ドラッグストア経営に必要なこととは?現状や開業の流れについても解説
年々店舗数が増え、売上も好調なドラッグストア。いつの間にか空き地に大きなドラッグストアが建てられて驚いた、という経験をした方は多いのではないでしょうか。
医薬品をはじめ、健康食品、化粧品、日用雑貨のほか、近年では、オーダーメイドサプリメント、衣類や野菜・果物まで販売する店舗も見かけるようになりました。
これから、ますます市場拡大が期待されるドラッグストアですが、その経営にはどのようなことが必要なのでしょうか。
ここでは、ドラッグストア業界の現状をはじめ、開業のために必要な情報や開業の流れについて、詳しく解説いたします。
目次
1.ドラッグストア業界の現状や将来性
ドラッグストア業界の業績は2013年以降拡大しており、2020年からのコロナ禍でも衰えを見せていません。
日本チェーンドラッグストア協会が公表した「2021年度ドラッグストア実態調査(速報版)」によると、全国の総売上高は前年より6.3%のびて8兆5408億円。
店舗数は441店舗増え2万1725店舗となりました。
総売上高をカテゴリー別に見てみると、調剤・ヘルスケアが32.0%で伸び率107.8%、ビューティケアが18.1%で伸び率99.6%、ホームケアが22.2%で伸び率108.7%、フーズ・その他が27.7%で伸び率107.7%。食品の売上が占める割合が大きくドラッグストアの業績を拡大させた要因の一つと考えられます。
2020年から始まったコロナウイルスの感染拡大ではさまざまな業界が経営打撃を受けています。
しかし、多くの業界の中でもドラッグストア業界は安定して業績を伸ばしています。
ドラッグストアは、インバウンド需要が減少し、化粧品などの売り上げが減少する一方、マスクや消毒液などの衛生関連商材や外食減少による巣ごもり需要や買いだめ需要といった食品の売上げ増加もあり、安定した成長が見込まれていると考えられます。
さらに今後、アフターコロナ時代には、ますますのセルフメディケーションの浸透や高齢者の増加により、ドラッグストアに求められる機能はさらに多様化し、市場は拡大するものと思われます。
2.ドラッグストア経営をするために必要なこと
ドラッグストア経営を始めようと考えたとき、何が必要になるのでしょうか。
2-1.開業に必要な情報の収集
ドラッグストアを開業したいと思ったら、開業に必要な情報をできるだけ多く収集することが大切です。
ドラッグストアにはどのような形態があるのか、開業するために何が必要か、仕入れのルートはどうするのか、初期費用はどれくらいか、資金調達の方法など、できるだけ具体的に情報を収集しましょう。
2-2.経営方針や目的を定めておく
ドラッグストアを開業するにあたり、どのような経営をしていきたいのか、ビジョンを明確にし、経営の目的を定めておくことは、とても重要です。
店舗の目指す方向がはっきりしていることで、ぶれない経営の推進が可能になります。
2-3.マニュアルなどは事前に作成しておく
ドラッグストアを経営するにあたり、業務に関するマニュアルやスタッフの行動マニュアルを開業前に作成し、スタッフ全員と共有しておくようにしましょう。
マニュアルは、それぞれのスタッフの意見を取り入れ、誰が読んでもわかりやすいものにすることが大切です。
マニュアルがあれば、今後、スタッフのスムーズな教育や引継ぎに役立ちます。
3.ドラッグストアのビジネススタイル
ドラッグストアは、一般用医薬品(OTC医薬品)を中心に、化粧品や健康食品、日用雑貨(洗剤類や紙類、文房具など)、食品、介護用品などを取り扱っている小売業態です。
以前は、一般用医薬品をメインに販売していましたが、近年ではビジネスモデルが変わり、幅広い商品を取り扱うようになっています。
また、医薬分業が進んだことから、調剤薬局を併設しているドラッグストアが増加しています。
ドラッグストアのビジネスモデルとして、洗剤類やヘアケア用品、食料品、トイレットペーパーやティッシュペーパーなどを格安で販売して集客し、原価率が低く、利益率の高い医薬品や化粧品を販売することで、収益を得ている傾向があります。
4.ドラッグストアの種類
ドラッグストアには、規模や業務形態によって、いくつかの種類に分かれています。
4-1.大型店舗
店舗の面積が600平方メートル以上の店舗のことで、「メガドラッグストア」とも呼ばれています。
医薬品や介護用品、化粧品、日用雑貨のほか、食品など日常生活に必要な消耗品を幅広く取り扱っています。
郊外には、駐車場のスペースを広くとった大型店舗が多く見られます。
4-2.中規模型
店舗の面積が100平方メートル以上の店舗のことで、郊外や住宅地に多く見られます。住民が買い物をしやすく、日用品も取り揃えているところが多いのが特徴です。
4-3.小規模型
店舗の面積が100平方メートル未満の小規模な店舗で、商店街やビルのテナントなどに入っています。路面店なども小規模型店舗に分類されます。
4-4.専門型
医薬品や医療機器、介護用品など、専門性が高く、薬学管理などについて知識を持ったスタッフが在籍しています。
商店街やスーパー内の店舗などに売場を構えていることが多くあります。
4-5.複合型
調剤薬局、漢方薬局、スーパー、介護施設など、異業種が一体となったドラッグストアのことです。
5.ドラッグストアを開業する流れ
ドラッグストアを開業するためには、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。次に、ドラッグストアを開業するまでの大まかな流れをご説明いたします。
5-1.商圏調査をおこなう
できるだけ多くのお客さんに来店してもらうためにも、集客に適した開業場所の候補を探す必要があります。そのために必須なのが商圏調査です。
商圏調査では、徒歩、自転車、車など、どの手段でどの範囲の人が来店する可能性があるかを調査します。
