薬剤師の夜勤と当直の違いは?業務内容やメリットについて

薬剤師の夜勤と当直の違いは?業務内容やメリットについて
病院や調剤薬局などで勤務する薬剤師の業務の一つに「夜勤」や「当直」があります。薬剤師の求人情報でも「夜勤・当直手当あり」といった記載を見かける機会は多いでしょう。

そこで今回は「夜勤と当直の違い」「メリット・デメリット」「夜勤・当直がある職場」などについて詳しくご紹介します。似ているようでまったく異なる夜勤と当直の違いをよく知ることで、今後の職場選びの参考になるはずです。

1.薬剤師の「夜勤」や「当直」とは?違いは?

似たイメージのある「夜勤」と「当直」ですが、通常の勤務時間外である「夜間」の勤務という点では共通していますが、労働基準法では明確に区別されています。転職を視野に入れている場合、転職先の職場に夜勤・当直があるかどうかは気になるポイント。両者の違いを明確に知っておくとスムーズです。

1-1.夜勤とは

夜勤とは、22時から翌朝5時までの間に、日中と同様の通常業務をこなす勤務形態のことです。入院施設や夜間救急体制のある病院や、24時間営業・深夜営業をしている調剤薬局やドラッグストアでは、夜勤のシフトが発生することがあります。

夜勤のシフトに入る頻度は、職場のルールやシフトを回す職員の人数によってもさまざまです。当番制にしていたり、対応可能な薬剤師が入ることにしていたりと勤務先によって異なります。

労働基準法第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)では、22時〜翌朝5時までの時間に通常業務に行うことを「深夜労働」と位置づけており、日中の労働時間で得られる給料の1時間平均額25%にあたる割増賃金を支払うこととされています。そのため、深夜帯の夜勤の給料は通常の25%増となるのです。

夜勤の勤務時間も、当然「1日8時間かつ週40時間まで(労働基準法第32条)」の法定労働時間としてカウントされます。休憩時間についても日中勤務と同様、「労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。(労働基準法第34条)」というのがルールです。

1-2.当直とは

当直とは、正確には「宿当直」のことです。日中の通常業務である「日直」から、そのまま引き続き夜間に泊まる前提で勤務する「宿直(とのい)」のことをいいます。

労働基準法第41条3号では、当直は「労働者は原則的に状態としてはほとんど労働する必要がないこと」という業務内容です。当直勤務中は「十分な睡眠時間が取れるよう配慮すること」とされていますが、医療従事者の場合は当直中に急な患者対応に追われることも少なくありません。

そのため、医療従事者は短時間であれば日中の通常業務に従事することが許容されています。薬剤師であれば、当直中に調剤・服薬指導などの業務に従事することがあるということです。

就業規律上、当直勤務中は労働基準法第32条が定める法定労働時間に含まれません。それが夜勤と大きく異なります。ただし、当直勤務は週1回までが制限です。

当直した場合は当直手当が支給され、その額は「同種労働者の通常勤務時の1日平均賃金の3分の1を下らないこと(労働基準法第41条3号)」と定められています。

1-3.夜勤や当直は大変?

夜勤・当直は深夜帯での不規則の勤務となるため、体力的には大変なこともあります。十分な睡眠を確保できないこともあるでしょう。少人数体制・一人体制のシフトで業務に追われることもあるはずです。

しかし大変な分、相当の収入になって返ってくるでしょう。夜勤の場合なら通常の25%増の賃金となり、当直の場合なら当直手当がつくため、収入UPが期待できます。また、日中より少ない人数もしくは1人で対応することから、任される仕事の範囲が広がり、経験値が上がることでスキルアップにつながるでしょう。

夜勤・当直は大変な面も多々ありますが、その分、やりがいも大きい業務なのです。

2.夜勤・当直がある職場

薬剤師が働く現場で、夜勤・当直が発生するのはどのような職場なのでしょうか。
各職場での勤務形態や職場ごとの特徴について、ご紹介します。

2-1.病院

入院施設のある病院や夜間の救急対応をしている病院では、薬剤師も夜勤・当直が発生します。

職場にもよりますが、病院勤務のシフト形態は「2交代制」「3交代制」がメインです。そのため、そのシフトによって夜勤・当直となる時間帯も異なります。

2交代制は、「日勤」と「夜勤」の2シフトで分けられています。日勤が「8時から17時まで(8時間勤務)」、夜勤が「16時半〜翌朝9時(休憩2〜3時間含む16時間勤務)」といった勤務時間の場合があります。

