処方監査とは?基本の流れや質を高めるコツについて解説

処方監査とは?基本の流れや質を高めるコツについて解説
薬剤師は、薬剤師法第23条によって「処方せんによる調剤」および、第24条によって「処方せん中に疑わしい点があるときには疑わしい点を確かめた後でなければ調剤してはならない」ことが義務付けられています。

そのため、調剤をする前には、必ず処方監査をしなければなりません。処方監査は、薬剤師の専門知識をフルに活用する必要があり、患者さんの薬物療法の有効性と安全性を守るための薬剤師の腕の見せ所とも言える業務です。

ここでは、処方監査の基本的な流れや、処方監査の質を高めるコツなどについて解説します。

参照元:厚生労働省/薬剤師法

1.処方監査とは?

処方監査とは、薬剤師が薬物療法の専門家という立場で、医薬品の適正使用という観点から、医師の処方に対して法的にも薬学的にも「疑わしい点のない適切な処方」かどうかを確認する業務です。

処方監査をする理由は、薬剤師が患者さんの有効かつ安全な医療の一翼を担っているからであり、薬剤師は常に処方箋の向こうに患者さんがいることを念頭に入れて、処方監査を行うことが求められます。

2.処方監査の基本的な流れ

処方監査の基本的な流れでは、処方箋に記載されるべき内容が備わっているかを確認する「形式的監査」と、患者さんの情報に基づいて、患者さんにとって安全性と有効性が担保された適切な処方内容かを確認する「処方箋内容の監査」です。それぞれの詳しい処方監査の内容を見ていきましょう。

参照元:厚生労働省/令和4年度調剤報酬改定の概要(調剤)

2-1.処方箋の記載事項の確認「形式的監査」

「形式的監査」では、処方箋を受け付けた時点で、処方箋に記載されるべき事項が正しく記載されているかどうか、また有効な処方箋であるかを確認します。

また、処方箋を発行する医師・歯科医師は、各医師法において処方箋に記載すべき事項が定められています。では、形式的監査の確認事項にはどのようなものがあるのでしょうか。

参照元:厚生労働省/処方箋の交付等に関連する法令の規定

2-1-1.医師の名前や患者さんの情報

●処方医の欄
処方箋を発行した医療機関の名称と所在地または医師の住所および、医師の署名または押印を確認します。

●患者さんの情報の欄
患者さんの氏名、生年月日、性別、保険区分および、保険に関する情報が記載されているかを確認します。

参照元:厚生労働省/保険調剤の理解のために(令和5年度)

2-1-2.交付年月日と処方箋の使用期間

処方箋の有効な使用期間は、交付をした日を含めて4日以内のため、交付年月日を確認します。ただし、長期の旅行など特別な理由がある時には、医師の判断により使用期限が設けられていることがあるため注意が必要です。また、令和4年診療報酬改定において導入されたリフィル処方箋では、最大3回まで同一の処方箋を使用でき、使用期限も次回予定日の前後7日間になります。

参照元:厚生労働省/令和4年度診療報酬改定の概要(調剤)

2-1-3.処方の記載に関する確認

●医薬品名や用法・用量の記載
薬価基準に収載されている医薬品であり、複数の規格がある場合にはその規格および、用法・用量が正しく記載されているかを確認し、その他、医師の後発医薬品への変更に関するチェックの有無も確認します。

●処方日数や投薬期間の記載
処方日数や使用回数が正しく記載されているかを確認しますが、その際に、投薬期間に上限がある医薬品では、その上限を超えていないかも確認をします。

2-2.薬学的観点からの確認「処方箋内容の監査」

「処方箋内容の監査」は、処方箋上に記載された薬剤に関する知識だけでなく、患者さんからの聴き取りやお薬手帳、薬歴などから得られた情報に基づいて、薬学的観点から確認します。特に、患者さんの服薬状況や生活像、一般薬やサプリメントなどの併用薬、臨床検査値など、多くの患者情報を考慮した分析が重要です。どのような点に着目して監査をすればよいのか説明します。

参照元:厚生労働省/令和4年度診療報酬改定の概要(調剤)
参照元:厚生労働省/保険調剤の理解のために(令和5年度)

2-2-1.処方されている薬は適切かどうか

ここでは、処方されている薬が適切かどうかを判断するポイントを紹介します。

●医薬品の承認情報
患者さんの病名に対して効能・効果、用法・用量が承認されていなければ処方ができないため、処方されている薬が、医薬品医療機器等法の承認内容と異なっていないかを確認します。特に、後発医薬品では効能・効果、用法・用量が先発医薬品と異なることがあるので注意が必要です。

