登録販売者のブランク期間や実務経験の数え方は?就職ポイントや制度についても紹介
2015年度の登録販売者制度改正によって、登録販売者として1人で売り場に立つには、直近の5年間に2年以上の実務経験が必要です。
実務経験のカウントの仕方は、更なる法改正に伴い、2020年4月1日から変更となっています。
登録販売者の職を離れていた「ブランク期間」がある場合、注意しなくてはいけない点がいくつかあります。
この記事では、ブランク期間の考え方や実務経験の数え方、また、ブランクを経て再び登録販売者として就職する際のポイントなどを紹介します。
目次
1.登録販売者のブランクの期間に注意
育児休暇の取得で登録販売者を離職したり、いったん登録販売者以外の職に転職した方が再び登録販売者の仕事をしようとする場合、「直近5年間に2年以上の実務経験」を計算の上、職を離れていたブランク期間に注意しなければなりません。
以下、具体的に見ていきましょう。
1-1.ブランク期間は最大3年まで
正規の登録販売者になるには、直近5年間で2年以上の実務経験が必要です。
ブランク期間があっても、その期間を含めた5年の間に2年以上の実務経験があれば良いわけです。つまり、ブランク期間が3年までであれば要件を満たすことになります。
ブランク期間が3年を超えていると、直近5年間に2年以上の実務経験はなくなりますが、2年に満たない分の実務経験を積めば要件を満たすことになります。
例えば、1年間の実務経験があり、その後3年間のブランクを経て再び登録販売者に就いた場合は、残り1年分の実務経験を積めばよいのです。
1-2.実務経験の正しいカウント方法は?
「実務経験2年以上」といっても、連続の2年間なのか、ブランクを含めていいのか…とカウントの仕方を不安に思う方もいると思います。
実務経験のカウントの仕方については、2020年4月1日以降、新しい基準に変更となっているため、改めて確認していきましょう。
- 旧基準:直近2年以内に、2年以上(月80時間以上)
- 新基準:直近2年以内に、2年以上(累計1,920時間以上)
参照元: 厚生労働省/医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行等について
2020年度の法改正前は、月の勤務時間が80時間以上必要で、その条件をクリアした月が2年以上でなければならないという要件がありました。
この要件だと、2年以上の実務経験を積んだとしても、勤務時間が短いパートタイマーなどは月80時間に満たないケースも多く、その月は実務経験の計算上カウントされないため正規の登録販売者となれる要件を満たせなくなっていました。
今回の改正では、累計1,920時間以上に変更になったため、月80時間を満たない勤務条件であっても、カウントができるようになっています。
これに伴い、登録販売者になれるチャンスが広がったことになります。
1-2-1.実務経験を数える際の注意点
必要な実務経験は、「直近5年以内に2年以上(累計1,920時間以上)」。
ここで、注意が必要なのは、「直近5年以内に2年以上」かつ「累計1,920時間以上」という両方を満たしている必要があるということです。
参照元: 厚生労働省/医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行等について
必要な実務経験は、「直近5年以内に2年以上(累計1,920時間以上)」。
ここで、注意が必要なのは、「直近5年以内に2年以上」かつ「累計1,920時間以上」という両方を満たしている必要があるということです。
たとえ、5年間を振り返って、1,920時間以上働いていたとしても、2年以上働いていなければ、条件を満たしたことにはなりません。
今回の改正で、「月80時間以上」という縛りはなくなりましたが、2年以上という条件は必須であることに注意しましょう。
2.ブランク期間3年以上や研修中の場合
3年以上のブランクがある場合は、実務経験の要件を満たしていないため、正規の登録販売者ではなく、「研修中の登録販売者」という扱いになります。
薬剤師や正規の登録販売者の管理および指導のもとで、医薬品販売の実務に従事しなければなりません。
また、研修中の登録販売者は、薬剤師や正規の登録販売者の管理および指導のもとでなければ一般用医薬品の販売をすることができません。
この期間は、直近2年の勤務状況を確認し、いつまでに何時間働けば条件を満たすのか確認し、勤務に臨むことが必要です。
また、この期間には、ブランクによって不足している知識や情報の習得もおこない、将来的に再び正規の登録販売者、さらには管理者・管理代行者になるための準備をするという意識で働くことが大切です。
3.登録販売者制度改正について
