験の計算の仕方がよくわからない」「実務経験を満たしているかどうかあいまいで不安だ」という方も少なくないはずです。
特にブランクがある場合は、自分が正規の登録販売者の要件を満たしているかどうかで働き方も大きく変わってきます。
そんな場合は、転職エージェントに相談してみましょう。登録販売者に特化した専門のキャリアアドバイザーが実務経験の計算方法を含め、さまざまな疑問に答えてくれます。
6-3.研修中の登録販売者の働き方もまずは相談してみよう
ブランク期間がある登録販売者は、自分の条件に合った求人を選ぶ必要があります。
しかし、数多い求人のなかから条件や企業の特色などを比較し、自分に適したものを選ぶのは大変で、時間と労力がかかるものです。
研修中の登録販売者として問題なく働くことができるように、転職エージェントを活用すれば、担当のキャリアアドバイザーがあなたの希望なども考慮したうえで、最適な再就職のタイミングや求人先をアドバイスしてくれます。
7.まとめ
2023年に登録販売者制度が改正され、正規の登録販売者になるための要件が変わっています。
必要な実務経験は、追加的な研修を受講することを条件に、直近5年以内に「2年以上」から「1年以上」に緩和されました。
これにより、改正前よりも要件を満たしやすくなりましたが、従事期間は月単位で計算するため、ブランク期間がある人は特に注意が必要です。
転職活動を始める前に、直近5年以内の勤務状況を整理し、確認するようにしましょう。
また、ブランクがある状態での転職などに不安を抱く方も多いと思います。具体的なアドバイスも紹介してきましたが、文字で読むだけでなく、実際に相談をしてみることもおすすめです。
転職エージェントは、一人ひとりの不安に寄り添い、具体的なアドバイスを行っており、皆さんの新しい一歩を応援しています。