一方、3交代制では「日勤」「準夜勤」「深夜勤」の3シフトで分けられています。日勤が「8時半〜17時まで(8時間勤務)」、準夜勤が「16時半〜午前0時半(8時間勤務)」、深夜勤が「午前0時〜翌朝9時(8時間勤務)」といった勤務時間の場合があります。2交代制でも3交代制でも、「夜間の勤務=夜勤」としている場合もあれば、「夜間の勤務=当直」としている場合もあります。

当直では、原則的に夜間の通常業務はほとんどありません。あっても急患対応などの一時的な業務に限られます。ただし、22時〜翌朝5時の深夜帯に、立て続けに急患対応があって十分な睡眠が取れなかった場合などには、業務を行った時間が夜勤の勤務時間としてカウントされ、深夜割増賃金が支払われます。

2-2.ドラッグストア・調剤薬局

ドラッグストアや調剤薬局の多くは当直がなく、夜勤もほとんどないのが一般的です。

しかし、最近では都市部や大学病院の周辺にあるドラッグストア・調剤薬局は、24時間営業、または深夜営業をしていることもあります。こういった店舗では営業時間が長いため、4〜8時間勤務でのシフト体制を整えているケースが多いようです。夜でも薬剤師が常駐しており、滞りなく薬を提供できる環境を整えています。

夜勤・当直が発生する時間帯は、店舗の営業時間帯に準じるところがほとんどです。それぞれの店舗ごとに異なるため、転職を検討している場合にはよく確認しましょう。

3.夜勤・当直のない職場はある?

夜勤・当直のない職場や、夜勤・当直の有無を確認する方法をご紹介します。薬剤師の全ての職場で夜勤・当直があるわけではなく、病院内薬局・調剤薬局・ドラッグストアなどでもない場合があるので、確認が必要です。

3-1.夜勤や当直がないところもある

24時間営業や深夜営業ではない調剤薬局やドラッグストアでは、深夜帯の勤務がないため、夜勤や当直はありません。日中の勤務でシフトを回すことがほとんどで、プライベートの用事もスケジュールが組みやすいようです。

また、入院設備がある急性期病院の院内薬局でも、病院の規定として薬剤師は夜勤・当直の勤務がないと定めているところもあります。できれば夜勤・当直は避けたいと考えているなら、選択肢の一つとして検討してみましょう。

3-2.夜勤・当直があるか確認する方法

夜勤や当直がない職場を探すには、まずは求人票に「夜勤」「当直」の記載があるかどうか確認をしましょう。夜勤・当直がない場合は、その旨を分かりやすくアピールしている場合も多いので見落とさないようにましょう。

また、面接の際に気をつけたいのが、直接面接では質問がしにくい「夜勤・当直があるかどうか」を確認することです。確認したい場合は、直接的な表現は避けて質問するか、転職エージェントにお願いして聞いてもらうとスムーズです。

4.夜勤・当直で働くメリット

夜勤・当直は深夜に働くため、「体力的につらい」といったネガティブなイメージがあるかもしれません。しかし、メリットがあるのもまた事実です。
では、夜勤・当直で働くメリットを見ていきましょう。

4-1.高収入を得られる

夜勤・当直のメリットといえば、やはり高収入が見込めることが1つです。例えば、病院での当直の場合、当直中に何も薬剤師業務が発生しなかったとしても、当直手当が支給されます。その額は「通常勤務1日平均賃金の3分の1」ほどであり、支給額が上乗せされるのは、やはりうれしいポイントです。もちろん、当直手当は職場によって異なるため、事前によく確認しましょう。

