2018年度診療報酬改定 変わる薬剤師の在宅業務 | 薬剤師の転職・求人・募集なら【マイナビ薬剤師】

2018年度診療報酬改定 変わる薬剤師の在宅業務

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2018年度診療報酬改定では、地域包括ケアシステムの基盤となる在宅医療でも大きな見直しが行われました。介護報酬との同時改定という6年に1度のチャンスであり、在宅医療資源の拡充が喫緊の課題とされていることなどが背景となっています。

調剤においては、「効率的で質の高い在宅薬剤管理指導業務の推進」が改定の基本方針の一つに掲げられ、在宅患者訪問薬剤管理指導料の評価基準が見直されました。2016年度改定で、医師の在宅時医学総合管理料等の基準が改められましたが、それと整合性を持たせた格好です。

今回は在宅領域において、薬剤師の報酬やその業務に関わる診療報酬・介護報酬の改定の動向を紹介します。

評価体系が見直された在宅業務

「同一建物居住者」と「単一建物診療患者」の違いは?

薬剤師の在宅業務における2018年度診療報酬改定の最大のポイントは、その評価体系が見直されたことでしょう。要支援・要介護者以外の医療保険対象の患者さん宅を訪問し、薬の管理や指導などを行った場合には在宅患者訪問薬剤管理指導料が算定できます。この指導料は、これまでは「同一建物居住者」の場合かどうかで点数が2つに区分されていましたが、「単一建物診療患者の人数」に応じて3区分に改められました。

表1 在宅患者訪問薬剤管理指導料の見直し内容

在宅患者訪問薬剤管理指導料について、単一建物診療患者の人数に応じた評価に見直す。

改定前

在宅患者訪問薬剤管理指導料

  • (1)同一建物居住者以外の場合 650点
  • (2)同一建物居住者の場合 300点

※同一建物居住者 当該患者と同一の建物に居住する他の患者に対して当該保険医療機関が同一日に訪問薬剤管理指導を行う場合を「同一建物居住者の場合」という。

改定後

在宅患者訪問薬剤管理指導料

  • (1)単一建物診察患者が1人の場合 650点
  • (2)単一建物診察患者が2~9人の場合 320点
  • (3)1及び2以外の場合(10人以上) 290点
※単一建物診察患者の人数
  • (1)当該患者が居住する建築物に居住する者のうち、当該保険薬局等が在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定する者の人数を「単一建物診察患者の人数」という。なお、ユニット数が3以下の認知症対応型共同生活介護事業所については、それぞれのユニットにおいて、居住療養管理指導費を算定する人数を、単一建物診療患者の人数とみなすことができる。
  • (2)以下の場合は、それぞれの患者に対し、「単一建物診察患者が1人の場合」を算定する。 ・同居する同一世帯に、訪問薬剤管理指導を行う患者が2人以上いる場合
    ・訪問薬剤管理指導を行う患者数が当該建築物の戸数の10%以下の場合
    ・当該建築物の戸数が20戸未満にあって、訪問薬剤管理指導を行う患者が2人以下の場合

医療機関の薬剤師が実施する場合も同様に見直し。

よく似た言葉ですが、「同一建物居住者」の場合とは、その患者と同じ建物に居住する他の患者に対して、「同じ日に訪問薬剤管理指導を行った」場合を指します。一方の「単一建物診療患者」とは、「当該患者が居住する建築物に居住する者のうち、当該保険薬局が在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定する者の人数」のこと。つまり、訪問日が同じかどうかに関わらず、同じ建物内に同指導料を算定する患者さんが何人いるかで点数が決まるというわけです。

報酬額は表1のように変わりました。「単一建物診療患者が1人」の場合は650点で以前の「同一建物居住者以外」と同じ、「2~9人」では320点で従来の「同一建物居住者の場合」より20点上がりました。一方、人数が10人以上の場合は290点とされ、「同一建物居住者の場合」より10点の引き下げとなりました。

従来は同一日の訪問でなければ、人数に関わらず650点が算定できていましたが、今後は単純に人数で区分が決まることに注意が必要です。

ただし、個人在宅などに配慮して、同居する同一世帯で算定患者が2人以上いる場合や、算定患者数がその建物の戸数の10%以下の場合、また建物の戸数が20戸未満で算定患者数が2人以下の場合は例外として「単一建物診療患者が1人」の区分とされます。医療機関の薬剤師が算定する同指導料も同じです。

