調剤業務の評価体系と加算の見直しによる影響を考える | 薬剤師の転職・求人・募集なら【マイナビ薬剤師】

第2回 調剤業務の評価体系と加算の見直しによる影響を考える

第2回 調剤業務の評価体系と加算の見直しによる影響を考える 第2回 調剤業務の評価体系と加算の見直しによる影響を考える

2022年度が始まり、新たな調剤報酬への切り替え対応に追われている現場も多いのではないでしょうか。厚生労働省から疑義解釈も出され、算定の考え方などもはっきりとしてきました。

第2回目となる今回は、それらを踏まえながら、今改定で最大のインパクトとなった調剤業務の新たな評価体系と、各種加算について詳しく見ていきます。

「一包化」は対人業務も含めて
「外来服薬支援料」で評価

調剤業務の評価体系は、旧・調剤料が対物・対人業務に切り分けられるとともに、旧・薬剤服用歴管理指導料も再編され、次のような形となりました。

調剤技術料(主に対物業務)

…「薬剤調製料」

薬学管理料(主に対人業務)

…「調剤管理料」「服薬管理指導料」

「薬剤調製料」では、湯薬以外は1剤(1調剤)につき一律の点数に見直されたのが最大の変更点です。ただ、3剤(3調剤)分まで算定可能といった基本的なルールの変更はなく、調剤管理料と合算すれば改定によるマイナスの影響はあまりないのではないでしょうか(表1)。

表1 薬剤調製料の点数

項目(薬剤調製料) 主な要件、算定上限 点数
内服薬 1剤につき、3剤分まで 24点
屯服薬 21点
浸煎薬 1調剤につき、3調剤分まで 190点
湯薬 1調剤につき、3調剤分まで 7日分以下:190点

8~27日分:120点+1日分につき10点

28日分以上:400点
注射薬 26点
外用薬 1調剤につき、3調剤分まで 10点
内服用滴剤 1調剤につき 10点

それよりも、一包化や、錠剤の分割や粉砕に関する加算見直しのほうが影響するという薬局もあるかもしれません。

一包化については、新たに「外来服薬支援料2」で評価されることになりました。2段階の点数設定や対象となる薬剤数などは変わりませんが、一包化だけでなく、必要な服薬指導を行い服薬管理の支援をすること、調剤後も服用薬や服薬状況に関する情報等を把握し、必要に応じて処方医に情報提供することなども要件とされ、対人業務の要素が加えられました(表2)。

表2 外来服薬支援料2の算定要件

赤字が一包化加算からの主な変更部分
  • (1). 外来服薬支援料2は、多種類の薬剤が投与されている患者においてしばしばみられる薬剤の飲み忘れ、飲み誤りを防止すること又は心身の特性により錠剤等を直接の被包から取り出して服用することが困難な患者に配慮することを目的とし、治療上の必要性が認められると判断される場合に、医師の了解を得た上で、処方箋受付ごとに、一包化を行い、患者の服薬管理を支援した場合について評価するものである。

  • (2). 外来服薬支援料2は、処方箋受付1回につき1回算定できるものであり、投与日数が42日分以下の場合には、一包化を行った投与日数が7又はその端数を増すごとに34点を加算した点数を、投与日数が43日分以上の場合には、投与日数にかかわらず240点を算定する。この場合において、外来服薬支援料1は算定できない。

  • (3). 一包化とは、服用時点の異なる2種類以上の内服用固形剤又は1剤であっても3種類以上の内服用固形剤が処方されているとき、その種類にかかわらず服用時点ごとに一包として患者に投与することをいう。なお、一包化に当たっては、錠剤等は直接の被包から取り出した後行うものである。

  • (4). 薬剤師が一包化の必要を認め、医師の了解を得た後に一包化を行った場合は、その旨及び一包化の理由を薬剤服用歴等に記載する。

  • (5). 患者の服薬管理を支援するため、一包化した場合には必要な服薬指導を行った上で、調剤後も患者の服用薬や服薬状況に関する情報等を把握し、必要に応じ処方医に情報提供する。

  • (6). 患者の服薬及び服用する薬剤の識別を容易にすること等の観点から、錠剤と散剤を別々に一包化した場合、臨時の投薬に係る内服用固形剤とそれ以外の内服用固形剤を別々に一包化した場合等も算定できるが、処方箋受付1回につき1回に限り算定する。

