服薬指導とは?意味や流れ、薬剤師が押さえておくべきポイントや注意点

服薬指導とは?意味や流れ、薬剤師が押さえておくべきポイントや注意点
服薬指導は、薬剤師にとって非常に重要な業務の一つであり、患者さんに医薬品に関する正しい知識をお伝えし、処方薬を安全に使っていただくために欠かせないものです。

医療が多様化し、後期高齢化が進む現在、薬剤師の業務の中でも服薬指導の医療報酬が加点されるなど、対人業務の重要性が高まっています。薬剤師の対人業務の中核ともいえる服薬指導では、患者さんとのコミュニケーションを通して、患者さんが抱える困りごとや不安をキャッチアップし、真摯に寄り添う姿勢が必要です。

良い服薬指導を行うために、薬剤師が押さえておくべきポイントや、特に注意すべきポイントについて見ていきましょう。

1.服薬指導とは?

服薬指導とは、薬剤師が患者さんに処方薬を交付する際に、薬の正しい使用方法や効果、副作用に関する注意点などの情報を説明することをいいます。服薬指導は、薬剤師法(第25条の2)などの法律によって定められており、薬剤師が行うべき義務の一つです。

服薬指導は医薬品の情報を患者さんに伝えるだけでなく、患者さんの体調の変化や生活習慣、生活上の困りごとなどについて知ることができる貴重な機会です。患者さんとのコミュニケーションを通して情報を集めることで、飲み忘れや残薬の発生、副作用の発生の早期発見にもつながります。

また、服薬指導は、薬剤師が患者さんの状態と処方内容を確認し、処方が適正に行われているか客観的に判断する機会でもあるのです。

参照元:厚生労働省/薬剤師法

2.服薬管理指導料について

服薬管理指導料とは、保険調剤薬局などにおいて薬剤師が患者さんに医薬品を交付する際、服薬指導を実施することによって与えられる医療報酬のことです。2022年以前までの服薬指導に対する報酬は、薬剤服用歴管理指導料として算定されていましたが、2022年度調剤報酬改定によって、薬剤師の対人業務への評価を高めるため、新設されました。
服薬管理指導料は、1~4まであり、以下のように算定されます。

  1. 原則3月以内に再度処方箋を持参した患者に対して行った場合 45点
  2. 1の患者以外の患者に対して行った場合 59点
  3. 特別養護老人ホ-ムに入所している患者に訪問して行った場合 45点
  4. 情報通信機器を用いた服薬指導を行った場合
     イ)原則3月以内に再度処方箋を持参した患者に対して行った場合 45点
     ロ)イの患者以外の患者に対して行った場合 59点

服薬管理指導料1~3については、改定前の薬剤服用歴管理指導料よりも2点加点されており、服薬管理指導料4は、来局頻度によって算定点数が変わります。

そのほか、服薬管理指導料には、以下の加算項目があります。

  • 麻薬管理指導加算 22点
  • 特定薬剤管理指導加算1 10点
  • 特定薬剤管理指導加算2 100点
  • 乳幼児服薬指導加算 12点
  • 吸入薬指導加算 30点
  • 調剤後薬剤管理指導加算 60点(インスリンなどの糖尿病治療薬を使用する患者さんに対して丁寧なフォローを行い、結果を文書によって保険医療機関へ情報提供した場合)
  • 小児特定加算 350点(新設:医療的ケア児の患者さんに対して個々の状態に合わせた薬学的管理や指導を行った場合)

参照元:厚生労働省/令和4年度調剤報酬改正の概要(調剤)

服薬管理指導料の詳細については以下の記事でも解説していますので参考にしてみてください。

3.服薬指導で説明する主な内容

服薬指導で説明する情報は、薬の効能や効果、起こり得る副作用、薬の服用方法や服用回数、時間などの説明のほか、薬の保管方法などについても説明します。薬によっては、食前に飲むべきものや、食後に飲むもの、食間に飲むものなど、指示が異なるものがあるため、丁寧に説明しましょう。

飲み忘れてしまったときの対処法についても、伝えておく必要があります。また、既にほかの薬を飲んでいる患者さんの場合や、複数のお薬を処方されている患者さんの場合、健康食品やビタミン剤などを常用している患者さんの場合は、注意すべき飲み合わせや食べ合わせについても説明しましょう。薬が変更になった時や、新しい薬が増えたときなども、丁寧に説明することが大切です。

服薬指導の際は、患者さんに情報を伝えるだけではなく、薬剤師の方からも患者さんの病状やこれまでの既往歴、生活習慣などの情報を聞き取り、処方医の処方が適切かどうか客観的に判断することも求められます。

4.服薬指導の流れ

実際に服薬指導の流れについてシミュレーションしながら、重要なポイントを押さえていきましょう。

4-1.患者さんへお声かけする

処方薬の調合ができたら、薬剤師が窓口で患者さんにお声がけし、投薬カウンターへ誘導します。はじめにしっかりと患者さんの目を見て、自身の名札を提示しながら、「薬剤師の○○です。」と自己紹介をしましょう。些細なことですが、患者さんとの信頼関係を築くためには第一印象が大切です。