2021年4月に株式会社スパコロが実施した「ドラッグストア利用率調査」では、ドラッグストア選びで重要視される条件の1位が「自宅・職場からの近さ」でした。
開業店舗の予定地から半径何キロメートルと範囲を決め、総務省が提供している地域分析ツールなどを利用して人口や年齢を調べます。
また、実際に歩いて、人通りの属性や人が集まりそうな場所をチェックすることも大切です。
ライバル店の数やどのようなサービスを提供しているのか、どのようなお客さんが来店しているかも、細かく調査しましょう。
参照元:自社ロイヤル顧客の意識データを可視化するSaaSサービスを提供するスパコロ
5-2.事業計画書の作成
次に、ドラッグストアの具体的な事業内容や市場規模、競合他社の状況、立地、商品の仕入れルートや在庫管理、具体的な集客方法、資金計画、開業までのスケジュールなどを含めた事業計画書を作成します。
正確な売上を予測するのは困難ですが、一般公開されているデータや、調査業者を活用して、できるだけ具体的に売上計画を予測して事業計画書に盛り込みます。
事業計画書は資金調達をする際に、必ず提出を求められますし、事業を進めていくプランを「見える化」することで、いつまでに何をするべきかが明確になります。
5-3.開業場所・物件を探す
次にどこで開業する場所を決めて物件を探します。ドラッグストア経営の成功を左右するのが立地です。
調剤薬局の場合、処方箋を受けた患者さんが来店する可能性が高い病院の近くにこだわる必要がありますが、一般医薬品や化粧品、日用雑貨、食品など、幅広い商品を扱っているドラッグストアの場合は、必ずしも病院の近くである必要はありません。
住宅街や大きな商業施設がある場所や、人通りが多い、駅に近いといった場所に店舗を構えると集客が見込めるでしょう。
どのような形態のドラッグストアを開業したいのか、よく検討したうえで、開業場所を決めましょう。
5-4.開業資金の調達
開業資金を調達します。ドラッグストアの開業資金は店舗の規模や業態によっても異なります。
また、賃貸か自己物件か、また居抜き物件か、駐車場があるかなどによっても、必要な資金に差があります。
ドラッグストアの開業では、1000万円〜3000万円は用意しなければならないケースが多いようです。
内訳としては、建築費やリフォーム代、賃貸に必要な経費、店舗設備代、機材・備品、調剤器具や一般医薬品、日用雑貨などの商品の購入、広告宣伝、開業から軌道に乗るまでの運転資金などです。
そのほか、調剤薬局も併設するのであれば、調剤機器や医薬品の仕入れも必要です。フランチャイズでの開業であれば、フランチャイズ加盟金や保証金などもかかります。
ドラッグストアの開業資金を自己資金のみで準備するのは難しい方は、融資に頼ることになりますが、実績がない場合などは金融機関から融資を受けられない可能性もあります。
無担保・無保証の日本政策金融公庫の新創業融資制度の利用を検討してみましょう。
フランチャイズで開業するのであれば、資金調達について指導やサポートを受けやすいメリットがあります。
5-5.各種申請手続き
ドラッグストアを開業するには、所轄の保健所で開設許可申請をおこなう必要があります。
申請には、薬剤師や登録販売者の一覧や、店舗の平面図や設備の概要がわかる書面、調剤設備器具の一覧表、登記事項証明書などを添付します。
詳細は保健所に確認して、早めに書類を整えておきましょう。調剤薬局を併設し処方箋を扱う場合は、保険薬局指定申請書を厚生局に提出する必要があります。
5-6.建築・リフォーム
開業する場所や物件が決まったら、ドラッグストアにふさわしい店構えにする必要があります。
お客さまが入りやすい店舗のデザインや商品を選びやすいレイアウトは、集客にも大きく影響してくるところです。
具体的、かつ入念に検討し、業者に建築やリフォームを依頼します。
5-7.商品調達・スタッフの募集
ドラッグストアで扱う商品を調達します。他店と差別化を図るために、他店にはない商品や、自店のターゲットに合った品揃えをするなどの工夫が必要です。
どの商品がどれだけ売れるのか、あらかじめ予測を立てるのは難しいため、軌道に乗るまでは、一部の商品をメインに仕入れて、様子を見ながら取り扱う商品や商品発注量をコントロールするとよいでしょう。
また、ドラッグストアでは規模によって、薬剤師や一般医薬品の販売に必要な登録販売者の資格を持った人材のほか、品出しやレジ、お客さまに対応するスタッフが必要ですので、開業前に店舗規模を踏まえて薬剤師や登録販売者及び一般の方の採用活動も進めましょう。
5-8.集客をおこなう
開業の準備が整ったら、いよいよ集客をおこないます。新規顧客を獲得し、さらにリピートにつなげるためにも、集客方法に工夫が必要です。
インターネット広告や折り込みチラシ、広告のポスティングをするなどして、店舗が新しくオープンすることを周囲に告知します。
また、内覧会を開いたり、地域の方向けの健康チェックの実施や、健康相談会などのイベントを開催したりしてPRするドラッグストアもあります。
6.まとめ
ドラッグストアは、高齢者の増加やセルフメディケーションの浸透などにより、今後もますます成長し続けると思われます。コロナ禍でインバウンド需要に減少傾向が見られたものの、今後のアフターコロナで、再び集客が期待できるでしょう。
ドラッグストア業界が大きく成長している今、薬剤師として実績を積んできた方のなかには、独立して、ドラッグストアや薬局を経営したいと考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
将来的なドラッグストア経営も視野に入れてキャリアプランを考えている方は、マイナビ薬剤師にお気軽にご相談ください。
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