  • (7). 同一薬局で同一処方箋に係る分割調剤(調剤基本料の「注9」の長期保存の困難性等の理由による分割調剤又は「注10」の後発医薬品の試用のための分割調剤に限る。)をした上で、2回目以降の調剤について一包化を行った場合は、1回目の調剤から通算した日数に対応する点数から前回までに請求した点数を減じて得た点数を所定点数に加算する。

  • (8). 外来服薬支援料2を算定した範囲の薬剤については、自家製剤加算及び計量混合調剤加算は算定できない。

  • (9). 外来服薬支援料2を算定する場合は、当該処方箋の調剤に係る調剤技術料を同時に算定できる。

注意が必要なのは、外来服薬支援料2は、薬剤調製料などの技術料とは一緒に算定可能ですが、外来服薬支援料1とは併算できないという点です。疑義解釈では、処方医からの一包化の指示のある処方箋とともに、他の薬局などで調剤された薬剤が持ち込まれ、それら全ての薬剤の一包化を行った場合の例が示されています。


通常は、他の薬局などで調剤された薬剤の一包化では「外来服薬支援料1」が、処方箋の指示に基づいて一包化すると「外来服薬支援料2」がそれぞれ算定できますが、同時に算定できないため、どちらか一方を選択して算定します。


「割線」の有無に関係なく錠剤分割は
自家製剤加算が算定可能に

錠剤の分割に関しては、今までも調剤料の自家製剤加算で評価されていましたが、「割線のある錠剤を(中略)分割した場合」という但し書きのため、割線のない錠剤については算定できるかどうかの判断が分かれていました。

今改定では、「錠剤を分割する場合」と改められ、割線の有無に関係なく、薬剤調整料の自家製剤加算が算定できるようになったのは大きなポイントです(表3)。

表3 自家製剤加算(錠剤分割)の点数と算定要件

赤字:主な変更部分
 青字:その他のポイント

点 数

注6 次の薬剤を自家製剤の上調剤した場合は、自家製剤加算として、1調剤につき(イの(1)に掲げる場合にあっては、投与日数が7又はその端数を増すごとに)、それぞれ次の点数(予製剤による場合又は錠剤を分割する場合はそれぞれ次に掲げる点数の100分の20に相当する点数)各区分の所定点数に加算する。ただし、別に厚生労働大臣が定める薬剤については、この限りでない。

  • イ 内服薬及び屯服薬
    • (1)錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤又はエキス剤の内服薬 20点

    • (2)錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤又はエキス剤の屯服薬 90点

    • (3)(略)


算定要件

  • ウ 「注6」のただし書に規定する「別に厚生労働大臣が定める薬剤」とは、薬価基準に収載されている薬剤と同一剤形及び同一規格を有する薬剤をいう。

  • エ 薬価基準に収載されている医薬品に溶媒、基剤等の賦形剤を加え、当該医薬品と異なる剤形の医薬品を自家製剤の上調剤した場合に、次の場合を除き自家製剤加算を算定できる。
    • (イ) 調剤した医薬品と同一剤形及び同一規格を有する医薬品が薬価基準に収載されている場合
    • (ロ) 液剤を調剤する場合であって、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35 年法律第145 号。以下「医薬品医療機器等法」という。)上の承認事項において用時溶解して使用することとされている医薬品を交付時に溶解した場合

  • オ 自家製剤加算を算定した場合には、計量混合調剤加算は算定できない。

  • カ 「予製剤」とは、あらかじめ想定される調剤のために、複数回分を製剤し、処方箋受付時に当該製剤を投与することをいう。

  • キ 「錠剤を分割する場合」とは、医師の指示に基づき錠剤を分割することをいう。ただし、分割した医薬品と同一規格を有する医薬品が薬価基準に収載されている場合は算定できない。

  • ク 錠剤を分割して予製剤とする場合においては、予製剤とする場合又は錠剤を分割する場合と同様に自家製剤加算の所定点数を100 分の20 にし、小数点以下第一位を四捨五入した点数を算定する。

  • (略)

ただし、点数については、予製剤と同様に所定点数の100分の20相当へと大きく引き下げられました。

錠剤の粉砕と分割で、「嚥下困難者用製剤加算」と「自家製剤加算」のどちらを算定すべきか、その考え方も疑義解釈で整理されています。

嚥下困難者用製剤加算(表4)は、原則として「処方された用量に対応する剤形・規格があること」を前提に、「(医師の了解を得た上で)患者の服薬困難解消を目的として錠剤を砕くなど剤形を加工する場合」に算定。