けがや病気などで足が不自由な方や、赤ちゃん連れの方、妊娠中の方には椅子のある場所に赴いて指導する、耳の不自由な方には筆談の用意をするなど、個々の患者さんに応じて臨機応変に対応しましょう。

4-2.患者さんの病状をヒアリングする

初めて薬局に来られた患者さんや、お薬手帳をお持ちでない患者さんに対しては、まず身長・体重、既往歴やアレルギーの有無、併用薬の情報などについてヒアリングを行います。

過去に薬を飲んで副作用が発生したことがあるかどうかについても尋ねるようにしましょう。事前に問診票に記載済みの場合は、項目ごとに確認を行います。前回の継続で処方を受ける患者さんに対しては、病状の変化や副作用の有無、調子について確認しましょう。その上で、今回の病状の詳細について聞き取りを行います。薬剤師はこのようなヒアリングを行うと同時に、今回の処方内容が客観的に適切かどうか判断するのです。

4-3.医薬品の説明を行う

ヒアリングの結果、処方内容に問題がなければ、患者さんに対して医薬品の説明を行います。

薬品名と効能・効果についての情報や、服用方法、服用のタイミングと回数、副作用に関する注意事項などを説明し、異常を感じたら薬局に連絡をするように伝えます。医薬品によっては、冷暗所に保管が必要であったり、湿気が厳禁だったりするものもあるため、説明するようにしましょう。

一連の説明ができたら、処方薬を薬袋に入れ、お薬手帳、領収証、お薬の説明書などを患者さんにお渡しします。

4-4.質問や疑問、不安なことはないか確認する

患者さんに対し、質問や疑問点、不安な点がないか必ず確認しましょう。患者さんによっては、自身の健康状態のことや生活環境、ライフスタイルによって何か困りごとを抱えていることもあります。薬の管理に不安がある患者さんであれば、飲み忘れを防止する工夫や、万が一飲み忘れたときの対処法について知りたいと思っているかもしれません。

また、赤ちゃんや小さなお子さんの保護者の場合は、薬の上手な飲ませ方についてアドバイスすれば、喜ばれることもあります。
一人ひとりの患者さんの困りごとやニーズに寄り添って、柔軟に対応しましょう。

4-5.クロージングを行う

患者さんの疑問や不安が解消できれば、服薬指導のクロージングに入りましょう。
クロージングとは、服薬指導を終え、患者さんをお見送りすることをいいます。「お大事になさってください」「気候が変わりやすいので体調にお気を付けください」と、患者さんの健康を気遣う言葉を添え、投薬カウンターに忘れ物がないか確認し、最後まできちんとお見送りしましょう。

5.服薬指導を行う際のポイントや注意点は

よい服薬指導を行うには、いくつかのポイントがあります。患者さんから信頼される薬剤師が行っている服薬指導のポイントや、注意点についてチェックしていきましょう。

5-1.専門用語はなるべく使わない

服薬指導では、専門用語などの難しい用語は避け、できるだけかみくだいた、易しい言葉に置き換えて説明するようにしましょう。薬剤師が医学用語を続けざまに使ってしまうと、患者さんに伝わらなかったり、服薬指導を受けようというモチベーションが低下したりする原因になります。

2009年に国立国語研究所「病院の言葉」委員会が公表した「『病院の言葉』を分かりやすくする提案」に、医療機関での用語の置き換えの例が提案されています。

例えば、「頓服」という用語も、薬剤師に馴染みはあっても、患者さんの中には理解があいまいになっている方もいるかもしれません。頓服薬が出たときは、「このお薬は、毎日決まった時間ではなく、発作時や症状のひどいときなどに飲むようにしてください」など、正しい解釈を具体的に伝えるように工夫しましょう。

このように、薬剤師が当たり前に使っている用語を、平易な言葉に置き換えて説明することで、患者さんの理解を深め、信頼関係を築くことができます。

参照元:国立国語研究所/「病院の言葉」を分かりやすくする提案

5-2.丁寧なコミュニケーションを心がける

服薬指導では、薬剤師が一方的に説明をして終わるのではなく、患者さんの話を傾聴し、丁寧なコミュニケーションを心がけることが大切です。患者さんに不安な様子はないか、納得できていない様子はないかなど、患者さんとのコミュニケーションを通して感じ取るようにしましょう。

患者さんとの何気ない会話を通して、患者さんをとりまく生活環境や食生活が見えてくることもあります。どんなに薬局が多忙でも、一人一人の患者さんとのコミュニケーションがおろそかにならないようにしましょう。

5-3.話し方や口調を使い分ける

薬局にはさまざまな方が来局します。患者さんに分かりやすく情報を伝えるためには、話し方や口調を使い分けることが大切です。ご高齢の方であれば、はっきりとした声でゆっくりと説明する、お子さまであれば、安心できるように優しい口調で話しかける、お子さまの目線に合わせて説明するなど、工夫をしましょう。