登録販売者制度は一般用医薬品販売に関わる資格として2009年に新設され、2015年度には薬事法(現・薬機法)の改正が行われたため、制度が大きく変わりました。
また、2020年3月の改正では、実務経験のカウントの仕方が変わっています。
以下、詳しく見ていきましょう。
3-1.登録販売者制度改正で変わったこと
2015年度の登録販売者制度改正によって変わった点は、大きく分けて以下の2つです。
また、2020年4月1日以降は、実務経験のカウントの仕方が変更になっているため、注意が必要です。
受験資格の緩和
改正前は登録販売者試験の受験資格として大卒・高卒で1年、中卒で4年の実務経験が必要でした。
この受験資格が緩和され、実務経験や学歴に関係なく、誰でも受験することができるようになりました。
実際に就業するには直近5年間に2年以上の実務経験が必要
受験資格が緩和された分、資格取得者が実際に登録販売者として就業するうえで重要視されるようになったのが実務経験です。
登録販売者として就業し、単独で売り場に立つには、直近5年間に2年以上の実務経験が必要です。
ここで、実務経験の数え方ですが、2015年度の改正では「月80時間以上」という縛りがあったものの、2020年度の改正では、月ごとの条件はなく、「累計1,920時間以上」に変更になりました。
要件を満たせないと、管理者・管理代行者になることは難しく、研修中の登録販売者という扱いになります。その場合、薬剤師または登録販売者(店舗管理者・管理代行者の要件を満たした者)の管理・指導のもとで医薬品販売の実務に従事しなければなりません。
3-2.登録販売者制度改正前の「管理者・管理代行者」としての働き方
2015年度の法改正前は、登録販売者試験に合格すれば、誰でも管理者・管理代行者になることができ、単独で売り場に立つことができるとされていました。
ブランク期間があっても、法律上は管理者・管理代行者として働き続けられるという決まりだったのです。
3-3.登録販売者制度改正後の「管理者・管理代行者」としての働き方
2015年度と2020年度の改正により、既述のとおり、直近5年間に2年以上の実務経験(累計1,920時間以上)がないと、管理者・管理代行者になることができなくなっています。
2015年度の法改正の際には、2014年度以前に試験に合格した登録販売者に改定後の要件を当てはめると、登録販売者が不在となって運営に支障をきたす店舗が出てくるおそれがあるため、経過措置が設けられていました。
この経過措置では、2014年度までに合格した登録販売者は、登録の有無にかかわらず、2020年3月までは管理者や管理代行者になることができたのです。
2020年度の改正により、この経過措置は延長になりました。つまり、2014年以前の合格者は引き続き、管理者要件を満たしているということです。
期日は「2020年3月末」から「2021年8月1日」に変更になり、それ以降も管理者要件を満たす登録販売者として働くためには「直近5年以内に2年以上(累計1,920時間以上)の実務経験」を満たす必要があります。
4.登録販売者の「管理者要件」とは
管理者要件とは、「店舗管理者」になるために必要な要件のことです。
薬局やドラッグストアなど、一般用医薬品を販売している店舗には、必ず「店舗責任者」を1人設置しなくてはいけません。
「店舗責任者」になるためには、薬剤師または管理者要件を満たす登録販売者のみと決まっています。
今回の法改正では、「月80時間以上」という縛りがなくなったため、管理者要件を満たす人が増えると予想されます。新基準の管理者要件は、「直近5年以内に2年以上の経験があり、かつ、累計1,920時間以上勤務していること」です。
5.研修中の登録販売者として再就職するポイント
登録販売者に限らず、ブランク期間がある場合の転職・再就職は不利になりがちです。
ブランク後に研修中の登録販売者として再就職する場合、就職先の企業選びに際して注意しなければならないポイントがあります。
以下、4つのポイントについて詳しく解説します。
5-1.管理者要件を満たすタイミングをチェック
研修中の登録販売者として再就職する場合、管理者要件を満たした正規の登録販売者と比べると収入は低くなってしまいます。
基本給も低く設定されていることが多く、登録販売者手当などの名目で支給される手当の差額も考慮すると、年額では大きな差が生じるといえます。
そこで、研修中の登録販売者として再就職する方は、自分が管理者要件を満たすタイミングをきちんとチェックしておく必要があります。
管理者要件を満たしても、所定の手続きを経ないと、管理者・管理代行者になることはできません。管理者要件を満たしたら、すぐに勤務先に申請しましょう。
5-2.知識面が不安な際は研修制度をチェック
