2016年度診療報酬改定と医療機関・薬剤師への影響 | 薬剤師の転職・求人・募集なら【マイナビ薬剤師】

2016年度診療報酬改定と医療機関・薬剤師への影響

2016年度診療報酬改定と医療機関・薬剤師への影響 2016年度診療報酬改定と医療機関・薬剤師への影響

急性期病床の絞り込みと各病床機能を整理

まず、2016年度診療報酬改定では、急性期に配分が偏っている病院の入院病床を中心に、医療機能の分化がさらに進められました。急性期の病床(7対1一般病棟)や地域包括ケア病棟、療養病棟などでは、それぞれの病床にふさわしい患者の状態像の基準が示され、それを満たした患者が一定割合以上いることが要件の一つとされています。16年度改定では、この状態像の基準(「重症度、医療・看護必要度」)とその割合を見直すことで、算定のハードルを一段引き上げました。

その結果、改定後には7対1病棟の届出病床数はやや減少し、点数の低い10対1病棟区分や、急性期後や在宅の患者を受け入れる地域包括ケア病棟などに転換させる動きが見られました。また、地域包括ケア病棟については、急性期の大病院が急性期後の患者の受け皿として設置する例も見られていましたが、高度急性期機能の病床があるか、500床以上の病院では1病棟までに限ると歯止めもかけられました。つまり、大病院は主に急性期医療を、急性期後や在宅のバックアップを中小病院が担うという機能分担が基本であるという方針が明示されたわけです。

18年度改定では、急性期の入院料にさらなるメスが入り、大がかりな再編が行われる見通しです。それを機に、中小病院では病床機能再編の流れが加速していくことはまず間違いないでしょう。

一方、長期療養患者の多い療養病棟では、医療の必要度(医療区分)やADL(ADL区分)によって入院基本料が変わる仕組みですが、入院させる患者の状態像について要件のない病棟もありました。16年度改定では、そうした病棟にも医療の必要性の高い患者を一定程度以上受け入れるというルールが導入されました。これは、医療保険の病床で受け入れるべき患者像を明確化し、在宅や介護保険施設などとの線引きをしたものといえます。

介護保険の療養病床や、看護配置の低い医療療養病床は2023年度末で廃止されることになり、介護医療院という医療機能も持った施設系サービスなどへの転換が進められています。急性期か回復期、慢性期か、医療保険か介護保険か、地域の医療ニーズを踏まえたうえでの病院の選択が迫られることになります。

かかりつけ機能の強化と在宅医療体系の整理

一方、病院から地域へと療養の場をシフトさせるなかで、16年度改定では地域の医療資源の確保も引き続き求められました。高齢者の増加に対して、医師に加えて歯科医師や薬剤師のかかりつけ機能が新たに評価されたほか、医師の訪問診療の報酬が重症度や居住場所、訪問人数などに応じてきめ細かく整理されました。次期改定では、この評価体系を介護保険の居宅療養管理指導などに広げることも検討されています。

また、一定の条件付きで、初めて在宅医療専門診療所の開設も認められました。ただ、今もなお在宅医療資源の確保は、地域包括ケアにおける大きな課題であり、在宅療養支援診療所以外の医療機関を在宅にどう取り込むか、18年度改定ではより踏み込んだ議論が行われています。

こうした動きと合わせ、入院から地域へと円滑につなぐための退院前後の連携機能が強化され、ケアマネジャーなど介護関係職との連携がさらに評価されたのも注目すべき点です。この動きは18年度改定ではさらに強化されています。地域包括ケアのキーマンとしてのケアマネジャーの存在感は、今後ますます大きくなることが予想されます。

そのほか16年度改定は、残薬や不適切な多剤投薬や、調剤報酬のあり方など、薬剤や薬局・薬剤師が大きくクローズアップされた改定でもありました。次の項目では、薬剤師関連の点数について見てみましょう。

薬剤師と2016年度診療報酬改定

高度急性期に広がる薬剤師の病棟業務

病院薬剤師では、病棟薬剤業務実施加算(以下、実施加算)の対象が拡大され、救命救急室や特定集中治療室(ICU)といった高度急性期の病床での薬剤関連業務も、病棟薬剤業務実施加算2として新たに評価されることになりました。

厚生労働省の調査によると、2016年10月時点で、実施加算1の届出施設のうち、実施加算2の届出もしている施設は35.0%で、配置先としてはICUが8割強と最も多いことが報告されています(図表A)。一方、届出をしていない理由としては、「算定対象病棟がない」に次ぎ、「薬剤師の人数が不足しているため」といった回答も3割強見られています。いかに薬剤師を確保するかが、今後の病棟業務のカギになると考えられます。

16年度改定では「多剤投薬(ポリファーマシー)」をキーワードに、減薬に関わる調整が評価されました。医療機関では、6種類以上の内服薬処方に対する2種類以上の減薬を評価する「薬剤総合評価調整加算250点(入院患者対象)」「薬剤総合評価調整管理料250点(外来患者対象)」が設けられました。後者では、薬局との間での照会、情報提供が評価されたのも特徴です。

図表A 病棟薬剤業務実施加算2での薬剤師の配置先

病棟薬剤業務実施加算2として、どこに薬剤師を配置しているか(病棟薬剤業務実施加算2の届出をしている施設、n=42)

病棟薬剤業務実施加算2での薬剤師の配置先 病棟薬剤業務実施加算2での薬剤師の配置先
図表A…出典:中央社会保険医療協議会「病棟薬剤業務実施加算2での薬剤師の配置先」2016年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(16年度調査) 夜間の看護要員配置における件等見直しの影響及び医療従事者の負担軽減にも資するチーム医療の実施状況調査報告書(案)