表4 嚥下困難者用製剤加算の算定要件

赤字:主な変更部分
 青字:その他のポイント

  • (イ)  嚥下困難者用製剤加算は、嚥下障害等があって、薬価基準に収載されている剤形では薬剤の服用が困難な患者に対し、医師の了解を得た上で錠剤を砕く等剤形を加工した後調剤を行うことを評価するものである。

  • (ロ) 剤形の加工は、薬剤の性質、製剤の特徴等についての薬学的な知識に基づいて行わなければならない。

  • (ハ) 嚥下困難者用製剤加算は、処方箋受付1回につき1回算定できる。

  • (ニ) 1剤として取り扱われる薬剤について、自家製剤加算は併算定できず、また、剤形を加工したものを用いて他の薬剤と計量混合した場合には、計量混合調剤加算を併算定することはできない。

  • (ホ) 嚥下困難者用製剤加算を算定した場合においては、外来服薬支援料2は算定できない。

  • (ヘ) 薬剤師が剤形の加工の必要を認め、医師の了解を得た後剤形の加工を行った場合は、その旨調剤録等に記載する。

  • (ト) 個々の患者に対し薬価基準に収載されている医薬品の剤形では対応できない場合は、嚥下困難者用製剤加算を算定できない。

対して自家製剤加算は、「処方された用量に対応する剤形・規格がないこと」に加えて、「医師の指示に基づき自家製剤を行う場合」が対象になるという考え方が示されています。

処方された用量の剤形はあるものの、そのままでは服薬が困難な患者さんに対して錠剤を分割する場合は、嚥下困難者用製剤加算は算定できませんが、医師の了解を得て錠剤を粉砕くなど“剤形を加工した”場合は算定可能です。

調剤管理料で情報収集・分析・記録を
服薬管理指導料で情報提供・指導を評価

対人業務の評価である「調剤管理料」と「服薬管理指導料」は、従来、薬剤服用歴管理指導料として評価されていた内容が2つに分けられたこともあり、位置づけがわかりにくいという人もいるかもしれません。図1がそれぞれの算定要件の概要です。

図1 調剤管理料と服薬管理指導料の算定要件の概要

改 定 前

薬剤服用歴管理指導料

(※対面での指導の場合)
  • 薬剤に関する主な情報の薬剤情報提供文書などによる提供、服用の基本的な説明
  • 患者などから服薬状況等の情報収集と薬剤服用歴への記録、これに基づく服用等に関する必要な指導
  • 手帳を用いる場合、調剤日、薬剤名などや服用に際して注意すべき事項の手帳への記載
  • 投薬された薬剤のうち服薬していないものの有無の確認
  • 薬剤情報提供文書による、後発医薬品に関する情報の提供
赤字が主な変更点

改 定 後

  • 調剤管理料

    • 処方薬剤について患者などから服薬状況等の情報を収集し、必要な薬学的分析を行った上で、薬剤服用歴への記録その他の管理を行った場合(調剤の内容に応じ、処方箋受付1回につき所定点数を算定)
    • 服用時点が同一である内服薬は、投与日数にかかわらず、1剤として算定。4剤分以上の部分は算定しない
    インテーク、薬学的分析、薬歴記録・管理などを評価
  • 服薬管理指導料

    (※対面での指導の場合)
    • 薬剤に関する主な情報の薬剤情報提供文書などによる提供、服用の基本的な説明
    • 服薬状況等の情報を踏まえた薬学的知見に基づいた、服用等に関する必要な指導
    • 手帳を用いる場合、調剤日、薬剤名などや服用に際して注意すべき事項の手帳への記載
    • 服薬していない薬剤の有無の確認に基づく指導
    • 薬剤情報提供文書による、後発医薬品に関する情報の提供
    • 保険薬剤師が必要と認める場合は、患者の薬剤の使用状況等を継続的かつ的確に把握するとともに、必要な指導等を実施
    患者さんへの情報提供・指導などを主に評価

調剤管理料は、服薬情報等の情報収集をもとに薬学的分析を行い、記録・管理することを評価した点数です。一方の服薬管理指導料は、従来の薬剤服用歴管理指導料と重なる部分が多く、患者などへの薬剤情報の説明や服薬指導、服用していない薬の確認と指導、継続的な服薬状況の把握・指導などを要件としています。

調剤管理料がインプットに基づく業務の評価が中心なのに対し、服薬管理指導料はアウトプット主体と見ることができるかもしれません。

また、調剤管理料、服薬管理指導料のどちらにも、継続的なフォローアップの考え方が盛り込まれました。調剤管理料では、薬剤服用歴(薬歴)の要件に、「今後の継続的な薬学的管理および指導の留意点」を記載する必要があります。

