薬局やドラッグストアのフランチャイズ経営について-注意点やメリットを紹介
薬剤師として働いている方の中には、将来自分で独立や開業をしたいと考えている方もいるのではないでしょうか。
自分で開業するには、経営の知識を学んだり、商品や店舗を確保したりと、事前に準備することが多くあり、少々ハードルが高く感じるかもしれません。
そんな未経験の方でも比較的開業しやすいのが、フランチャイズ経営です。フランチャイズ経営は、時間をかけて身につけなればならない経営のノウハウや資金のサポートを受けながら開業することができます。
ここでは、薬局やドラッグストアのフランチャイズ経営について、メリットや注意点、必要な準備などを紹介していきます。
目次
1.フランチャイズとは
フランチャイズとは、加盟店(フランチャイジー)が本部(フランチャイザー)と契約を結び、本部のマニュアルやサービス、商品を扱いながら経営し、その対価(ロイヤリティ)を支払う仕組みです。
フランチャイズのシステムには3つの種類があります。まずはそれぞれの特徴についてみていきましょう。
1-1.ビジネス・フォーマット型
フランチャイズの中でも、多くの分野でおこなわれているシステムがビジネス・フォーマット型です。
ビジネス・フォーマット型は、経営のためのノウハウがパッケージ化されており、商品提供だけでなく、収益を上げていく方法など、本部が培ってきた経験を基盤として経営をしていく仕組みとなっています。
本部から提供されるパッケージには、店舗は含まれていません。そのため、立地や内装などのアドバイスを受けながら、自分で店舗を確保していく必要があります。
1-2.ターンキー型
本部から完成された店舗が用意され、加盟者は店舗の鍵を受け取ればすぐにでも開業ができるという方法がターンキー型です。
主にコンビニエンスストアなどが盛んにおこなっている方法で、店舗の立地や内装を自分で決める手間がなく、開業準備に時間をかけなくても良いシステムとなっています。
1-3.コンバージョン型
すでに事業をおこなっている同業者とフランチャイズ契約を結び、本部のブランド名に転換(コンバージョン)させて事業の拡大を図る方法がコンバージョン型です。
加盟者側がすでにおこなってきた事業の基盤に、本部のブランドやシステムを活用して経営していく方法なので、さらなる収益の向上を狙っている事業に多く活用されています。
2.フランチャイズ開業で実際にかかる費用はどれくらい?
フランチャイズで薬局やドラッグストアを開業する場合、初期費用として2000万〜3000万円程度が必要です。
小さな薬局と大型のドラッグストアでは、規模や扱う医療品の数が違うため初期費用は異なりますが、自分で店舗を用意する場合、開業費用が高くなる傾向にあります。開業の際にかかる主な費用項目についてみていきましょう。
参照元:ドバイ調剤薬局/フランチャイズで薬局を開業するメリット・デメリットと開業までの流れ 調剤薬局を開業したい薬剤師の方必見!
2-1.加盟金・保証金
加盟金はフランチャイズに加盟する際に必要な費用で、0〜100万円程度が必要です。
なかには加盟金0円としている本部もありますが、別の名称で表示されている場合もあるため、事前に確認をしておくようにしましょう。
保証金は、利用に対して支払う対価である「ロイヤリティ」の支払いが滞った際などに引かれる費用で、特に使用することがなければ契約満了時に返金されます。保証金は0〜80万円程度が相場となっています。
2-2.店舗関連費
最も費用が高くなるのが店舗関連費で、物件取得費や内装工事費、店舗設備費などが含まれます。金額は数百万〜数千万円で、小さな薬局なのか、大型ドラッグストアなのか、店舗の規模によって費用が大きく変わります。
本部によっては、事前に店舗を用意してくれていたり、店舗関連費を安く抑える方法を教えてくれたりするので、予算に合わせてチェックしておくと良いでしょう。
2-3. 調剤機器・医薬品の購入費
薬局やドラッグストアでは業務で使用する調剤機器や医薬品を揃えなければならず、金額は200〜700万円程度がかかります。
他にもレセコン、調剤棚、電子薬歴、電話、コピー機、FAX、お薬手帳、薬袋なども揃えておく必要があります。機器によってはリースを受けられることもあり、その場合は初期費用を抑えることも可能です。
2-4.各種申請費
薬局やドラッグストアを新規開業する場合は「薬局開設許可申請書」を提出しなければならず、申請費用として3〜4万円程度が必要になります。
また、個人ではなく法人開業をする場合には設立費用が必要で、6〜25万円が目安となっています。
参照元:東京都福祉保健局/薬局開設許可申請書
川崎市HP/薬局開設許可申請
神奈川県 健康医療局 生活衛生部薬務課/申請・届出の手続き(薬局・店舗販売業等)