ハードルが上がった重複投薬・相互作用等防止加算

調剤報酬においても、薬剤服用歴管理指導料等への加算である重複投薬・相互作用防止等加算があります。ただ、薬局においてはこの加算が、医師に疑義照会し処方変更が行われた場合のみの評価に一本化され、算定のハードルが引き上げられました。また、それまで評価のなかった在宅において在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料が新設されました。

この重複投薬・相互作用等防止加算の算定状況ですが、保険薬局調査によると、17年6月の1ヵ月間において回答施設平均で7.3回算定されています。ただし、在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料については平均0.2回と、あまり進んでいない様子がうかがえます。

なお、薬剤服用歴管理指導料は2区分に分けられ、お薬手帳を持参し、6ヵ月以内に同じ薬局に訪れた患者では、2回目以降の来局時に低い点数を算定することになりました。ただし、門前の大型チェーン薬局などには適用されません。

これらの要件から、重複投薬の防止など薬剤費の効率化のために、お薬手帳やかかりつけの薬局を持つことを奨励する国の方針がはっきりと読み取れます。厚労省の調査では、お薬手帳の持参で支払額が安くなることは、患者の7割近くから認知されていて、その普及を後押しする点数となりました。

かかりつけ薬剤師は定着するか

図表B かかりつけ薬剤師を持って良かった点(患者調査)

かかりつけ薬剤師がいてよかったと実感した経験(男女別、かかりつけ薬剤師が「いる」と回答した患者、複数回答)
かかりつけ薬剤師を持って良かった点(患者調査) かかりつけ薬剤師を持って良かった点(患者調査)

(注)「その他」の内容として、「自宅まで来て対応してくれる」、「相談にのってもらえる」、「漢方の相談もできる」、「OTC薬についてもアドバイスをしてくれる」、「副作用が出た時に相談にのってもらい、同じ系統の薬を教えてくれる」、「医師の出した薬の量を確認してくれる」等が挙げられた。

図表B…出典:中央社会保険医療協議会「かかりつけ薬剤師を持って良かった点(患者調査)」医薬品の適正使用のための残薬、重複・多剤投薬の実態調査並びにかかりつけ薬剤師・薬局の評価を含む調剤報酬改定の影響及び実施状況調査報告書(案)

16年度調剤報酬改定の一番の注目点は、何と言ってもかかりつけ薬剤師・薬局の評価でしょう。2015年に、厚生労働省がまとめた『患者のための薬局ビジョン』に沿って、処方医と連携しての患者の服薬状況の一元的・継続的な把握、患者からの相談への24時間対応体制などが、「かかりつけ薬剤師指導料」「かかりつけ薬剤師包括管理料」で新たに評価されました。

このかかりつけ薬剤師機能については、患者からの評価も高く、そのメリットとして「自分の飲んでいる薬をすべて把握してくれる」「薬についてわかりやすく説明してくれる」「薬に関する相談に対応してくれる」といった声があがっています(図表B)。かかりつけ薬剤師指導料等を算定する患者の年代は、75歳以上の高齢者が主体となっているようです(図表C)。

なお、16年度改定では、門前の大型チェーン薬局に厳しい対応が取られました。調剤基本料の細分化や、基準調剤加算の一本化が実施され、処方せん受付回数、処方せん集中率が95%超などの門前の大型チェーン薬局に対し、調剤基本料が引き下げられました。引き下げを回避しようと、一部の薬局で処方せん付け替えなどが問題になったほか、薬剤師1人当たり月100回以上のかかりつけ薬剤師指導料(包括管理料)を算定した場合などに認められる特例除外を目指した、極端にかかりつけ同意取得率の高い薬局も出現し、かかりつけ機能の意味も問われました。

18年度改定では、こうした問題も踏まえ、かかりつけ薬剤師・薬局の仕組みや、基準調剤加算に変わる新たな評価が示されることになるでしょう。

図表C かかりつけ薬剤師指導料等の算定状況と患者の年代(2017年6月1ヵ月間、保険薬局調査)

かかりつけ薬剤師指導料の算定患者数と年齢構成割合(届出施設、n=601)

(単位:人)

平均値 標準偏差 中央値
患者数(人) 構成割合(%)
0〜14歳 2.4 12.2 15.6 0.0
15〜64歳 4.0 19.9 14.7 0.0
65〜74歳 4.4 22.2 15.3 0.0
75歳以上 8.7 43.4 23.2 1.0
年齢不明 0.4 2.2 7.7 0.0
合計 20.0 100.0 51.7 3.0

(注)届出施設のうち、算定患者の年齢構成別人数について回答のあった601施設を集計対象とした。

図表C…出典:中央社会保険医療協議会「かかりつけ薬剤師指導料等の算定状況と患者の年代(2017年6月1ヵ月間、保険薬局調査)」医薬品の適正使用のための残薬、重複・多剤投薬の実態調査並びにかかりつけ薬剤師・薬局の評価を含む調剤報酬改定の影響及び実施状況調査報告書(案)

PROFILE
利根川 恵子
医療ジャーナリスト。薬剤師。東京医科歯科大学医療政策学修士。
医療系出版社勤務後、2000年に独立。薬剤師としての知識を活かしつつ、医療分野・介護分野を中心に取材を行う。

著書『福祉・介護職のための病院・医療の仕組みまるわかりブック』
『イラストで理解するケアマネのための薬図鑑』(共著)など。

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