また、深夜帯の夜勤の場合は、「通常賃金の25%増の賃金」を支払うことが法律で定められています。夜勤に入るほど収入アップが見込めるため、転職で収入を重視する方には夜勤・当直がある職場はおすすめです。

4-2.スキルアップ・キャリアアップにつながる

夜勤・当直の際は、日勤よりも少ない人数または1人で業務にあたることになります。夜間に急変した患者さんのためのオーダーが入ったり、医療スタッフから緊急の質問が入ったりすることもあるでしょう。

「限られた時間の中で間違えずに調剤する」「自分一人で服薬指導をこなす」という経験から、さまざまなスキルが鍛えられます。また知識や判断力などもアップするはずです。

急性期病院などで夜勤・当直業務を1人でこなせるようになれば、今後どこへ行っても薬剤師として活躍できます。仕事の正確さも知識の豊富さも強みになり、自身のキャリアアップにつなげることができるでしょう。

4-3.日中に好きなことができる

夜勤の場合、夜勤明けの翌日は法定休日とするよう労働基準法で定められています。そのため、夜勤の翌日に休日自己研さんや休息、買い物や趣味など、昼間の時間を好きなように使うことができるでしょう。

また、平日の日中にしかできない用事も済ませることができます。役所や銀行での手続きなどをスムーズに済ませられるのはうれしいポイント。夜勤明けの疲れを取りながらも、自分の時間を持てると有意義に過ごせるはずです。

5.夜勤・当直のデメリット

薬剤師が夜勤・当直をする上で、大変なことや難しいと感じることがあるかもしれません。多くの人が想像する体力的・業務的な大変さから、休日の調整の難しさまで、夜勤・当直のデメリットについても見ていきましょう。

5-1.体力的にきついと感じることがある

通常の日勤シフトを続けながら、夜勤や当直勤務をこなすことになるため、体力的にきついと感じる薬剤師が少なくありません。

特に急性期病院などの夜勤や当直では、業務量も内容も勤務当日にならないと分からないことが多く、予想以上に忙しく業務に追われることもあるでしょう。日勤のみの勤務形態に比べ、イレギュラーで不規則な生活リズムや業務になりがちです。健康管理や体力維持も心がける必要があるといえます。

5-2.1人で対応しなくてはいけない場合がある

夜勤・当直では日中に比べて業務を担当する薬剤師が少なくなり、時にはたった一人で全ての業務に対応しなければならない場面にも遭遇します。

分からないことを先輩に尋ねる、他の薬剤師とのダブルチェックを行う、といった対応ができないことも。常に緊張感を持って仕事をする必要があるため、プレッシャーを感じることもあるでしょう。

5-3.友人や家族と時間を合わせるのが難しい

深夜帯に働き、日中に休むという勤務形態になるため、友人や家族と都合を合わせるのが難しいときもあります。

夜勤・当直はシフト勤務なので、職場の薬剤師の数によってはシフトの希望がとおりにくいこともあるでしょう。そのため、シフトによっては仕事帰りに友人と夕食を食べる、土日祝日に家族と旅行にでかけるなどが、難しい場合もあるかもしれません。

カレンダーどおりに休日を取れるとは限らないため、友人や家族との楽しい予定などはあらかじめシフトを確認した上で、立てる必要があります。

6.夜勤・当直を乗り切るためのコツ

夜勤や当直を乗り切るために、気持ちを切り替えたり、自分へのご褒美を用意したり、体力づくりをしておいたりと、日常生活でできるちょっとした工夫や事前の準備のポイントをご紹介します。

6-1.リラックスできる物を用意しておく

心身ともに疲れがたまる夜勤・当直のとき。休憩時間や退勤後にリラックスできるアイテムを事前に準備して、気持ちに余裕がなくなったときに、ふっと気持ちを切り替えてみましょう。

例えば、持ち運び可能なコンパクトサイズのアロマ。そっと香りをかぐことで、勤務の休憩中にもほっとひと息つけるでしょう。他にもアイピローなどがあれば、少しの時間でもより癒やされそうです。

お気に入りのお香があるなら、帰宅後に楽しむのもいいかもしれません。お部屋をいい香りにすることでリラックスできます。入浴剤を入れて湯船につかれば、夜勤・当直で疲れた体がじんわりほぐれてくれるはずです。

