薬剤師が医療ベンチャーに転職するには?メリットと方法について解説

薬剤師が医療ベンチャーに転職するには?メリットと方法について解説

薬剤師の転職先は、主に調剤薬局や院内薬局の割合が大きいです。最近は薬剤師の経験を活かした転職先として「医療ベンチャー」への関心が高まっています。

薬局では経験できない仕事ができるため、自身の成長やレベルの高いキャリア構築を目指せます。

今回は薬剤師の転職市場の状況を踏まえて、医療ベンチャーに転職する方法やメリットを解説します。

1.薬剤師の転職市場の動向について

薬剤師といえば、どの地域でも好条件の仕事を選べる「転職に有利な資格」でした。

最近の転職市場においても薬剤師は需要の高い状況が続いていますが、経験やスキル、コミュニケーション能力がなければ条件の良い企業に転職できない可能性も高くなっています。ここでは、薬剤師の転職市場の動向を解説します。

1-1.有効求人倍率の推移

有効求人倍率とは、求職者1人に対して何件の求人案件があるのかを表します。

令和3年1月の統計によると、医師・薬剤師の有効求人倍率は他の職業よりも高くなっており、薬剤師の求人数は多いといえます。

しかし、前年同月比では薬剤師は他業種よりもマイナス傾向となっており、薬剤師とはいえ、売り手市場から買い手市場に変化しつつあるといえます。

全国計 対前年同月差(全国計)
医師・薬剤師等 2.11 -1.5
専門的・技術的職業 1.82 -0.5
事務的職業 0.36 -0.17
販売の職業 1.53 -0.76
サービスの職業 2.49 -1.14

参照元:厚生労働省/令和3年1月 所業別一般職業紹介状況

1-2.薬剤師の需要

厚生労働省は2043年までの薬剤師の需要動向について、今後数年間は需要と供給が均衡するが、長期的にみると供給が需要を上回ると予測しています。

供給が上回る原因として、投薬対象者が2020年から2045年にかけて11.3億人から10.9億人へ減少すると予測。

投薬対象者が減少すれば薬剤師の需要は低くなり、転職希望者には不利な市場となるでしょう。

あくまでも推測なので未来の転職市場を完璧に予測することは難しいですが、薬剤師は「資格さえあれば一生安泰」という時代は終わり、自己研鑽や職務経験を積んだ薬剤師が有利に転職できる時代へ変化してきているといえます。

参照元:厚生労働省/薬剤師の需給推計(案)

2.そもそも医療ベンチャーとは?

薬剤師の転職先として、医療ベンチャーという選択肢があります。「他人とは違うキャリアを積みたい」「医療ビジネスに興味がある」という方にとっては、やりがいのある仕事です。

では、そもそも医療ベンチャーとはどういった活動をおこなっているのでしょうか?ここからは、医療ベンチャーの仕事内容や動向について解説します。

2-1.医療ベンチャーとは

医療ベンチャーとは、最新の医療技術やITテクノロジー、研究結果をもとに医療分野において革新的な製品やサービスを開発する企業です。

たとえば、医療ベンチャーでは以下のような活動がおこなわれています。

  • 治療や新薬の開発
    保険診療や大手の製薬会社が介入できない治療法・新薬を開発し、医療機関と協力して導入を進めていきます。
  • 研究
    新しい治療法や新薬開発に関する研究をおこないます。
  • オンラインでの診察や処方
    ITテクノロジーを活用したオンライン診察や処方の推進、病院や薬局に通わなくても一次診療が受けられるシステムを構築します。

2-2.医療ベンチャーの動向

令和2年度産業技術調査(大学発ベンチャー実態等調査)報告書によると、大学発ベンチャーは2020年度の大学発ベンチャーは2,905社。

2019年度の2,566社に比べて339社増加しており、過去最多の企業数・増加数となりました。また、ベンチャー企業でもっとも多い業種は「バイオ・ヘルスケア・医療機器」となっており、今後も医療ベンチャーの事業拡大が予測されます。

参照元:令和2年度産業技術調査/研究開発型ベンチャー企業と事業会社の連携加速及び大学発ベンチャーの実態等に関する調査

3.薬剤師が医療ベンチャーに転職するメリット

医療ベンチャーは薬局での業務では得られないメリットも多数あり、薬剤師として大きくステップアップできるチャンスが溢れている分野です。

薬剤師が医療ベンチャーに転職するメリットを解説します。

3-1.幅広い職種を経験できる

医療ベンチャーへの転職は、薬剤師としては経験できない職種を務めることができます。薬剤師は専門性が高い職業なため、幅広い職種を経験しづらい特徴があります。

薬剤師の資格を活かした職場は一般的にどの職場でも調剤業務・服薬指導・薬歴管理が中心になるため、業務内容はある程度限られます。

医療ベンチャーは薬剤師の知識を活かして、開発や研究、営業といった幅広い職種を経験でき、ビジネスパーソンとしてのスキルアップに繋がります。

3-2.薬剤師の経験が活かせる

薬剤師以外の仕事をしたいと思っても、薬剤師の資格や経験を活かした異業種は少数です。しかし医療ベンチャーであれば、医学知識や薬学知識が必要な仕事も多いため、薬剤師の資格や経験を生かした仕事がしやすいです。

