薬局経営は儲かる?収益構造の基本や独立開業のメリットについて解説

薬局経営は儲かる?収益構造の基本や独立開業のメリットについて解説

薬剤師の資格を活かすキャリアビジョンとして、自分自身で薬局を開業して経営をしていく方法があります。

「いつかは自分の薬局をもちたいけど、経営はどうしたらいいのか?」「メリットはあるのか?収益はどうなっているのか?」と考えている方もいらっしゃいませんか。

雇用される働き方と違い、「経営」はわからないことも多くて不安がつきもの。

ここでは、薬局経営は儲かるのか?収益構造の基本や独立開業のメリットなどについて詳しく解説します。

1.薬局経営は儲かる?

薬局を経営すると、誰でもどこでも「利益が出る(儲かる)」とは言えないものです。

基本的に薬局の利益は処方箋の枚数に影響されます。つまり、患者さんの定期的な利用があることが安定した経営の前提になるのです。

儲かるかどうかは、薬局を開業する立地や薬局自体の企業規模にも関わってきます。

例えば、近隣に医療機関が多くあり高齢者の多い地域であると、薬局の利用率が高くなり、利益が出る可能性が高くなります。

ただし、同じような薬局が近くにある場合には患者さんの利用が減ることもあるため、注意が必要です。

また、企業規模によっては、店舗をいくつか展開することで利益を出すことや訪問サービスなどの他のサービス展開も検討することもできるため、収益構造も変わってきます。

薬局経営は、誰でもどこでも儲かるものではないため、収益構造をしっかりと理解し、利益の出る経営展開を視野に入れて開業することが重要になります。

2.薬局の収益構造を理解することが大事

利益を得るためには、薬局の収益構造を理解することが重要になります。まずは、調剤報酬を理解していきましょう。

例えば、令和4年度の調剤報酬改定では、地域支援体制加算の見直しや報酬の新設などもあります。きちんと調剤報酬を知ることは経営の要になります。2年ごとに調剤報酬の改定は行われるため、アンテナを高く立てるようにしましょう。

また、先にも述べましたが、薬局の収益は「処方箋の枚数」が基本になります。

コンスタントに患者さんが来局するためには、近隣に病院やクリニック、施設などがあると、定期的な収益が得やすくなります。

さらに、薬局経営をおこなう上では、医薬品卸との価格調整も必要になります。

利益を出すためには「差益」といって、売価と原価の差として生まれる利益も必要になります。医薬品卸と価格交渉をおこない、十分な差益を生み出せるようにしましょう。

参照元:厚生労働省/令和4年度調剤報酬改定の概要(調剤)

報酬改定については、下記ページでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。

>薬剤師と診療報酬改定 | マイナビ薬剤師

3.薬局の収益のシミュレーション

ここでは、具体的な薬局の収益のシミュレーションを見ていきましょう。

まず、診療科ごとに処方箋の単価、技術料、薬剤料などは厚生労働省が公表しているので、そのデータを用いて考えていきます。

ここでは、病院門前薬局として薬局を設置する場合と診療所門前薬局として設置する場合、また、処方箋応需枚数が月1,000枚の場合と月1,500枚の場合でシミュレートします。

「調剤医療費(電算処理分)の動向〜令和2年度版〜」を元データとして利用し、以下の金額で計算をします。

病院門前薬局:家賃月100万円、その他経費月40万円
診療所門前薬局:家賃月20万円、その他経費月40万円
月給(賞与含む):管理薬剤師60万円、一般薬剤師45万円、医療事務25万円

営業利益の算出方法は、「営業利益=粗利益-総経費」です。

  • 粗利益

薬価差益を15%とすると、粗利益=技術料+薬剤料×0.15となります。

  • 総経費

法定福利費を月給の15%とすると、人件費=月給×1.15であるため、
総経費=人件費+家賃+その他経費となります。

  • 処方箋応需枚数月1,000枚の場合

病院門前薬局には管理薬剤師1人、一般薬剤師2人、医療事務1.5人を配置する。
診療所門前薬局には管理薬剤師1人、一般薬剤師1.5人、医療事務1人を配置する。

  • 処方箋応需枚数月1,500枚の場合

病院門前薬局には管理薬剤師1人、一般薬剤師3.5人、医療事務2.5人を配置する。
診療所門前薬局には管理薬剤師1人、一般薬剤師2.5人、医療事務2人を配置する。

それぞれを計算すると、以下の表になります。

病院 診療所
大学病院 公的病院 法人病院 個人病院 内科 小児科 外科 整形外科 皮膚科 産婦人科 眼科 耳鼻科
処方せん1枚あたり(円)
技術料 2,619 2,712 2,740 2,595 2,715 2,240 2,554 2,031 2,035 2,098 1,477 2,137
薬材料 32,791 20,229 10,687 8,145 6,349 2,583 5,367 3,627 2,906 4,537 2,800 2,616
粗利益 7,538 5,746 4,343 3,817 3,667 2,627 3,359 2,575 2,471 2,779 1,897 2,529
<処方せん応需枚数月1,000枚の場合>1ヶ月あたり(万円)
粗利益 754 575 434 382 367 263 336 258 247 278 190 253
総経費 356 356 356 356 235 235 235 235 235 235 235 235
営業利益 398 219 79 26 131 27 101 22 12 42 -46 18
<処方せん応需枚数月1,500枚の場合>1ヶ月あたり(万円)
粗利益 1131 862 651 573 550 394 504 386 371 417 285 379
総経費 462 462 462 462 316 316 316 316 316 316 316 316
営業利益 669 400 189 111 234 78 188 70 55 101 -31 64