居住系施設の規模と居宅療養管理指導

介護報酬の居宅療養管理指導費にも、この基準は導入されました。薬剤師の居宅療養管理指導費では、その建物内で「同一月」に居宅療養管理指導を行っている利用者数を「単一建物居住者の人数」としていますが、診療報酬と実質的に意味するところは同じです。報酬は、単一建物居住者「1人」「2人~9人」の2区分で引き上げられ、10人以上では下げられています。

なお、3ユニット以下のグループホーム(GH)については、それぞれのユニットごとの算定者数を基準とすることができます。1ユニットの定員は9人以下なので、そうしたGHでは「1人」か「2人~9人」の区分で算定可能というわけです。

表2 薬剤師が行う居宅療養管理指導の報酬(介護報酬)

  • 改定前

    病院又は診療所の薬剤師が行う場合

    (1)同一建物居住者以外の場合
    553単位
    (2)同一建物居住者の場合
    387単位

    薬局の薬剤師が行う場合

    (1)同一建物居住者以外の場合
    503単位
    (2)同一建物居住者の場合
    352単位
  • 改定後

    病院又は診療所の薬剤師が行う場合

    (1)単一建物居住者が1人の場合
    558単位
    (2)単一建物居住者が2人~9人の場合
    414単位
    (3) (1)または(2)以外の場合(10人以上)
    387単位

    薬局の薬剤師が行う場合

    (1)単一建物居住者が1人の場合
    507単位
    (2)単一建物居住者が2人~9人の場合
    376単位
    (3)(1)または(2)以外の場合(10人以上)
    344単位

介護報酬では、要支援者に対する介護予防居宅療養管理指導費もありますが、単一建物居住者数は居宅療養管理指導の対象者と区別せず合わせてカウントします。そのため、同じ有料老人ホームに住む要支援者1人と要介護者1人に訪問業務を実施すると、要支援者は介護予防居宅療養管理指導費、要介護者は居宅療養管理指導費において、それぞれ「単一建物居住者2人~9人」の区分の報酬を算定することになります。

乳幼児に対する加算が充実

今回の改定で、在宅の体系は整理され、評価にはメリハリが付けられました。有料老人ホームなど居住系施設を中心に訪問している薬局などでは、居宅療養管理指導の対象患者数が多いだけに、少なからず影響を受ける例もあるかもしれません。

利用していた薬局はそう多くはないと思いますが、日にちを変えて訪問するという回避策もなくなったため、1施設の担当患者数が10人以上の大きな施設ほど、報酬引き下げの影響は大きくなります。反対に、個人宅や小規模施設への訪問では、従来に比べて収入が上がるケースもあるでしょう。今後は個人在宅と居住系施設のバランス、また居住系施設の規模を意識した在宅展開が必要になりそうです。

そのほか診療報酬では、在宅患者訪問薬剤管理指導料の無菌調剤処理加算が引き上げられました。6歳未満の乳幼児についての加算が手厚くなったのも特徴で、無菌調剤処理加算で乳幼児に対する加算を上乗せするとともに、訪問業務に対する乳幼児加算(1回100点)も新設されています。

介護保険の居宅療養管理指導では、中山間地域などにおける訪問の負担に配慮し、厚生労働大臣が指定した地域にある薬局が実施した場合や、そうした地域に住む利用者に通常の事業エリアを超えて行った場合などで加算が設けられています。

在宅業務における多職種連携の強化

退院前カンファレンスの開催促す見直しも

今改定では、入院から在宅へ切れ目のないサービスを提供するための連携もキーワードになっています。退院前のカンファレンスを評価する退院時共同指導料では、医師や看護職以外の参加も評価の対象となり、医療機関、保険薬局の薬剤師がそれぞれ算定要件に追加されました。

在宅療養を担う3つ以上の関係機関がカンファレンスに参加した場合は、病院側にはさらに2000点の加算が付きます。今回、この加算について病院側の医師の参加が必須ではなくなり、算定のハードルが下がりました。加えて介護報酬ではケアマネジャーの退院時カンファンレンス参加への評価が手厚くなったことで、多職種でのカンファレンスの機運が高まり、薬局薬剤師に声がかかる機会も増えると予想されます。