3.薬局・ドラッグストアのフランチャイズのメリット
薬局やドラッグストアをフランチャイズで開業する場合、自分一人で開業する場合と比べて、多くのメリットを得ることができます。どのようなメリットがあるのか、具体的にみていきましょう。
3-1.経営指導やノウハウを学べる
本部がこれまで薬局やドラッグストアを経営してきた実績から、「こうすると成功しやすい」「これは失敗することが多い」といった、経営のノウハウを学びながら開業することが可能です。
薬剤師としての経験は豊富だけど、経営の知識が全くない、独立や開業をするのが初めてという方でも、安心して開業することができるでしょう。
3-2.薬剤師の採用サポートが受けられる
資格不要の仕事と比べ、国家資格である薬剤師免許を持った方の求人活動は容易ではありません。
求人を出しても、すぐに人が集まるわけではないため、人手不足に陥ってしまうことも想定されます。
フランチャイズなら、本部が募集活動をおこなってくれたり、派遣スタッフを手配してくれたりと、採用サポートが受けられるメリットがあります。
3-3.医薬品の仕入れ費用を抑えることができる
処方された薬を患者さんが受け取る際、健康保険が適応されるため、窓口では費用の3割分しか支払われません。
残りの7割は、後に審査機関に申請をすることで支払われますが、一旦は店舗側が負担をする必要があります。
そのため、開業して間もない頃は、医薬品の仕入れ費用負担が大きくなってしまいます。
フランチャイズでは、本部でまとめて医薬品を購入することができるため、仕入れ費用を安く抑えることが可能です。毎月かかるコストなので、仕入れ費用を抑えられることは大きなメリットになるでしょう。
3-4.資金調達のサポートが受けられる
薬局やドラッグストアを開業するには、どんなに規模が小さくても1,000万以上は必要になります。
初期費用の調達や資金繰りには、多くの方が頭を悩ませる問題ですが、フランチャイズでは、資金調達や返済計画についてのアドバイスが受けられるのもメリットの一つに挙げられます。
3-5.立地の提案や開業サポートが受けられる
薬局やドラッグストアの売上を上げるには立地選びが重要です。大きな病院の近くが良いと思って開業しても、他の薬局が多いことから思ったよりも売上が上がらないこともあります。
また、大手スーパーや商業施設がひしめく地域にドラッグストアを建てても、競争が厳しくなることもあるでしょう。
フランチャイズなら、悪戦苦闘しやすい立地選びについても、サポートが受けられるため、最適な立地を見つけやすいことがメリットに挙げられます。
4.薬局・ドラッグストアのフランチャイズのデメリット
フランチャイズでは、多くのメリットが受けられる反面、デメリットになることもあります。主なデメリットについて具体的にみていきましょう。
4-1. ロイヤリティが発生する
フランチャイズでは、手厚いサポートが受けられる代わりに、本部に対価(ロイヤ
リティ)や加盟料を支払わなければなりません。
フランチャイズによっては、店舗の経営状況にも関わらず、決まった金額を支払わなければならない場合もあるため、収益に大きく影響する可能性があります。
4-2.独自色が出しづらい
フランチャイズの営業ノウハウが得られる以上、それに沿った統一した営業形態やオペレーションによる経営が求められます。
よって地域の実情を踏まえた自店独自の戦略や独自商品取り扱いなどは基本的に認められないことが多いでしょう。
それに背くと最悪の場合、契約解除や違約金などが発生する場合もあり得るので注意が必要です。
4-3.本部や加盟店の影響を受けることがある
薬局やドラッグストアは、医薬品を扱うため、お客様の健康に直結する業種です。
もし、本部や他の加盟店で何か問題や不祥事が発生してしまうと、イメージ悪化により世間の信頼が失われ、経営にも大きく影響するということは念頭においておきましょう。
5.薬局・ドラックストアのフランチャイズで注意・確認すべきこと
フランチャイズで薬局やドラッグストアを開業することが決まったとしても、後々失敗や後悔をしたくはないものです。事前に確認しておくべきことや注意点についてまとめてみました。
5-1.契約期間や更新日
一般的にフランチャイズには契約期間が定められており、期間は1年、3年、5年、10年と本部によってさまざまです。
期間が長い場合は、長期にわたってサポートが受けられますが、途中で辞めることができないことがあります。
期間が短い場合は契約の見直しや解除がしやすいですが、その都度更新料や手続きが必要になることもあります。
また、契約更新は自動更新なのか、手続きが必要なのか、更新料はかかるのかなどもフランチャイズによってさまざまです。更新方法や更新日も事前にチェックしておくようにしましょう。