薬局経営を考えるためには、営業利益に着目します。

病院 診療所
大学病院 公的病院 法人病院 個人病院 内科 小児科 外科 整形外科 皮膚科 産婦人科 眼科 耳鼻科
<処方せん応需枚数月1,000枚の場合>1ヶ月あたり(万円)
営業利益 398 219 79 26 131 27 101 22 12 42 -46 18
<処方せん応需枚数月1,500枚の場合>1ヶ月あたり(万円)
営業利益 669 400 189 111 234 78 188 70 55 101 -31 64

それぞれの営業利益を見ると、数字が大きく異なることがわかります。薬局を開業する際には、薬局の立地などをはじめ、粗利益や総経費から営業利益を算出し、見通しをもって進めていくことが重要です。

参照元:厚生労働省/調剤医療費(電算処理分)の動向~令和2年度版~

4.独立開業のメリット

独立開業をおこなうメリットはさまざまあります。ここでは4つのポイントに着目してご紹介していきます。

4-1.自由な働き方が可能

独立開業のメリットとして、自由な働き方が可能になります。自ら薬局を開業するため、営業日や営業時間も自由に決めることが可能です。

また、個人薬局であれば、自分以外の従業員を雇わない経営の仕方も可能です。自分の裁量で仕事の調整ができるため、ワークライフバランスを重視することもできます。

経営に責任はともなうものの、自由な働き方が可能になることがメリットといえるでしょう。

4-2.収入アップが目指せる

独立開業のメリットとして収入アップを目指すことができます。開業をし、軌道に乗った場合、雇用されているときよりも収入があがる可能性があります。

利益を生み出すために、店舗数を増やして売り上げを伸ばすことや、経費が削減できるように工夫することができます。

自分の努力次第で、収入を高められる可能性があることがメリットといえるでしょう。

4-3.スキルや能力の向上が期待できる

独立開業のメリットとして、自分のスキルや能力の向上が期待できます。

今まで積み重ねた薬剤師としてのキャリアを活かすことも可能ですが、薬局経営は雇用されていたときとは求められるスキルもノウハウも違うため、新たな能力を高めていくことができます。

経営能力や交渉能力、人やお金を調整する能力にも磨きがかかります。今までの経験とは異なる新しい知識やスキルを身に付けていけることが、人生における大きなメリットといえるでしょう。

4-4.定年がない

独立開業のメリットとして、定年がないことがあげられます。薬局のオーナーになることで、転勤や定年退職という制限から解放されます。

働き方も自由に決めることができるため、自分の年齢に合わせた働き方を選択していくことも可能です。

若いうちはバリバリと現場に臨み、年齢とともに自分のポジションを変えていくのもいいかもしれません。雇用されて働くスタイルと違い、定年がなく、大きな人生設計をつくれるメリットがあるといえるでしょう。

5.独立開業のデメリット

独立開業のデメリットとして、責任の重さや経済的な不安などがあげられます。自ら開業をして経営をおこなうことは、薬局経営の全責任を負うことになります。

また、従業員を雇うのであれば、月給を支払い続けるというプレッシャーもあります。また、開業する際に借金を背負うことも多くあり、毎月の返済という負荷がかかることもあります。

軌道に乗るまでは、多くの時間や気力を薬局経営に費やすことになるため、開業は自由で可能性がある反面、プレッシャーや不安がついてくることがデメリットといえるでしょう。

6.独自開業とフランチャイズ、どちらを選べばいい?

薬局を開業するときに、独自に開業する方法と薬局のフランチャイズに入る方法があります。

独自開業とは自分自身で起業して薬局を開業する方法になります。それに対して、フランチャイズとは、経営者になるためのノウハウなどの提供を受けて、加盟店として事業を運営する方法です。

つまり、大きな違いは、一人で薬局を一から開業して経営していくのか、それとも、チェーン店のようなビジネスシステムをとり、経営に対するアドバイスやサポートを受けながら薬局経営をおこなうかという点です。

どちらにもメリットとデメリットが存在するため、よく吟味をして薬局の開業を進めていくことが大切です。

独自開業とフランチャイズに関して詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

7.まとめ

憧れや夢を抱き、薬局を独立開業したいと思っている方もいると思います。自分ならではの薬局をつくり、経営し、自分なりの働き方をしながら、収益をあげていくことは理想です。

ここでは、収益構造の基本や独立開業のメリットについて、お伝えしてきました。しっかりと準備をして「経営」という新しいチャレンジをしていきましょう。

将来的な薬局経営も視野に入れてキャリアプランを考えている方は、マイナビ薬剤師にお気軽にご相談ください。

この記事の著者

ライター

小川 優

保健医療関係の資格、職務経験、知識をもとに、テレビやラジオだけでなく、Webライティングなどを通して多くの方に積極的に情報を発信。
Webライティングでは医療情報サイトを中心に、栄養や疾患など幅広く健康に関する記事を執筆。

この記事の監修者

合同会社ゆとりびと代表社員・税理士ライター

服部 大

大学卒業後、名古屋市の老舗税理士法人にて8年間勤務。 勤務期間中に税理士試験に合格し、2020年に服部大税理士事務所を開業。 2021年には合同会社ゆとりびとを設立し、税務顧問以外にも書籍執筆やwebライティングなどの「伝える仕事」に注力している。

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