たとえば、感染症対策に関係する医療ベンチャーであれば、微生物や耐性菌など感染制御に対する知識を活かせたり、インターネットで医療情報を提供する医療ベンチャーであれば、薬剤師として正確な情報能力を活かせたりするなど薬剤師の経験が医療ベンチャー転職のカギになる可能性があります。

3-3.主体的にビジネスに関われる

医療ベンチャーは、大手企業や中小企業にはないスピード感と決断力が必要です。人員も少数精鋭のメンバーで仕事を進めるため、主体的にビジネスに関われます。

たとえば、ヘルスケア関連の食品開発をおこなう医療ベンチャーであれば、摂取すべき栄養や栄養製剤に関する知識を活かして製品開発のアドバイスなどがおこなえます。

さらに商品に関連した専門知識が深いため、それを市場に導入するマーケティングや宣伝、営業といった仕事にも携わることも期待され、ビジネス全体を俯瞰的に活躍できる可能性もあります。

このように医療ベンチャーでは、薬剤師の専門知識をきっかけに責任のある仕事を任せられ、給与アップや昇進へのチャンスを掴みやすいといえるでしょう。

4.薬剤師が医療ベンチャーに転職するためには

薬剤師が医療ベンチャーに転職するためには、事前の情報収集や自己アピール方法の検討が必要です。薬剤師が医療ベンチャーに転職するための具体的な方法やコツについて解説します。

4-1.企業情報・求人情報を集める

まずは通勤可能な範囲で、医療ベンチャーの求人案件が出ているか情報を集めます。気になる求人案件が見つかったら、企業情報をチェックしておきましょう。

企業がどんな理念のもと、どのような開発や研究をしているのかホームページなどで調べます。その上で自分の知識・経験が活かせそうな企業なのかを確認しましょう。

たとえば、精神科領域の薬学を学んでいるのであれば、認知症に関する研究や新薬開発をおこなっている企業など、自分の知識、経験の棚卸をして、それに合った企業情報や求人情報を探すことをおすすめします。

4-2.キャリアプランをイメージしておく

医療ベンチャーに転職した後のキャリアプランを考えておきましょう。

医療ベンチャーで定年まで仕事を続けるのか、薬剤師に戻りたくなった場合に、現状で戻ることは可能なのかどうかなどをイメージしておくことが大事です。

また、医療ベンチャーでビジネスを学んだ後、調剤薬局の独立自営を目指すなら、経営を学べる医療ベンチャー企業なのか確認しておくことも重要です。

さらに事業内容だけでなく、薬剤師のキャリアプランには、結婚などのライフイベントも考慮しておきましょう。

たとえば仕事と育児を両立するなら、育児に対してのサポート体制や福利厚生も企業選びに重要になってきます。

4-3.職務経歴書・ポートフォリオを作成する

応募する医療ベンチャーが決まったら、職務経歴書とポートフォリオを作成しましょう。

まずは自分の能力やスキル、経験を紙に書き出し、これまでの成果を可視化します。その中で企業にアピールできるポイントを中心に書類を作成していきます。

たとえば日本病院薬剤師会などが認定している認定薬剤師・専門薬剤師といった認定・資格があれば薬剤師として更なる専門性をアピールできるでしょう。

また、医療ベンチャーは新しい商品・サービスを開発する企業が中心なので、自分の経験した商品・サービス開発経験はもちろん、自分のスキルや経験が、新しいことを生み出す可能性があることやチャレンジしたいという気持ちがあることを記述しておくことも大切です。

こうして実績、可能性、気持ちを盛り込んだ職務経歴書やポートフォリオで、薬学分野の即戦力人材であることをアピールしましょう。

4-4.転職エージェントを利用する

医療ベンチャーは求人案件が少なく、転職情報を調べるために手間がかかります。また、未経験分野への転職は自分をどうアピールすればいいのか不安を感じる方もいるでしょう。

医療ベンチャーへの転職は、薬剤師専門の転職エージェントを利用することをおすすめします。

マイナビ薬剤師であれば、薬剤師専任のキャリアアドバイザーが面談をおこない、あなたに合った医療ベンチャーの求人提案や書類作成、面接の練習まで内定獲得の個別サポートをしてくれます。

内定獲得後も、他人には相談しづらい給与や勤務形態などの交渉、退職のタイミングや手順についての相談も受け付けており、あなたの医療ベンチャーへの転職成功に向けてトータルで応援します。

また、マイナビ薬剤師では非公開求人を取り扱っています。

応募が殺到してしまうような人気の職種や少人数の募集など、あえて公開せずに転職エージェントを介して募集している求人もあります。

マイナビ薬剤師の非公開求人について詳しくは下記ページをご覧ください。

>薬剤師の転職におすすめの「非公開求人」とは? | マイナビ薬剤師

5.まとめ

本記事では、薬剤師が医療ベンチャーに転職するメリットや転職に向けての具体的な方法について解説しました。

薬剤師の転職市場はスキルや経験、人間性が求められる時代となっています。医療ベンチャーは成長できるチャンスが多く、新しいことに挑戦できる機会に恵まれた分野です。医療ベンチャーの転職に向けて準備し、新たな道へ踏み出してはいかがでしょうか。

この記事の著者

医学ライター・理学療法士

北岡 健

新卒で総合病院に勤務。リハビリテーションをはじめ看護学や薬学といった幅広い医学分野全般に精通。医学ビジネスに関する記事執筆にも携わっており、調剤薬局の経営や独立に関するライティングを得意とする。

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