薬剤師の病棟業務とは?業務内容から必要性までを解説

薬剤師の病棟業務とは?業務内容から必要性までを解説

近年、時代とともに医療技術や薬物療法が進歩し、高度化・専門化してきています。薬の専門家である薬剤師が医師や看護師などと医療チームのメンバーとして、密に連携して業務をおこなうことが、医療の質の向上や医療安全の確保につながるとされています。

そのため、病棟において薬剤師が常駐して業務をおこなうことが重要とされ、2012年度の診療報酬改定では『病棟薬剤業務実施加算』として算定要件となりました。しかし、すべての医療機関で十分に配置されているとはいえず、本来薬剤師がおこなうべき業務を医師や看護師が担っている現状もあります。

今回は、病棟における薬剤師の業務内容と、その必要性などについて解説していきます。

参照元:厚生労働省/チーム医療において薬剤師が行う業務について

1.病棟専任薬剤師とは

病棟専任薬剤師とは、病棟に専任として配属された薬剤師として、病棟における薬物療法全般に責任を持つ薬剤師のことを指します。

2012年度の診療報酬改定で新設された『病棟薬剤業務実施加算1』と、2016年度の診療報酬改定で増設された『病棟薬剤業務実施加算2』を算定するために、薬剤師の配置が進められています。

原則として、全病棟への専任薬剤師の配置と、薬剤管理指導業務以外に週20時間以上の病棟薬剤業務の実施が算定要件となっています。

病棟薬剤業務の内容については、病棟以外でも実施できることもあり、複数の薬剤師が業務を分担することも可能となっています。また、休日や夜間の対応もできる限りの体制が求められています。

参照元:厚生労働省/薬剤師の病棟での業務について

2.薬剤師の病棟業務にはどんなものがある?

薬剤師が担う病棟業務とは、実際にどんなものがあるのでしょうか。

医療機関や病棟によって、細かな業務内容は異なりますが、大きく分けると薬剤の投与前(病棟薬剤業務)と後(薬剤管理指導業務)で区別されています。

参照元:厚生労働省/薬剤師の病棟での業務について

2-1.病棟薬剤業務

主に薬剤の投与前における業務です。患者さんに対する業務と医薬品の情報及び管理に関する業務、また医師や看護師などとのコミュニケーションが含まれます。

  • 患者さんに対する業務
  • 外来や入院で来られた患者さん、または家族と面談をおこない、これまでの病歴や持参薬などを含めた服薬状況、アレルギーの有無、食事や飲酒、喫煙などの生活状況について確認します。

    外来通院や入院中に特に注意が必要となりそうな薬剤を把握します。

    また、入院中には副作用や効果の確認のため、患者カルテを確認、病棟ラウンドをおこない、必要に応じてバイタルサインやフィジカルアセスメントなどを実施します。

    カンファレンスや回診に参加し、患者さんの状況を把握します。

    治療でハイリスク薬を使用する場合には、投与前に患者さんに対して説明をおこないます。

  • 医薬品の情報及び管理に関する業務
  • 患者さん、または家族との面談で得られた情報から処方設計と提案をおこない、診療録に記載します。医療機関によっては未採用の薬剤などもあるため、代替品や後発医薬品の提案もおこないます。

    また、複数の薬剤が同時に投与される場合には、投与前に相互作用の有無を確認します。

    そして、随時医薬品情報の収集と提供、資料作成などをおこない、最新の情報をチェックします。

  • 医師や看護師などとのコミュニケーション
  • 医師の診断や治療方針にもとづいて、患者さんの情報を医師へ提供し、薬物療法プロトコールを設計・提案し、実施と管理をおこないます。

    ときには薬剤の投与に際して、患者さんに合った流量や投与量の計算をして、医師に提案します。入院中は患者カルテや病棟ラウンドで得られた情報から、医師や看護師などへフィードバックをおこない、処方変更や薬剤の副作用の軽減、防止の提案をします。