しかし、とても急いでいる患者さんや、「説明はいらない」と言われてしまうケースもあります。そのような場合でも、服薬指導をすることは義務付けられていますので、「お薬を安全にお使いいただくために、いくつか質問をしたいのですが、よろしいですか?」「○○分だけお時間をください」と、あらかじめ服薬指導の目的や時間の見通しをお伝えし、必要な情報を伝えるようにしましょう。

5-4.患者さんの生活習慣・ライフスタイルも把握しておく

問診票やアンケート、カウンターでのコミュニケーションを通して、患者さんの家族構成や生活習慣、ライフスタイルを把握しておくことも大切です。

高齢で1人暮らしの患者さんであれば、薬の管理や飲み忘れを防止するアドバイスが役に立つでしょう。多忙な方の場合、毎回決まった時間に薬を飲むのが難しいと感じているケースも少なくなく、外出時の薬の飲み方や飲み忘れたときの対処法についてお伝えしておくと安心です。

より実生活に伴ったアドバイスができれば、患者さんの満足度向上につながります。

5-5.状況を見ながら服薬指導の時間を調整する

服薬指導にかかる時間は、状況をみながら調節しましょう。1回の服薬指導で、患者さんのライフスタイルや生活環境までを含めた全ての情報を網羅しようとすると無理が出てきます。薬局が混雑しているときはたくさんの患者さんを待たせてしまうことになったり、多忙な患者さんを長時間拘束してしまったりすることで、今後のコミュニケーションに支障が出たりすることもあるでしょう。

服薬指導の目的はあくまでも「患者さんに医薬品に関する正しい知識をお伝えし、処方薬を安全に使っていただく」ことです。この目的が達成でき、患者さんからの疑問がない場合には、適切なタイミングで服薬指導を終了し、「後で疑問が生じた時には、いつでも薬局に連絡してください」と緊急連絡先をお伝えしておくと良いでしょう。

5-6.薬学の知識を常に最新の情報にアップデートしておく

薬剤師は医薬品や薬物治療に関する知識を最新の情報にアップデートしておくことが大切です。医学が飛躍的に進歩している今、日々新薬が登場していたり、新しいジェネリック医薬品が認可されていたりします。

患者さんによっては、自ら積極的に調べて、薬剤師に相談してくる方もいるため、患者さんにとって最善の治療が提供できるよう、医学雑誌やニュース、製薬会社からのお知らせなどをチェックして知識をアップデートしておきましょう。

昨今では、医薬品の出荷停止に伴う在庫不足が全国で起こっています。在庫に関する情報やジェネリック医薬品を含めた代替案など、常にアンテナを張って情報収集に努めましょう。

6.遠隔(オンライン)服薬指導も始まっている

遠隔(オンライン)服薬指導は、パソコンやスマートフォンなどを活用した服薬指導です。令和2年9月から解禁され、新型コロナウイルス感染症拡大に対する緊急対応としてのいわゆる「0410対応」を経て、令和4年3月に現行制度に移行しており、現行制度では、薬剤師の責任・判断によって初回からオンライン服薬指導を実施できることや、オンライン診療・訪問診療において交付された処方箋以外の処方箋でもオンライン服薬指導の実施ができるなど、さまざまな状況に応じて条件が緩和されています。

ただし、0410対応では時限的に音声のみでの服薬指導が許可されていましたが、現在では、映像+音声での服薬指導が義務付けられています。

遠隔(オンライン)服薬指導は、医療機関からのFAX送付や通信アプリ、電話を使用した予約に基づいて実施されることが一般的です。遠隔服薬指導の内容は、対面の服薬指導と変わりません。服薬指導と支払いが完了した後、患者さんの自宅に医薬品を配送します。

参照元:厚生労働省/オンライン服薬指導
参照元:厚生労働省/オンライン服薬指導について

遠隔服薬指導は、仕事や育児、介護で忙しい方や、感染症への感染リスクを抑えたい方でも安心して指導を受けてもらえる方法として、今後ますます活用されそうです。
オンライン服薬指導についてはこちらの記事でも詳しく紹介していますので参考にしてみてください。

7.まとめ

服薬指導は、患者さんに正しく医薬品を使っていただくために欠かせないものです。現在では、従来の対面形式だけでなく、遠隔(オンライン)服薬指導が解禁されるなど、患者さんが服薬指導を受けやすい環境整備が進められています。

社会の後期高齢化や医療の多様化を背景に、国としてはかかりつけ薬剤師制度の普及や、服薬指導に係る医療報酬の加点を行うなど、薬剤師の対人業務の重要性を高める動きが見られます。薬剤師に求められるものが、従来の対物業務から対人業務へとシフトしている今、薬剤師の中には不安を抱いていたり、戸惑いを感じていたりする方もいるのではないでしょうか?

薬剤師に求められる変化に対応し、自分の得意を生かせるキャリアを積み重ねるためには、しっかりとしたキャリアプランと職場選びが大切です。
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この記事の著者

医学博士、医学研究者

榎本 蒼子

最終学歴は京都府立医科大学大学院医学研究科博士課程卒業。2011~2015年 京都府立医科大学にて助教を勤め、医学研究および医学教育に従事。

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