●妊娠・授乳
患者さんからの聴き取りなどから、妊娠中や授乳中の場合には、処方されている医薬品の胎児への影響や母乳中への移行性を考慮して、処方薬が適切かどうかを判断します。

●臨床検査値
臨床検査値は、特に肝機能や腎機能について、投与量の変更や投与禁忌の薬があるため、処方量や処方薬が適切かどうかを判断するポイントになります。服用中の薬による臨床検査値の変動にも注意が必要です。

●体質や職業、生活習慣、嗜好品など
体質や職業、生活習慣、嗜好品などは、服用を避けたり、服用時間をずらしたりする必要が生じることがあります。例えば、便秘しやすい体質、車・機械の運転や高所作業が多い、乳製品やアルコールなどの摂取量や頻度などの情報によって、処方薬が適切かどうか判断する目安となるのです。

2-2-2.重複や相互作用、併用禁忌がないか

同一処方箋上で、薬効が重複している薬や、相互作用、併用禁忌の薬が処方されていないか、散薬やシロップ剤などで、配合禁忌の薬が処方されていないかなどを確認します。

2-2-3.すでに服用している薬との相互作用はないか

ほかの医療機関や受診科、ほかの薬局から処方されていて、すでに服用している薬について、お薬手帳や薬歴を活用して重複や相互作用・併用禁忌がないかを確認します。その際には、一般薬やサプリメントなども考慮する必要があります。

2-2-4.投薬期間は妥当かどうか

投与期間が妥当かどうかは、お薬手帳や薬歴、患者さんからの聴き取りを活用して判断します。例えば、同一処方を漫然と必要以上に長期間処方されている場合や投与期間に制限のある薬がそれを超えて継続されている場合、飲み忘れや服用中の体調変化などで残薬がある場合などが挙げられます。

2-2-5.患者さんのアレルギーや副作用はないか

アレルギーや副作用歴など、患者さんの既往歴を考慮した処方であるかの確認は、非常に重要です。薬歴や患者さんからの聴き取りをしっかり反映させます。

2-3.不備があった場合は疑義照会を行う

処方監査において、処方箋の不備や処方内容に疑わしい点がある場合には、必ず疑義照会を行わなければなりません。

●疑義照会を行う理由
疑義照会を行う理由は、薬剤師法第24条によって「処方箋中に疑わしい点があるときには疑わしい点を確かめた後でなければ調剤してはならない」と定められているからだけではありません。薬剤師には、患者さんに有効かつ安全な薬物療法を提供するという責任があるからです。

参照元:厚生労働省/処方箋の交付等に関連する法令の規定

●疑義照会のポイント
疑義照会のポイントは、医師の処方に疑義が生じた根拠を明確に伝えることと、代替案を提供することです。その際、添付文書などから正確な情報を確認しながら行うようにします。疑義照会を行った場合には、処方内容に変更がない場合も含めて疑義照会をした理由と医師の回答を薬歴に残すようにしましょう。

●疑義照会の成果
処方監査によって疑義照会を行った場合、副作用の回避、適切な薬物療法を受けられないことによる健康被害の回避、薬効減弱回避などが期待できます。

疑義照会について、詳しくは以下のページも参考にしてください。

3.処方監査における課題

処方監査は、医師と薬剤師が連携して、薬剤関連の医療事故を未然に防ぎ、患者さんに有効かつ安全な薬物療法を提供するために、今後も重要性が高まると考えられます。

ただし、処方監査における課題もあるようです。どのような課題があるでしょうか。また、処方監査に関連するヒヤリ・ハット事例も紹介します。

3-1.課題

処方監査における主な課題は以下のとおりです。

●時間がかかる
処方監査に要する時間が増えています。薬剤師の業務が対物から対人へシフトし、患者さんからの聴き取りやお薬手帳、薬歴から得られる情報量が増えており、その情報を加味した処方監査を行う必要があるからです。

●薬剤師の役割の多様化
医療の高度化に伴い薬物療法も多様化しているため、研鑽を積んだ質の高い薬剤師が求められています。しかし、在宅医療への参入や他職種との連携、かかりつけ薬剤師など、薬剤師に求められる日々の業務が増えており、勉強する時間がない薬剤師が多いのが現実です。

3-2.ヒヤリ・ハット事例

ほかの薬局で起きたヒヤリ・ハット事例を知ることで、同様の事例に対する注意喚起が行われ、対策を講じることが可能です。ここでは、処方監査に関連するヒヤリ・ハット事例を紹介します。