ブランク期間がある場合の不安材料の一つが、商品知識についてです。近年では、新しい薬が次々と登場し、ドラッグストアなどでは取扱商品の点数が多く、入れ替えも頻繁に行われます。
ブランク期間が長いと、知らない商品も増え、お客様に十分な商品説明ができなくなるのではという不安や心配が生じると思われます。
そのような方は、再就職先選びをする際に研修制度が整っている企業を選ぶことをおすすめします。
求人票などにどのような研修制度があるかが記載されているので、ブランクによる知識不足が不安な方は要チェックです。
5-3.研修中の登録販売者がドラッグストアで働く場合
研修中の登録販売者の再就職先として、ドラッグストアは比較的採用されやすく、復職しやすいのではないかと思われます。
一般的に、ドラッグストアには薬剤師や正規の登録販売者が複数いるため、研修中の登録販売者がいても、店舗の運営に支障を来すことはまずありません。
薬剤師や登録販売者の数が少数の薬局、薬店などでは、シフトによって研修中の登録販売者しかいない時間帯がある可能性があります。
それでは店舗運営に支障が生じかねません。
そのため、ドラッグストアで実務経験を積み、再び正規の登録販売者として1人で売り場に立つことを目指すのがよいでしょう。
5-4.前向きなブランクの理由を伝えられるようにしよう
再就職の面接では、ブランク期間について質問されるケースも多いのではないかと思います。その際、ブランクの理由は前向きなものを伝えられるようにしておきましょう。
ブランクが生じた理由は、人それぞれありますが、妊娠・出産による離職など、やむを得ない事情もあります。
いずれにせよ、ブランクを経て登録販売者に復職する場合は、面接対策として説得力のあるブランク理由をきちんと説明できるように準備しておくことが大切だと覚えておきましょう。
病気療養のために休職していた場合は、病気が治って十分に仕事復帰できることや療養中も勉強していたことなどをアピールすると良いでしょう。
他の業種に転職していた方は、そこでの経験を登録販売者の仕事にどのように活かして貢献できるかといった点などをアピールしましょう。
登録販売者の転職成功の大きなカギの一つが、面接対策とも言えるくらい面接対策は大事なもの。
どのような準備が必要か、こちらの記事に目を通しておくとスムーズに対策が始められるでしょう。
6.一生モノの国家資格を生かして転職を
登録販売者の資格は一生を通して有効に活用できます。
ブランク期間がある方でも、この資格を生かして効果的な転職を果たしたいものです。
そのためには、登録販売者に特化した転職エージェントの活用も検討しましょう。
6-1.ブランクがあっても資格自体はなくならない
登録販売者の資格は、ブランク期間があってもそれが理由で失効することはありません。
実務経験を計算する際にブランク期間が影響するだけであり、資格そのものの効力には影響を与えません。
ただし、これまで述べてきたように、実際に登録販売者、特に管理者・管理代行者として働こうとする場合にはブランク期間に注意が必要です。
6-2.実務経験の計算方法で不安なら相談もできる
「直近5年間で2年以上の実務経験」の計算の仕方がよくわからない、2年の実務経験を満たしているかどうかあいまいで不安だ、という方も少なくないはずです。
特にブランクがある場合は、自分がこの要件に当てはまるかどうかで働き方も大きく変わってきます。
そんな場合は、転職エージェントに相談してみましょう。登録販売者に特化した専門のキャリアアドバイザーが実務経験の計算方法を含め、さまざまな疑問に答えてくれます。
6-3.研修中の登録販売者の働き方もまずは相談してみよう
ブランク期間がある登録販売者は、自分の条件に合った求人を選ぶ必要があります。
しかし、数多い求人の中から条件や企業の特色などを比較し、自分に適したものを選ぶのは大変で、時間と労力がかかるものです。
研修中の登録販売者として問題なく働くことができるように、転職エージェントを活用すれば、担当のキャリアアドバイザーがあなたの希望なども考慮したうえで、最適な再就職のタイミングや求人先をアドバイスしてくれます。
7.まとめ
2020年4月1日以降、登録販売者になるためには「直近2年以内に2年以上(累計1,920時間以上)の実務経験」が必要となっています。
ブランクがある方は、特に直近2年以内の勤務状況を整理し、確認するようにしましょう。
また、ブランクがある状態での転職などに不安を抱く方も多いと思います。具体的なアドバイスもご紹介してきましたが、文字で読むだけでなく、実際に相談をしてみることもおすすめです。
転職エージェントは、一人ひとりの不安に寄り添い、具体的なアドバイスをおこなっており、皆さんの新しい一歩を応援しています。