6-2.終わった後の楽しみを用意しておく

大変な当直を乗り切るために、自分にご褒美を用意しておきましょう。

「好きなスイーツを家の冷蔵庫に入れておく」「気になっていたカフェに朝ごはんを食べにいく」「好きな動画を目いっぱい見る」など、夜勤・当直明けの楽しみはまた格別です。

大変なことも多い夜勤・当直でも、楽しみを準備しておくだけで乗り切れることでしょう。

6-3.体力づくりをしておく

夜勤・当直は体力勝負。日頃から運動する習慣を持ち、深夜の勤務を乗り切る体力を蓄えておきましょう。

ウオーキングやランニングならシューズがあればできるため、気軽に始められます。日勤後の余裕があるときに走ってみたり、通勤時に1駅分歩いてみたりと、生活の中にうまく取り入れてみましょう。

また、友人とスポーツを楽しむ機会をつくる、ジムで体を動かすのもいいかもしれません。体を動かす習慣をつくっておくことで、体力アップを目指しましょう。

6-4.寝具を整える

十分な睡眠が取れるとは限らない夜勤・当直の日は、帰宅したら、まずは布団へという人も多いでしょう。そんなとき、寝具が整っていると気持ちよく眠りにつけるものです。

自分の体に合った枕やマットレス、季節に合わせた掛け布団を日頃から準備しておきましょう。気に入ったデザインの寝具をそろえるのもおすすめです。

帰ったら「気持ちのよい布団が待っている」と思うだけでも仕事を頑張ろうという気力が湧き、仕事終わりの質のよい睡眠にもつながるでしょう。

7.自分に合わせた働き方を見つけよう

薬剤師にも多い夜勤・当直の勤務。「できれば当直はしたくない」「夜勤で稼ぎたかったけれど、夜勤が少なかった」など、夜勤・当直に関してさまざまな要望があることでしょう。

また結婚・出産・育児・介護などのライフステージの変化とともに、職場に求めるものも変わっていきます。この先、薬剤師として活躍し続けるためには、自分に合った働き方を模索していきたいところです。

しかし、いざ転職を考えたとき、悩ましいのが求人に掲載されている情報量です。「夜勤・当直はあるのか、ないのか」「どのくらいの頻度であるのか」「手当はどのくらい出るのか」などの情報は、求人票を見るだけではなかなか分からず、職場の実態が見えてこないことも少なくありません。

そんなときに活用したいのが、薬剤師を専門とする転職エージェント「マイナビ薬剤師」です。

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また、夜勤や当直の回数や1回あたりの手当など、自分では交渉しにくいこともキャリアアドバイザーが交渉してくれるので、転職後の「こんなはずじゃなかった」という失敗を避けることができるでしょう。

マイナビ薬剤師は、薬剤師の転職に関する全国セミナーや全国14カ所での個別相談会やWeb相談会などを通して、自分の働き方を真剣に見つめ直そうとする薬剤師の方を応援しています。ぜひ、お気軽にマイナビ薬剤師へご登録ください。

8.まとめ

薬剤師の方にとって「夜勤」「当直」があるかないかは、重要なポイントです。
収入やワークライフバランスにも関わってくるでしょう。

大切なのは、「現在の自分は薬剤師としてどう働きたいか」をはっきりさせること。「収入を優先させたい」「スキルアップを目指したい」「プライベートも大事にしたい」「長い時間は働けない」など、自分の希望に応じて夜勤・当直の有無を確認できると有意義な選択になるはずです。

マイナビ薬剤師では、薬剤師の今後のキャリアプランのご相談も承っています。ぜひ一緒に、今後の薬剤師人生を見つめ直してみませんか。

この記事の著者

医療健康ライター・コピーライター

荒川 智世

広告代理店、制作プロダクション勤務を経て、2022年よりフリーランスのライター・コピーライターとして活動。登録販売者の資格を持ち、記事執筆や広告コピーの制作などに10年携わる。主に医療・健康分野を得意とする。

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