    医療安全の確保などの観点から、副作用などが発生した場合の対応、他職種からの相談に応じる体制も整えます。

    また、医薬品などによって発生した健康被害の情報を、行政機関に報告するなども含まれます。
    これらの病棟業務内容を診療録や業務日誌に記録して管理します。

2-2.薬剤管理指導業務

主に投薬後における患者さんへの業務です。薬歴を確認し、薬剤の投与量や投与方法、相互作用、重複投与、配合変化、配合禁忌などがないか処方内容を確認します。

医師や看護師の診療録と照らし合わせ、薬物の血中濃度や副作用のモニタリング、重複処方や処方漏れをチェックします。

また、ハイリスク薬及び麻薬の処方については、厳格に監査し、妥当性の確認、薬学的管理をおこないます。

病棟ラウンドやカンファレンスなどを通して、患者さんや家族が投薬について十分に理解できるように説明します。

また、退院後も薬物療法が継続できるように相談に応じ、必要に応じて指導します。これらを薬剤管理指導記録簿に記録します。

3.病棟業務における薬剤師の病棟業務の必要性

さまざまな病棟業務における薬剤師の必要性について、以下のようなメリットが考えられます。

3-1.医師や看護師の負担を減らせる

医療機関によって薬剤師や医師、看護師の業務内容は異なりますが、施設によっては薬剤管理指導業務以外の薬剤関連業務は医師や看護師がおこなっているところもあります。

例えば、持参薬の鑑別、病棟薬剤の管理、薬剤のミキシング、処方変更への迅速な対応などといった業務です。

それらの業務を病棟に配置される専任の薬剤師が対応することで、医師や看護師の業務負担の軽減に繋がります。そして、医師や看護師がそれぞれの専門性をより発揮できるようになります。

参照元:厚生労働省/薬剤師の病棟での業務について
厚生労働省/タスク・シフティングについて

3-2.安全な医療を提供できる

医師や看護師などの業務負担の軽減により、医療安全上の問題の解決にも繋がるとされています。

例えば、これまで医師や看護師がおこなっていた与薬指示、準備、投与の場面で薬の専門家である薬剤師の目が入ることにより、投与量や投与方法、配合変化、配合禁忌などの投薬過誤を防ぐことができます。

また、患者さんへの副作用のモニタリングを通して、異常にいち早く気付くことができます。こうした点で、患者さんの安全を確保する対策がより取り組みやすくなるでしょう。

参照元:厚生労働省/薬剤師の病棟での業務について

3-3.より良い医療を提供できる

医師や看護師などの負担軽減や医療安全の確保により、医師、看護師、薬剤師などを中心にしたチーム医療を効果的に進めることができるようになります。

医療従事者同士がさらに信頼関係を構築することで、サービスを受ける患者さんのQOL向上にも繋がっていくことでしょう。

今後、信頼関係をさらに高めたチーム医療で患者さんとのコミュニケーションを図ることで、病気のケアといった側面だけではなく、患者さんの心理面、社会面も視野にいれた全人的ケアの第一歩につながることでしょう。

4.薬剤師の病棟業務が増えている背景とは

近年では医療人材不足や医師の業務負担、働き方改革が大きな課題となっており、タスクシフティングが進められています。

医師が担う業務を看護師や薬剤師など他職種へ業務委譲するものです。

そして、2012年度と2016年度の診療報酬改定で進められた『病棟薬剤業務実施加算1』『病棟薬剤業務実施加算2』により、病院にとっても薬剤師の病棟業務を拡充することが、利益につながる仕組みができたことを背景に、多くの医療機関では薬剤師の配置転換やシフト体制を整えることとなりました。

タスクシフティングについて詳しくは下記記事をご覧ください。

参照元:厚生労働省/病棟薬剤業務実施加算

5.薬剤師が今後求められること

薬剤師による病棟業務需要が増えたことにより、薬物療法の場面においてより高度な専門性を持つ病棟専任薬剤師が必要となる機会も多くなっています。

処方の設計やアドバイスの場面では、患者さんに対するモニタリングはもちろんのこと、チーム医療として医師や看護師並びに他職種とのコミュニケーションをとるためにカンファレンスへの参加なども積極的におこなう必要があります。

これから先も病院薬剤師として活躍できるように、より高い専門性とコミュニケーション能力が求められることでしょう。

6.まとめ

これまで薬剤師といえば、調剤室の調剤業務がメインでした。そこから少しずつ外来窓口や各病棟に出向く機会が増え、患者さんとより近く、多くの接点を持つようになりました。

医師のタスクシフティングや病棟薬剤業務実施加算が進められたことにより、薬剤師の業務は調剤室での業務に限らず、病棟での役割も多岐に渡ります。

そして、患者さんに対するコミュニケーションだけでなく、チーム医療として医師や看護師、他職種との連携もより密にとる必要性が出てくるでしょう。

薬剤師の業務拡大により、求められるもの、働き方もこうして少しずつ変わってきています。薬剤師という職業に、病棟で働くイメージが定着する日もそう遠くはないかもしれません。

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この記事の著者

看護師兼ライター

白石 弓夏

総合病院の小児科や整形外科で10年以上勤務。現在は整形外科病棟で非常勤をしながらフリーランスのライターとして活動中。医療・介護・福祉の分野で取材やコラム記事などの執筆をしている。

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