これは、前改定で薬剤服用歴管理指導料に位置づけられた要件を受け継いだものです。一方、服薬管理指導料では、新たに薬剤交付後の「継続的服薬指導」の要件が追加されています(表5)。

表5 服薬管理指導料で求められる継続的服薬指導の具体的内容

継続的服薬指導

保険薬剤師が、薬剤交付後においても、当該患者の服薬状況、服薬期間中の体調の変化等について、継続的な確認のため、必要に応じて指導等を実施すること。
  • ア 保険薬剤師が、患者の服用している薬剤の特性や患者の服薬状況等に応じてその必要性を個別に判断した上で適切な方法で実施すること。

  • イ 保険薬剤師が必要と認める場合は、薬剤交付後においても電話等により、(3)のイに掲げる内容について、保険薬剤師が患者等に確認し、その内容を踏まえ、必要な指導等を実施すること。

  • ウ 患者に対して実施した指導等を行った場合は、その要点について薬剤服用歴等に記載すること。

  • エ 電話や情報通信機器を用いた方法により実施して差し支えないが、患者等に電子メールを一律に一斉送信すること等をもって対応することは、継続的服薬指導を実施したことにはならず、個々の患者の状況等に応じて対応する必要があること。

  • オ 継続的服薬指導に当たっては、「薬剤使用期間中の患者フォローアップの手引き」(日本薬剤師会)等を参考とすること。

継続的フォローは、2019年の医薬品医療機器等法の改正で薬局薬剤師の業務として義務づけられましたが、高齢化がさらに進むなかで、かかりつけ薬局・薬剤師の役割として一層クローズアップされることになりそうです。

点数については、調剤管理料は処方日数に応じた段階的評価となっています(図2)。

図2 調剤管理料

(新)調剤管理料

1 内服薬((浸煎薬及び湯薬を除く。)を調剤した場合(1剤につき))

  • イ 7日分以下の場合 4点
  • ロ 8日分以上14日分以下の場合 28点
  • ハ 15日分以上28日分以下の場合 50点
  • ニ 29日分以上の場合 60点

2 1以外の場合

  • 1以外の場合 4点

【算定要件】

  • 処方された薬剤について、患者又はその家族等から服薬状況等の情報を収集し、必要な薬学的分析を行った上で、薬剤服用歴への記録その他の管理を行った場合に、調剤の内容に応じ、処方箋受付1回につき所定点数を算定する。
  • 1については、服用時点が同一である内服薬は、投薬日数にかかわらず、1剤として算定する。なお、4剤以上の部分については算定しない。

旧・調剤料を踏襲した形ですが、内服薬の処方日数区分が5段階から4段階に整理されました。服薬管理指導料は、旧・薬剤服用歴管理指導料と同じ評価体系で、今改定では少し点数が引き上げられました(図3)。

図3 服薬管理指導料

(新)服薬管理指導料

  • 1 原則3月以内に再度処方箋を持参した患者に対して行った場合 45点
  • 2 1の患者以外の患者に対して行った場合 59点
  • 3 特別養護老人ホ-ムに入所している患者に訪問して行った場合 45点
  • 4 情報通信機器を用いた服薬指導を行った場合
    • イ 原則3月以内に再度処方箋を持参した患者に対して行った場合 45点
    • ロ イの患者以外の患者に対して行った場合 59点

【算定要件】

  • 患者ごとに作成された薬剤服用歴に基づき、投薬に係る薬剤の名称、用法、用量、効能、効果、副作用及び相互作用に関する主な情報を薬剤情報提供文書により患者に提供し、薬剤の服用に関して基本的な説明を行うこと。
  • 服薬状況等を踏まえた薬学的知見に基づき、処方された薬剤について、薬剤の服用等に関して必要な指導を行うこと。
  • 手帳を用いる場合は、調剤日、投薬に係る薬剤の名称、用法、用量その他服用に際して注意すべき事項を手帳に記載すること。
  • これまでに投薬された薬剤のうち、服用していないものの有無の確認に基づき、必要な指導を行うこと。
  • 薬剤情報提供文書により、投薬に係る薬剤に対する後発医薬品に係る情報を患者に情報提供すること。
  • 処方された薬剤について、保険薬剤師が必要と認める場合は、患者の薬剤の使用の状況等を継続的かつ的確に把握するとともに、必要な指導等を実施すること。
  • 1の患者であって、手帳を提示しないものに対して、上記を行った場合は、2により算定する(4のイ及びロについても同様)。