5-2.商標などの使用条件
商標とは、本部が他社の商品と区別するために使用する名前やロゴのことをいいます。
商標を使用することで、本部のブランド力を活かした商品やサービスが扱えるという強みがありますが、使用条件には注意が必要です。
商標の不正利用や、イメージが損なわれるような使用方法は契約違反となることがあるため、使用条件を確認しておくようにしましょう。
5-3.ロイヤリティの計算や見込める利益
ロイヤリティはフランチャイズによって金額の算出方法が異なり、主に「定額制」と「歩合制」の2つに分けられます。
定額制は月々の支払う金額が一律に決まっているもの、歩合制は売上や利益によって変動するのが特徴です。
売上予測金額と共にロイヤリティの金額によって、見込める利益も変わってくるので、十分に確認して理解した上で契約をするようにしましょう。
5-4.違約金や損害補償金がどれくらいなのか
ほとんどのフランチャイズでは、本部または加盟店に違反行為があった場合、契約をいつでも解除できる契約になっています。
加盟店の違反行為に対しては、本部が損害賠償金を請求できるように定められていることもあります。
また、契約満了前に契約解除をすると違約金が発生することもあるため、事前に契約内容やもしもの時の違約金の金額なども確認しておくようにしましょう。
6.開業までに必要な準備
フランチャイズは、さまざまなサポートを受けることができますが、薬局やドラッグストアを開業するまでに自分でも事前の準備が必要です。どのようなことが必要なのか、具体的にみていきましょう。
6-1.初期費用の目安を把握しておく
開業する際の初期費用は、加盟金、保証金、店舗関連費などが必要となりますが、金額はフランチャイズの種類によってさまざまです。
また、薬局やドラッグストアでは調剤機器、薬剤記録システム、レセコンといった、薬剤師業務特有の設備も準備しなくてはなりません。
開業する店舗の規模によっても初期費用は変わってくるため、自分がイメージしている店舗の初期費用がどのくらいかかるのかを把握しておくようにしましょう。
6-2.開業までのシミュレーション・スケジュールを立てておく
薬局やドラッグストアを開業するまでには、いくつかの段階を踏んでいかなければなりません。
事業計画の策定や店舗設計などに加えて、「薬局開設許可申請書」「個人事業の開業・廃業等届出書」の提出や、保険調剤を取り扱う場合は、「保険薬局」の指定を受けることも必要です。
事前に開業までのスケジュールを確認し、いつまでに何をおこなわなければならないかを把握しておくようにしましょう。
参照元:東京都福祉保健局/薬局開設許可申請書
川崎市HP/薬局開設許可申請
神奈川県 健康医療局 生活衛生部薬務課/申請・届出の手続き(薬局・店舗販売業等)
国税庁/個人事業の開業届出・廃業届出等手続
東京都福祉保健局/保険医療機関・保険薬局の指定等に関する申請・届出
6-3.フランチャイズ本部の比較
開業するイメージがある程度固まったら、フランチャイズ本部をどこにするのかを決めていきましょう。
予算に見合っているのか、サポート方針が合っているか、本部事業の経営は安定しているかなど、いくつか候補を挙げて比較すると、より自分の方針と合ったフランチャイズ本部を見つけやすくなります。
また、薬局やドラッグストアは、お客様の健康に直結する業種であることから、過去に本部で大きな問題がなかったかどうかも調べておくことも重要です。
比較をするには、各本部の資料請求をしたり、合同イベントや説明会に参加をしたりするとより具体的なイメージがつかみやすいでしょう。
7.まとめ
薬局やドラッグストアのフランチャイズ経営についてまとめました。自分で独立して開業したいと思っても、どう進めたら良いのか、何を学んだら良いのかなど不安なことも多いかと思います。
また、薬剤師の人員を確保したり、調剤設備を整えたりなど、薬局やドラッグストア特有の申請や準備も多いため、肉体的、精神的な負担が大きくなります。
その点フランチャイズなら、すでに成功している経営方針やシステムがパッケージ化されているので比較的容易に開業をすることが可能です。
もちろん、成功させることは容易ではありませんが、軌道に乗れば大幅な収入アップを図ることができるかも知れません。
自分で独立して開業したい、薬局やドラッグストアを経営したいと考えている方は、フランチャイズ経営も選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
将来的な薬局やドラッグストアのフランチャイズ経営も視野に入れてキャリアプランを考えている方は、マイナビ薬剤師にお気軽にご相談ください。
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