ただ、在宅側の職種にとってカンファレンスへの参加は難しいこともあります。そこで今改定では「やむを得ない事情」があるときには、通信機器を用いたリアルタイムでの画像でのやり取りによる参加も条件付きで認められました。「やむを得ない事情」とは、天候不良により会場への交通手段がない場合や、急患の対応により間に合わなかった場合とされています。携帯電話による画像通信も可能ですが、患者さんの個人情報を画面上で共有する場合は患者さんの同意を得ることや、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に準拠した機器を用いることが必要です。

複数医療機関による訪問診療を評価

在宅領域では、薬剤師の業務に間接的に影響する可能性のある見直しも行われています。

図1 在宅医療の見直しのポイント

  • 在宅医療の提供体制の確保

    在宅医療の提供体制では、在支診以外の医療機関の訪問診療(裾野の拡大)が必要である一方、かかりつけ医機能の一部として在宅医療を提供するには、24時間体制の確保が負担

  • 在宅患者の状態に応じたきめ細やかな対応

    訪問診療を必要とする患者が複数の疾患を有するなど、在宅医療ニーズは多様化・高度化

  • 複数の医療機関の連携による24時間体制の確保

    在支診以外の診療所が、他の医療機関との連携等により24時間の往診体制等を確保し、かかりつけの患者に対し訪問診療を行う場合の評価を新設。

  • 2ヶ所目の医療機関による訪問診療の評価

    複数疾患を有する患者等に対し、在宅の主治医の依頼を受けた他の医療機関が訪問診療を行った場合を新設。

  • 患者の状態に応じたきめ細やかな評価

    在宅時医学総合管理料等について、重症患者以外であって、特に通院が困難な患者等に対する加算を新設。

  • 在支診以外の医療機関による医学管理の評価

    在宅時医学総合管理料等について、機能強化型在支診以外の医療機関が月1回の訪問診療を行う場合の評価を充実。

  • 末期の患者への緊急対応の評価

    標榜時間内に往診を行った場合の加算(緊急往診加算)の算定対象に、訪問診療を行っている医学的に末期の患者を追加。

  • ターミナルケアの評価の充実

    ターミナルケアの評価を充実するとともに、特養での看取りに協力して行ったターミナルケアにも評価対象に追加。

中でも特筆すべきは、複数医療機関による訪問診療が評価された点でしょう。

訪問診療では、これまで1人の在宅主治医を原則とした報酬体系でした。複数の疾患があって、皮膚科など別の医療機関の医師による診療が必要になっても、2人目の医師は在宅患者訪問診療料を算定できないという壁がありました。それを見直したのが今回の改定です。在宅主治医の依頼を受けて、他の医療機関の医師が訪問して治療を行った場合、依頼を受けた医師が診療を開始した月から6ヵ月以内(神経難病等の患者を除く)に限って在宅患者訪問診療料を算定できることになりました。

こうした見直しにより、薬局が複数の医療機関から1人の在宅患者さんに対する処方箋を応需する機会も出てくると考えられます。全ての医療機関の薬剤情報を管理し、有害事象などをチェックする機能がますます重要になりますし、場合によっては他の薬局と連携して業務に当たることが求められるかもしれません。

ケアマネジャーからの情報提供も義務に

医療と介護の連携が推進されるなかで、今改定ではケアマネジャーとの情報共有も強化されました。薬剤師の居宅療養管理指導ではケアマネジャーへの情報提供は必須とされていますが、ケアマネジャーにも、訪問介護職などから伝達された利用者の情報のうち必要な情報を、医師や薬剤師に伝えることが省令で義務付けられました。また、がん末期においては、在宅主治医がケアマネジャーに予後や病状の変化などの情報を提供することも在宅時医学総合管理料等の要件に追加されています。

多職種連携は、今では薬剤師の在宅業務にも欠かせなくなりつつあります。多職種と情報を共有し連携するなかで、薬剤師が患者さんにどう貢献するかも注目されています。

PROFILE
利根川 恵子
医療ジャーナリスト。薬剤師。東京医科歯科大学医療政策学修士。
医療系出版社勤務後、2000年に独立。薬剤師としての知識を活かしつつ、医療分野・介護分野を中心に取材を行う。

著書『福祉・介護職のための病院・医療の仕組みまるわかりブック』
『ケアマネ実践料シリーズ 医療知識』(共著)など。

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