注目されるのは、「情報通信機器を用いた服薬指導(オンライン服薬指導)」の項目ですが、この点については後で取り上げます。

かかりつけ薬剤師と連携する
他の薬剤師の対応を特例で評価

調剤業務の評価体系の見直しに伴って、加算の位置づけも変更されました(図4)。

図4 主な調剤業務評価と加算の体系の変更

青字:改定後に位置づけなどの変更あり
 赤字:新設
 緑字:位置づけなどの変更

主な調剤業務評価と加算の体系の変更 主な調剤業務評価と加算の体系の変更

図の中の赤字が新設された加算です。ポリファーマシー対策は前改定から引き続き重視されているテーマですが、今改定では調剤管理料に「調剤管理加算」が設けられ、複数の医療機関から6種類以上の内服薬が処方されている患者に対し、服薬状況等を一元的に把握し必要な薬学的管理を行うことが評価されています。詳しくは、3回目の記事で取り上げます。

服薬管理指導料やかかりつけ薬剤師指導料のほか、在宅患者訪問薬剤管理指導料などに新設された「小児特定加算」は、医療的ケア児や家族に対する薬学的管理・指導を評価したものです(図5)。

図5 小児特定加算

【 算定対象 】
児童福祉法第56条の6 第2項に規定する障碍児である患者(18歳未満の患者)

  • 服薬管理指導料

    (新)小児特定加算 350点[ 算定要件 ]
    調剤に関して必要な情報等を直接当該患者又はその家族等に確認したうえで当該患者又はその家族等に対し、服用に関して必要な指導を行い、かつ、当該指導の内容等を手帳に記載した場合に加算する。

    ※かかりつけ薬剤師指導料についても同様

  • 在宅患者訪問薬剤管理指導料

    (新)小児特定加算 450点[ 算定要件 ]
    患者又はその家族等に対して、必要な薬学的管理及び指導を行った場合に加算する。


    ※在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急時等共同指導料についても同様

医療的ケア児とは、医学の進歩を背景として、NICU等に長期入院した後、引き続き人工呼吸器や胃ろう等を使用し、痰の吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な児童のこと。
全国の医療的ケア児(在宅)は約2万人(推計)


児童福祉法

第五十六条の六 第二項

地方公共団体は、人工呼吸器を装着している障碍児その他の日常生活を営むために医療を要する状態にある障碍児が、その心身の状況に応じた適切な保護、医療、福祉その他の各関連分野の支援を受けられるよう、保健、医療、福祉その他の各関連分野の支援を行う機関との連絡調整を行うための体制の整備に関し、必要な措置を講ずるように努めなければならない。

対象となるのは、児童福祉法第56条の6第2項に規定された、18歳未満の「人工呼吸器を装着している障害児その他の日常生活を営むために医療を要する状態にある障害児」です。算定するときには、該当する状態にあることを、障害者手帳や処方医への問い合わせなどを通じて確認する必要があります。

かかりつけ薬剤師については、他の薬剤師と連携して対応することへの評価が導入され、負担軽減も期待されます。やむを得ない事情でかかりつけ薬剤師が対応できず、連携する他の薬剤師が同様の指導などを実施した場合に、「服薬管理指導料の特例(かかりつけ薬剤師と連携する他の薬剤師が対応した場合)」として評価。再来患者に対する服薬管理指導料よりも高い点数が設定されました(図6)。

図6 服薬管理指導料の特例(かかりつけ薬剤師と連携する他の薬剤師が対応した場合)

(新)服薬管理指導料の特例
(かかりつけ薬剤師と連携する他の薬剤師が対応した場合) 59点

【算定対象】
当該保険薬局における直近の調剤において、かかりつけ薬剤師指導料又はかかりつけ薬剤師包括管理料を算定した患者

【算定要件】
やむを得ない事情により、当該患者の同意を得て、当該指導料又は管理料の算定に係る保険薬剤師と、当該保険薬剤師の所属する保険薬局のほかの保険薬剤師であって別に厚生労働大臣が定めるものが連携して、指導等を行った場合に、処方箋受付1回につき、算定する。

【施設基準】
別に厚生労働大臣が定めるものは、かかりつけ薬剤師指導料又はかかりつけ薬剤師包括管理料に係る患者の同意を得た保険薬剤師と連携した指導等を行うにつき十分な経験等を有する者※(1名に限る。)であること。