参照元:公益財団法人日本医療機能評価機構/薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業

●新規に追加になった薬の併用禁忌を見落とした事例(2022年1月)

対象患者:
セララ錠を含む14剤を服用中の80歳代の男性

処方内容:
スピロノラクトン錠が追加

事例の詳細:
電子薬歴に表示されたものの、セララ錠とスピロノラクトン錠の併用禁忌を見落として交付した。

経緯と対処:
交付後の薬歴記入時に改めて併用禁忌であることに気づき、処方医に連絡、スピロノラクトン錠はアゾセミドに処方変更となり、患者さん宅を訪問して説明の上、交換した。

推定要因:
多剤服用中で、電子薬歴にさまざまな警告表示などが表示されたこと。忙しい時間帯に多剤一包化であったため、落ち着いた確認を怠ってしまった。

参照元:公益財団法人日本医療機能評価機構/薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業/事例詳細表示

●配合剤への変更に伴う同一成分薬を削除しなかった事例(2023年1月)

対象患者:
糖尿病のある50歳代の男性

処方内容:
テネリアOD20㎎錠からカナリア配合錠に変更

事例の詳細:
DPP4阻害薬(テネリア)とSGLT2阻害薬(ジャディアンス)の2剤を服用中の患者さんに、血糖管理の悪化に伴い、DPP4阻害薬をSGLT2阻害薬との配合剤(カナリア配合錠)に変更。SGLT2(ジャディアンス)は継続処方となった。

経緯と対応:
配合剤に変更になったにも関わらず、継続した薬が同効薬と気づかず交付した。医師に確認して削除とした。

推定要因:
配合剤の成分に関する知識が不足していたこと。

参照元:公益財団法人日本医療機能評価機構/薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業/事例詳細表示

●併用投与に対する過量処方を発見した事例(2023年10月)

対象患者:
60歳代男性

処方内容
デエビゴ錠5mg

事例の詳細:
マクロライド系の抗生物質クラリスロマイシンを継続服用中の患者さんに、デエビゴ錠5mgが処方された。

経緯と対応:
両薬剤を併用すると、デエビゴ錠の副作用が増強される可能性があることに気づいた。クラリスロマイシンにデエビゴ錠を併用する場合は2.5mgまでのため、疑義照会し、用量変更となった。

推定要因:
医師の知識不足による用量の過誤と考えられる。処方追加の際には必ず薬局で相互作用や用量のチェックが必要。

参照元:公益財団法人日本医療機能評価機構/薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業/事例詳細表示

4.処方監査の質を高めるためのコツ

処方監査の質を高めるために必要なポイントは以下のとおりです。

4-1.医薬品情報のインプットとアップデート

医薬品や薬物療法に関する知識を増やし、疾患に対する禁忌、相互作用、使用上の注意などの情報を徹底的にインプットする必要があります。

また、常にアンテナを張って、副作用情報を更新したり、新しく上市された薬について勉強したりするなど、情報のアップデートに努めることが必要です。

4-2.処方箋以外の情報の入手

患者さんの病名、臨床検査値など、処方薬以外の情報を入手できるようになると、処方監査の質の向上につながります。そのためには、患者さんとのコミュニケーション能力を高め、医療機関や医師との連携を図ることが必要です。

4-3.ヒヤリ・ハット事例の共有

前述のとおり、ほかの薬局のヒヤリ・ハット事例を知ることは、同様の事例を未然に防ぎ、処方監査の向上に役立ちます。

5.まとめ

処方監査は、薬物療法のスペシャリストである薬剤師の立場から、患者さんに有効かつ安全な薬物療法を提供するために、医師の処方について、不備や疑わしい点がないかを確認することです。

薬剤師の業務が対物から対人にシフトされ、令和4年の調剤報酬改定では、患者情報などを加味した処方監査が調剤管理料の一つとして評価されるようになり、ますます薬剤師の専門的な知識と技術が問われるようになっています。

質の高い処方監査には、常に医薬情報をインプットしアップデートすることが大切です。医薬品の適正使用に貢献するために、常に研鑽を積むことを心掛けましょう。

この記事の著者

薬剤師・ライター

小谷 敦子

病院・調剤薬局薬剤師を経て、医療用医薬品専門の広告代理店・制作会社に所属し、販促資材やMR教育資材、患者向け冊子などの執筆に従事。
専門医インタビューによる疾患や治療の解説などを、クリニックHP上に掲載するなどの執筆活動も行っている。

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