※「かかりつけ薬剤師と連携する他の薬剤師」は以下の要件をすべて満たす保険薬剤師であること。

  • (1)保険薬剤師として3年以上の薬局勤務経験があること。なお、保険医療機関の薬剤師としての勤務経験を1年以上有する場合、1年を上限として保険薬剤師としての勤務経験の期間に含めることができる。
  • (2)当該保険薬局に継続して1年以上在籍していること。

各種加算も算定可能です。連携する薬剤師の要件は、3年以上の保険薬局勤務経験があり(保険医療機関の勤務経験も1年まで合算可)、その薬局に継続して1年以上在籍していることです。常勤かどうかは問われず、週3回勤務の薬剤師でもよいとされているのがポイントです。

ただし、かかりつけ薬剤師にやむを得ない事情がある場合に、他の薬剤師が指導などを行うことについて、あらかじめ患者の同意を文書で得ている必要があり、同意取得後、次の処方箋受付時から算定できるルールです。

届出は必要ありませんが、文書には連携する薬剤師の氏名も記載しなければならず、要件を満たす薬剤師ならば誰でもかかりつけ薬剤師に替わって対応できる、というわけではありません。

オンライン服薬指導の拡大と
デジタルトランスフォーメーション

今改定では、オンライン診療・服薬指導の要件が緩和され、対象が拡大されたことも大きなポイントです。

オンライン服薬指導については、2020年9月の改正医薬品医療機器等法(薬機法)の施行により解禁されましたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大のため、それに先立って2020年4月に、特例的な対応(0410対応)として情報通信機器や電話による服薬指導が可能になりました。

そして今改定では、0410対応で導入された、初めて来局した患者に対するオンライン服薬指導が恒久化され、服薬管理指導料で対面指導と同じ点数が設定されました。

訪問薬剤管理指導においても同様に、「在宅患者オンライン薬剤管理指導料」などが新設され、訪問して行う「在宅患者訪問薬剤管理指導料」と合わせて月4回(末期悪性腫瘍などでは週2回月8回)まで算定可能になり、一部加算も取れるようになりました。

対面指導と柔軟に組み合わせられるようになったことで、オンライン服薬指導がどこまで普及するかが注目されます。ただし、介護報酬である居宅療養管理指導費に関しては、オンライン服薬指導は従来通り月1回までで、各種加算も算定できないため注意が必要です。

3月末には、これらの動きに対応して薬機法の一部が改正され、オンライン服薬指導の具体的な運用方法が通知で示されました。

「オンライン服薬指導は患者の求めに応じて薬剤師の判断と責任に基づき行う」ことをはじめ、薬剤師が服薬指導を行う場所、処方箋の扱いなどについても記載されています。

なお、オンライン服薬指導の規制緩和については、診療報酬とは別に議論が進められており、厚労省は法改正により、調剤が行われている薬局に所属するなど一定の要件を満たせば、薬剤師が薬局以外の場所から実施することを認める方針も示しています。

2023年1月からは電子処方箋の運用開始が予定され、今改定ではその基盤となるオンライン資格確認等システムの活用を促すために、「電子的保険医療情報活用加算」も新設されました。

オンライン診療・服薬指導の普及は、電子処方箋の活用につながると期待されるため、今後さらに規制緩和が進むことになるでしょう。薬局においても、既存の業務をデジタルトランスフォーメーション(DX)にいかに対応させ、対人業務の質向上や業務の効率化に役立てるが、今後課題になると予想されます。今改定はその橋頭堡といえるかもしれません。

(参考資料)
◎厚生労働省保険局医療課「令和4年度調剤報酬改定の概要(調剤) 令和4年3月4日版」
◎日本薬剤師会「調剤報酬点数表(令和4年4月1日施行)」
◎厚生労働省医政局通知「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について 別添3 調剤報酬点数表に関する事項」
◎厚生労働省保険局医療課「令和4年度診療報酬改定 調剤報酬点数表」
◎厚生労働省保険局医療課「令和2年度診療報酬改定 調剤報酬点数表」

※本記事は2022年4月7日までの疑義解釈を参考に執筆しています。

PROFILE
利根川 恵子
医療ジャーナリスト。薬剤師。東京医科歯科大学医療政策学修士。
医療系出版社勤務後、2000年に独立。薬剤師としての知識を活かしつつ、医療分野・介護分野を中心に取材を行う。

著書『福祉・介護職のための病院・医療の仕組みまるわかりブック』
『イラストで理解するケアマネのための薬図鑑』(共著)など。

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